孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  分断による議会審議麻痺 政府機関閉鎖や軍幹部承認人事の遅れ 進む民主主義の劣化

2023-09-29 23:24:27 | アメリカ

(記者団に囲まれるケビン・マッカーシー米下院議長。2023年9月22日。【9月27日 BUSINESS INSIDER】)

【分断で議会麻痺 高まる政府機関が閉庁する可能性】
多くの問題を抱える自国・日本のことをさて置いてこういうことを言うのは不見識でしょうが、アメリカ社会は相当に病んでいるようです。

薬物乱用、銃乱射事件、略奪・暴動・・・そうした問題の根底にある格差・差別の問題・・・。

****アメリカで相次ぐ“集団略奪” 被害額は14兆円にも フィラデルフィアで100人の若者がアップルストアなどに押し入る****
アメリカ東部フィラデルフィアで100人もの若者がアップルストアなどの小売店に押し入り、商品を略奪しました。アメリカでは、こうした略奪行為が大都市に広がっています。

店から次々と飛び出してくる若者と、止めようとする警察官。
ペンシルベニア州、フィラデルフィアで26日夜、およそ100人の若者が中心部のショッピングセンターなど数十の店舗に押し入り、次々と商品を略奪しました。

多くの酒店も襲撃されました。瓶を抱えて出てくる若者を止める人の姿は、もはやありません。地元警察は、これまでに52人を逮捕したと発表。

襲撃の直前には、警察官が黒人男性を射殺したことに抗議するデモが行われていましたが・・・
地元警察 担当者「抗議デモとは何の関係もない、犯罪者集団がデモに便乗しただけだ」
ソーシャルメディアの呼びかけに応じた組織的な犯行だとみて捜査しています。

フィラデルフィアの住民「あまりにも頻繁に起きていて、本当にひどい」
こうした略奪行為は全米の大都市に広がっていて、盗難や万引きなどによる小売店の被害額は、去年、14兆円に上りました。

背景には急激なインフレによる生活苦や、コロナ禍を経てインターネットでの転売が容易になったことなどもあるとみられます。

全米で大型スーパーを展開する「ターゲット」は、「組織的な犯罪により、スタッフと客の安全が脅かされている」などとして、4つの州の9店舗を閉鎖すると発表、人々の生活にも深刻な影響が出ています。【9月28日 TBS NEWS DIG】
**********************

社会だけでなく政治も病んでいるというか、少なくとも機能麻痺状態に陥っています。
トランプ前大統領を支持する共和党保守強硬派の大幅な歳出削減やウクライナ支援の切り離しを求める抵抗で与野党の妥協・合意が得られず、予算が決まららず、政府機関が閉庁する可能性が高まっています。

本予算案のみならず、政府機関の一部閉鎖を回避するための「つなぎ予算」についても、上院共和党指導部の賛同にもかかわらず、保守強硬派の強い下院共和党の合意が得られません。

予算成立のタイムリミットは9月30日深夜で、間に合わなければ10月1日から一部の政府機関が閉鎖される見通しです。

****米政府閉鎖迫る、議会足並みそろわず 上下院が異なる予算案推進****
米議会で民主党が主導する上院は28日、過去10年間で4回目となる政府機関の一部閉鎖を回避するため、超党派のつなぎ予算案を前進させた。一方、野党共和党が多数派の下院は、党派的な歳出法案の採決を実施する構えだ。

上下両院の足並みがそろわず、新会計年度が始まる10月1日に政府資金が不足して数十万人の連邦政府職員が一時帰休となり、経済指標発表や食糧給付などあらゆるサービスが停止する可能性が高まった。

上院は連邦政府支出を11月17日まで延長するつなぎ予算案の審議開始を76対22で可決した。国内の災害対応とウクライナ支援向けにそれぞれ約60億ドルを充てる内容。

共和党はすでに上院案を拒否している。

下院は夜に4本の党派的歳出法案を採決する計画だが、民主党の強い反対を押し切って成立させたとしても、それだけでは政府機関の閉鎖を回避することはできない。

マッカーシー下院議長は28日、上院民主党がつなぎ予算案で国境問題に対処することに同意すれば、閉鎖は回避できるとの考えを示した。

一方、上院民主党トップのシューマー院内総務は「議会が閉鎖を回避するには超党派という選択肢しかない」と述べた。【9月29日 ロイター】
*********************

****アメリカ政府機関、一部閉鎖の恐れ 予算めぐる議会の審議が難航****
米議会で新会計年度(2023年10月〜24年9月)予算の審議が難航し、米政府機関が閉鎖される恐れが強まっている。11月中旬までの政府予算を賄う「つなぎ予算」の成立すら危うくなっているためだ。

