孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

新型コロナ ひっ迫する米医療現場 解任された米空母艦長 路上に遺棄される遺体 アフリカ食糧難

2020-04-04 22:21:05 | 疾病・保健衛生

(グアヤキル(南米エクアドル)で3月30日、路上で倒れた男性の遺体のそばに立つ女性たち=ロイター【4月3日 朝日】)

【「あの人を呼吸器から外したい。そればかり思ってしまった。ほかの人に使いたくて。」】
とても胸が痛む記事。

****ニューヨークの若い医師、いきなり神の役を振られ 誰を救い誰を諦める****
「チーム700!」と院内スピーカーから呼び出しが響く。急変対応チームが今すぐ必要だという意味だ。ニューヨーク市クイーンズ地区のエルムハースト病院で、誰かが心肺停止状態になったのだ。

いつもなら、「チーム700!」と呼び出しがかかるのは、せいぜいが週に一度あるかないかだ。しかし昨日は、12時間シフトの間に9回、「チーム700」が呼ばれた。私が話を聞いた若い医師によると、急変した患者は誰も助からなかった。(中略)

ここでは、息ができずにあえいでいる人のみ、ベッドが与えられる。(中略)

患者の半数は正式な入国手続きをしていない移民で、英語ができない。レストランの従業員であり、ホテルの客室清掃員だ。そういう人たちだ。インターネットの情報には「つながって」いない。感染予防に他人と適度な距離を保ちましょうという「社会的距離」の呼びかけは、この人たちに届かなかった。

そういう人たちが集まる病院の救急外来は、大変なことになっている。30代前半の研修医によると、運ばれてくるほとんど全員が、気管挿管を必要としている。人工呼吸器が必要なのだ。いつもならそれは集中治療室(ICU)の仕事だが、ICUはとっくに手一杯だ。

救急患者には、血圧を維持する薬も必要だ。それはいつもなら専門の看護師の仕事なのだが、看護師が足りない。なので、専門訓練を受けていない人間がやらなくてはならない。(中略)

通常なら、相手が感染症の患者かもしれないと思えば、医療スタッフは個人用防護具(PPE)を身につける。そして、その患者の診療が終わればPPEを脱ぐし、使い終わったPPEは焼却される。しかし今のエルムハーストでは、まずPPEを身につけることからシフトが始まり、1日中ずっと着けたままだ。診察する全員が感染しているのだから。

1日中ずっと着ているからという、それを理由に、PPEの不足はやや緩和された。新型ウイルスとの戦いでこの病院が国内初の最前線となり、大きく注目されたことで、備品はしきりに届くようになった。

それでも若い研修医は、ひとつのN95マスクを、数日は使い続けなくてはならないのだという。
だとすると、近所のほかの病院は? 必要な備品は手に入るのだろうか。(中略)

「私が一番不安になるのは、人工呼吸器を誰に使うかです。患者さんが亡くなる、そのこと自体が問題なのではなく。死を前にしてどう対応するか、私たちは訓練されてますから。亡くなる人数も同じです。それよりも、いつもなら諦めない患者さんを諦めなくてはならない、それが問題なんです」

高齢者介護施設から搬送された男性患者について、話してくれた。到着の時点ですでに人工呼吸器がつながれていて、「慢性的に呼吸器が必要」な状態だった。回復の見込みは最初から決して良くなかった。けれどもこの時の彼女には、目に前にいる患者よりも、そこにある人工呼吸器しか見えなかった。

「あのとき私たちはあまりに、人工呼吸器がどうしても欲しくて。必死で。あの人を呼吸器から外したい。そればかり思ってしまった。ほかの人に使いたくて。あの患者さんから外したかった」

医者としてのキャリアの入り口で、まさか自分が神を演じることになるとは。若い彼女は、こんな事態はまったく予想していなかった。【4月4日 BBC】
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【権力者に真実を語るとどうなるかを示す恐ろしいメッセージ】
とても不可解なニュース

****解任された米空母艦長、乗組員の声援受け下船****
艦内で新型コロナウイルスの感染が広がった米海軍の原子力空母「セオドア・ルーズベルト」の艦長を解任されたブレット・クロージャー大佐が、大勢の乗組員の声援を受けながらグアムに停泊中の同艦を去った。3日に公開された動画で明らかになった。
 
空母から撮影された動画の中で、クロージャー大佐は乗組員らに短くあいさつした後タラップを一人で歩いて下船し、埠頭(ふとう)で待っていた車に乗り込んだ。乗組員らは甲板で手拍子をしながら「キャプテン・クロージャー、キャプテン・クロージャー」と声を上げた。
 
セオドア・ルーズベルトは3月にベトナムを5日間公式訪問してダナンに寄港。その後、数十人の乗組員が新型ウイルスに感染していることが判明し、同空母は3月28日にグアムの米海軍基地に到着した。
 
3月31日に米国の2紙が、乗組員4800人をできるだけ下船させ、その大半を隔離するよう国防総省の上層部に求めたクロージャー艦長の書簡について報じた。これに怒った米国防総省は今月2日、クロージャー艦長を解任した。
 
ダナン寄港は外交上重要で国防総省上層部の承認を得ていたにせよ、新型コロナウイルスの影響について同省で懸念が高まっていた中、あえて乗組員が感染するリスクを取って寄港に踏み切ったクロージャー大佐を批判する向きもある。
 
民主党と無所属の上院議員17人のグループは、国防総省の監察官にクロージャー艦長の解任について調査するよう求めている。
 
米大統領選でドナルド・トランプ大統領の対抗馬となる最有力候補となっている民主党のジョー・バイデン前副大統領は、クロージャー艦長の解任は「権力者に真実を語るとどうなるかを示す恐ろしいメッセージ」だと述べた。【4月4日 AFP】
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艦長の乗組員の生命を重視した判断の何が国防総省を怒らせたのか・・・よく理解できないところもありますが、以下のようにも。

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(艦長の)クロジャー氏は解任の数日前、乗組員の命を救うためには決然たる行動が必要だと海軍上層部に訴える書簡を作成。

米国の国防当局者3人がCNNに確認したところによると、書簡には「我々は戦争状態になく、水兵らは死ぬ必要がない。直ちに行動を起こさなくては、我が軍の最も信頼のおける資源である水兵を適切に保護できなくなる」と記述されている。

これに対しモドリー氏(海軍長官代行)は、クロジャー氏が懸念を提起したこと自体は正しいとする一方、同氏が「極めて稚拙な判断」を示し、自身の懸念を記した書簡を20〜30人と広範囲に送付したことで混乱を招いたと指摘した。

書簡の内容は米紙サンフランシスコ・クロニクルに掲載された。モドリー氏は同紙で初めて書簡を見て驚いたとしながらも、メディアへのリークがあったかについて情報は持っておらず、解任理由でもないと説明。

ウイルスの感染拡大という対応困難な局面で、プロとしての行動が最も求められる時にそれができなくなるまで状況の進行を許したことが要因だと語った。【4月4日 CNN】
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中国で、武漢の状況について当局の公表前にSNS上で警鐘を鳴らした医師が処分され、その医師は結局感染し死亡。国内外で大きく取り上げられるようになってから、名誉回復されましたが・・・・

また、武漢で感染が拡大した理由について、中央政府の権力者のご機嫌を損じないようにとの行動に終始した地方政府の姿勢があったとも。

アメリカ・トランプ政権はそのような中国の対応を激しく批判していますが、今回のアメリカのクロジャー氏は解任は、そうした中国と同レベルではないかとの疑念も感じます。

【遺体が路上に放置される遺体を警察や軍が回収】
とてもショッキングなニュース。

****埋葬追いつかず路上に 警察・軍、遺体回収始める エクアドル 新型コロナ****
南米エクアドルで新型コロナウイルスの感染が急速に広がり、死者の火葬や埋葬が追いつかない状態となっている。なかには、遺体が路上に放置されるケースもあり、警察や軍が回収を進め始めている。
 
「路上に遺体が置かれるなんて、これまで見たこともなかった。医療システムだけでなく、葬儀の仕組みも崩壊した」。エクアドル葬儀社協会のセバスチャン・バロナ代表は1日、朝日新聞の電話取材に語った。
 
エクアドルは人口1700万人ほど。同国保健省の発表によると、1日午後までに確認された新型コロナウイルスの感染者は2758人で、98人が死亡した。商業都市のグアヤキルのあるグアヤス県だけで、死者は63人にのぼる。
 
しかし、これは感染が確認された人数だけで、実際の死者数はもっと多いとみられる。

バロナ氏によると、以前はグアヤキル市内の最大墓地に1日平均30~40体を運び、火葬していた。だが最近は160体ほどを運び、それでも遺体の回収が追いつかない。火葬する設備も足りず、土葬する場合も少なくないという。バロナ氏は「運んでいる遺体には感染確認中だったものが少なくなく、遺族は新型肺炎の症状があったと言っている」と語る。
 
