孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  共産党指導部内の勢力図を決める“北戴河会議”

2012-08-13 20:18:04 | 中国

(8月5日 北戴河に招いた“全国から集まった各分野の専門家や人材”と会見する習近平副主席 【8月6日 CRI online】 http://japanese.cri.cn/881/2012/08/06/181s196604.htm

胡錦濤、江沢民、習近平の3世代の勢力争い
中国では秋の党大会での共産党指導部交代に先立ち、党最高指導者らが河北省の避暑地・北戴河で一堂に会し、党が抱える問題について話し合う恒例の“北戴河会議”が今月6日頃から行われています。

****北戴河(ほくたいが)会議****
中国共産党の指導者や長老らが毎年夏、河北省の海辺の避暑地、北戴河に集まって開く非公式の会議。毛沢東時代から指導者らが家族連れで別荘に滞在しながら政談を重ねてきた。党大会で党内の対立が露呈するのを避けるため、北戴河で事前調整が行われ、指導部人事や重要議案の内容がほぼ固まるとされている。【8月7日 朝日】

建国の父、毛沢東が夏に同地の海に入って泳ぐ習慣に合わせて、党、政府、軍の指導者が北戴河に集まるようになったのが由来といわれる。引退した指導者にも発言権が与えられることが特徴。二重権力構造の批判から2003年にいったん廃止したが、長老らの猛反対で復活した。この会議で決まった人事や政策が秋以降の公式会議で正式に決定されることが多い。【8月3日 産経】
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上記説明にあるように引退した旧指導者も参加するといことで、「院政」という形で今後に影響力を残したい胡錦濤国家主席の勢力と、未だに大きな影響力を保持している江沢民前主席の勢力の確執が取り沙汰されています。
最近、胡錦濤主席の勢いが強まっているのでは・・・という話は、7月15日ブログ「中国 指導部交替に向けて、権力基盤を強める胡錦濤国家主席」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120715)でも取り上げたところです。

当然ながら、新たに指導部を率いることになる習近平副主席も自身の勢力を確保したいと狙っていますので、胡錦濤、江沢民、習近平の3世代の思惑が入り乱れての「権力闘争の天王山」いうことになります。

****胡派VS習派、主導権争い 北戴河会議 党人事に焦点 「権力闘争の天王山****
中国共産党内の現、元最高幹部らが一堂に集まり、重要人事や政策などについて話し合う非公式会合、北戴河会議が3日から開催されることが分かった。複数の共産党筋が明らかにした。今秋に開かれる党大会で審議される次期指導部人事が最大のテーマとなる。「権力闘争の天王山」といわれる同会議では、各派閥による激しい攻防が繰り広げられそうだ。

共産党筋によれば、今年の北戴河会議は当初、7月末に予定されていたが、人事案などの調整が遅れ、8月第1週の週末にずれ込んだ。河北省の張慶黎党委書記は7月30日に北戴河入りし、警備体制など準備状況を確認した。共産党筋によれば、現役最高指導部である政治局常務委員9人のほか、引退した指導者数十人も参加する同会議では、胡錦濤政権の10年間の外交、内政の総括や次期指導部人事案について話し合われる。党規律部門に身柄拘束されている薄煕来・前重慶市党委書記の処遇も議題になるという。

政治局拡大会議と称される全体会議のほか、テーマごとに分かれた複数のグループ会合などが8月中旬まで断続的に開かれる見通しだ。

今年の会議は、胡主席のグループと、江沢民前主席、次期総書記に内定している習近平副主席の連合グループによる主導権争いが最大の焦点だ。胡派は次期指導部での過半数を確保するために、現在9人の政治局常務委員会のメンバーを7人にしたいとしているが、習氏らが反対している。また、党大会で総書記を引退した後も、軍トップである中央軍事委員会主席にしばらく留任したい胡氏を阻止するために、習氏と江氏が連携を強めている。

特に江氏の動きが最近、目立っている。7月20日に故郷の揚州に小規模な地震があった際、江氏は地元の共産党委員会に自ら慰問電話をかけた。また、7月末に『簡明中国歴史読本』という書物の序言を書き、人民日報などに大きく報道させた。健康不安説が絶えない江氏は、北戴河会議を前に自らの存在感を示す狙いがあるとみられる。
江氏については2日早朝、北京から空路で北戴河入りしたとの情報がある。曽慶紅前国家副主席も同日、北戴河入りしたもようで、3日夕までには現役指導者らが現地入りする予定だ。【8月3日 産経】
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上記記事ラストの江沢民前主席の動向については、「そこまでしないといけないほど影響力が弱まっている可能性もある」(外交筋)【8月12日 毎日】といった見方もあるようです。

