孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

シリア内戦  アルカイダ系組織の勢力拡大で反体制派内の対立表面化

2013-09-26 22:22:32 | 中東情勢

(反体制派武装組織「自由シリア軍」の若いメンバー 屈託のない笑顔はイスラム過激思想とは無縁のようにも見えますが・・・・ “flickr”より By Eduard Ghazanchyan http://www.flickr.com/photos/96131145@N04/9740728410/in/photolist-fQKMch-fTP3hf-fTJ7iV-fTEYWo-fTPSqi-fTFRAJ-fTF5wx-fTPWvU-fTL8LC-g9EzTd-fTGCPf-fTR18U-fTRAoE-fTRzWs-fTLxgs-fTRtG2-fTQP8C-fTKmBR-g5dvwU-fTG546-fTFqnd-fTNVbR-fTQcDH-fTM9po-g7iBsQ-fTmXFh-fTHcUA-fN73x4-fN7ao6-fNozvU-fNmDe7-fN68vk-fNkYCw-fNmBhQ-fNkBVS-fN3Ype-fNoiq7-fN6LYx-fNnkQ5-fN6oKt-fNmvdL-fN3UjZ-fN4tVP-fNoxDo-fNmsQq-fN5UTc-fNmnod-fNnbYU-fN6VKe-fNoggC-fNnBRW)

【「アサドかアルカイダか。今や誰もがその二者択一を迫られている」】
シリア内戦は、当初は強権的なアサド政権に対する住民の抵抗という性格があり、欧米各国は民主化支援ということで反体制運動を支援する流れになっています。

その後、衝突が長期化するにつれ、アサド政権側のアラウィー派および政権を支援するシーア派のレバノン・ヒズボラやイランと、スンニ派主体の反体制派およびこれを支援するアラブ・スンニ派諸国という、周辺国を巻き込んだ宗派対立の様相が強まりました。

そして、ここにきて、かねてよりその存在が懸念されていた反体制派内部のアルカイダ系武装勢力などイスラム過激派の勢力伸長が表面化しています。
内戦は反体制派武装組織「自由シリア軍」、イスラム過激派組織・アルカイダ系武装勢力、アサド政権政府軍という三者を軸にした様相を呈してきています。
更に、反体制派もイスラム過激派組織も多くの組織が存在して統一を欠いており、複雑な展開にもなっています。


****シリア、引き裂かれる市民 アルカイダ系伸長、反体制派混迷****
死者が11万人を超えたシリア内戦で、国際テロ組織アルカイダ系の武装勢力が急速に存在感を強めている。反体制派内の抗争が激化する一方、アサド政権は「テロとの戦い」として正当性を訴え、「アサドか、過激派か」との踏み絵を内外に迫る。

(中略)隣国レバノンのシーア派武装組織ヒズボラが政権軍に加勢して参戦。アルカイダ系の台頭や外国勢力の参戦で、内戦は「政権軍対反体制派」の構図に収まらなくなっている。

反体制派のさらなる内部対立をもたらしたのが、イラクを拠点とするアルカイダ系最強硬派組織「イラク・レバント・イスラム国」だ。
今月18日、北部トルコ国境近くで反体制派武装組織「自由シリア軍」の拠点を襲撃。21日には北東部でヌスラ戦線の拠点も襲い、イスラム過激派同士の対立ともなっている。

 ■「住民殺され、連行
英軍事専門誌ジェーン・ディフェンス・ウイークリーによると、反体制派の戦闘員約10万人のうち、アルカイダ系は約1万人、そのほかのイスラム過激派は3万~3万5千人で、合わせて半数近い。

豊富な戦闘経験を持つアフガン人やチェチェン人などが、イラクやヨルダンから重火器とともに流入しているとされる。政権軍からの離反兵中心の自由シリア軍を戦闘能力で上回り、火力でも政権軍と渡り合う。

反体制派の一角として政権軍に対する昨年の攻勢の主力を担ってきたが、目的は「シリアでの民主政権の樹立」ではなく「厳格なイスラム法に基づく国づくり」だ。支配地域では斬首による処刑や改宗の強要、女性のベール着用の強制などが相次いでいるという。

「イスラムに改宗しろと言われ、住民3人が殺されて6人が連れて行かれた」。ヌスラ戦線に一時占拠され、住民約2千人が逃げたダマスカス郊外のキリスト教徒の村マアルーラの高校生ジョージ・カイラニさん(18)はそう語る。
険しい地形で孤立していたためキリスト教が維持されてきたマアルーラは、キリストが話した古語、アラム語が今も使われる言語学的にも貴重な地域だ。

 ■政権「テロとの戦い」
「これは内戦ではない」
アサド大統領は17日、米テレビのインタビューで「反体制派の8~9割はアルカイダ系」と述べ、「テロとの戦い」との立場を強調した。