現地報道では、家族が死者からの感染を恐れたり、埋葬できなかったりするため、遺体が路上にも置かれるようになった。

また、路上で暮らしていた人が亡くなる例も相次いでいるという。グアヤキルの警察によると、3月23~30日に308体の遺体を路上から回収した。

こうした状況を受け、モレノ大統領は3月30日、「すべての死者に尊厳ある埋葬をする」と表明。保健省やグアヤキル市は3月31日、病院3カ所の入り口にコンテナを設置し、警察や軍が家庭から遺体の引き取りを始めた。現在、450体が回収待ちだという。【4月3日 朝日】
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死者の火葬や埋葬が追いつかない状態、遺体が路上に放置されるケースも・・・とても「感染者は2758人で、98人」という公表数字の状況には思えません。

【爆発的な感染拡大が懸念されるアフリカ 西アフリカではIS、更に新型コロナで食糧難も】
感染の犠牲者は、メディアで話題になるアメリカや欧州以外でも世界各地に広がっているようです。

特に懸念されているのが、難民キャンプや貧困国の巨大スラム街、そしてアフリカ。
こうした地域では手を洗う水すら十分に確保されていません。

****WHO、アフリカの新型コロナ拡大に懸念 「阻止の可能性縮小」****
世界保健機関(WHO)のモエティ・アフリカ地域事務局長は26日、サハラ砂漠以南(サブサハラ)の約半数の国では新型コロナウイルスの感染拡大を食い止める望みはあるが、可能性は小さくなっていると懸念を示した。 

アフリカでの感染拡大はアジアや欧州に比べて遅いが、ロイターのまとめによると、感染者は40カ国以上で約2850人、死者は73人に上っている。 

モエティ氏は「事態はかなり劇的に進んでいる」とし、「各国はさらなるウイルス感染拡大に備えつつ、封じ込めに取り組む必要がある」と述べた。 

域内では新型コロナ対策として南アフリカが3週間の外出禁止策を導入したほか、ケニアは夜間外出禁止令を発令した。【3月27日 ロイター】
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アフリカ諸国はエボラ対応で一定の経験値が蓄積されていること、各国が迅速な入国制限などの対応をとったことなどを評価する指摘もあるようですが、どうでしょうか?(南アフリカでも、ケニアでも、政府の強硬な新型コロナ対策に抵抗する一部市民と政府の間で対立が生じるなど、治安の悪化も懸念されています。)

****ブルキナファソ4閣僚が感染 国内の感染者は西アフリカ最多****
西アフリカ・ブルキナファソで、外務・協力相や鉱山・採石相など閣僚4人が新型コロナウイルスに感染していることが確認された。ロイター通信が21日、政府報道官の話として報じた。
 
国内の感染者は西アフリカ最多の64人。ブルキナファソ北部ではイスラム過激派の襲撃が頻発し、新型ウイルスの流行前から政府が十分に機能していない。【3月22日 共同】
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上記のニュースは、アフリカにおけるコロナ対策の実態を示しているようにも思われます。

****アフリカ各国の「新型コロナ」対応は意外に迅速****
(中略)通念上は、一般市民の感染、死亡が先行するように思われたが、政府の要職なる人物が最初の犠牲者となったことは何かを意味しているように思われた。

無論、政府の要職にある人物は、外遊の頻度も高く、諸外国からの訪問者との接触が多いことが背景要因としては考えられるものの、アフリカにおける感染に関する検査の能力不足と、援助関係者を含む外国からの訪問者と、政治エリートの検査が優先されざるをえないという事情があったと考えられる。

実際、アフリカにおいては2月までは、新型コロナウイルス感染の検査ができる機関は、南アフリカと西アフリカのセネガルにしかない状況であった。現在は40カ国にまで拡大はしている。

こうしたアフリカでの感染拡大に関して、自らエチオピアの保健相と外務相を歴任して、現在WHOの事務局長として、今回の新型コロナウイルス感染症対策を指揮するテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は、ブルキナファソの議会の第1副議長の死亡を受けた3月19日のジュネーブでの記者会見で、アフリカ大陸に「最悪の事態に備える」よう呼び掛けた。

また、この会見の中では、アフリカにおける感染者の数値について、「おそらく見逃されている感染者や、報告されていない感染者がいるだろう」と指摘している。

今回の新型コロナウイルスでは発症が抑えられる傾向にあるともされる若年層の人口比率の高いアフリカにおいては、無症状の感染者が水面下で拡大している懸念を払拭できない。

今後の課題
新型コロナウイルスは、その感染経路を考えると、人口が密集し、水道などの設備が不足するようなアフリカ都市部のスラムにひとたび感染者が出ると、爆発的な感染拡大が懸念される。

実際、BBCの取材に応じている、ケニアの首都ナイロビにあるケニア最大のキベラ・スラムの人々の声にも示されているように、アフリカの都市部には、人口密集地域であることに加え、清潔さを保つための水道やせっけんが不足している住民が極めて多い。

これは、紛争に伴う強制移動を余儀なくされている難民や国内避難民キャンプにも当てはまる。しかも医療体制についても、南アフリカのように比較的高い水準の体制を整えている国もあるが、住民1000人当たりの医師の数も日本の2.4人に対し、アフリカではその10分の1以下の0.2人にとどまる(世界銀行統計)。

こうしたことから、重症化する患者が増大することが現実のものとなれば、医療崩壊は免れない。今後、アフリカなどの途上地域への医療支援などが新たに課題となってくる。(後略)【4月3日 東洋経済ONLINE】
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悪いことに、ブルキナファソなど西アフリカはIS系のイスラム過激派が台頭し、住民の生命・生活が脅かされている地域でもあります。

そこに追い打ちをかけるような新型コロナの感染拡大。
学校の休校は先進国では教育や親の負担の問題ですが、西アフリカでは子供たちの命を支えてきた給食が途絶えるということを意味します。

****550万人に食料危機拡大の恐れ 西アフリカ、感染拡大で拍車****
世界食糧計画(WFP)は4日までに、イスラム過激派の襲撃が相次ぎ国内避難民が急増する西アフリカのブルキナファソ、マリ、ニジェールで約390万人が食料危機に陥っていると発表した。今後、新型コロナウイルス流行や気候変動で約550万人に増える恐れがある。
 
WFPによると、各国は感染予防のため全学校を閉鎖しており、給食がほぼ唯一の栄養源だった児童に影響が出かねない。物流が止まるなど経済も打撃を受け、WFPは「継続的な支援がないと、事態が制御不能になる」と訴えている。
 
各国では、国際テロ組織アルカイダやISに忠誠を誓う勢力が台頭している。【4月4日 共同】
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新型コロナ対策で、マスク文化のなかった欧米でもマスク重視の方向へ 品薄マスクをめぐる混乱も

2020-04-03 21:45:39 | 疾病・保健衛生

(3月26日、米ニューヨーク・ブルックリンの商店でマスクをしながら接客する店員=ロイター。マスクを着用する文化がない米国は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて変化している【4月3日 朝日】)

【「アベノマスク」で国民の不安はパッと消えるか?】
相変わらず品切れ状態が続くマスク。

そのなかでの日本政府の「アベノマスク」には首をかしげる向きも。海外でも話題になっているようです。

****日本、1世帯に布マスク2枚配布へ ネットで冷笑広がる****
安倍晋三首相は1日、国の新型コロナウイルス感染症対策として、再利用可能な布マスク2枚を各世帯に配布すると発表した。これを受けてオンライン上では、冷笑と皮肉の声が広がった。
 
安倍首相の発表から間もなくして、「アベノミクス」をもじった「アベノマスク」がツイッターにトレンド入り。
 
感染症対策を専門とする神戸大学の岩田健太郎教授は1日ツイッターに、「やっぱ一晩たっても『夢じゃなかった』」と投稿。安倍首相が提案した種類の布マスクは病院では決して使用されないと指摘し、「金の無駄遣い」だと批判した。
 
1世帯当たり2枚しか配布しないという方針については、2人以上の家族はどうすべきなのかと、国民の多くが困惑を示した。
 
また安倍首相はマスク約1億枚を全国の5000万世帯超に配布すると述べており、費用の面でも疑問が上がっている。
 
菅義偉官房長官は2日、マスク1枚当たりの費用は約200円と発表。ただ菅氏は、マスクの配布により需要抑制に役立つと、今回の計画を擁護している。(後略)【4月2日 AFP】
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****「アベノマスク」海外でも報道 マスク配布に「冗談か」****
「アベノマスク」――。新型コロナウイルスの感染拡大防止の一環で、安倍晋三首相が1日に布マスクを全世帯に2枚ずつ配る方針を表明すると、日本のツイッターでは、アベノミクスをもじったそんな言葉がトレンドランキングの1位になった。

SNSなどで厳しい反応が相次ぐなか、「アベノマスク」は海外メディアでも取り上げられている。
 
(中略)米フォックスニュースも、「エープリルフールの冗談ではないかと受け止められている」と報道。ツイッター上に上がっている安倍首相の加工画像を交えながら、「安倍首相が一連のパンデミック対応で、批判にさらされている」と伝えた。
 
安倍首相は1日、全世帯に布マスク2枚を配布する方針を表明。市販マスクの品薄解消のための、1カ月以上前からの「腹案」だったが、予算規模や確実に行き渡るかなど不明な点が多く、施策に対する疑問の声が上がっている。【4月3日 朝日】
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2月上旬ごろからの深刻なマスク不足の混乱時に、経済官庁出身の官邸官僚が「全国民に布マスクを配れば、不安はパッと消えますから」と首相に発案したのがベースにあるようですが【4月3日 朝日より】、当時でも「パッと消える」訳ないですが、今となっては・・・。それも2枚で・・・。費用は相当にかかるだろうに。

そもそも、市販の使い捨て不織布マスクでも予防効果は期待できないとされているのに、ウイルスサイズに比べて格段に目が粗い“布マスク”でどれほどの効果があるのか?