野党・共和党のマッカーシー下院議長は27日、上院が超党派で合意したつなぎ予算の採決を行わない意向を示した。(中略) 

新年度予算を巡っては今年5月、バイデン大統領とマッカーシー下院議長が、国防費を除いた歳出規模を前年度並みに抑制することで合意。財政拡張を志向する民主党と、緊縮財政を求める共和党の双方が歩み寄り、歳出抑制方針を盛り込んだ法案を超党派で可決した。

だが共和党の一部の保守強硬派は、新年度予算でこの合意内容を上回る大幅な歳出削減を要求した。トップ合意に反する主張だが、党内基盤の弱いマッカーシー氏は保守強硬派の声に配慮せざるを得ず、新年度予算の協議は行き詰まった。(

上院は26日、11月17日までの支出を賄うつなぎ予算を超党派で合意した。ただ、この予算には保守強硬派が反対する60億ドル(約8900億円)規模のウクライナ追加支援が含まれている。マッカーシー氏は27日、記者団に「下院で支持は見られない」と述べ、採決しない考えを示した。

保守強硬派は大幅な歳出削減やウクライナ支援の切り離しなどを求めているが、これらを反映した予算を共和党が下院で通過させても民主党が多数派を握る上院で反対される。マッカーシー氏が保守強硬派に翻弄される形で、つなぎ予算成立の道筋が見えない状態に陥っている。

政府機関が一部閉鎖されれば、トランプ前政権時代の18年12月〜19年1月以来の事態で、国立公園の閉鎖などで観光業への悪影響が懸念される。米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げに注目が集まる中で、金融政策に影響を与える消費者物価指数や雇用統計などの経済指標の発表が止まり、市場が混乱する不安も浮上している。

一方、格付け大手のムーディーズ・インベスターズ・サービスは「米国債の信用にとってネガティブ」と警告。政府閉鎖になっても米政府は債務の元利支払いを続けられるが、財政の混乱で世界最高位の米国債の信認に傷をつける恐れがある。【9月28日 毎日】
**********************

共和党のマッカーシー下院議長が民主党側に妥協すれば、共和党強硬派はマッカーシー氏の議長解任に動くとも

大統領選挙のさなかにあるので、与野党ともに一歩も譲れない・・・・という状況ですが、アメリカの政府機関閉鎖騒動はある意味“毎度のこと”で、議会・政府にも危機感が薄れているのかも。

過去の政府機関閉鎖については・・・
************************
米有力シンクタンク「ブルッキングス研究所」によると、過去に「政府閉鎖」が複数日にわたったケースは4例ある。

クリントン政権(民主)時代の1995〜96年には、歳出水準を巡り政権・与党と共和党の対立が強まり、2度にわたり計26日間の閉鎖に追い込まれた。

オバマ政権(民主)下の2013年には、医療保険制度改革法(オバマケア)の予算を巡る党派対立から政府閉鎖が16日間続いた。

また18年末から19年1月には、トランプ政権(共和党)によるメキシコ国境での「壁」建設予算などを巡り、政府閉鎖が35日間続いた。ただしこの際は、歳出の主要部分は先行して承認されたため、閉鎖は部分的なものにとどまった。【9月23日 産経】
*******************

【軍幹部の承認人事も麻痺状態】
議会の機能麻痺は予算案審議だけでなく、安全保障に直結する軍幹部の承認人事にも及んでいます。

背景にあるのは人工中絶問題。 国防総省は、中絶が認められない州から認められた州に行く必要がある軍人に休暇と旅費を支給することとしていますが、中絶反対派議員1名が「国防総省が軍人の中絶を保証している」として人事案全体をストップさせています。

****たった1人の中絶反対議員のために…米軍幹部300人超の昇進人事がストップ 「中国を利するだけ」同盟国日本への影響も****
国の安全保障を賭けた政治的チキンゲーム
秋の爽やかな風を受け、芝生が緑輝く9月中旬。連邦議会の敷地内の広場には、300人を超える現役の軍人の写真や名前が掲げられ、まるで墓地のような光景だった。全員が昇進の承認を理不尽に止められている軍人たちだった。

