映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

休暇

2008年06月22日 | 08年映画
 新宿トーアで「休暇」を見てきました。

 様々の情報媒体から、ことさら読んだり見たりせずとも、映画の大筋が分かってしまい、それならわざわざ映画館に出向く必要はないと思っていたところ、これまで13人の死刑執行を命じた鳩山法務大臣を揶揄する朝日新聞夕刊の「素粒子」が問題になっていることもあり、新宿コマ劇場の前にある新宿トーアに行ってきた次第です(初めて入った映画館で、従業員が2、3人しかいない物寂しい雰囲気でした)。

 さて、驚いたことに、映画の冒頭がまさに、死刑執行命令書に関する決済に様々な法務省関係者が印鑑を押し、最後に法務大臣が印鑑を押すシーンなのです。何か、狙い済ましたような感じを受けたものの、映画作りはずっと前に行われていますから、偶然に過ぎないのでしょう(それに、この映画には原作―吉村昭氏の短編―があります)。

 この映画では、一人の刑務官(小林薫)の職場での仕事ぶりと私的な生活面とが描き出され、その中に死刑囚(西島秀俊)に対する死刑執行の様子が差し込まれます。
 というところから、“つぶあんこ”氏は、例えば、「死刑囚と連れ子を、ことごとく相似、対比させ、テーマを浮き立たせている、細かい設定の積み重ねが興味深い。最もわかりやすいのは、死刑囚が描いている白黒の鉛筆画と、子供が常に描いている色鉛筆のカラー画の対比だろう」というように、映画に設けられている様々の「相似と対比」を見つけ出してきます。

 ただ、余りそればかり説明されると、いい加減にそんなつまらない説明はおしまいにして、肝心の批評をしてくれよ、という気にもなってきます。というのも、確かに、そうした「相似や対比」が映画の中に設けられていることは容易に分かりますが(特段、事々しく解説されなくとも)、敢えて言えばそんな点は制作段階にかかる話であって、出来上がった映画を見るということは、そういった背後の構造を読み取ることではなく(別に読み取ってもかまいませんが)、映画全体として何を受け取るのか、というところではないか、と思われます。

 要すれば、“つぶあんこ”氏はこの映画に70点を与えているものの、なぜその点数なのかが映画評では少しも述べられてはいないのでは、と思われます。

 ではお前はドウなのか、と問われれば、こうした映画を評価するのは実に難しいな、としか言えません。こうした状況は、周防正行監督の「それボク」でも同じでした。映画が取り上げている題材は、まさに今議論しなければならないヴィヴィッドな問題性を持っています。ただ、ソウだからといって、それを取扱っている映画が優れたものといえるかどうか、映画ということで見ると別の視点がありうるのかもしれない、しかし、やはりその問題性を離れて評価するのもいけないのでは、といったところです。

 とはいえ、西島秀俊が立派過ぎてトテモ死刑囚とは思えないことや、ウダツの上がらない刑務官の小林薫と結婚する大塚寧々も、いくら子連れバツイチで曰くが何かあるにしても美女過ぎて、どうもぴったり来ない気もしました。

 なお、大層つまらないことですが、この映画の舞台は山梨県で、例の「ゆれる」もそうだったな、と思い出しました!