アサド政権は国内外に広がる過激派への不安を足場固めの好機ととらえる。自警団に武器を与えて訓練し、数万人規模の「国民防衛隊」を組織。反体制派への離反などで十数万人規模に減ったとされる陸軍を補完する形で検問や情報収集を担わせるほか、市街戦の最前線にも送り出す。

また、化学兵器問題をめぐる米軍による攻撃の先送りに成功したことで自信を深めている。自ら停戦に応じる意思を表明するなど、外交面でも主導権を握る構えをみせる。

一方、自由シリア軍を傘下とする反体制派の代表組織「シリア国民連合」はジレンマに苦しむ。
20日には「イスラム国」を「アサド政権と戦わず、反体制派の支配地域で足固めをしようとしている」と非難したが、過激派を排除して政権軍を打倒する道筋は描けない。
一方、過激派の存在自体が、欧米に軍事支援をためらわせる主因となってきた。幹部の辞任も相次ぐ。

地元記者は声を潜めていう。「アサドかアルカイダか。今や誰もがその二者択一を迫られている」【9月25日 朝日】
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進む反体制派の内部分裂
アルカイダ側は最高指導者ザワヒリのメッセージで、自由シリア軍との武力抗争を公然化させています。

****反体制派の内紛激化でアサドが漁夫の利****
泥沼の内戦が続くなか自由シリア軍とアルカイダ系武装勢力の衝突が目立ち始めている
(中略)
9.11同時多発テロ12周年の翌日、アルカイダの最高指導者アイマン・アル・ザワヒリの肉声メッセージなるものがネットで流れた。

アメリカはシリア反体制派の戦士を「欧米と手を組む世俗組織」に合流させようとしているが、「われらが兄弟とシリア国民は結束して聖戦に励み、こうした組織には近づかないように」との警告だった。

ザワヒリの言う「世俗組織」がFSA(自由シリア軍)を指すのは明らかだ。FSAにもイスラム系の部隊はいるか、欧米や湾岸アラブ諸国の支援を受ける彼らをアルカイダは決して許さない。

FSAのアブード(東部戦線司令官)は、「要するにアルカイダは、われわれとの武力抗争を公然化したわけだ。政治の空白がその背景にある」と言う。
さらに、FSAがアルカイダ系組織と共闘したことはなく、「われらの最高軍事評議会は、政権転覆まで身内の争いを避けたかった」が、相手がやってくるなら「戦わざるを得ない」とも語った。(後略)【10月1日号 Newsweek日本版】
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一方、自由シリア軍を傘下とする反体制派の代表組織「シリア国民連合」は、アルカイダ系組織「イラク・レバント・イスラム国(ISIL)」が反政権闘争を妨げていると非難する声明を発表する形で、両者間の対立が深まっています。

****シリア:国民連合がアルカイダ非難 反体制派内で対立激化****
シリア反体制派の主要組織「シリア国民連合」は20日、反体制派に加わっているイラク拠点の国際テロ組織アルカイダ系組織「イラク・レバント・イスラム国(ISIL)」が反政権闘争を妨げていると非難する声明を発表した。

ISILは18日以降、トルコとの国境付近で、国民連合傘下の自由シリア軍を攻撃していた。両者は国家観を巡る意見の相違を背景に対立が激化している。

国民連合は声明で「ISILはアサド政権と戦わず、体制派の支配地域で、独自の統治を始めようとしている」と指摘。「外国の勢力と協力して、シリアの主権を脅かしている。市民を抑圧する姿勢は(アサド政権与党の)バース党の歴史と重なる」と厳しく批判した。

在英組織「シリア人権観測所」によると、ISILは18日以降、トルコ国境近くの自由シリア軍の拠点アザーズを攻撃。AP通信によると、トルコは近くの国境検問所を一時封鎖した。両者は20日までに戦闘で捕虜にした兵士の交換などを条件に停戦が成立したが、対立は各地でくすぶっている。

シリア内戦では、イスラム過激派も反体制派として参戦しており、ISILは最強硬派として知られる。ISILはイスラム教に基づく新国家建設を志向しており、革命を目指す国民連合とは思想が異なっている。【9月21日 毎日】
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国外に拠点を置く政治組織「シリア国民連合」と、シリア国内で戦闘を行う「自由シリア軍」の間にはもとから深い溝がありましたが、アルカイダ系組織の存在感が強まるなかで、イスラム過激派などの「シリア国民連合」からの離反が明確化しています。

そもそも「自由シリア軍」のなかで、イスラム過激派とそうでない組織の間の線引きができるのか?
「シリア国民連合」がコントロールできる実戦部隊がどれほどあるのか?
そこらあたりの状況はよく知りません。

****13組織が離脱声明 シリア反体制派、分裂進む****
反体制派の武装組織「自由シリア軍」傘下の一部有力部隊やイスラム過激派など13の武装組織が25日、反体制派の代表組織「シリア国民連合」を正式な代表と認めないとする共同声明を出した。反体制派の内部分裂が一段と進むことになる。