“布製マスクでも患者が着ければウイルスを含むせきやくしゃみのしぶき(飛沫(ひまつ))の一部を止める可能性があるという専門家もいる。”【4月3日 朝日】

逆に言えば、どうせ市販のマスクだって効果は限定的なんだから、この際布製だろうが何だろうか・・・という話にもなります。

【マスク再評価に舵を切る欧米 マスク奪い合いの混乱も】
そのマスクの効果について、これまで一般人の使用に消極的だった米疾病対策センター(CDC)がガイドライン見直しを始めたということで、今日はマスク関連記事が多く報じられています。

****米国、マスク再評価の動き 病人のため→うつさないため****
マスクを着用する文化のない米国が、新型コロナウイルスの感染拡大で変わりつつある。街中で着用する人が増えるようになり、「感染予防効果はない」としてきた当局もガイドラインの見直しを始めた。背景には、新たに分かってきた新型コロナの特性がある。
 
(中略)米疾病対策センター(CDC)も、新型コロナの感染が拡大をしてからも「健康な人は、症状のある人を世話する場合でなければ、マスクの着用は必要ない」と強調し、ホームページでも周知してきた。

ジェローム・アダムス米医務総監は2月末、ツイッターで「みんな、これは真剣だ。マスクを買うのをやめよう!」とツイート。一般人がマスクを買いに走ると、医療関係者や感染者がマスクを手に入れられなくなり、地域全体にリスクが広がるとの主張だった。
 
しかし、この姿勢は変わりつつある。ホワイトハウスの新型コロナ対策チームの主要メンバーの1人、米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長は3月31日にCNNのインタビューで、「他人にウイルスをうつさないことを考えれば、最良の方法の一つはマスクをつけることだ」と発言。マスク着用を一般に勧めることを、対策チームの中で「かなり真剣に検討している」と明らかにした。
 
大きな理由は、ウイルスの特性にある。新型コロナはインフルエンザなどと同じように、せきやくしゃみなどの飛沫(ひまつ)から感染するが、インフルエンザとは異なり、感染しても症状が出ない人が一定数いることが分かってきた。

CDCのロバート・レッドフィールド所長によると、こうした感染者は最大で25%に上り、感染した自覚がないまま、ウイルスを広めている人が多数いる可能性があるという。そこで、飛沫による感染防止策としてマスク着用が注目をされている。
 
(中略)米科学誌サイエンスのインタビューに答えた中国CDCの高福所長は「欧米の大きな間違いは、みんなマスクをしないことだ。多くの人が無症状や症状が出る前に感染を広げている」と話した。
 
日本の厚生労働省も「飛沫及びそれらに含まれるウイルスなど病原体の飛散を防ぐ上で高い効果を持つ」とし、せきやくしゃみなどの症状がある人に対しては、マスクの積極的な着用を促している。

一方、マスクの隙間からウイルスが入ったりするため、自分を感染から守るのは難しいとされ、効果を証明した研究も少ない。
 
ただ、新型コロナによる需要もあってマスクの供給は世界的に滞っており、米国でも入手は困難だ。(後略)【4月3日 朝日】
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米ロサンゼルス市のエリック・ガルセッティ市長は1日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、市民に「外出時には手製の布マスクなどで顔を覆って」と呼びかけています。

ただし、ガルセッティ氏は一方、市販の医療用マスクや、「N95」と呼ばれるより防護性が強いマスクについては、医療従事者が必要としていると指摘。数を確保するため、市民が使用しないことを要請したとのこと。【同上より】

感染しても症状が出ない人が一定数いいて感染を拡大させる恐れがあること、および、現実にマスク着用のアジア諸国での感染爆発が抑えられていることからのマスク効果見直しのようです。

なお、無症状者の感染拡大リスクはさほど大きくないとのWHO指摘もあります。

****WHO、感染は主に発症者から 研究結果、無症状からは少数と****
世界保健機関(WHO)は2日、新型コロナウイルス感染症では主に発熱やせきなどの症状を示した患者から他人に感染しており、症状が出ていない患者からの感染例は少ないとする研究結果を明らかにした。
 
WHOによると、感染経路としては、感染者のせきなどによる飛沫感染や、ウイルスが付着したドアノブや手すりなどに触れた手で目や鼻などを触る接触感染がある。患者が発症してから最初の3日間に、鼻やのどからのウイルスの排出が最も多いことが分かったという。
 
また、感染から発症までは平均5〜6日の潜伏期間があるが、14日間に上る例もあった。【4月3日 共同】
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まあ、それはともかく、トランプ政権も国民へのマスク着用要請の方向へ舵を切るようです。
また、ニューヨーク市も市民に着用を要請しています。

****NY市、外出時のマスク使用要請 トランプ政権も近く勧告****
新型コロナウイルスの感染が急増する米東部ニューヨーク市のデブラシオ市長は2日の記者会見で、外出時にはマスクや布で口を覆うよう全ての市民に要請した。

これまでは米疾病対策センター(CDC)の方針に従い、健康な人はマスクを着用する必要はないとしてきたが、感染者急増で方針を転換、一般に向け初めて着用を呼び掛けた。
 
米メディアは、トランプ政権も近くマスク使用を巡る勧告を公表する方針だと報じており、米国で今後、マスクを使用する動きが広がりそうだ。
 
米国の感染者数は3日までに24万人超、死者も6千人を超えた。【4月3日 共同】
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政権の方針はともかく、すでにアメリカでも“食料品店に並ぶ買い物客は半数弱がマスク姿”【4月3日 朝日】というように、ニューヨークの地下鉄で予防のためマスクをしていたアジア系の女性が男に殴られるなどの事件が起きた以前とは大きく変化してマスク現象が広がっているようです。

そのあたりのマスク重視の方向への変化はアメリカだけでなく、やはりマスク文化がなかった欧州でも同様です。

****欧州「マスク狂騒曲」 仏大統領もピンチ****
新型コロナウイルスが中国で広がった1月、パリでマスクをしていると「危ない東洋人」と見られた。ところが、欧州の大感染でオーストリアやドイツでは「アジアを見習え」とマスク着用の義務化が広がる。

フランスではマクロン大統領が「マスク不要論」を掲げて猛反発を受け、方針修正を迫られた。
 
マクロン氏は3月末、仏西部のマスク工場で演説した。国内での増産を約束し、「いろんな職種に順次供給できるようにする」と述べた。「マスク配布は医療用に限定」としてきた方針の見直しだ。

 ■政府本音はマスク不足
突然の変化は、外出禁止令が出たフランスで、例外的に出勤する警察官や郵便局員、スーパー店員の間で「マスクなしに、身の安全が確保できない」という不満が相次いだためだ。職場ボイコットも広がった。マスクは現在、政府が管理しており、処方箋がなければ市販品は入手できない。
 
仏政府の「マスク不要」原則は、公には世界保健機関(WHO)の予防指針に沿ったものだった。WHOは「健康な人にマスクは不要」とし、供給不足にならないよう過度の使用を控えるべきと訴えていた。
 
フランス政府の本音は、危機的なマスク不足にある。感染騒ぎの前、国内生産能力は1週間あたり330万枚だった。医療現場では現在、少なくとも週4000万枚が必要。中国から必死で輸入しており、とても一般配布できる状態ではない。

カスタネール仏内相は「同じマスクを着け続ける方が危険」と述べて、検問に出動する10万人の警察官には必要ないと主張した。

 ■「我々は肉弾か!」
だが、スペインやイタリアでは検問の警察官にマスクを支給しているため、仏警察組合は「我々は肉弾か!」と大反発した。

国内では、警察官やスーパー店員の感染者が相次いで確認され、政府不信は募るばかり。世論調査で「政府は何か隠している」「本当のことを言っていない」と考える人が64%にのぼった。
 
