孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラン  ハタミ前大統領が大統領選挙出馬を辞退、ムサビ氏支持

2009-03-17 21:10:51 | 国際情勢

(2005年イラン大統領選挙での改革派支持者 ハタミ前大統領の写真を掲げていますが、この選挙にはハタミ前大統領は三選禁止で出馬しておらず、改革派からはモイーン氏が出ました。そして第1回投票で5位という惨敗に終わりました。この選挙で、テヘラン市長にあったアフマディネジャドが有力候補ラフサンジャニ前大統領を抑えて大統領の座を得ました。最近のオバマ大統領の巻き起こしたブームにも似たものがあります。
“flickr”より By Mostafa Saeednejad
http://www.flickr.com/photos/mostafa/19389525/)

【改革派ながら、体制内に足場を築く数少ない政治家】
これまでも何回か取り上げてきた6月に行われるイラン大統領選挙の話題。
2月9日ブログ「イラン ハタミ前大統領、大統領選挙へ名乗り 高いハードル」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20090209)では、現職アフマディネジャド大統領と出馬を表明したハタミ前大統領の保革一騎打ちの流れなどにも言及しましたが、ここにきてハタミ前大統領が出馬を辞退して、代わりに改革派をムサビ氏で一本化する方向に動いています。

****イラン大統領選:ムサビ氏「台風の目」に 現職批判票集め****
6月のイラン大統領選に向け、出馬を断念した改革派のハタミ前大統領が同じ改革派のムサビ氏への全面支持を表明したことで、ムサビ氏が「台風の目」になる可能性が出てきた。
ムサビ氏は、保守強硬派のアフマディネジャド大統領と同様に「イスラム革命(79年)原理への回帰」を訴えており、保守派支持層内の大統領批判票を大量に取り込む可能性があるからだ。圧倒的優位と見られていた現職への有力対抗馬として急浮上しそうだ。

ムサビ氏は、現在の最高指導者ハメネイ師が大統領を務めた81~89年、大統領を補佐する首相を務めた。イラン・イラク戦争(80~88年)中の厳しい経済状況を「統制経済」で乗り切った。現在も最高評議会委員を務め、改革派ながら、体制内に足場を築く数少ない政治家の一人だ。
ハタミ前大統領時代には大統領最高顧問を務め、ハタミ氏とも緊密な関係にある。
また、出馬声明で「真のイスラムの教えや価値観、(革命指導者)ホメイニ師の思想に基づく社会を実現させる」と強調するなど、「保守派からも文句の出ない人物」として、アフマディネジャド大統領の出身母体である革命防衛隊や、情報省などにも根強い支持層があるという。

経済政策では「(原油など)少ない資源を短期的な利益や政治的に価値のない目的のために浪費してはいけない」と述べ、原油収入に依存するバラマキ政策を続けた現政権を暗に批判した。
アフマディネジャド政権が05年に発足して以来、インフレが加速。ムサビ氏は「(大統領は)革命思想から生まれた被抑圧者(庶民)の思いを理解していない」とも喝破した。
改革派系有力紙エテマドのマスメ・ストゥデ記者は「ムサビ氏は本当は改革派とも保守派とも呼べない立場だだけに、両方の支持を糾合する可能性を秘める」と指摘する。

ただ、ムサビ氏はハタミ氏に比べ知名度では劣る。演説内容も難解で、アフマディネジャド大統領に比べ庶民へのアピール力にも欠ける。これらを補う形でハタミ氏が国民への露出を高め、改革派が候補のムサビ氏一本化に成功すれば、勝機が生まれると見られる。 【3月17日 毎日】
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【“ポピュリスト”アフマディネジャドを越えられるか】
改革派からは、カルビ元国会議長も出馬を表明しており、一本化のためにはまだ調整が必要です。
ハタミ前大統領はもともと自らの出馬には消極的で、同じ対外融和路線のムサビ氏を推していました。
両者は今年初め候補一本化協議を行いましたがムサビ氏の決断が遅れたため、ハタミ前大統領が2月に見切り発車で出馬表明に踏み切った経緯があるようです。
ハタミ前大統領はムサビ氏が当選した場合、政権に影響力を確保して自らの政策や信条を反映させたい意向とも報じられています。また、2月9日ブログで取り上げたように、“アフマディネジャド大統領が三選禁止で出馬できない次の次を狙っている”といった声もあるようです。

上記記事で、ムサビ氏について、「演説内容も難解で、アフマディネジャド大統領に比べ庶民へのアピール力にも欠ける。これらを補う形でハタミ氏が国民への露出を高め・・・」とありますが、演説内容が難解で庶民へのアピール力が欠けるのはハタミ前大統領も同じです。
これからどのように国民の広い支持を集めていけるかが課題です。
逆に言えば、“ポピュリズム”とも“バラマキ政策”とも批判されるアフマディネジャド大統領ですが、庶民層での人気は高く、そのアピール力は大きいということでもあります。

記事での紹介を読む限り、単に対外融和路線の改革派というだけでなく、最高指導者ハメネイ師との繋がり、保守派内での一定の支持もあるとのことですから、保守派・改革派の対立をまとめていくには適任のようにも思えます。

なお、「現在も最高評議会委員を務め、改革派ながら、体制内に足場を築く数少ない政治家の一人」とありますが、“最高評議会”は“公益判別会議”とも呼ばれており、構成員は最高指導者の任命によります。
公益判別会議の目的は、議会と監督者評議会のあいだで相違や不一致が生じた場合にこれを解決すること、また最高指導者に対する諮問会議として機能することだそうです。

仮にハタミ前大統領が大統領選挙戦で勝利できても、監督者評議会などの保守派勢力との対立で身動きできない状況になるであろうことが想像されていただけに、“改革派ながら体制内に足場を築く数少ない政治家の一人”というのは大きなポイントに思われます。

【選挙でも“変化”がイメージできない日本】
遠い国イランの大統領選挙なんてどうでもいいようなことではありますが、強烈な個性でイランを引っ張るアフマディネジャド大統領が続投するのか、対外融和的な新大統領に交代するのか・・・・イラン国民にとってだけでなく、イランが大きな影響力を持ちつつあるイラク・アフガニスタン・パレスチナの情勢、とりわけアメリカとの緊張関係に大きく影響してきます。

それに比べ、日本の総選挙でどの政党が勝利するのか、誰が首相になるのか・・・ということは、もちろん個人的好みも関心もありますが、“どうなっても、そんなに変わりばえしないだろうな・・・”という感も正直なところあります。
それは、ある意味では日本社会・政治の“成熟度”を表すものでもあるでしょうし、どうしても排除すべき特定政治家・団体も存在しないということでもあるでしょう。
そうは言いつつも、自国の政局よりも、遠い国イランの政局の方に目が向いてしまうというのは、寂しいというか、何か問題があるようにも思えます。



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