【「ポストの増減は、胡氏が党内をどれだけ掌握しているかの物差し」】
特に注目されているのは、最高決定機関でもある政治局常務委員のポストと人数に関する決定です。政治局常務委員は02年の胡錦濤体制の発足時に、江沢民前主席の影響力を強く反映して7人から9人に増えていますが、次の政権では7人に戻すべきだとの意見が論議されています。
その変更で、次期習近平政権における胡錦濤氏の影響力が強くなるとも言われています。

****中国共産党の人事調整、山場に 常務委員2人削減が焦点****
・・・・複数の党関係者によると、胡主席は7人にする方向に傾いている模様だ。
党組織部や中央党校関係者によると、常務委員が増えたことで、総書記を補佐して日常的な政策判断をこなし「政策の総指揮部」と呼ばれた党中央書記局の権限が弱まった。そのため、政策決定に時間がかかったり、総書記のリーダーシップが弱まったりといった点が指摘されている。
改革派の政治学者は「ポストの増減は、胡氏が党内をどれだけ掌握しているかの物差し。その力関係が、常務委員の顔触れにも影響する」と話す。

削減の対象に上がっているのは、02年に常務委員に格上げされた政法委員会書記と、イデオロギー・宣伝担当の常務委員。特に警察や司法機関を統括する政法委書記は、「権限が大きくなりすぎた」(党組織部関係者)として、常務委員の下の政治局員にとどめ、総書記の指揮下に置くべきだとの案が出ている。

しかし、党関係者や外交筋の間には「7人態勢には抵抗が大きく、最終的には9人に落ち着く」との見方も強い。ポストが減れば党内各勢力の調整が難しくなる。胡氏がそこまでの指導力を発揮できるか、疑問視しているからだ。

次の常務委員会入りが確実なのは、前回党大会で常務委員になった習氏と李克強(リー・コーチアン)副首相の2氏。残りのポストを胡氏の出身母体の共産主義青年団(共青団)に連なる勢力と、江・前国家主席が代表する勢力が争い、習氏らの意向を踏まえて調整が図られる見通しだ。

一連の会合では、党大会で発表され、次の政権の基調路線を示す「政治報告」の内容のほか、家族や部下のスキャンダルで失脚し党当局の取り調べを受けている薄熙来(ポー・シーライ)前重慶市書記の処分も議論されるとみられる。【8月7日 朝日】
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概ね、江沢民前国家主席(85)と胡錦濤国家主席(69)との間で主導権争いが行われている・・・といった情勢で、次期政権を担う習近平氏の影が薄いように見えます。

事件の幕引きを急ぐ中国指導部の思惑
いずれにしても、永田町の政局すらよくわからないのですから、情報が限られている中国共産党内部の勢力争い、しかも非公式会議である北戴河会議の動向・・・というのは、およそ外部には窺い知れぬものです。

ただ、今の中国指導部が極めて“敏感”な時期にあることは間違いありません。
中国共産党の権力闘争に関しては、失脚した薄煕来氏の妻の殺人罪公判にもその影響が反映していると指摘されています。

****薄煕来氏の妻、初公判 権力闘争 見え隠れ 「単純な事件」構図の裏側は****
中国の重慶市党委書記を解任された薄煕来氏の妻で、英国人ニール・ヘイウッド氏を殺害したとされる谷開来被告の9日の初公判の詳細が明らかになった。

11日付の「京華時報」など中国各紙が一斉に伝えた。法廷で審議された事件は、経済問題を発端とする殺人事件という単純な構図で、共産党内の権力闘争とのからみや薄氏本人の関与は切り離された格好だ。薄氏本人を守ろうとする共産党内の勢力が主導して作られたストーリーの可能性がうかがえる。
                   ◇
 ◆脅迫され神経衰弱に
中国各紙によると、谷被告は数年前、大連の不動産業者が主導する土地開発計画に参画するようヘイウッド氏に持ちかけたが、計画が頓挫して関係が悪化。報酬を求める同氏が、英国留学中の谷被告の長男の身の安全について脅迫するようになったという。