欧州では元々、「マスクは重病人がつけるもの」という考えが強かった。だが、「マスク着用が定着しているアジアでは、感染が抑えられている」「飛沫を防止し、他人に感染させないために有効」という見直し論が医師から相次ぎ、政府も動き出した。
 
オーストリアのクルツ首相は「欧州はマスク着用で大きな間違いを犯した。外国の文化だが、我々も慣れねばならない」と発言。1日からスーパー店頭で、マスクの無料配布を開始し、買い物客に着用を義務付けた。将来は交通機関にも広げる方針だ。

 ■シャネルもマスク生産
チェコやスロバキアも、鼻と口を覆わずに、買い物に出かけること禁じた。マスクがなければ、スカーフやバンダナでもOKとする。ドイツではテューリンゲン州イエナ市が「鼻と口を覆う」よう定めた。公共交通や商店、オフィスに順次広げていくとしている。
 
フランス政府は中国にマスク10億枚を発注し、特別機で緊急輸入を開始した。このほか、警察官や店員ら一般予防用に新たなマスク規格を設け、増産を進めようとしている。

シャネルやディオール、サンローランなど、フランスが誇る高級ファッション・ブランドも次々と「マスク生産」に名乗りを上げており、新型コロナで、欧州のマスク文化は一変しそうだ。
 
3月末の仏世論調査によると、政府の感染対策に「信用できない」の意見は55%。10日間で9ポイント上がった。再来年、再選をかけた大統領選が控えるマクロン氏は「マスクの乱」に足を引っ張られるとは、思いもよらなかったことだろう。【4月3日 三井美奈氏 産経】
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各企業がマスク生産や消毒用ジェル生産に乗り出すといった、まさに“戦時体制”になっています。

上記のよう国民の不満を抑えるため何としてもマスクを大量確保したフランスと、冒頭のようにマスク重視に変わりつつあるアメリかの間でマスクの奪い合いも。

****仏政治家「米国人がフランスのマスクを横取り」、米側は否定****
新型コロナウイルス危機の中、フランスの一部の政治家が、同国が発注していた中国製マスクを米国人らに横取りされたと主張している。これに対し米政府高官は2日、「全くのうそ」だと否定した。
 
パリを含み、最も人口の多いイルドフランス地域圏のバレリー・ペクレス知事は、フランスの買い手に売約済みだった品を、土壇場になって身元不明の米国人らが金にものを言わせて横取りしたと非難。「手配しておいた物資を、われわれより高値をつけた米国人に奪われた」と述べた。
 
ペクレス氏は新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)対策に欠かせないマスクなどの品の支払いについて、フランスは着払いにしているが、米国人らは現金で先払いしたと主張した。
 
ペクレス氏はニュース専門局LCIに対し、米国人らは「全世界が苦難に見舞われている裏で、商売をしようとしている」と語った。
 
フランス北東部グランテスト地域圏のジョン・ロットナー知事も1日、同様の主張をしたが、情報源も、関与したとみられる人物の身元も明らかにしなかった。
 
ロットナー氏は民放ラジオ局のラジオ・テレビ・ルクセンブルクに対し、「(空港の)滑走路で米国人が現金を取り出し、われわれが注文していた品物に対して3〜4倍の金額を支払った」と語った。
 
こうした批判に対し、匿名を条件にAPFの取材に応じた米政府高官は「米国政府は、中国からフランスに配送される予定のマスクを一切購入していない」と述べ、フランス側の主張は「全くのうそ」だとした。
 
一方、カナダのジャスティン・トルドー首相は2日、マスクが自国から他国に流出しているという同様の報告について、「憂慮すべき」とした上で、当局に調査を求めた。 【4月3日 AFP】
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マスクを毛嫌いしていた欧米がマスク奪い合いの泥仕合、まさに様変わりの様相です。

一方、以下のような話題も。

****中国人女性が米国でマスク爆買い「米国人には1つも残してやらない」****
2020年4月1日、台湾メディアの聯合新聞網は、米国でマスクを買いだめした上、「米国人には1つも残さない」などとする中国人女性の動画が拡散し、激しい非難の声が出ていると報じた。 

記事によると、米国で新型コロナウイルス感染者が増え続け、マスクをはじめとする防疫物資が不足する中、フロリダのスーパーマーケットで中国人の中年女性がマスクを買いだめする映像がネット上で拡散した。 

映像はまだ米国内で感染が深刻化していなかった1月末に、この女性が白人の夫、子どもと街に出掛け、複数の商店でマスクを買いだめする様子をライブ配信したものとみられ、その時の配信のタイトルには「気持ちいいほど買ってやった!全部買い占めて米国人には1つも残してやらない!」と書かれていたという。 

映像が拡散すると中国系住民を含むネットユーザーから「無恥の極み」「病的だ」「あまりにも身勝手すぎる」「人間のクズとしか言いようがない」など批判の嵐が巻き起こったという。 

記事はさらに、この女性についてネットユーザーらが身元の特定を進め、タンパベイに住む中国東北部出身者と判明したと紹介。2018年には家庭内暴力(DV)によって逮捕された経歴もあったと伝えている。【4月3日 レコードチャイナ】
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まあ、上記はかなり異様な“個人的資質”の問題のようです。

私個人は、マスクはそんなには頻用しない方ですが、マスクの効用は「マスクをしていればなんとなく安心」という心理的面が大きいとも思っています。ウイルスに対して何の対策もとれていないというのは、不安になりますので。

あと現実的な話としては、マスクをしていないと“非常識な人間”とみられれるような“周囲の目”の圧力・・・も大きいようにも。

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外出制限による国民不満 マレーシアの“ドラえもん騒動” フィリピンは射殺容認 インドは暴動懸念

2020-04-02 23:24:33 | 疾病・保健衛生

(マレーシアの人権団体がつくったバナー。ドラえもんが「僕は女性を見下しません!」と叫んでいる【4月2日 海野麻実氏 Newsweek】)

【マレーシア 外出制限でDV増加 「女性はおしとやかにドラえもんの声をまねよ」のアドバイスで炎上】
世界で拡大する新型コロナですが、マレーシア保健省は3月31日、マレーシア国内で新型コロナウイルスの感染者を新たに140人確認したと発表、感染者数は累計で2,766人となっています。
また、同日には感染者6人の死亡を確認し、死者数は計43人。

こうした状況で、マレーシア政府は厳しい活動制限令を実施しており、ジョギング中の日本人が拘束されて話題にもなりました。

****“外出”住民の拘束相次ぐ ジョギングの日本人も一時拘束 マレーシア****
感染拡大防止策として、原則外出を禁止しているマレーシアで、規則を破った住民の拘束が相次いでいる。

28日は、全土で649人が拘束されたほか、ペナンでは29日、69人が裁判所に送致された。
27日は、ジョギング中の日本人も一時拘束されている。【3月29日 FNN PRIME】
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この活動制限令は4月1日から更に強化され、スーパーマーケットなどの営業時間を短縮するほか、タクシーを含む自動車の通行時間も制限されています。なお、食品の買い出しや緊急時の外出は認められているようです。【4月1日 NNA ASIAより】

外出も厳しく制約されている状況で、3月31日ブログ“新型コロナによる自宅での自粛の家庭生活への影響  離婚増加やDV増加のニュースも”でとりあげた、家庭内暴力・DVの増加がマレーシアでも顕著なようです。

女性・家族・社会開発省も事態を憂慮して対応策を発表しましたが、その方向性が間違っており、厳しい批判にさらされることにもなっています。

****女性はドラえもんの声をまねよ、マレーシア女性省の助言に非難殺到****
(中略)マレーシアは多くの国々と同様、新型ウイルスの感染拡大を防ぐため、全国民に自宅待機を命じている。
 
女性・家族・社会開発省はがフェイスブックへの一連の投稿で、外出制限中に妻がどう振る舞うべきかについて助言した。
 
すでに削除された投稿では、洗濯物を一緒に干す夫婦のイラストの横に、夫に文句を言うのを控え、アジア各地で人気があるドラえもんの声をまねるよう女性に助言する説明文が添えられていた。
 
他の投稿では、在宅勤務をする女性に対し、化粧をして、カジュアルな服装ではなくきちんとした服装をするようアドバイスしていた。
 
これらの投稿を受け、ソーシャルメディアには怒りや不信を示す投稿が殺到。あるユーザーは、「どうして家で着飾ったり化粧したりすることで、新型コロナウイルス感染症を予防できるのか? 教えてくれ、頼む」と投稿した。
 
女性・家族・社会開発省は謝罪し、投稿が一部の人の気分を害したかもしれないと認めた上で、「今後は注意していく」と述べた。しかし、助言の狙いについては、「在宅勤務の期間中に、良好な家族関係を維持すること」で、他意はないと主張した。
 
