孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  GDPは改善するも、信用できない経済指標 不動産バブルの行方は?

2014-07-16 22:58:12 | 中国

(内モンゴル自治区オルドス市 住宅バブルを支えていた石炭価格が暴落したことで建設も止まり、街はゴーストタウン化しています。 “flickr”より By Charlie Xia https://www.flickr.com/photos/charliexia/5859800926/in/photolist-9VP1Es-9VP2nu-6NXzdD-8y3D2F-bmriCU-7mLeqF-9SDeuS-7mQ7dG-bzm3eB-bmrafQ-9VDfnR-eBYCn6-eC2Qbj-7B6Sts-bmr8z7-bzm39k-bmrheJ-bmrcYh-bmrhSy-bmrakS-bmrcmj-bmrj6y-bzm4az-bmri8E-bmrbSG-bzmbtF-bmrcE5-bmrdFL-bzm3Ug-bmrhJd-bzmbaK-bzm9zn-bzm4YH-bmr8Gh-bzma72-bmr86j-bmrdYG-bmr7HY-bzm598-bzmaJc-bmrhEG-bzm4ek-bzm2Rv-bzm3Ha-bzm1PM-bmrjrG-bmrcAs-bzm3tH-bmra5S-bmr83y)

【「李克強指数」】
今や世界経済を牽引する立場にある中国経済の動向ですが、今年4〜6月期は久しぶりに持ち直したという数字が公表されています。

****中国:GDP7.5%増 3期ぶり改善−−4〜6月****
中国国家統計局が16日発表した今年4〜6月期の国内総生産(GDP)は、物価変動の影響を除いた実質で前年同期比7・5%増となり、伸び率は前期(今年1〜3月期、7・4%増)を上回った。

成長率が前期から改善するのは3四半期ぶり。

政府による景気下支え策の効果で社会インフラ投資が持ち直したことに加え、外需が好調だったことなどが要因。市場予想の7・4%を上回り、中国政府が掲げる今年の成長率目標と同水準となった。(後略)【7月16日 毎日】
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単純な素人考えですが、4〜6月期の数字が7月中旬に発表されるというのは、「国内総生産(GDP)の集計というのは、そんなに簡単にできるものなのか?」とも思われます。

また、“3期ぶり改善”云々以前に、最近の数字を眺めると、
2013年1~3月 7.7% 同4~6月 7.5% 同7~9月7.8% 同10~12月 7.7%
2014年1~3月 7.4% 同4~6月 7.5%
と、若干の増減はあるものの、7%台後半で驚くほど安定した数字が並んでいます。

経済はいろんな要因で大きく変動するものですが、どうしたらこんなに安定した数字が達成できるのか?

もし、中国が社会主義的計画経済であれば共産党政権による神業的なコントロールと言えますが、今や中国経済は弱肉強食的な資本の論理が優先する市場経済です。公共の福祉の観点から種々の制約・規制がある日本の方がよほど社会主義的かも・・・。

そんな市場経済でコンスタントな成長が維持できるとしたら驚異的です。

中国の経済指標が信用できない・・・ということは以前から指摘されているところです。
地方の数字を合計すると、中央政府発表の数字を大きく上回ってしまうとも言われています。

****信頼できない中国のGDP統計、改善策探る時****
・・・・実質GDP成長率にも同様のゆがみが見られる。既に13年の成長率を発表した28省のうち、実に26省が国の成長率7.7%を上回った。

目新しい問題ではない。04年と10年には、あらゆる省が国の成長率をしのいだ。
心配なのは、統計の精度が改善するどころか、ますます劣化しているように見受けられることだ。

省合計と中央発表の名目GDPは02年にほぼ一致したのを最後に、格差が徐々に拡大している。

不一致の一部は統計の設計に由来し、一部は偶発的なものだ。
統計の技術とサンプルは地方の統計局ごとに異なる。省間の取引により二重計算のリスクが生じるし、国、地方いずれのレベルでもサービスや消費は計測が難しく、とりわけ当てにならない。

しかしより大きな要因は、地方が褒美を得ようと画策を繰り広げることかもしれない。地方政府は互いに恩恵や資源を求めて競い合う。役人同士は昇進を求めて競い合う。(後略)【1月22日 ロイター】
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良く指摘されるのは、上記記事で“より大きな要因”と指摘されている問題です。
地方幹部の評価が、その地方の治安の安定と経済成長で決定されるため、どうしても大きな数字、中央政府の目標値を上回る数字が報告されることになるという点です。