息子が危険にさらされていることを知った谷被告は神経衰弱に陥り、ヘイウッド氏の殺害を決意。薄家の使用人を通じてヘイウッド氏を重慶市のホテルに呼び出し、酒に酔って水を求めた同氏の口に、毒薬を入れて殺害したとされる。重慶市の公安局長だった王立軍・元副市長はその後、谷被告をかばうために殺人事件の隠匿を指示した。

しかし、共産党内の実力者一家である薄家と組んでビジネスを展開するヘイウッド氏が、1つの事業をめぐって本格的に対立するとは考えにくいほか、谷被告が長男を守る方法は殺害以外にもありえたことなど、明かされた事件の構図には疑問点も残る。

こうした点をふまえ、共産党筋は「事件の背景には薄氏と胡錦濤国家主席派との権力闘争がある」と説明した上で、「昨年秋、胡主席の主導で党の規律部門が一家の経済問題を調べていることを知った薄氏が、妻と共謀して蓄財のための海外送金を請け負っていたヘイウッド氏の口を封じるために殺害したのが真相だ」と明かす。

薄氏失脚後、胡派はその経済問題を追及する姿勢をみせたが、薄氏と同じく元高級幹部子弟で構成する太子党出身の習近平国家副主席らは「穏便な処理」を主張し、対立したといわれる。

双方が水面下で攻防を重ね、谷被告主導の殺人事件という構図に落ち着いた可能性もありそうだ。
共産党筋は「薄氏は別の問題で起訴される可能性はあるが、殺人事件とは無関係だと認定されたことで一つの山を越えたといえる」と分析している。【8月12日 産経】
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事実関係はよくわかりませんが、“指導部が10年ぶりに世代交代する秋の党大会を控え、河北省の保養地、北戴河では指導部人事を話し合う非公式の「北戴河会議」が開かれ、党内駆け引きが激化していると伝えられる。薄氏には現在でも保守派の一部から支持する声が出ており、薄氏や谷被告の処遇は指導部にとっても難題。安定を最優先する指導部の政治判断が判決に影響を及ぼすのは避けられない情勢だ。”【8月9日 毎日】ということで、“幕引きを急ぐ中国指導部の思惑を色濃く反映した公判”【同上】という見方は各紙共通しているようです。

【「(温家宝首相は)資本主義国家の多党制を目指す政治改革を推進しようと企てている」】
もうひとつ、共産党指導部絡みの話題として最近報じられたのは、市場重視の改革を主張している温家宝首相に対する罷免要求が左派からだされたというものです。

****温首相の罷免要求、左派知識人らがネットに公開****
中国共産党や政府の元幹部や学者ら1644人が7月、温家宝首相は「社会主義経済の基礎を転覆させる」などとして、党中央委員会に連名で首相罷免を求める文書をネット上に公開していたことが7日、分かった。

中国で首相の罷免が公開の場で要求されるのは異例で、署名者の一人は「文書はすでに党中央委などへ送付した」と語った。署名者の多くは市場経済化を進める現路線に批判的な左派に属するとみられ、今秋の党大会を控え、新指導部体制に関する議論に、圧力をかける狙いだったとみられる。

文書は、温首相が民間、外資企業の発展を後押ししてきた結果、極端な貧富の格差などを招いたと指摘している。
署名者には、元国家統計局長や北京大教授らの名がある。【8月8日 読売】
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上記罷免要求文書は、“温氏が国有企業の職員の声も聞かず、独断専行で国有企業を解体し、私有経済を発展させた結果、極端な貧富の差を生んだと主張。さらに「(温氏は)資本主義国家の多党制を目指す政治改革を推進しようと企てている」と非難した。また4月、マルクス主義や毛沢東主義を宣伝する保守系のサイトが温氏の指示で閉鎖されたと指摘し「人民の言論の自由を侵犯した重大な政治的事件だ」と批判した”【8月7日 MSN産経】とのことです。

権力闘争という点では、明確な派閥に属さない温家宝首相は蚊帳の外の存在ですが、今後の“改革”の動向に影響を与えようとする路線対立的なもののようです。

何度も言うように、外部からは窺い知れぬものではありますが、今後の習近平政権における胡錦濤、江沢民、習近平各氏の力関係、改革派と左派・保守派との路線対立について、北戴河会議を受けての動向や、秋の党大会に向けて、より明確になってくるものと思われます。

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