外出制限や雇用不安によるストレスから対立が生じる可能性が増加する中、世界で家庭内暴力の急増が懸念されている。

地元メディアによると、マレーシアでは外出制限が始まった3月18日以降、DV被害者ら弱い立場にある人々向けの国営電話相談サービスへの問い合わせが50%超増加したという。 【4月1日 AFP】AFPBB News
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女性・家族・社会開発省の投稿は、イスラムを国教とするマレーシア国内における女性に対する一般的(特に男性側の)認識程度を示すものでもあるのでしょう。

ただ、どうしてドラえもんがここで出てくるのか?
気になっていましたが、そのあたりを解説した記事がありました。

****コロナ禍のマレーシアで始まった「ドラえもん大喜利」****
<東南アジアで新型コロナウイルスの感染者が最も多いマレーシア。外出禁止令も出たこの国で、政府の不手際によって日本のドラえもんが思わぬ「炎上」をしている>

思わぬところで「ドラえもん」が炎上している。
舞台は東南アジアのイスラム教国マレーシア。現在、新型コロナウイルスの感染者が東南アジアで最も多く、アジアで初めて国境封鎖が実施され、事実上の外出禁止令が2月中旬から出されている。

今、世界各地で「外出禁止ストレス」によるDV被害が報告され、国連も警鐘を鳴らし始めている中で、マレーシアの政府機関が自宅での夫婦喧嘩や言い合いを少しでも避けるために妻がどう振る舞うべきか、SNSでドラえもんを引き合いにアドバイスを試みた。

しかし、その内容がいささか女性たちの反感を買ってしまったようで――。

マレーシアの女性・家族・社会開発省が3月30日にFacebookやインスタグラムを通じて投稿したのはこんな内容だ。洗濯物を夫とともに干している夫婦のイラストの脇にコメントでこう書いてある。

「『ねえ、あなた。これが洗濯物を干すときに洋服を吊る正しい方法よ』とドラえもんの声を真似て、おしとやかにクスクスとはにかみながら、女性らしく笑いましょう!」
夫への文句は控えめに、妻はユーモラスな言葉やフレーズを使うべきだ、とも書かれている。

(「ドラえもんの声を真似てはにかみながら笑いましょう」とアドバイスをして非難を浴びた投稿(マレーシアの女性・家族・社会開発省のフェイスブックより、現在は削除)

外出制限中の自宅での服装についても、パジャマのような「部屋着」を身に着けることを避け、「あなた自身をいつも通りに仕立てましょう、お化粧をして、きちんとした服装を心がけましょう」などとアドバイス。

さらに、夫に皮肉を言う前に、20秒数えていら立ちを鎮めるのも効果的だとした上で、「ダイニングテーブルや台所、リビングルームは清潔に保つ」ことも奨励した。

あくまでユーモアの一つとしてドラえもんを登場させてみた、言ってみれば悪意のない投稿であったわけだが、女性たちからは性差別・女性蔑視だと非難轟々のコメントが相次いだ。

「どうして、コロナ対策で外出自粛の最中に、家でドレスアップしてお化粧を強いられなければいけないの?教えてください」
「もう2020年です、お願いだから前進してください。女性たちにとってもっと重要な問題にフォーカスしてほしい」

瞬く間に批判の嵐にさらされた女性・家族・社会開発省は謝罪に追い込まれ、投稿をすぐに削除。気分を害された人々に対して今後は注意を払いたいとしたうえで、あくまで「外出禁止令の最中、少しでも平和な家庭環境をどう維持するか」をアドバイスしたかった、と弁明している。

ちなみに、マレーシアでドラえもんは1992年から放映が始まり、今も国民の絶大な人気を誇る。ドラえもんの声はマレー語に吹き替えられ、マレーシア人の女性声優が日本のドラえもんよりもやや高い声で喋っているのが特徴だ。

現在でもマレーシア衛星放送最大手「Astro(アストロ)」グループが毎週放送しており、ドラえもんマレーシア版のフェイスブックオフィシャルサイトでは、ドラえもんが全国各地の商業イベントなどに出演し、子供たちに取り囲まれている様子が随時アップされている。

外出禁止令でたまるうっぷん
人気キャラクターのドラえもんを巻き込んだ騒動は、外出制限下で暇を持て余している国民の間に、皮肉とユーモアを交えて拡散されていった。

真っ赤な口紅とほんのりピンクの頬紅で化粧を施し、綺麗にカールした黄色いカツラを頭にちょこんと乗せたドラえもんが、小さな手鏡で自分の顔を映しながら「今日のお食事は何がいいかしら?」とコメントしているイラストなど、この騒動に乗じたユーモア溢れるドラえもんのコラージュが次々にネット上に登場。#DoraemonRespectsWomenというハッシュタグもツイッターで広がっている。

しかし、笑ってばかりもいられないようで、女性支援団体のマレーシア支部は即座に女性・家族・社会開発省の投稿が不適切であると強く反発。「これらの標語はジェンダーの不公平を加速させるものであり、古き家父長制の概念を永続させかねないものだ」と厳しく指摘した。

この騒動の背景には、外出禁止令が敷かれて2週間が経った今、散歩やジョギング、自由な買い物なども許されない中で、人々のうっぷんが徐々にたまっているという現実がある。

厳しい外出制限下で家庭内の暴力が増えていることは、今や世界中で報告されはじめている深刻な事態だ。マレーシア地元紙によると、国内では外出制限が始まって以降、DVや児童虐待の被害者ホットラインに2000件近くの電話相談(通常時の2倍以上)が掛かっている。

女性への暴力問題に関する国連特別報告者のドゥブラブカ・シモノビッチ氏は、世界各国が外出制限などを呼びかけている環境下で、家庭内暴力が増加する恐れが非常に強いと警告している。(中略)

ドラえもんの「どこでもドア」が本当にあれば、マレーシアでDVに悩む人も減るのだが。【4月2日 海野麻実氏 Newsweek】
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日本人には、ドラえもんと言えば大山のぶ代さんの独特の声のイメージが強いですが、“ドラえもんの声はマレー語に吹き替えられ、マレーシア人の女性声優が日本のドラえもんよりもやや高い声で喋っている”とのことで、きっと愛らしい声なのでしょう。

それにしても、“おしとやかにクスクスとはにかみながら、女性らしく笑いましょう”“お化粧をして、きちんとした服装を心がけましょう”・・・まあ、男性の女性への期待と言えば言えなくもありませんが・・・「冗談じゃないわよ!」というのはマレーシア女性も日本女性も同じです。

【フィリピン 「封鎖地区で「問題」を起こす者がいれば射殺すべき」との“ドゥテルテ節”】
冒頭、マレーシアでは活動制限の規則を破った住民の拘束が相次いでいるという記事を取り上げましたが、マレーシアでは拘束ですみますが、これがフィリピンなら・・・

****封鎖中に問題起こす者は「射殺」を、比大統領が発言****
フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は1日夜、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を受けて封鎖されている地区で「問題」を起こす者がいれば射殺すべきだと、治安部隊に指示した。
 
人口約1億1000万人の同国では、現在およそ半数が隔離下にある。この中には、厳しい移動制限により失業した数百万人の貧困層も含まれている。
 
ドゥテルテ大統領がこの指示を出した演説の数時間前には、首都マニラで、政府が貧困層への食料支援を怠っていると糾弾する抗議デモを行ったとして、スラムの住民約20人が逮捕されていた。

「警察と軍、そして自治体関係者らに命令する。問題が起きた場合、あるいは人々が争い自分の命が危険にさらされる事態になった場合は、射殺するように」と述べた大統領は、「問題を起こす代わりに、私はお前らを墓に送る」と言い放った。
 
フィリピンでは、これまでに2311人の感染が確認され、96人の死亡が報告されているが、同国は検査を強化し始めたばかりで、感染者数は増え続ける見通し。
 
ただアーチー・ガンボア国家警察長官は2日、「恐らく大統領はこの危機的状況を踏まえ、法の適用について改めて強調したまでだろう」との見方を示し、警察官らが問題を起こした市民を実際に射殺することはないと話した。 【4月2日 AFP】
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例によっての「ドゥテルテ節」ではありますが、この厳しい措置の一方で、2千億ペソ(約4200億円)を低所得層に分配する方針も決定しており、「アメとムチ」の両方で国民の不満を抑え込もうという話のようです。

ただ、多少のおカネをもらっても、失業などの埋め合わせには程遠いようにも・・・

フィリピンの感染状況については、以下のようにも。

****フィリピン、死者100人超す=新型コロナ****
フィリピン保健省は2日、新型コロナウイルスに感染した国内の死者数が、前日より11人増えて107人になったと発表した。感染者数は2月末まで3人だったが、3月に入って急増。2日までに累計2633人に達した。【4月2日 時事】 
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こうした情勢にドゥテルテ大統領も苛立っているのでしょうが、それ以上に苛立っているのは失業などを強いられた国民です。

