孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

リビア  イスラム“冒涜”映画への抗議行動のなかで、駐リビア米国大使が死亡との報道

2012-09-12 22:42:38 | 北アフリカ

(カイロのアメリカ大使館に押し寄せた群衆)

駐リビア米国大使と領事館の職員ら計4人が死亡
ムハンマドを題材とした風刺画とかコーラン焼却など、イスラム教に対する批判がイスラムへの冒涜として大規模な大衆抗議行動に発展する例はしばしば起きていますが、今回は米同時多発テロ発生から11年に合わせて作製された、ムハンマドに扮した男性が暴力的で好色な人物として表現されている13分間の短編映画が大きな問題を引き起こしています。

朝のTVニュースではエジプトのアメリカ大使館の騒ぎが報じられており、「またか・・・」といった感じでしたが、リビアでは騒動のなかで駐リビア米国大使が死亡したとされ、事態は非常に深刻です。

****リビアの米領事館襲撃で米大使死亡****
リビアのワニス・シャリフ副内相は12日、イスラム教を侮辱するような内容の映画に抗議する武装グループがリビア東部のベンガジの米領事館を襲撃した事件で、J・クリストファー・スティーブンス駐リビア米国大使と領事館の職員ら計4人が死亡したと述べた。スティーブンス大使は約4か月前に入国したばかりだった。

また、リビア副首相のMustafa Abu Shagur氏はツイッターで、「米国、リビア、そしてすべての自由な人々に対する攻撃を非難する」との声明を出した。【9月12日 AFP】
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リビアとエジプトで大きな騒ぎとなった抗議行動については、下記のとおりです。
なお、下記記事では“米国人職員1人が死亡”とされていますが、その後の報道では上記のように、駐リビア米国大使を含む4人が死亡したとされています。

****リビア:短編映画がムハンマド侮辱…米領事館員襲われ死亡****
リビア東部の主要都市ベンガジにある米領事館が11日、群衆の襲撃を受けて火が放たれ、米CNNテレビなどによると、米国人職員1人が死亡、1人が負傷した。

エジプトの首都カイロでも、中心部にある米大使館にエジプト人の群衆が押し寄せ、一部が敷地内に侵入して星条旗を引きずり下ろし、火を付ける騒ぎに発展した。
カイロの群衆は、米国で製作された短編映画がイスラム教の預言者ムハンマドを侮辱したと主張している。リビアでの米領事館の襲撃も、この映画が原因とみられる。

映画は「ムハンマドはイスラムの使徒なり」という13分間のフィルム。米同時多発テロ発生から11年に合わせ、米国在住のエジプト人のキリスト教系コプト教徒や、以前にイスラム教の聖典コーランを燃やして物議を醸した米フロリダ州のテリー・ジョーンズ牧師らが製作し、動画投稿サイトで一部が公開された。イスラム教の預言者ムハンマドの性描写などが含まれている。

カイロの米大使館前には「サラフィスト」と呼ばれるイスラム厳格派を中心に約2000人が集まり、一部は大使館を囲むコンクリート壁によじ登り、敷地内に侵入した。参加者は「預言者の侮辱をやめろ」などと書いた横断幕を掲げ、「世界にはまだ数十万人の(国際テロ組織アルカイダの元最高指導者で米軍に殺害された)ウサマ・ビンラディンがいるぞ」などと反米スローガンを叫んだ。
エジプトではムバラク政権崩壊後、イスラム原理主義組織ムスリム同胞団出身のモルシ氏が大統領に選出されている。

05年にはデンマーク紙が預言者ムハンマドを「テロリスト」扱いする風刺画を掲載し、イスラム社会に激しい抗議が巻き起こった。【9月12日 毎日】
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製作者については、上記記事では“あの” テリー・ジョーンズ牧師の名前があがっていますが、“米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)によると、映画を製作・監督したのはイスラエル系米国人の男性で、男性は同紙の電話インタビューに「イスラムはがんだ」と述べた。エジプトのメディアは先に、製作者は米在住のキリスト教系コプト教徒のエジプト人と伝えていた。”【9月12日 時事】とも報じられています。

【「欧米に敵対的な勢力の犯行の可能性が大きい」】
また、死亡したとされる駐リビア米国大使については、“アルジャジーラによると、大使は領事館内で窒息死した。一方、ロイター通信はロケット弾攻撃で死亡したと報じている。” 【9月12日 時事】とも報じられており、リビアでは領事館にロケット弾が撃ち込まれたと伝えられています。

このため、リビアの事件は単なる群衆の抗議行動ではなく、反米勢力の関与も指摘されています。
“映画への抗議行動は、エジプトの首都カイロでも11日に発生した。しかし、リビアでは領事館をロケット弾で攻撃するなど、エジプトのデモとは性格を異にしており、在リビア外交筋は「欧米に敵対的な勢力の犯行の可能性が大きい」と指摘した”【9月12日 時事】

大使が殺害されるというのは、大使の車の国旗が奪われるといったこととは次元が異なります。
オバマ大統領は民主党大会を終えて支持率が上向き、この先の展望が開けてきたところですが、厄介な問題が起きてしまいました。
ロケット弾攻撃云々に関する真相究明、犯人逮捕を強く求めるのでしょうが、元はといえば、アメリカで作製された思慮分別を欠いた映画が発端です。

狂信的な挑発行為と過敏な感情的反応
それにしても、今回の映画製作者のような、自分の信念しか眼中にない人物の行動というのは困ったものです。
自分では正しい主張を行っているつもりなのでしょうが、引き起こされる事態、それによる多大な犠牲、後に残る憎しみなどへの配慮を全く欠いています。と言うか、そんなことはどうでもいいと思っているのでしょう。
一方で、こうした一部の人間の確信犯的な行為に過敏に反応するイスラムの側の反応も、第三者的には何とかならないものか・・・という感もあります。

日本周辺で起きている領土問題にも、似たような構図があるようにも思えます。

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1 コメント

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案の定… (Balthazar)
2012-09-13 12:47:18
という感想を持ちます。独裁政権が倒れた途端に危険なサラフィストが堂々と表通りにでしゃばるようになった。
例えばブッダやキリストがパロディされたとして、こんな野蛮なテロが起きたり聖職者がそれを正当化したりなどしないでしょう。ひたすらイスラムとアラブの野蛮性ばかり際立って見えてしまう。彼ら自身が、さらなる誤解と嫌悪を招いている。
一神教の困ったところは、常に独善的で、異なる価値観・世界観を認めようとしないorできない事です。
外国に移民しても、ムスリムは「郷に入れば郷に従う」事ができず、勝手にモスクを建てたりして軋轢を生む。
彼らが民主的に中世以前の社会への退化を選択するのであれば、革命の意義など霞んで見えてしまうし、それを支援した欧米諸国は、またしても怪物を世に放つ愚を冒しただけという結果に。
これでは自由シリア軍に対する支援も、より慎重にならざるを得なくなるのではないでしょうか。
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