孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  銃で自分の身を守る銃社会アメリカの“奇妙な”現実 

2018-02-15 23:12:18 | アメリカ

(14日、銃乱射事件があった米フロリダ州の高校から避難する生徒ら=AFP時事【2月15日 朝日】)

民間に約2億7000万丁 安い短銃なら200ドル
アメリカは言わずと知れた“銃社会”です。
民間で保有される銃は約2億7000万丁、市民の約4割が銃を所有している、もしくは銃のある世帯に住んでおり、2016年に銃によって死亡した1万1004人とのことです。

****銃社会アメリカ 数字で見る被害と支持****
(中略)米ピュー研究所の2017年調査によると、米国市民の約4割が、銃を所有している、もしくは銃のある世帯に住んでいると答えた。そして、米国で発生する銃器による殺人や過失致死の割合は先進国で最高だ。

2016年の米国では1万1000人以上が銃によって死亡した。これは、殺人と過失致死の合計件数の約3分の2に相当する。(中略)

世界各国で民間人がどれくらい銃を所有しているのか正確に知るのは難しいが、米国の約2億7000万丁はどのような推計でも群を抜いて突出している。(中略)

米国で銃で死ぬ人たちの内訳は
1982年以降の米国では、4人以上が犠牲になる大量射殺事件が90回起きている。しかし乱射事件の被害者は実は、米国で銃によって死ぬ人のごく一部に過ぎない。下図(略)が示すように、2016年に米国で銃によって死亡した合計1万1004人のうち、約5500人は自殺で、乱射事件の犠牲者は71人だった。(中略)

銃はいくらで買えるのか
市民が銃をほとんど持たない国からすると、米国では銃がいかに安く買えるかは、意外に思えるかもしれない。

ラスベガス乱射(2017年10月1日にラスベガス市で58人が殺害されたコンサート会場への攻撃)のスティーブン・パドック容疑者がいたホテルの部屋で発見されたという自動小銃は、一般的に約1500ドル(約18万円)で買える。マックブックと同じような価格帯だ。

同様に、容疑者の室内で発見されたという短銃は、安いものは200ドル(約2万3000円)程度。たとえばクロームブックのラップトップなみで、銃砲店で手に入る。(中略)

短銃の所有禁止について、米世論は過去60年の間に劇的に変化した。データは不完全ながら、調査会社ギャラップによると、現在ではかなりの大多数が短銃規制に反対している。


(増えているのが“短銃規制への反対” 減少しているのが“短銃既成への賛成”)

しかし、たとえば精神病の病歴がある人や当局の監視対象人物への銃販売を規制することについては、政治的な主義主張を越えて幅広く大勢が支持している。

ドナルド・トランプ米大統領は、ラスベガス乱射事件の後、「銃の法律については時間がたつにつれて、話をしていく」などと反応した。ホワイトハウス報道官は、今は「銃規制を議論すべき時ではない」と述べた。(後略)【2017年10月4日 BBC】

【「学校で銃撃事件を起こすやつがいるとすれば彼だ、と冗談を言い合っていた」】
こうした銃社会アメリカにあって、17名の死者を出した米フロリダ州パークランドの高校で銃乱射事件は、“起こるべくして起こった”事件のようです。

****米高校で銃乱射、17人死亡=交流サイトに銃画像-容疑者****
米フロリダ州パークランドの高校で14日午後2時半(日本時間15日午前4時半)ごろ、銃乱射事件が発生し、生徒ら17人が死亡した。

米メディアによると、拘束された同高校の元男子生徒ニコラス・クルーズ容疑者(19)はインターネット交流サイト(SNS)に銃の写真を多数投稿しており、周囲は銃撃事件を起こす可能性を懸念していた。

捜査当局は容疑者のネットの閲覧履歴やSNSの内容を分析し、動機や事件の背景の解明を急ぐ。容疑者が犯行時にガスマスクや殺傷能力の高い半自動小銃「AR-15」を使用していたことから、当局は計画的な犯行とみて調べている。
 
報道によると、容疑者のSNSには、さまざまなタイプの銃やナイフを手にする容疑者とみられる人物の画像が多数投稿されていた。容疑者を知る同高校の生徒は地元テレビに「学校で銃撃事件を起こすやつがいるとすれば彼だ、と冗談を言い合っていた」と語った。
 
別の生徒はABCテレビに対し、約1年前に取り乱した様子の容疑者にどうしたのか尋ねると、容疑者が「学校で銃を撃ちまくる」と発言したと証言。生徒が発言に気をつけるよう促すと、容疑者は謝罪したという。
 
容疑者は同高校を退学処分となった。別の生徒を脅すトラブルがあったと報じられている。【2月15日 時事】
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【「市民がより多くの銃を持てば持つほど、国は安全になる」というねじれた論理
“銃社会”アメリカの銃乱射事件や学校での事件は、日常的な現象ともなっています。

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アメリカの乱射事件としては、昨年2017年の10月1日にラスベガス市で58人が殺害されたコンサート会場への攻撃が全米に衝撃を与えました。実はその後も、例えば教育機関での銃撃事件としては、

