孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

マダガスカル  クーデターまがいの政治混乱で、元DJ・34歳の若き大統領誕生

2009-03-20 14:29:21 | 国際情勢

(軍に警護されながら市中をパレードする若き指導者ラジョエリナ氏
“flickr”より By toiletgoose2002
http://www.flickr.com/photos/12067221@N04/3363701203/


【一番アフリカに近いアジアの国】
マダガスカルと言うと思い浮かぶのはバオバブの木、横っ飛びする猿などの不思議な動植物、米を主食とするアジア的な文化の国・・・そんなところです。

アジアとの関連で調べると、人種的にもアジア系で、子供には蒙古斑があるとか。
地質的にも、“ジュラ紀後期のゴンドワナ大陸分裂でアフリカ大陸から分離し、さらに白亜紀後期にインド亜大陸がマダガスカル島から分離した”【ウィキペディア】ということで、アフリカから早い段階で分離したようです。
国民意識のうえでもアフリカと一線を画する意識が強く、アフリカ連合には加盟していますが、アフリカ諸国との関係はかなり希薄であるとも。
“一番アフリカに近いアジアの国”という、元大使が書いた本もあるようです。

個人的には、バオバブの並木の写真とアジア的な要素に惹かれるものがあって、旅行できないものかと思ったりもするのですが、やはり遠いアフリカの国なのでなかなか行く機会がありません。

【軍の力による権限委譲】
そんなのどかなイメージのマダガスカルで反政府運動が起きて、治安当局による発砲で28人が死亡との記事を目にしたのが2月初旬でした。
ラベロマナナ大統領の退陣を求めての抗議デモ参加者への発砲で、1月下旬にも、首都アンタナナリボで野党指導者のラジョエリナ氏が呼び掛けたデモが一部暴徒化し、76人が死亡したとか。

正直なところ、「またアフリカで政治混乱か・・・」ぐらいの印象しかなかったのですが、混乱は拡大。
“野党指導者で首都アンタナナリボのラジョエリナ市長が呼びかけるデモは地方に拡大。軍は大統領派と反大統領派に分裂を始め、内戦も懸念される。”【3月16日 毎日】
“首都アンタナナリボのラジョエリナ市長(34)が呼びかけたラベロマナナ大統領(59)の退陣を求める野党支持者らの抗議行動は16日、軍が装甲車などで大統領府に突入した。”【3月17日 毎日】
と軍部を巻き込んだ状況に。

****マダガスカル:野党支持者騒乱が拡大 大統領府に装甲車****
発端は昨年12月、元DJのラジョエリナ氏運営の放送局がラチラカ前大統領のインタビューを放映し、それを理由に政府が放送局を閉鎖。再三の営業再開要請も認められず1月26日、野党支持者が国営放送局を占拠するなど暴徒化した。
同月末、ラジョエリナ氏は自らを「国家指導者」と宣言。大統領の即時辞任と暫定政権発足、2年以内の大統領選実施を訴えた。大統領は2月初めにラジョエリナ氏の免職処分を決定したが、混乱は収まらず、死者は100人以上に上っている。軍内部にも野党派が支持を広げ、大統領の命令系統は機能していない。
大統領は15日、国民投票実施を提案したが、ラジョエリナ氏は拒否し、ついに軍の大統領府突入に発展した。【3月17日 毎日】
***************

野党派の軍によって追い詰められたラベロマナナ大統領は17日、軍に権限を移譲。
権限を移譲された軍は、野党指導者ラジョエリナ氏にその権限を更に委譲。
ラジョエリナ氏は、野党派の軍部隊などと大統領府に入ったあと、市内を車でパレードするなどして大統領の退陣をアピールしています。

こうしたクーデターまがいの権力奪取に対し、“アフリカ連合(AU)は17日、「軍部がラジョエリナ氏に手を貸した事態は憲法に反する行動。AU加盟のルールにも抵触する」と非難。潘基文(バンギムン)国連事務総長も重大な懸念を表明した。”【3月18日 毎日】
もっとも、クーデターによる政権、軍部による強権政治の政権・・・そんなものは珍しくもなんともないアフリカの国々ではありますが。
権限を委譲されたラジョエリナ氏は憲法改正後、暫定政府を発足させ、2年以内に大統領選と議会選を実施するとしています。

【気になる若さ】
元ディスクジョッキーのラジョエリナ氏は、旧宗主国フランスのテレビ局に対し、「大統領と呼んでもらってかまわないよ」と語ったとか。【3月19日 AFP】
マダガスカルの憲法では大統領は40歳以上でないと就任できないことになっており、34歳のラジョエリナ氏は6年足りません。
前出AFPの記事では、“マダガスカル憲法裁判所は18日、野党指導者のアンドレイ・ラジョエリナ氏(34)を同国の新大統領として認定した。”とありますので、この年齢問題もクリアされたということでしょうか。

ラベロマナナ大統領の政治については、“2002年に政権に就いて以来、経済成長を維持してきたラベロマナナ大統領だが、国民の声に耳を傾けなくなり、貧困問題に取り組まなかったとの批判が出ている。”【2月9日 ロイター】とあるぐらいで、どういった政治だったのか全くわかりません。
権限を掌握した元DJのラジョエリナ・首都アンタナナリボ市長(34歳)がどいう人物なのかも全くわかりません。

恐らくよくある権力争いのひとつなのでしょうが、目を引いたのは、憲法も想定していないラジョエリナ氏の若さというか“軽さ”というか・・・従来の“クーデター”とは少し異なる印象があります。
ラジョエリナ氏の所属政党は「決意したマダガスカルの青年」という組織だそうで、その名称からすると、現状に不満を持つ若年層の支持を受けて頭角を現した人物でしょうか。
彼を支持した野党系軍部というのも“青年将校の決起”のようなものでしょうか。

冒頭のアジアとの関連云々にもつながりますが、写真で見るラジョエリナ氏の風貌はアフリカ的というより、東洋的な雰囲気があります。
元DJだからどうこうということもありませんが、紹介されている写真の多くが、ピースサインや投げキスをしているような場面で、周囲を警護するいかめしい軍隊やラフな服装の大勢の民衆とは全く異なる洒落たスタイルであることなどもあって、「この人大丈夫かね・・・?」という頼りなさ・線の細さも感じます。

今は軍は銃口を彼の警護に向けていますが、いつその銃口が彼自身に向けられるか・・・。


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1 コメント

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本来 (ぽぐ)
2009-03-22 12:13:15
2002年のクーデターの時に、新婚旅行で行きましたが、そのときは国民はのんびりした雰囲気で経済の失落だけが際立っていました。
その時は、タナからの主要道路上の橋は爆破され、ガソリンなど輸入資源の到着港都市は、当時の新大統領派に同調する知事で占拠されていました。
当時ガソリンは流通しておらず、大使館などに配給されたものが、ペットボトルに移されて少量流通しているのみでした。
国内線も1区間4千円程度だったのが、4万円に跳ね上がり、軍が限定区間のみ管理運行を行っており、空港での荷物検査も厳戒でした。
それでも「また行きたいね」って思っていましたが、あの国で実際に死者が出たとなると、国が変わったんだなと感じざるを得ませんね。
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