孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー軍事政権  民兵武装で民主派弾圧を強化 その国軍司令官から麻生副総裁へ「血まみれの勲章」

2023-03-03 23:28:11 | ミャンマー

(2月20日、記念撮影するミンアウンフライン国軍総司令官(中央)と麻生氏とともに勲章を授与された渡辺秀央氏(左から2番目)ら=ミャンマー国軍報道官室提供【2月22日 日経】)

【国軍、「国家に忠誠を誓う」人々に銃器と弾薬の所持を認める 民兵武装化で暴力拡大の懸念】
ミャンマーでは軍事政権・国軍と民主派及び少数民族武装勢力の戦いが続いており、国軍は2月1日、非常事態宣言の期間の半年間延長を発表。2日には国内37郡区に戒厳令を発令し、抵抗する人々への弾圧を強化する構えを見せています。

更に国軍は「国家に忠誠を誓う」民間人の銃所持を認め、武装民兵を動員することで対応を強化するようです。

銃所持が認められるのは“国家への忠誠心があり、善良な人格者であることなどが条件”とされていますが、要するに国軍の命令に従い、その手足となって民主派狩りに参戦する支持者のことで、反軍デモに参加する可能性もある一般市民が許可を申請しても認められないと推測されます。

****「国家への忠誠」あれば民間人に銃の所持認める布告 ミャンマー国軍、民主派と戦う民兵に武装させる狙いか****
クーデターで実権を握ったミャンマー国軍が、「国家に忠誠を誓う」人々に銃器と弾薬の所持を認める原則を1月31日に布告したことが分かった。民主派の抵抗勢力と戦う親国軍の民兵組織などを合法的に武装させる狙いがあるとみられる。

国軍傘下の内務省が作成したとされる文書によると、ネウィン政権時代の1977年に制定された武器の所持に関する原則に修正を加え、復活させた。昨年12月に開かれた「閣議」で承認されたという。

38口径以下の拳銃やレボルバーなど5種類は免許で所持が可能。民兵組織などは許可を得れば、自動小銃や短機関銃も所持できるようになる。サイレンサーや望遠鏡機能を持つ照準器の使用は認められていない。

許可証の申請者は18歳以上で、国家への忠誠心があり、善良な人格者であることなどが条件。また、当局から地域の治安維持や犯罪の抑止などへの参加を要請された場合、従わなければならないという。

最大都市ヤンゴンの関係者は「(親国軍の民兵組織)ピューソーティーや武器を持ちたい退役軍人らを合法的に武装させる狙いだ」と指摘。「一般市民が許可証を申請しても『不適』と判断されるだろう。国軍への抗議デモでは、スリングショット(ゴム銃)ですら没収されている」と語った。【2月14日 東京】
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軍事クーデター以降、民主派市民が親軍派の行政幹部らを襲撃する事件が相次ぎ、国軍側も民兵組織を結成していますが、その「武装」強化を図るもののようです。

ミャンマー国軍の非人道的・無慈悲な暴力はかねてより批判されているところですが、規律も何もない武装民兵となるとそうした一方的暴力が更に拡大しそうです。

【国外に逃れた人々の悲惨な結末 一方で海外で遊ぶ司令官家族】
国軍の弾圧・暴力から逃れる人々はタイなどに逃げていますが、国外に逃げても苦難は終わりません。その一方で国軍司令官の家族は・・・

****シンガポールで遊ぶミャンマー国軍トップの家族写真が拡散… 国民は「なぜこんなことが許されるのか」と激怒****
国軍の弾圧を逃れ、タイに密入国。その後、自殺したものと思われるミャンマー人の遺書が、ミャンマー内で拡散されている。そこには「ご飯をください」「水をください」という悲痛な叫びが書き連ねられていた。

昨年、ミャンマーとタイの国境にあるタイ側のメーソートを訪ねた。街の人の話では、国境の山を歩いて越え、タイに密入国するミャンマー人は1日100人をくだらないという。国軍に追われた人たちだ。タイ側に逃げれば身は安全だが、密入国の身では働くことはできない。自殺したのはそんなミャンマー人なのか。

2年前のクーデターでミャンマーの人たちの生活は一変した。仕事がなくなり、将来への夢も消えた。貯えもなくなりつつある人が多い。しかし生きなくてはならない。国軍に対抗する民主派の軍隊、国民防衛軍(PDF)で銃をもつか、国外脱出の道を選ぶか。

