孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パキスタン  イスラム法による司法、公開女性むち打ち

2009-04-05 13:27:31 | 国際情勢

(パキスタン・スワート地区の行政の中心地サイドゥ・シャリーフ 学校に通う子供達 未だに教育、特に女性の教育は充分とは言えませんが、タリバン支配のアフガニスタンでは女性教育はもちろん、女性が男性親族の同伴なしに家から外に出ることさえ認められていませんでした。“flickr”より By Edge of Space
http://www.flickr.com/photos/ejazasi/289307068/)

【ミサイル攻撃と自爆攻撃】
オバマ大統領は3月27日、対アフガニスタン包括戦略に関して、アフガニスタンではなくパキスタン対策から説明を始めたそうです。
アフガニスタン安定化には、アルカイダがパキスタンを「安全な隠れ家」とし、武装勢力が国境を自由に行き来している現状を変えることが「不可欠」と判断したためです。
「(新戦略の)目標はパキスタンとアフガンのアルカイダを解体、打倒することだ」と強調、パキスタンには「今後5年間、年15億ドルの直接支援」を約束し、アルカイダの掃討を強化するよう迫っています。

その新戦略の要となるパキスタン部族支配地域に対するアメリカの攻撃に、国民の反米感情もあってパキスタンは表向き反対していますが、攻撃自体は激しさを増しているようです。

****パキスタン:アフガン駐留米軍のミサイル、攻撃範囲が拡大*****
アフガニスタン国境に近いパキスタン部族地域「オラクザイ管区」に1日、アフガン駐留米軍の越境ミサイル2発が着弾し、武装勢力メンバーとみられる10人が死亡、7人が負傷した。同管区へのミサイル攻撃は初めてで、攻撃範囲が拡大している。【4月1日 毎日】
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****パキスタン:アフガン米軍のミサイルで市民ら10人死亡*****
パキスタン部族地域・南ワジリスタン管区に4日、アフガニスタン駐留米軍のミサイルが着弾し、地元住民によると、市民ら少なくとも10人が死亡した。地元当局者は、死者に武装勢力メンバーも含まれているとしている。北東約120キロのペシャワル郊外では3日、アフガンのNATO軍に搬送予定だった軍用車両9台が武装勢力に破壊された。 南ワジリスタン管区は、米国が賞金を掛けて行方を追う武装勢力のメスード最高司令官の拠点。【4月4日 毎日】
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一方、武装勢力側の自爆テロ攻撃もエスカレートしています。

****パキスタン:自爆テロで市民ら18人死亡******
パキスタン部族支配地域・北ワジリスタン管区で4日、走行中の政府軍の車列の近くで車が爆発。子供4人を含む市民15人と兵士3人の計18人が死亡、20人以上が負傷した。死者は増える見込み。武装勢力による自爆攻撃とみられる。
現場は診療所の近くで、爆発が起きた道路にも患者の列があふれていた。猛スピードで車列に近づいてきた車に兵士らが発砲し、直後に爆発した。【4月4日 毎日】
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****パキスタン:自爆テロで3人死亡 首都の要人居住地区******
パキスタンの首都イスラマバードの外国人や政府要人が居住する地区で4日夜、男が自爆し、警備に当たっていた治安部隊員3人が死亡、20人以上が負傷した。死者は増える見込み。武装勢力による犯行とみられる。この地区は治安要員による24時間態勢の警備が続いているが、自爆攻撃は初めて。
武装勢力は「米国の越境ミサイル攻撃が停止されなければ政府への攻撃も続ける」としており、首都の治安は混迷を深めそうだ。
イスラマバードでは同日夕、日本大使館などがある外交使節地区のそばで、自動小銃や手投げ弾などで武装した男6人が逮捕されている。1台の車に乗り、地区方面に向かっていたところを検問中の治安部隊が発見した。【4月5日 毎日】
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【武装勢力との和平協定】
こうしたなかで、当事者のパキスタン政府は2月に、国境隣接地域の武装勢力と次々に和平協定を結び“停戦”を行っています。

