映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

サガン-悲しみよ こんにちは-

2009年07月01日 | 洋画(09年)
 渋谷のル・シネマで「サガン-悲しみよ こんにちは-」を見てきました。
 
 私は、サガンの小説は女子供の読むものとハナから見下してマッタク読んだことがなく、そのためこの映画にも余り興味が湧かなかったものの、マア文芸物が好きなこともあって足を運んだ次第です。

 実際のところは、写真で見るサガンに実によく似た女優が登場して、その人生をかなりリアルに描き出します。とはいえ、自分を支持してくれる人たちにいつも囲まれていないと不安になり(何度も結婚して子供までもうける一方で、一緒に暮らしてくれる女性をも求めます)、そういった人たちに要求する度合いが高いこともあって次第に取り巻き連中がいなくなり、最後は麻薬でボロボロになって孤独の内に死んでいくというサガンの人生自体には余り共感が持てません。
 (サガンは、作家デビューして直ぐに交通事故で瀕死の重傷を負いながらも、奇跡的に回復してその後もベストセラーを書き続けた訳ですが、それは、ジャンルは違うものの、メキシコの女性画家フリーダ・カーロにも似ているのでは、と思いました。)

 ただ、粉川哲夫氏が「サガンの人生のさわりをなぞっている感じで、彼女の心の振幅に共振するところが弱い」と言ったり、渡まち子氏が、「物語は終始彼女のスキャンダラスな側面ばかりを追い、唯一の才能である“書くこと”の苦悩や喜びをほとんどスルーしてい」と述べたりするのは、映画というメディアで芸術家の内面を描き出すのは本来的に困難だという点を無視するものではないかな、と思いました。

 そういうこともあって、実在の人物の伝記を描いた映画としては、マズマズの水準に達している作品ではないか、と思った次第です。