外出規制などの厳しい対応は、出口が見えないなかで、国民が受けるダメージをどのようにフォローするのかが重要な問題となります。

【インド  強気のモディ首相 異例の謝罪 失業増加で暴動の懸念も】
インドでも、あの強気のモディ首相が謝罪する状況にもなっています。

****インド、都市封鎖で失業増加 徒歩で帰郷も 首相は謝罪****
インドで新型コロナウイルス対策のため、全土を対象としたロックダウン(都市封鎖)が始まって、1日で1週間が経過した。

人口約13億人の移動を原則禁じる未曾有の大規模封鎖だが、失業者が相次ぐなど混乱も起きている。低迷が続くインド経済への影響も懸念され、モディ政権は難しいかじ取りを迫られている。
 
「特に貧しい人々に対し、私が過酷な措置を取ったことを謝罪する。だが、ウイルスとの戦いに他の選択肢はない」
モディ首相は3月29日のラジオ放送で封鎖に理解を求めた。強気の発言が多いモディ氏の謝罪は珍しい。
 
全土封鎖は21日間で25日から実施されている。感染拡大を防ぐため外出を制限し、食料品店や銀行など生活に必要な業種以外の商店の営業を認めていない。鉄道や地下鉄など公共交通機関もほぼ全面停止した。
 
ただ、多くの産業活動が停止したことから、日雇い労働者らの失業が続出。地元メディアは1億3600万人が職を失うリスクに直面すると見積もる。ツイッターでは「モディ氏が災害を起こした」というキーワードが拡散。昨年5月の総選挙で国政与党インド人民党(BJP)の大勝を呼んだ熱狂は消し飛んだ。
 
職を失った人が徒歩で故郷を目指す動きが出ており、西部グジャラート州では帰郷の交通手段を求める労働者約500人と警官隊の衝突も起きた。
 
政府は事態を憂慮し、貧困層支援を軸とする1兆7千億ルピー(約2兆4千億円)の経済対策を発表。8億人を対象に米や麦を配給し、8300万世帯にガス調理用ボンベを提供する。ただ、効果は限定的との見方が強い。
 
インドはここ数年、景気減速が続き、政府は1月、2019年度の国内総生産(GDP)成長率を前年度比1・8ポイント減の5・0%と予測。11年ぶりの低成長となる見通しだ。

さらに新型コロナが影を落とす可能性が高く、インド紙ヒンズー・ビジネス・ラインは「政府はショックを緩和する方法を早急に見つけなければならない」と警告している。【4月1日 産経】
*********************

“保健当局は効果を強調するが、収入を失った労働者による暴動の懸念も生じている。邦人には帰国の動きが出てきた。”【3月31日 共同】とも

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新型コロナ対応で、対立状態にあった国際関係でわずかながらも協調・連帯の動きも

2020-04-01 23:41:20 | 国際情勢

(【3月30日 東京】)

 

【「効果的な(パンデミックへの)対応は連帯することで初めて可能となる」】
世界の新型コロナウイルスの感染者数が31日、累計で80万人を超え,死者数も3万9千人を上回っています。

数字は日毎に、と言うより、時間ごとに大きく増加しており、最近1週間では毎日6万人ほどの感染者が増えるペースとなっていますので、現時点では90万人に近づくような数字になっていることが予想されます。

****「第2次大戦以来の危機」 国連総長、ウイルス対策で連帯訴える*****
国連のアントニオ・グテレス事務総長は3月31日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を、第2次世界大戦以来に世界が直面した最悪の危機と位置付け、世界各地で紛争の引き金になるとの懸念を示した。
 
グテレス氏は記者団に対し、パンデミックは「世界中のすべての人々の脅威となり」、経済的な影響としては「近年で恐らく類を見ない景気後退を招く恐れがある」と指摘。

「この二つの事実に加え、不安定性を高め、混乱や紛争を増加させる一因になるというリスクは、第2次世界大戦以降にわれわれが直面した最も困難な危機であると思わせるものだ」と述べた。
 
さらに「より強く、効果的な(パンデミックへの)対応は、すべての人々が協力し、政治的駆け引きをやめ、人類の今後が懸かっていることを理解した場合にのみ、連帯することで初めて可能となる」と訴えた。 【4月1日 AFP】
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“すべての人々が協力し、政治的駆け引きをやめ”ることが、決してきれいごとではなく、人々の生命と暮らしを守る上で不可欠なこととなっています。

仮に、自分の国の状況が改善できたとしても、世界全体の状況がかわらない限り、いつまでも国を閉ざしてウイルス流入を警戒し、経済活動も低迷することを余儀なくされます。

****コロナで中国経済減速 懸念強まる悪化“第2波”****
(中略)現在、中国は世界での感染拡大を警戒する。それにより世界的に需要が減退し、中国経済悪化の“第2波”が懸念されるためだ。

先行きに漂う暗雲に対し、習近平指導部も積極的な財政出動を行う構えを見せる。3月27日の中国共産党中央政治局会議では、財政赤字拡大を容認し13年ぶりに特別国債を発行する方針を決めた。
 
中国は2008年のリーマン・ショック直後に4兆元(当時のレートで約57兆円)の大型景気対策を打ち出し、世界経済の回復にも寄与した。しかし、過剰債務などの構造問題が深刻化する“後遺症”に今も悩まされており、今回は中国にどこまで期待できるか不透明だ。【4月1日 産経】
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しかし、これまでは国際的な協力体制の構築は進まず、イランとアメリカ、中国とアメリカ、ロシアとアメリカといった対立関係が依然として続いてきました。(多くの対立関係の一方の当事者にアメリカの名前があがっているあたりに、協調よりアメリカ第一の立場からの競合を優先するトランプ政権の性格が表れているように思えます)

【米国務長官、イラン制裁緩和を示唆】
ただ、さすがにここにきて、ようやく変化の兆しも見えるようになっています。

****パンデミックで変わる世界には、どんな未来が待っているのか?****
(中略)
新型コロナで風向きが変わった米イラン関係 
(中略)国際情勢の観点からもCOVID-19は確実に大きな脅威ですが、いくつかの国際案件に変化をもたらしています。その一例がイラン核合意を巡り対立が続き、また年始のソレイマニ司令官殺害によって全面戦争一歩手前まで緊張が高まった米・イラン関係です。

いまだにイラクを舞台にした報復合戦は継続中ですし、相互に批判の手を弱めてはいませんが、両国とも今はお互いを叩く余裕を失っていることも確かです。

今週、イラン政府が公式にIMFに対して50億ドルの緊急支援要請を行いました。実は1962年以降初めてのケースで、今、アメリカと全面的に衝突し、緊張が高まるイランが、アメリカの影響下にあるIMFに支援要請をするという事態にまで、COVID-19の感染はイランの首を絞めているのだといえます。

革命防衛隊をコロナ対策の責任者に据え、国内的にはハーマネイ師率いる政府への支持を何とか保つために、「こういう状況に陥ったのはアメリカの陰謀だ!」という姿勢を表に出しつつ、国際社会を通じてアメリカに対し経済制裁を撤回するように求めるという戦術を用いて、何とか統一性を保とうと必死です。

イラン国民の多くはそのような小手先の策には乗りませんが、指導部への反感を募らせてまたデモに訴えかけることが出来ないほど、新型コロナウイルスの蔓延はイラン国民を恐怖に陥れていることが分かります。

これで急転直下、米イラン間の高まる対立と緊張が緩和されるとは考えづらいのですが、約60年にわたる宿敵への反抗は、米イランともにしばし休戦と見ることが出来、武力衝突の危機はしばらく棚上げできるかと考えます。(後略)【3月31日 島田久仁彦氏 MAG2NEWS】
***********************

イラン保健省は31日、新型コロナウイルス感染症の死者が過去24時間で141人増加し、2893人に達したと発表。
感染者も3111人増加し、計4万4606人に達し、うち3703人が重体という状況です。
イランについては、公表数字は過小で、実態はもっと悪いのでは・・・との観測もなされています。

アメリカも18万人という世界最大の感染者数になっており、米ホワイトハウスのバークス新型コロナウイルス対策調整官は31日の記者会見で、新型コロナウイルスによる国内の死者が、他人との接触を避ける「社会的隔離」などの対策を講じた場合でも10万人から20万人に上る可能性があるとしています。

両国とも、ケンカをしている状況にないのが実態です。

これ以上イランに圧力をかけても、より頑なな反米政権に代わる可能性があるぐらいでしょう。
それよりは、人道支援を強化することで、交渉の糸口をつかんだ方がアメリカにとっても得策でしょう。