****パキスタン:武装勢力と和平協定 イスラム法導入容認******
パキスタン政府は2月16日、アフガニスタンの武装勢力タリバンと連携関係にある北西辺境州スワート地区の武装勢力と、和平協定の締結で合意した。政府が同地区にイスラム法の導入を認め、武装勢力は地区内での武力闘争を放棄する内容。パキスタン国内には和平歓迎のムードが強いが、停戦で武装勢力はアフガン入りしてタリバン支援に乗り出す可能性が高い。米国は反発を強め、パキスタンとの溝が深まりそうだ。
スワート地区の武装勢力は、01年10月に米軍がアフガン攻撃を開始した後、反米闘争のためアフガンに約1万人のメンバーを送り込んだことで知られる。
 
同地区での和平合意は昨年5月に続き2回目。前回は、米国の圧力を受けた政府がイスラム法導入の協定内容を守らなかったことなどから、同8月に破棄された。
以来、双方の激しい戦闘が続き、学校や病院は閉鎖され、住民の生活は破綻(はたん)。昨年11月のインド・ムンバイ同時テロ事件後、政府軍はインドとの軍事的緊張を背景に戦闘部隊を縮小して劣勢となり、武装勢力が地区の9割を実効支配。住民は武装勢力支持へと傾いている。

合意後にペシャワルで記者会見したアミール北西辺境州担当相は、「イスラム法の導入は地区住民の民意に従ったものだ」と強調。パキスタンの主要メディアも「住民の生活を守る最善策だ」(アージ・テレビ)などと合意を支持している。
パキスタン政府幹部によると、アフガン駐留米軍による越境ミサイル攻撃が続くパキスタン側のアフガン国境地域では、家族や親類を失った住民が次々と反米勢力に参加し、国内治安も悪化した。
政府は、オバマ米政権に「越境攻撃は逆効果だ」と停止を求め続けているが、16日にも米軍無人攻撃機による越境空爆があり、30人が死亡した。和平合意は、強硬姿勢を崩さないオバマ政権に対するパキスタン側の強い不信感を示した形だ。【2月17日 毎日】
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【イスラム法による司法】
こうした経緯でイスラム法(シャリア)による司法が認められたスワート地区での、女性に対する公開むち打ち刑の様子が明らかになっています。

****女性むち打ちの映像、パキスタン当局が捜査へ*****
パキスタン当局は3日、同国北西部、シャリア(イスラム法)による司法が認められた旧リゾート地のスワート地区で女性がむち打ちの刑に処せられている様子を収めたビデオ映像に対する捜査を命じた。
映像は携帯電話で撮影されたとみられ、2人の男に足と肩を押さえられたブルカ姿の女性が叫び声を上げる中、ターバン姿の男に34回にわたってむちを打たれる様子が記録されていた。

スワート地区では2月、イスラム原理主義組織タリバンを支持するイスラム教聖職者とパキスタン政府との間で、同地区の司法制度としてイスラム法を唯一のものとして採用する協定が結ばれた。
これに対し国際社会からは、タリバンと国際テロ組織アルカイダの拠点であるパキスタン北西部一帯の武装勢力を増長させることになるとして懸念の声が上がっていた。【4月4日 AFP】
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パキスタン当局によるビデオ映像に対する捜査の趣旨がわかりません。
こうした公開処刑を遺憾とするものなのか、それとも、こうした情報を公開したことに対するものなのか?
もし前者であるとすれば、2月の武装勢力と和平合意の時点で、こうしたことが行われることは予想されたことであり、今になって・・・という感も禁じ得ません。

アメリカがアフガニスタンでの闘いを重視するのは、9.11のようなテロに対する闘い(最近このような言葉は使わないようですが)の観点がありますが、アフガニスタン・パキスタン部族支配地域でのタリバン支配に対する私個人の懸念は、日本的価値観からすると人権、特に女性の権利が無視される政治・社会に対する違和感・嫌悪感があります。

こうしたものは文化・宗教の違いであって、現地の人々がそれを望むならそれも仕方ないのかもしれませんが。
また、程度の差はあっても他のイスラム諸国でもみられることであって、それを理由に外国勢力が武力で侵攻することを正当化することもできないものでしょうが。


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