中東の衛星テレビ局アルジャジーラなどが報じた。声明に参加したのは、アルカイダ系イスラム過激派ヌスラ戦線や、北部アレッポを拠点とする有力部隊など。

声明では、外国に拠点を置く反体制派グループは認められないとし、国民連合や今月14日に選出されたばかりのトーメ暫定首相を「我々を代表していないし、認知もしない」と宣言。
さらに、「シャリア(イスラム法)を唯一の法とするため全ての軍事、民間のグループに結束するよう求める」とした。【9月26日 朝日】
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イスラム過激派・アルカイダ系組織の勢力拡大は欧米諸国に反体制派への武器支援をためらわせています。
“フランスのフランソワ・オランド大統領は19日、「管理された環境下で」、「多数の国が同時にこれを行う」場合に限りFSAへの武器供与を支持すると明言した。米国も反体制派に提供した武器がアルカイダ系組織の手に渡る懸念を繰り返し表明している”【9月21日 AFP】

「アサドかアルカイダか。今や誰もがその二者択一を迫られている」状況では、反体制派「自由シリア軍」の軍事的勝利はこれまで以上に難しくなったように見えます。
仮に、アサド政権を倒すことができたとしても、「政権を倒してからアルカイダを掃討」という当初の目論見は難しいでしょう。
結局、政権が存続するにせよ、崩壊するにせよ、混乱の中でテロの温床となるイスラム過激派・アルカイダ系組織の実効支配地域が拡大することにもなります。

模索される政治解決の道
こうした情勢を受けて、反体制派代表組織「シリア国民連合」も政治解決への道を模索しているようにも見えます。

****シリア反体制派が和平会議参加へ 「用意ある」と表明****
シリア反体制派代表組織「シリア国民連合」のジャルバ議長は22日、内戦の停戦に向けて米ロが開催を目指す和平会議について、条件付きながら「参加する用意がある」と表明した。ロイター通信によると、連合が和平会議への参加を言明するのは初めてという。

連合が国連安全保障理事会に提出した書面の内容として報じた。ジャルバ氏は「(米ロが)ジュネーブで開く会議に参加する意思を再確認する」と表明。一方で、「完全な行政権を持つ移行政府の樹立が会議の目的であることを、全ての関係者が合意しなければならない」と主張した。【9月24日 朝日】
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アサド政権側は、反体制派内部の分裂、化学兵器使用問題でのシリア攻撃回避という流れののなかで、“シリア政府は内戦が膠着状態にあることを認め、反体制派に停戦を呼び掛ける用意がある”【10月1日号 Newsweek日本版】との姿勢で、外交攻勢をかけています。

化学兵器使用問題の方は、一応の筋道が出来つつあるようです。

****シリア:決議案、近く合意…安保理 ロシア譲歩か****
シリアの化学兵器の廃棄を目的とした国連安保理の決議案について、フランスのファビウス外相は25日、5常任理事国(米英仏露中)が一両日にも合意に達するとの見通しを示した。安保理外交筋も同日、毎日新聞の取材に「合意に近づいている」と語った。

決議案をめぐっては、米英仏が国連憲章第7章(平和への脅威)に基づく強制措置を盛り込むことを主張していたが、ロシアが反対しており、最大の焦点になっていた。

AP通信によると、この点に関して、ファビウス外相は講演先のコロンビア大学で、憲章7章に言及することが「(常任理事国に)受け入れられた」と明らかにした。ただ、まだ細部にいくつかの問題点が残っているという。

ロイター通信によると、決議案にはシリアのアサド政権に廃棄履行の過程で違反があった場合、「憲章7章に基づく措置を課す」と明記する。

ただ、ロシアのガチロフ外務次官は「自動的に強制措置を認めるものにはならない」とAP通信に対して述べ、実際にどのような措置を取るかを決めるには新たな決議が必要になるとの見方を強調している。

米露合意では来年前半までにシリアの化学兵器を廃棄することになっており、化学兵器禁止機関(OPCW、本部オランダ・ハーグ)がその作業工程を審議。この決定を受けて、安保理決議案が採択されることになるとみられる。【9月26日 毎日】
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化学兵器使用問題で合意が成立すれば、欧米諸国にとってアサド政権は打倒すべき相手というよりは、化学兵器廃棄の管理者、ひいては今後の交渉の相手ということにもなります。

アサドかアルカイダか。今や誰もがその二者択一を迫られている」状況では、今後の反体制派との和解に向けた条件を課した枠組みのなかでアサドを選択する方が賢明のように思えます。

ただそうした選択は、アサド政権の弾圧に抗して戦ってきた反体制派の多くには受け入れがたいものでもあり、国際社会の政治解決の模索は、戦闘の現場における更なる混乱をまねくことも懸念されます。

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