****イランを新型コロナから救うメリット****
(中略)3月20日、イランのロウハニ大統領は、イラン暦の新年メッセージで、米国による経済制裁の解除を求めた。
 
これに関して、3月16日、英国のシンクタンクIISS(国際戦略研究所)のマーク・フィッツパトリック米国事務局長は、同研究所のサイトに、「米国はいかにイランのコロナウィルス対策を支援し、外交を強化することができるか」と題する論説を寄稿した。

その論旨を簡単に言えば、イランはコロナウイルスの危機にある、イランは支援を欲している、米国は人道的な観点から支援すべきである、支援のための良策はイランがIMFに要請した支援の実現に力を貸すこと、およびイランが薬品と医療器材を欧州から買えるようEUが設立したINSTEXを承認することである、ということである。もっともな意見であろう。
 
フィッツパトリックは、トランプ政権が目指すレジーム・チェンジは幻想でしかない、もしレジーム・チェンジがあるとすれば、それは革命防衛隊のクーデタによるもので事態は現在よりも悪化すると指摘する。

その上で、米国がイランを支援するため上記の人道的な措置を取ることが出来れば、受刑者の相互解放を含め外交上の接触の糸口になろうと期待している。

イラン核合意は欠陥品だと声高に言い、「最大限の圧力」戦略に屈する他ないと脅かし、より良い合意の交渉を呼びかけたところでイランが応ずる筈もない、と分析する。論説の提案は地味ではあるが、何らかの進展の可能性のある提案に思える。(後略)【3月30日 WEDGE】
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アメリカからは制裁緩和を示唆するような変化が見られます。

****米国務長官、イラン制裁緩和を示唆 医薬品など輸入停滞 新型コロナ****
ポンペオ米国務長官は3月31日、新型コロナウイルスの感染が全世界で急拡大していることを念頭に、イランなどに科している経済制裁を見直す可能性を示唆した。

米ジョンズ・ホプキンズ大の集計によると、イランの感染者数は4万4000人を超えている。米国からの制裁の影響で外国産医薬品の流通不足も指摘されている。
 
ポンペオ氏は国務省での記者会見で、国連などから言及されている制裁緩和の検討について問われ、「全ての政策はいつも見直されている。もちろんだ」と述べた。

一方で、米国の制裁は医療機器や医薬品などの人道物資は対象外であることも強調した。そのうえで、イランや北朝鮮を念頭に「いくつかの国は人々が苦しんでいるにもかかわらず、ミサイルや核開発などを続けている」と指摘した。
 
米国は2018年、イランの核開発を制限するための核合意から離脱。イラン産原油の禁輸やイランの金融機関との取引禁止などの制裁を再開した。国際的な金融機関が制裁対象となることを恐れて代金の決済をしないため、イランでは医薬品などの人道物資の輸入が滞っているとされる。【4月1日 毎日】
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ただアメリカ側は、医薬品などの人道支援物資について、制裁に抵触せずにスイスからイランに運び込む仕組みを構築したとのことで、制裁そのものの緩和が進むのかどうか不透明です。

【トランプ大統領 中国批判かた一転、中国の支援を賞賛】
米中関係については、(アメリカ国内の状況悪化の責任を中国に転嫁する思惑か)「中国ウイルス」という言葉を頻用するトランプ大統領と中国の間で対立が目だっていました。

*****新型コロナウイルスでも火花散らす米中両大国 *****
(中略)貿易・関税の報復合戦に始まり、南シナ海での軍事的な緊張、One China-One Asia外交と、アジア太平洋の勢力圏堅持を狙う米外交との鬩ぎあい(主に同盟国の確保)、アフリカ・中東地域での覇権争いなど、例を挙げれば次々出てくるほど、米中間は、現代の2大国として、争っています。

その争いに今回、『どちらが新型コロナウイルスを持ち込み、ばら撒いたか』という責任転嫁合戦が、メディアやSNSを通じて繰り広げられています。

「新型コロナウイルスは米軍が武漢に持ち込んだのだ」と40万人以上のフォロワーを持つ中国外務省の副報道官である趙氏が言えば、「けしからん!全くの言いがかりであり、断じて許すことはない。もともとこれはChineseウイルスだ!」とトランプ大統領やポンペオ国務長官が応戦する事態になっており、対立がエスカレートする一方です。(中略)

ちなみに、今回の新型コロナウイルスの蔓延に対する戦いは、世界の2大国として、一旦戦いの矛を収め、休戦したうえで、見えない敵である新型コロナウイルスの蔓延に対する協調姿勢を取り、並んで対策に当たるという、『国際情勢の緊張緩和と信用の回復に寄与する絶好のチャンス』ではなかったかと思います。

もし、それぞれが知見と資金を持ち寄り、世界レベルでの新型コロナウイルスの蔓延の封じ込めに乗り出すことが出来たら、自国第一主義の高波が国際社会を襲い、協調が絵空事とまでこき下ろされるようになった世界の潮流を、再度、国際協調の拡大と深化の方向に戻すことが出来たかもしれませんが、その代わりに、両国は、すでに十分すぎるほど険悪になってしまった米中関係の緊張を極限まで高めることになってしまっているような気がします。【3月31日 島田久仁彦氏 MAG2NEWS】
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ただ、変わり身の早さはトランプ大統領の身上でもあり、ここ数日で大きく変化しているようにも見えます。

****米中首脳の電話会談後、トランプ氏が「中国ウイルス」の呼称やめる****
米国のトランプ大統領は26日夜(北京時間27日午前)、中国習近平国家主席と電話会談した。両首脳は、世界規模で感染が拡大している新型コロナウイルスへの対応で、両国の連携を確認した。
 
トランプ氏は電話会談について、ツイッターに「中国はウイルスについて十分な理解を深めている。我々は緊密に連携している」と書き込み、中国の対応を批判してきた従来の立場から一転、協調姿勢を示した。投稿では、これまで度々使ってきた「中国ウイルス」との呼称に代わり、「コロナウイルス」と記した。
 
中国外務省によると、習氏は「団結して感染拡大と戦うべきだ」と呼びかけ、「米国が困難に陥っているのは理解している」と、医療物資の提供などで支援する意向を示した。
 
トランプ氏は自国の感染対策を優先せざるを得ない中、米中対立の沈静化を図る狙いがあったとみられる。国際的な批判が集中するのを避けたい中国と思惑が一致した形だ。ただ、今回の電話会談について双方とも相手側から要請があったと説明しており、食い違いをみせている。【3月27日 読売】
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この変わり身には中国ネットも唖然としている感も。

*****トランプ大統領が中国からの支援物資を称賛=中国ネット「態度の急変に驚き」****
トランプ米大統領は30日(現地時間)、ホワイトハウスでの記者会見で中国やロシアから届いた支援物資を称賛。中国のネット上で大きな関心を集めている。 

トランプ大統領は「中国はわれわれにいくらか物資を送ったが、それらは素晴らしかった。ロシアは非常に大きな飛行機に積まれた物資、医療用品を送ってくれたが、見事だった」と発言。「その他の国も物資を送ってくれてとても驚いた。とてもうれしく驚いた」と続けた。 

トランプ大統領は新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼ぶなど、中国に対して非友好的な態度を取っていた。そのため、環球時報が中国版ツイッター・微博(ウェイボー)でこれを報じると、中国のネットユーザーからは、「態度の切り替えの早さには確かに驚かされる」「役者をやらないのが残念だ」「彼はこっそり中国に来て顔色を変える技術を学んだのだろう」などの声が寄せられた。 

また、「私は彼が本当に嫌いだが、米国の医療スタッフや人民に罪はない。うん…中国の決定を支持する」「結局人類は運命共同体」「世界を救うためだ」などと中国政府による米国の支援を支持する声も上がっている。【3月31日 レコードチャイナ】
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電話会談で、トランプ大統領は習近平主席から何をもらったのか?