それを見すかすかのように、1月1日、国軍はパスポートの発給を停止した。システムの更新が対外的な理由だが、
「軍事政権になると多くの若者が国外へ逃げようとする。それは国軍も織り込みずみ。パスポート発給のための賄賂で国軍幹部が儲けようとしている前兆」 そう考える市民は多い。(中略)

流出した「国軍トップ」家族の写真
そんなミャンマーで国軍トップのミンアウンラインの家族の写真がSNSで拡散された。妻や息子や娘、家族たちの楽しそうな姿。場所はユニバーサル・スタジオ・シンガポールだった。ミャンマーからチャーター機で向かったという。

ミンアウンラインだけでなく、息子や娘も経済制裁を受けている。シンガポールは経済面の制裁には加わっているが、彼らの入国まで制限していない可能性は高い。

しかしシンガポールで撮られた写真は、パスポートすら手にするのが難しい国民感情を逆なでする。国軍の武器調達にかかわるミャンマー人がタイで逮捕されたが、その取り調べから、ミンアウンラインの隠し財産も発覚してきているという。

「経済制裁を受けた国軍関係者は何種類ものパスポートをもっています。私たちはなかなかパスポートがつくれないのに、彼らは簡単につくることができる」 船員になって国外に出ようと考えているRさん(24)はいう。

2月24日にパスポートをつくるためのQRコードの申請は再開された。しかし申し込みが殺到しているのか、なかなかつながらないという。

ミンアウンラインのシンガポールでの写真が掲載されたSNSには、こんな文章が添えられたいた。
「どうしてこんなことが許されるのだろう? この一家はミャンマー人のすべての苦しみに責任があります。 何百万もの人々がホームレスになっているのは、この一族の権力と富に対する欲のせいだ。 どうして彼らが贅沢を楽しむことが許されるのだろうか?」【3月3日 下川裕治氏 デイリー新潮】
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【麻生自民党副総裁に「血まみれの勲章」 中露要人、テロリスト仏教僧と同列】
アメリカ・EUはミャンマー国軍支配の軍事政権への制裁を課していますが、EUは2月20日、ブリュッセルで開かれた外相理事会でイランへの追加制裁に加えて、国軍によるクーデターから2年が経過したミャンマーに対する追加制裁も決めています。

EUの発表によると、人権侵害が続くミャンマーへの追加制裁では、閣僚を含む9個人と7団体が対象に加わったとのことです。

一方、周知のように日本は上記のような欧米の制裁とは一線を画し、既存のODA事業を継続するなど軍事政権との関係も一定に維持する独自の対応をとっています。

そうした日本の対応は軍事政権に“高く評価”されているようで、自民党の麻生太郎副総裁と日本ミャンマー協会会長の渡辺秀央・元郵政相に名誉称号と勲章が授与されました。

****麻生太郎氏、クーデター首謀者から勲章 ミャンマー国軍の後ろ盾のロシア、中国要人と同列に****
クーデターを主導したミャンマー国軍のミンアウンフライン総司令官から、麻生太郎元首相と日本ミャンマー協会長の渡辺秀央元郵政相が名誉称号と勲章を贈られた。

有権者に選ばれた政権を武力で転覆させ、抗議する市民を多数殺害している人物からの表彰を受け入れるとは、常識的感覚からして信じ難い。苦境にあるミャンマー市民に理解される振る舞いだろうか。

◆国軍擁護の発言重ねる渡辺秀央元郵政相にも勲章
ミャンマーの国営紙によると、ミンアウンフライン氏は20日、麻生氏と渡辺氏に名誉称号と勲章を贈った。首都ネピドーでの授与式に出席した渡辺氏に「両国と両国民、両国の軍隊が友好関係と協力を強化することができた」と謝意を表明。渡辺氏は「生涯、ミャンマーの発展と国軍の地位のために努力する」と約束した。麻生氏は欠席したが、渡辺氏を通して謝意を伝えたという。

渡辺氏が会長の日本ミャンマー協会は、ミャンマーが民政移管した2011年、交流促進の目的で設立された。麻生氏を最高顧問に据え、ミャンマーに進出する日系企業が会員に名を連ねる。