中には、米軍制服組トップの統合参謀本部議長に加え、陸軍参謀総長、海兵隊総司令官に指名され、各軍のトップ就任するはずの指揮官も含まれていた。

このうち米軍海兵隊トップとなる司令官の不在は、当時の司令官が死去した1859年以来164年ぶりで、歴史上、異例の事態が続いていた。

“墓地”の前でFNNの取材に応じたポール・イートン元米陸軍少将は、「承認人事が見送られていることは、国家安全保障上の危機だ。その影響は5,6年先まで及ぼすだろう」と訴えた。さらに弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮や中国、ロシアの動向も踏まえ「影響は、同盟国の日本へも及んでいく」と危機感をあらわにした。(中略)

軍幹部の承認人事を止める、たった一人の上院議員
米軍幹部の人事は、大統領の指名と上院の承認が必要となる。上院では、伝統的に投票は経ずに全会一致で承認しているが、一人でも反対者がいれば投票となる。

この権力を利用したのがアラバマ州選出の上院議員トミー・タバビル氏(共和党)だ。タバビル氏は、連邦最高裁が中絶の合憲性を認めない判決を出したにも関わらず、国防総省が軍人の中絶を保証しているとして、承認人事を次々と保留している。

国防総省は、中絶が認められない州から認められた州に行く必要がある軍人に休暇と旅費を支給しているが、タバビル氏は、その政策を廃止しない限り譲らないとしているのだ。

これについてタバビル氏は、FNNの取材に対し、「人事の保留は米軍の即応能力に影響はしない。国防総省やバイデン大統領が、中絶を促進するために違法に税金を費やしている。それが続く限り、保留を続ける」と述べ、従来の主張を曲げない考えを示した。

「中国への贈り物」年末までに全体の8割に影響が及ぶ恐れ
国防総省によると、今月21日の時点で、同様の理由で316人(空軍、陸軍、海軍、海兵隊、宇宙軍)の人事の承認が滞っているほか、年末までに軍幹部850人超のうち4分の3にあたる650人が、タバビル氏の人事保留の影響を受けると見積もる。

一方、昇格人事の保留の影響は、軍人本人だけではなく、その家族にも多くのストレスを与えているという。21日、“墓地“を訪れた女性はFNNの取材に対し「知人の家族は、いつ引っ越すかわからず、子どもを学校に入学させることができない。煉獄の中にいるようだ」と語った。実際に何千人もの軍人の家族が、いつ引っ越さなければならないのか、当分の間どこに住めばいいのかわからず、宙ぶらりんの状態に置かれるという。

こうした状況を受けて、上院民主党トップのチャック・シューマー院内総務は、20日から21日にかけて上院の投票による採決に踏み切り、米軍制服組トップの統合参謀本部議長と陸軍参謀総長、海兵隊総司令官の指名を承認した。

上院は、長時間の審議を避けるため、軍人の人事をひとまとめにして承認しているが、タバビル氏の影響で、現時点ではそれは不可能だ。チャック・シューマー氏によると、理論的には候補者を個別に承認することができるが、そうすれば上院の議場で700時間近くを費やすことになると話している。

現地メディアからも保留者全てを承認するには、数カ月、または来年の大統領選挙まで長引く可能性があるとの見方も出ている。これについて国家安全保障の専門家からは、「タバビル氏が、国家安全保障を危険にさらしていることに同意していることと同様だ。これは中国に毎日与え続ける贈り物だ」との声も聞こえてくる。民主義陣営の守護神となる米軍が社会の分断によって翻弄されている。【9月27日 FNNプライムオンライン】
*******************

中国などの権威主義国家、強権支配国家ではあり得ないことで、民主主義の“非効率性”を示しているようにも見えます。こうした状況を民主主義の危機と考えるか、民主主義にとって必要なコストと考えるかは立場によって違いも。

【すでに本選挙に照準を合わせるトランプ前大統領】
共和党保守強硬派の“教祖”的な存在になっているトランプ前大統領は、もはや予備選挙は眼中になく、本選挙に照準を合わせた動き。

****トランプ氏、すでに「対バイデン」に照準 色あせる共和党候補指名レース****
来年の米大統領選に向けた共和党候補の指名獲得レースは、「大本命」のトランプ前大統領が2度連続で討論会を欠席し、主役不在で色あせたものとなった。

トランプ氏は第2回候補者討論会が行われた27日、本選の激戦地と目される中西部ミシガン州で演説し、民主党のバイデン大統領との対決に照準を合わせた活動を展開した。

「逃げずに出てこい」。 27日、反トランプを鮮明にするクリスティー前ニュージャージー州知事が討論会出席を避けるトランプ氏を挑発すると、会場からは歓声やブーイングが混じった反応が上がった。

