映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

闇の子供たち

2009年07月26日 | DVD
 映画「闇の子供たち」のDVDを見ました。

 映画で取り上げられる題材がセンセーショナル過ぎるのではと思えて劇場には行かなかったのですが、これまでタイを舞台とする映画をいくつか見たこともあって、こうした映画も見ておく必要があるのではと思い、TSUTAYAから借りてきました。

 予想したように、タイにおける幼児買春、臓器売買など目を背けたくなるようなシーンが頻出します。闇の組織の人間が、エイズに罹った幼児を生きたままゴミ袋に入れて捨て、ゴミ収集車がそれをゴミ処理場に運ぶなど、とても信じられないことです。

 この映画は、そうしたことを背景に、日本から派遣されている新聞記者(江口洋介)とかカメラマン(妻夫木聡)、あるいは現地のNPOに加わるためにやってきた若い女性(宮崎あおい)などの活躍を描きます。

 ただ、実にいろいろな事柄を1本の映画の中に押し込もうとしたために、焦点がかなりボケてしまい、話題性はあるものの映画のドラマとしての出来はあまり評価できないところです。

 たとえば、最後の方で、幼児買春撲滅を謳うNPOを潰すために闇の組織からスパイとして送り込まれた男が、NPOの集会を混乱させるために突然発砲して、監視に来ていた警察と銃撃戦になりますが、なぜわざわざそんな過激な手段に訴えるのか、そしてその結果がどうなったのか、映画からはよくわかりません。

 そのあとで、なぜか闇の組織が警察によって摘発されて、囚われていた子供たちが解放されますが、その経緯は何も説明されません(そんなことが簡単にできないからこそ、この映画では、江口洋介の新聞記者たちは、事実を報道することに力点を置くのだと言っています)。

 また、江口洋介はラストで自殺しますが、その理由は、彼自身が幼児性愛者だったからと仄めかされても(カーテンで隠れされた壁に、多数の幼児を殺害した幼児性愛者の記事がいくつも貼り付けられています)、彼のそれまでの生き方が映画では何も描き出されてはいませんから、単なるエピソードとしか受け止められません。

 さらに、妻夫木聡のカメラマンは冒頭に現れるために、これから彼が活躍するのかなと思っていたら、そのあと1時間20分近くは全然登場せず、やっと後半3分の1くらいに出てくるものの江口洋介の手足となって動くだけの役回りなので、いささか驚きました。

 宮崎あおいのボランティアも、幼児売春を行っている店の前に停められている車で店の人たちの動きを見張っていたら、いくらなんでも闇の組織の人間にすぐに見つかってしまうのでは、と思ってしまいます。

 要すれば、描き出された問題があまりにも深刻なために、それを背景に人間のドラマを描こうとしながらも、結局はその問題に飲み込まれてしまっただけではないのか、という感想を持ちました。