渡辺氏は11〜16年の国軍出身のテインセイン大統領時代、大規模な経済特区を日本が開発する話を取り付け、存在感を示した。一方で、国軍系企業と共同で商業施設を建設する計画を進めるなど、国軍との関係を深めた。21年2月のクーデター後もミャンマーに度々渡航し、国軍擁護の発言を重ねている。

ミャンマーの独立系メディア「イラワジ」は昨年11月と今年1月、それぞれ渡辺氏と麻生氏への表彰の話を報じた。イラワジによると、ロシアのショイグ国防相、中国の孫国祥特使、仏教僧ウィラトゥ師らも表彰対象とされた。

ロシアと中国はクーデター後の国軍の後ろ盾。ウィラトゥ師も国軍に近く、イスラム教徒少数民族ロヒンギャへの差別発言を繰り返してきた。麻生氏らは人権面で問題のある国や人物と同列視された格好だ。

◆林芳正外相「政府としてコメントする立場にない」
日本政府はクーデター後、民主的な政治体制への復帰を求め、国軍支配を認めていない。受章はその立場と反する。取材に対し、麻生氏の事務所は「ミャンマーがいかなる状況で顕彰したのかなど詳細を知らず、答えられない」と回答。渡辺氏が会長を務める日本ミャンマー協会も「本人が不在」としてコメントを出さなかった。

22日、衆院予算委で立憲民主党の源馬謙太郎議員が表彰について質問。林芳正外相は「個人として勲章を受章したと承知しており、政府としてコメントする立場にない」と述べるにとどめた。

◆「国民の苦難を顧みない日和見主義者として歴史に残る」
ミャンマーの人権団体によると、クーデター後の国軍の弾圧で死亡した人は3000人を超え、拘束された人は約2万人に上る。

ミャンマー出身のナンミャケーカイン京都精華大特任准教授は「蛮行に走る国軍が与えた称号に名誉などあると思うか。両氏はミャンマーで(第2次世界大戦のミャンマー占領時の首相)東条英機と肩を並べて伝えられていくだろう」と非難する。

クーデター前、与党「国民民主連盟(NLD)」政権下で経済開発を担当し、渡辺氏とも交流したチョーワンナ氏は「彼は両国の友好関係を壊した。ミャンマー国民の苦難を顧みない日和見主義者として歴史に残るのは間違いない」と切り捨てる。

民主派が作った「挙国一致政府(NUG)」のチョーゾー大統領府報道官は「戦争犯罪と人道に対する罪をはたらいた犯罪者」とミンアウンフライン氏を糾弾。「ミャンマー人は日本に対し、ロシア軍へのウクライナ人の抵抗を支援するように、国軍への抵抗を支援するように望んでいる」と訴え、「血まみれの勲章」を拒むように求めた。
【2月25日 東京】
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日本政府は欧米の課す制裁には参加せず、軍事政権とも一定の関係を維持することで、平和的解決に向けた働きかけを続けることを目指していたはずですが、そうした独自外交の成果として何が得られたのか、国民への武力弾圧を続ける軍事政権から“勲章を授与される”ような関係にあることをどのように考えているのか・・・「政府としてコメントする立場にない」では済まない問題だと思いますが、アジアのことなど関心がない日本で大きな問題になることはないようです。

【マレーシアのアンワル首相 ミャンマー問題で機能不全のASEANに苦言 「正義は弱き者の間に不正義が蔓延する野蛮な国々を抑え込む」】
ミャンマー軍事政権に対しては内政不干渉を原則とするASEANも内部に温度差を抱えており、有効な対応をとれない機能不全を示していますが、マレーシアのアンワル首相はこうした現状に苦言を呈しています。

****マレーシア、フィリピンと南シナ海問題で対中強硬姿勢で一致 ミャンマー対応ではASEANに苦言****
<中国をめぐり機能不全に陥ったASEANの進む道は>
マレーシアのアンワル・イブラヒム首相は、3月1日に訪問先のフィリピンのマルコス大統領と会談し、両国が直面する南シナ海での中国の一方的な海洋権益主張に共同で対処することで意見を交わした。(中略)