しかし他の候補たちは、ためらいがちな批判に終始した。インド系投資家のラマスワミー氏が、トランプ氏のスローガン「米国を再び偉大に」を継承・発展させると訴えたのに対し、ヘイリー元国連大使は「あなたは信用できない」と言い放ったが、4度の刑事訴追を受けているトランプ氏に対して厳しい態度を示すことはなかった。

討論会を観覧した共和党員らからは「(各候補が)トランプ氏とどう違うかもっと聞きたいのに」との声も上がる。

米政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」による各種世論調査の集計では、共和党支持層のトランプ氏への支持率(27日現在)は56・6%で、2位につける南部フロリダ州のデサンティス知事(14・4%)の約4倍。討論会の参加者全員を合算してもトランプ氏に届かない計算だ。多くの候補は党支持層の反発を恐れ、トランプ氏「一強」に挑む道筋を見つけられずにいる。

その中でトランプ氏は27日、自動車産業の中心地であるミシガン州デトロイトの工場を訪れ、労働者層との近さをアピールした。バイデン氏が前日に同州で、自動車労組のスト現場を応援訪問したのに対抗した。

バイデン氏のスト訪問は、現職大統領としては極めて異例の行動だった。本選の行方を左右する東・中西部の「ラストベルト(さびた工業地帯)」の争奪戦が、すでに本格化していることを印象付けた。(後略)【9月28日 産経】
*******************

自動車産業の中心地であるミシガン州を訪れたトランプ前大統領はバイデン大統領のEV奨励策が雇用奪うと批判。

****トランプ氏、政権のEV奨励が雇用奪うと批判****
トランプ前米大統領は27日、電気自動車(EV)へのシフトによって自動車労働者は時代にそぐわなくなるため、大手自動車メーカーとの交渉で労働組合が有利な条件を勝ち取るかどうかは重要ではないと述べた。

この日行われた共和党の2024年大統領選候補者による2回目の討論会を欠席し、ミシガン州デトロイト近郊にある非組合系の部品工場で労働者を前に演説。「2年後には誰もが失業しているのだから、(交渉で)何を得ようが同じことだ」などと主張した。

トランプ氏はバイデン大統領のEV奨励策が業界全体で雇用喪失を招くと批判してきた。

バイデン氏は26日、ミシガン州で行われているストライキのピケ現場を視察し、40%の賃上げを求める全米自動車労働組合(UAW)側の要求に対する支持を表明していた。

トランプ氏は20年大統領選で、約15万4000票差でミシガン州を落とした。同州はペンシルベニア、ウィスコンシン両州とともに、トランプ氏が16年選挙で勝利したが20年には敗れたラストベルト(さびた工業地帯)と呼ばれる3州の一つで、来年の大統領選でもこの3州が民主、共和両党にとって重要な州になるとみられる。【9月28日 ロイター】
*********************

産業の裾野が狭いEVが雇用減少をもたらす・・・というのは事実でしょうが、だからと言って「EV反対」で事がすむのか? それで、10年後、20年後のアメリカ自動車産業は、アメリカ経済はどうなるのか?

そうした問題の本質、長期的視野を無視して目先の利害で有権者の歓心をひこうとするのがポピュリズムであり、民主主義のガンとも言えるものです。

ましてや、選挙結果を認めず、不正な手段で覆そうとしたり、議会襲撃を煽ったり・・・というのは論外です。

****米大統領「沈黙で民主主義死ぬ」 トランプ氏批判、超党派協力訴え****
2024年米大統領選で再選を目指す民主党のバイデン大統領は28日、激戦州西部アリゾナでの集会で演説し「人々が沈黙すれば民主主義は死ぬ」と訴えた。共和党の候補指名争いで独走するトランプ前大統領が法の支配を軽視する言動を続けていると批判し、穏健な共和党支持者に超党派協力の重要性を訴えた。

演説で、アリゾナ州選出の上院議員を務め、08年大統領選の共和党候補だった穏健派の故ジョン・マケイン氏に繰り返し言及。自身の正義を貫き、米国のためにトランプ氏との対立もいとわなかったマケイン氏を「勇気と先見の明」があったとたたえた。

バイデン氏は、トランプ氏が起訴された21年の議会襲撃事件の余波で、選挙結果を否定する声が勢いを保っている現状に「米国で危険なことが起きている」と危機感をあらわにした。トランプ氏や同氏に共鳴する共和党議員が予算審議を難航させて「政府を閉鎖し、議会を焼き払おうとしている」と批判した。

「民主主義は私たち全員を必要とする。あなたが大事だ」と語り、国民に連帯を促した。【9月29日 共同】
***********************

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« アメリカ  急増する移民対... | トップ | 中国  習近平主席らによる... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

アメリカ」カテゴリの最新記事