■2017年年12月7日にニューメキシコ州アズテック市で高校が襲われ、2人が死亡。

■2018年1月23日にケンタッキー州ベントン市で15歳の高校生が構内で2人の同級生を射殺。そのほかに14人が負傷。

というように、多くの事件が起きています。【2月15日 冷泉彰彦氏 Newsweek】
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それでも銃規制が進まないのは周知のところで、今回事件もこれまでと同じでしょう。

アメリカにおいて銃保持は憲法上の個人の権利であるという認識、現実政治における全米ライフル協会の絶大な影響力といった話以外にも、これだけ銃が出回っており事件が多発している以上、銃で自分の身を守る必要があるという考えもあります。

この考えでいくと、せめて軍が使うような攻撃的な銃だけでも規制を・・・という“至極まっとう”に思える意見も、“より強力な銃で身を守らないと・・・”という流れで否定されます。

全米ライフル協会(NRA)は、市民がより多くの銃を持てば持つほど、国は安全になると主張しています。

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今回のフロリダの事件にしても、ラスベガスの事件にしても「AK15タイプ」と呼ばれる「連射可能で火力の強いアサルトライフル」が使用され、そのことが被害を拡大しているのは間違いありません。

ですが、銃保有派の人々は、「強力な火器が出回っている以上は、対抗できる武器を保有しないと家族が守れない」として、規制には断固反対の構えです。【冷泉彰彦氏 同上】
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銃の氾濫に、より強力な銃で身を守る・・・という流れは、どこかで連鎖を断ち切らないと、今回のような事件が今後も多発するだけでなく、街中で大きな物音がすると歩いていた皆が一斉に銃を周囲の他人に向ける・・・という“コント”ような社会にもそのうちなります。“病気”です。

銃規制に消極的なトランプ大統領のせいで、大手銃器メーカーが破綻
銃乱射事件犠牲者に涙したオバマ前大統領とは異なり、全米ライフル協会(NRA)の全面的支援を受けるトランプ大統領は、銃規制の議論は「あとで」「そのうち」として避けてきており、今回事件でもツイッターで犠牲者の遺族に弔意を表明、「子供も教師も誰でも、米国の学校で安全でないと感じるべきではない」と述べてはいますが、銃規制については何も触れていません。

銃規制に消極的なトランプ大統領のせいで、大手銃器メーカーが破綻した・・・という、なんだかあべこべのような話がアメリカ社会の現実を示しています。

****米の銃器メーカーが破綻へ トランプ大統領就任も影響****
アメリカの大手銃器メーカー、レミントン・アウトドアは、去年の売り上げが大幅に減少したことなどから、日本の民事再生法に当たる連邦破産法11条の適用を申請することを明らかにし、銃規制に消極的なトランプ大統領の就任によって銃の販売不振を招く、皮肉な結果となっています。

レミントン・アウトドアは13日までに、連邦破産法11条の適用を申請すると発表しました。

レミントンは1816年から銃を製造している老舗メーカーですが、2012年に小学校で起きた銃乱射事件をめぐる訴訟などで、経営が悪化していました。

加えて、去年、銃規制に消極的なトランプ大統領が就任したことで、当面は銃の規制が強化される見込みはなく、直ちに購入する必要はないとして、去年の売り上げが前の年より30%減少したことが、追い打ちをかけました。

レミントンは債務を整理したうえで経営再建を目指すことにしていますが、銃規制に強く反対するNRA=全米ライフル協会はトランプ大統領の姿勢を評価する一方で、銃器メーカーは経営悪化に陥るという、皮肉な結果となっています。【2月14日 NHK】
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拳銃を所持した黒人男性に対して銃を発砲せず、説得を試みた警官は解雇
銃の使用に関する“あべこべ”のような話(私にはそう思えるのですが)も。

****銃所持の黒人男性に発砲せず解雇された警官、市と示談成立 米****
拳銃を所持した黒人男性に対して銃を発砲せず、その後解雇された米ウェストバージニア州の元警察官が解雇を不服として市を訴えていた訴訟で、市側が示談に応じ、男性に17万5000ドル(約1900万円)を支払うことで合意した。
 
元警察官で白人のスティーブン・メイダーさんは、2016年6月にウェストバージニア州のウィアトン市警察を解雇され、市を相手取った訴訟を起こした。
 
米国自由人権協会の説明によると2016年5月、女性から自宅でボーイフレンドが暴れているとの通報を受けてメイダーさんが現場へ急行したところ、23歳の黒人男性が錯乱状態になっていた。男性が両手を後ろに隠していたため、メイダーさんが両手を見せるよう求めると男性は従ったが、その手には拳銃が握られていた。
 
メイダーさんは銃を捨てるように言ったが男性は拒否し、自分を撃ってくれとメイダーさんに頼んだという。
 
メイダーさんが男性の説得を試みていたところへ別の警官2人が到着。男性が2人に銃を向けたため、そのうちの1人の警官が銃を4発撃って男性を射殺した。男性が所持していた銃には弾丸が入っていなかったことが後に判明している。
 