ミャンマー問題も背景には中国が......
一方、東南アジア諸国連合(ASEAN)の抱えるもう一つの問題、ミャンマーについても中国が大きな影を落としている。

それというのも中国がミャンマー軍政の最大の後ろ盾になっており、中国へ配慮するASENAの一部加盟国が、ミャンマー軍政への強硬策に反対しているからだ。

こうしたなか、アンワル首相は、マニラ首都圏ケソン市にあるフィリピン大学で3月2日に講演し、ASEANに対して「不干渉は無関心ではない」とミャンマー問題で一致団結できない現在の状況に苦言を呈した。

マレーシアはフィリピン、シンガポール、インドネシア、ブルネイと並んでミャンマー軍事政権に強硬な姿勢を取り続けている。これが、軍政に融和的なタイ、ラオス、カンボジア、ベトナムとの間で溝が生じており、域内の連合体であるASEANとしてまとまりを欠く状況が続いている。

ASEANは2023年の議長国が対ミャンマー強硬派のインドネシアになったことから、強力な指導力でミャンマー軍政に現状打開を迫る好機とみられていたが、完全に膠着状態に陥っているミャンマー問題の解決にインドネシアが苦慮。

このためアンワル首相率いるマレーシアがイニシアチブを発揮することへの期待が高まり、これを受けて同じ強硬派のフィリピンとの連携強化を模索するため今回のフィリピン訪問となった。

原則違反に沈黙すべきではない
アンワル首相はフィリピン大学から名誉博士号を授与されたことを受けて同大で講演し、最近のASEANの対ミャンマー強硬派と融和派による分断の危機に触れて「不干渉と無関心は違うものである」と述べた。

これはASEANの掲げる原則である「満場一致」と「内政不干渉」を盾にミャンマー問題への積極的関わりに二の足を踏んでいる融和派各国に対し「内政不干渉という原則があるが、そのコンセンサスに基づく意思決定は民主的価値、人権、基本的自由の尊重というASEANの基本的価値観に反する違反については沈黙すべきではない」として、何らかの行動が急務となっているとの立場を改めて示した。

マレーシアは反軍政勢力招待も模索
またアンワル首相は「ASEANは現在一連の会議や首脳会議から軍政代表を排除することぐらいしか具体的対策を講じていない」と述べて、手をこまねいている状態の強硬派にも苦言を呈した。

マレーシアは2021年2月のミン・アウン・フライン国軍司令官によるクーデター直後から軍政に厳しい姿勢を表明し、ASEANの会議に軍政代表ではなく、民主主義復活を求めて抵抗を続けるアウン・サン・スー・チーが率いた民主政府や少数民族関係者などからなる「国民民主連盟(NLD)」の関係者を招請するべきだとの強硬策を提示した。さらに実際にマレーシアのサイフディン外相(当時)がNLD関係者と接触したこともあったという。

このNLD関係者のASEAN会議への参加というマレーシアの提案は融和派などの反発でコンセンサスを得ることができず現在に至るまで陽の目をみていない。

つまりASEANは軍政であれNLDであれ「ミャンマー代表」の不参加が続いており、当事者を欠いた場での対応協議が続いており、それが事態の膠着状態の一因となっているとの見方もある。

新しいアプローチ模索の動き
アンワル首相はマルコス大統領との会談でミャンマー問題について「危機打開のため新しいアプローチを模索するべきだ」と述べたとしているが、この「新しいアプローチ」が具体的になにを示しているのかは明らかになっていない。

インドネシアが現在進めている打開策は、2021年4月にミャンマー軍政のミン・アウン・フライン国軍司令官も参加したASEAN緊急首脳会議(インドネシア・ジャカルタで開催)で合意した議長声明「5項目の合意」に基づき、その履行を軍政に迫るというものだ。

しかしこのうち「武力行使の即時停止」と「全関係者とASEAN特使の面会」に2項目に関して軍政が強硬に反対しており今日に至るまでなんら進展をみせていないのが現状だ。

マレーシアのサイフディン前外相はASEAN外相として初めて「5項目の合意」の破棄を含めた見直しを提案したこともある。

このためアンワル首相の「新しいアプローチ」は、インドネシアがこだわる「5項目の合意」にはもはや依拠せずにミャンマーとの打開策を模索する方法を指している可能性もある。

アンワル首相はフィリピン大学での講演をフィリピン独立運動の英雄ホセ・リサールの言葉を引用して締めくくった。
「正義は文明的人間の最も大切な美徳である。正義は弱き者の間に不正義が蔓延する野蛮な国々を抑え込む」【3月3日 大塚智彦氏 Newsweek】
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