李克強首相がかつて「自分はGDPの伸び率など全く信用しておらず、電力消費量、鉄道輸送量、中長期貸出残高の3つで景気の判断を行っている」と語ったことは有名な話です。
(この話は、ある意味では、李克強氏など党中枢が非常に冷静に現状を分析・把握している・・・とも言えます)

公表されるGDPは、単に党の目標数字に合わせて意図的に作り出された数字にすぎない・・・ということになると、このGDPをもとに増えたの、減ったのと議論しても仕方がありません。

そこで中国経済の動向を把握する指標として登場するのが、他ならぬ李克強首相が提示した手法を用いた「李克強指数」なるものです。

やや皮肉な命名ですが、日本の内閣府もこの「李克強指数」を作成しています。

その日本内閣府「李克強指数」では、昨年10月に10%を超えるピークを記録、11月以降は中国経済は減速し、14年3月で対前年比5.1%の伸び率だったと発表されています。

中国のように労働市場への新規参入者が多い国で、地方にはまだ絶対的貧困を抱えている国としては、5%あまりというのは、社会不安を増長しかねない問題のある数字かも。

しかも、経済利益が一部の者に囲い込まれ、多くの人々との格差が問題となるという状況では、全体的底上げを図るには足りない数字かも。

【「不動産の影響は限定的」?】
そんな統計数字の信憑性の話がある一方で、「中国経済は崩壊する」とオオカミ少年的にここ数年言われ続けている点に関しては、少なくとも現在はまだ「崩壊」には至っていないようです。

中国経済崩壊論が、中国を嫌う人々の願望を込めて語られていることや、中国共産党指導部も問題をただ座視するほど愚かでもなく、それなりに(李克強首相のように)対応していることなどによるものでしょう。

もっとも、党指導部の対応も根本的解決ではなく、単に先延ばししているに過ぎない、やがては・・・という話もあります。

中国経済は、崩壊が懸念される不動産バブル、国有企業の過剰生産、膨大なシャドーバンキングの存在という大きな問題を抱えていることが常々指摘されます。当然ながら、どれかひとつでも破綻すれば、他の問題も連動して破綻します。
中国経済が破綻すれば、日本経済も大きく動揺します。

中国地方政府は、農地を安く強制収容し、シャドーバンキングなどからの資金も使って道路などインフラを整備し、周辺土地を高く売って莫大な利益を得るという「錬金術」に励んでいると言われます。

しかし不動産市況が悪化して売れない・・・ということになると、地方政府財政が破たんし、シャドーバンキングなどの金融問題が一気に表面化します。

多くの者が不動産バブルの危険を指摘し、実際にも「鬼城(ゴーストタウン)」と呼ばれる入居者不在のマンション林立するという現象があちこちで見られるにもかかわらず、公式統計ではそうした動向はあらわされていませんでした。

ただ、さすがにここにきて統計局の数字にも変化があるようです。

****中国住宅価格が下落、「バブル終焉」の見方****
中国国家統計局が18日発表した主要70都市の5月新築住宅価格指数(公共性の高い低価格住宅除く)で、半数の35都市が前月に比べて低下した。横ばいは20都市、上昇は15都市だった。

4月は下落8都市、横ばいが16都市、上昇44都市だった。不動産市況悪化が広がっていることが裏付けられた。(中略)
昨年通年は26.6%増と好調だった住宅販売総額は1~5月で10.2%の減少に転じており、「中国不動産バブルの終焉(しゅうえん)」(業界関係者)との見方が広がっている。

不動産市況悪化が続けば、金融市場などに問題が波及する恐れもある。【6月18日 産経】
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今回の4〜6月期の国内総生産(GDP)発表にあたって、国家統計局報道官は「不動産の影響は限定的」との見解を示してします。

****不動産の影響は限定的****
中国の国家統計局の盛来運報道官は会見で、4月以降に相次いで打ち出した景気の下支え策について触れ、「特に6月に入って政策効果が現れた。工業生産は去年の同じ月より増加率が上昇し、発電量や貨物輸送量にも前向きな変化があった」と述べ、政策運営に自信を示しました。

また、このところ多くの都市で住宅価格が下落し、不動産向けの投資の伸びが鈍っていることについては、「短期的にはある程度経済の下押し圧力となるが、長期的には健全な不動産市場とするために有意義であり、経済の持続的な発展にとっても有意義だと信じている」と述べ、今後の中国経済に与える影響は限定的なものにとどまるという見方を示しました。【7月16日 NHK】
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優秀な党中枢はソフトランディングに自信がるようです。

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