市側はメイダーさんの解雇は複数の規律違反があったためとしているが、ACLUのウェストバージニア支部は11日、市側が示談金を支払うことに同意したと発表した。【2月13日 AFP】
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この記事を読んで、はじめは意味が理解できませんでした。「どうして、説得を試みていたメイダーさんが解雇されるのか?」

日本のTVドラマなら、説得を試みるのは“良い警官”、すぐに発砲するのは“悪い警官”となりますが、銃社会アメリカにあっては逆になるようです。少しでも危険が感じられる場合はまず発砲して危険を除去するのが“良い警官”で、いたずらに銃使用を控えるのは危険を助長する“悪い警官”のようです。
たとえ、弾が入っていないことがあとでわかったとしても。

今回事件容疑者にも似たトランプ大統領 「世界で核のボタンを押すやつがいるとすれば彼だ・・・・」】
前出記事によれば、“報道によると、容疑者のSNSには、さまざまなタイプの銃やナイフを手にする容疑者とみられる人物の画像が多数投稿されていた。容疑者を知る同高校の生徒は地元テレビに「学校で銃撃事件を起こすやつがいるとすれば彼だ、と冗談を言い合っていた」と語った。”とのこと。

なにやら、軍事パレードをやりたがるトランプ大統領も似ているようにも思えます。自分の持っている武器を世界にみせびらかしたい心理でしょう。

****トランプ大統領、大規模軍事パレード「やりたくなった****
トランプ米大統領が首都ワシントンで大規模な軍事パレードを計画するよう国防総省に命じたことが明らかになった。米紙ワシントン・ポストが6日、報じた。

昨年7月14日のフランス革命記念日にマクロン大統領に招かれ、パリで恒例の軍事パレードを見て、やりたくなったという。
 
同紙によると、トランプ氏は1月18日、マティス国防長官や米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長らとの会合で、軍事パレード構想を披露した。米軍幹部は「命令は『フランスのようなパレードをしたい』だ。軍最高レベルで検討されている」と話している。
 
トランプ氏は昨年9月の国連総会でマクロン氏と再会した際、「最高のパレードだった。我々はあれを超えなければいけない」と話したとされる。【2月8日 朝日】
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“米ホワイトハウスのマルバニー行政管理予算局長は14日、下院予算委員会の公聴会で証言し、トランプ大統領が年内の実施を指示した軍事パレードについて、経費が1000万〜3000万ドル(約11億〜32億円)になると述べた。”【2月15日 産経】とのことですが、費用の話はともかく、北朝鮮か、どこかの独裁国家のようでもあります。

****ロシア疑惑で追いつめられたトランプは核のボタンを押す寸前だ****
<ロシア疑惑の捜査進展でトランプの精神状態が悪化し、核攻撃に走る恐れが高まっていると精神科医たちは警告する>

ドナルド・トランプ米大統領の精神状態は「悪化の一途」だと、アメリカの精神科医が見解を示した。2016年の米大統領選でロシアと共謀した疑惑をめぐってロバート・ムラー特別検察官が進める独立捜査にじわじわ追い詰められて、もう少しで「核のボタン」も押しそうな崖っぷちにあるという。

ムラーの捜査が大詰めを迎えていることによるストレスで、「どう見てもトランプは苛立っている」、と精神科医のジョン・ガートナーは言った。首都ワシントンで2月12日に開かれた、トランプの弾劾を求める団体主催「弾劾せよ」のイベントで、精神科医と核分野の専門家によるパネルディスカッションに参加したときだ。

「ムラーの捜査が核のボタンを押すようトランプを追い込む一因になっている、ということを我々は理解する必要がある。トランプにしてみれば、それで自分の抱える問題が全て片付くのだから」と、ガートナーは言った。核攻撃で命を奪われる人たちに対する同情や懸念が、トランプには微塵もないという。

「今の状況は落ち着くどころか、悪化の一途だ」「日を追うごとに、人類滅亡の危険が増大している」

トランプは同じ日、アメリカが核兵器を二度と使わなくてもいいよう望むが、「諸外国が核開発を進めている手前」アメリカも核兵器の近代化を進めていく、と発言。核兵器削減は「彼らの今後の出方による」とした。

パネリストを務めた核安全保障の専門家ジェームズ・ドイルは、「衝動的で、怒りやすい、或いは欲求不満を抱えやすく、好戦的で、過度に虚勢を張るか執念深い人物」は大統領としてふさわしくない、と言った。それらの特徴全てにトランプは該当する、と言われている。(後略)【2月15日 Newsweek】
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“精神科医の見解”というより、トランプ嫌い(私もですが)の発言・・・といった感もありますが、「衝動的で、怒りやすい、或いは欲求不満を抱えやすく、好戦的で、過度に虚勢を張るか執念深い人物」は大統領としてふさわしくないのは事実でしょう。

何かが起きたのちに「世界で核のボタンを押すやつがいるとすれば彼だ、と冗談を言い合っていた」ということでなければいいのですが。
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