“米中関係専門家の間では、トランプ氏が習近平氏から手に入れたものは、新型ウイルス感染拡大を阻止するのに必要な医療機器、つまり診断キットの提供ではないか、とする見方が支配的だ。”【4月1日 高濱 賛氏「トランプ大統領、新型ウイルスで中国の軍門に下る」 JBpress】

【プーチン大統領、対米支援を提案】
一方、ロシアとの関係も好転の兆し)が見られます。(と言うか、プーチン大統領としては、この機にアメリカに恩を売って・・・というところでしょう

****ロシア、米国に医療機器など提供─報道官=インタファクス****
ロシアは米国に、新型コロナウイルス対策支援のための医療機器を提供する。インタファクス通信が、ロシア大統領府(クレムリン)のペスコフ報道官の発言として伝えた。

それによると、プーチン大統領が30日にトランプ米大統領と電話会談し、新型コロナや石油市場について協議した際に支援を提案した。報道官は、「トランプ大統領は感謝とともに支援を受け入れた」と伝えた。

報道官は、医療機器や防護服などを積んだロシア機が、31日に米国に向かう可能性があると付け加えた。

米国では新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。1日の死者数は31日、初めて700人を突破した。

米ロ関係は、2014年のロシアによるクリミア半島編入やウクライナ東部の独立派支援を受けて米国が一部ロシア企業に制裁を発動したことなどから、近年は複雑化している。【4月1日 ロイター】
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【統合の理念に反する自国優先が目立っていたEU、独が伊・仏からの重傷者受け入れ】
一方、EUもこれまで、統合の理念に反するような自国優先の対応が目立っていました。

****EUの一体感むしばむ新型コロナ 相次ぐ加盟国の「封鎖」政策****
(中略)EUやシェンゲン協定の加盟国にとって「国境の撤廃」は平時には経済活性化に寄与する一方、この数週間でウイルスの感染を急拡大させた要因の一つにもなった。 
 
このため、EU加盟国では独自の判断でシェンゲン協定の参加国にも国境を閉ざしたり、マスクの輸出制限を決めたりする動きが拡大。EU単一市場の一体性が損なわれかねない事態に発展した。

欧州委は16日に公表した国境管理の指針で、医療用品、生活物資や必要なサービスを確保する必要性を強調。シェンゲン圏を事実上「封鎖」することで、域内の国境管理を緩和させたい考えだ。 
 
しかし、加盟国は自国保護を優先する姿勢を強めている。フランスのマクロン大統領は当初は国境管理強化に慎重だったが、16日夜のテレビ演説で「我々は戦争状態にある」と述べ、17日から全土で住民の外出を制限すると共に、EUの入域制限に同調すると発表。スペインも16日、外国人の入国は認めない事実上の国境封鎖を決定した。 
 
ドイツ連邦政府は16日、隣接するフランス、スイスなどとの国境を事実上封鎖する措置を開始。また、連邦政府と各州は同日、スーパーマーケットや薬局、銀行などを除く店舗の閉鎖措置を講じることで合意した。レストランは午後6時までとし、バーや博物館の営業などだけでなく、教会やモスクなどでの集会も禁止される。

国境閉鎖だけでなく、欧州各国で、私権の制限を含む強硬な措置が広がっている。【3月17日 毎日】 
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ただ、ようやく協調をアピールするような行動も。

****ドイツ「外国の重症者を運べ」 伊・仏からの受け入れ作戦展開****
ドイツが新型コロナウイルスによる死者が激増するイタリアやフランスから、集中治療が必要な重症者の受け入れを進めている。

各国の軍用機などで100人以上をドイツに搬送し、治療する方針。ドイツでも死者は増えているが、まだ受け入れる余裕があり、閣僚は「欧州が団結すべき時だ」と訴えている。(後略)【4月1日 共同】
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イラン、アメリカ、中国、ロシア、ドイツ・・・それぞれ各国の思惑があってのことでしょうが、これまで危機的状況にあっても対立ばかりがめについていたことからすれば、一定に変化の兆も見えることは歓迎すべこことでしょう。

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新型コロナによる自宅での自粛の家庭生活への影響  離婚増加やDV増加のニュースも

2020-03-31 23:06:44 | 疾病・保健衛生

(外出禁止令後に道路脇の芝生で運動する人々【3月31日 文春オンライン】)

【家事への男性の参加を促す効果は?】
新型コロナウイルス感染に関しては、世界各地から山のような情報(その多くは悲惨なものですが)が伝えられており、日本でも緊急事態宣言の現実味が大きくなっているような状況です。

新型コロナは各国の経済・政治、国際関係、働き方や追跡監視における個人情報など社会的な問題など、幅広い影響をもたらしていますが、家庭生活にも影響が。

****パナマ、外出認める曜日を男女別に指定 新型ウイルス対策を強化****
中米パナマ政府は30日、新型コロナウイルスの拡散抑制を目指して外出制限を強化し、外出を認める曜日を男女別に分ける措置を発表した。
 
これまでの外出制限では、性別による規制は設けられていなかったが、4月1日からは、男性と女性がそれぞれ異なる曜日に、一度に2時間までに限って外出が認められるという。
 
男性がスーパーマーケットか薬局に行けるのは、火・木・土曜日で、女性の外出が許されるのは月・水・金曜日となる。日曜日は男女ともに外出禁止で、この新たな措置は15日間継続される。
 
パナマで新型ウイルスの感染症例が最初に報告されたのは今月10日。以後27人が死亡した。感染が確認されたのは1075人で、うち43人が集中治療を受けている。 【3月31日 AFP】
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パナマの家庭内における男女の役割分担がどのようになっているのかは知りませんが、日本でこれを実施すれば、とかく女性に任せられてきた家事の男女分担が少し進むのでは・・・と感じた次第です。・・・・甘いかな? 世の奥様方からのブーイングが聞こえそうですね。下手に手を出されるとかえって面倒ってこともありますし・・・。

【中国 離婚申請増加「お互いにこれ以上は妥協できない」】
いずれにせよ、夫婦が自宅での自粛を強いられることで、夫婦の絆も強まり・・・かつてのニューヨーク大停電のときも、その後の出生数が大幅にアップしたというし・・・・なんて思ったら、中国からは下のようなニュースも。

****コロナで夫婦にすれ違い? 中国で離婚手続きの予約殺到****
新型コロナウイルスの感染抑え込みが進み、各地の政府機関で業務再開が本格化している中国で、離婚届の手続きの予約が殺到していると話題になっている。

長期間の自宅隔離や在宅勤務で家庭内でのストレスがたまり、夫婦げんかやすれ違いが増えているとの指摘も出ている。
 
中国メディアによると、陝西省西安市では、新型肺炎の蔓延(まんえん)で1月下旬から休止していた婚姻・離婚の手続き窓口が3月2日から再開。

混雑を防ぐため1日当たりの手続き上限数を決めて予約制としたところ、市内に17カ所ある窓口に離婚手続きの申し込みが相次ぎ、18日まで予約でいっぱいになった。広東省河源市や四川省達州市でも同様に予約が相次いでいるという。
 
窓口の休止期間中、手続きできなかった人たちが殺到したのが一因とみられるが、夫婦関係の専門家で、国営中央テレビの結婚相談番組に出演したこともある周小鵬さんは、別の理由もあると指摘する。
 
周さんはSNSの公式アカウントで、「家にこもり顔を突き合わせる時間が長くなり、お互いにこれ以上は妥協できないと考える夫婦が増えている」と投稿。「こんな時だからこそ、最初に感じた相手への愛情を思い出してみて」と呼びかけている。【3月17日 朝日】
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現実は厳しいようです。

【英・豪ではDV増加も】
まあ、お互いの合意で離婚するならそれはそれでいいのですが、家庭内暴力・DVとなると笑ってすますことができません。

****英“外出禁止令”で家庭内暴力が増加か*****
新型コロナウイルスの影響により事実上の外出禁止令が出ているイギリスでは、家庭内暴力の増加が懸念されています。政府は、被害にあった場合は専用ダイヤルなどを通じて助けを求めるよう呼びかけています。

イギリスのパテル内相は29日、地元メディアに対し、現在の状況が「家庭内暴力の犠牲者を特に危険な状態にさらしている可能性がある」と述べました。事実上の外出禁止令により、家の中にとどまる時間が増えることで、家庭内暴力が増加する懸念を示したものです。

その上で「慈善団体が支援活動を続けられるよう努めているほか、専用の電話相談窓口も利用できる」などと訴え、必要な場合は助けを求めるよう呼びかけました。

イギリスメディアによりますと、地元警察は、今後数週間で家庭内暴力事件が「3倍に増加する可能性がある」と警戒しています。【3月30日 日テレNEWS24】
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同様のDVに関する問題はオーストラリアでも。政府が対策に乗り出す事態にも。

****ウイルスでDV被害増 豪首相、対策資金100億円投入を発表****
オーストラリアは29日、新型コロナウイルスの感染拡大に関連し家庭内暴力の被害件数が急増しているとの支援団体からの報告を受けて、DV対策資金として1億5000万豪ドル(約100億円)を投入すると発表した。
 
新型ウイルスの封じ込め策として全国規模で不必要なサービスが一時停止される中、スコット・モリソン首相は、グーグルでのDV支援に関する検索件数は75%増加したと指摘した。
 
豪で最も人口の多い州、ニューサウスウェールズ州でDV支援を提供する慈善団体「ウィメンズ・セーフティ」によると、スタッフの40%超が相談者数の増加を目にし、相談件数の3分の1以上が新型ウイルスの流行に直接関係しているという。
 
隣のビクトリア州で女性へのサポートを行う「Wayss」は、この1週間で警察からの支援要請件数は約2倍になり、「かつて経験したことのない」暴力の形態に対応したと述べた。Wayssのリズ・トーマス最高経営責任者によると、ウイルスを持っているとしてパートナーを家に閉じ込めたり、自主隔離しているパートナーのもとに人を連れて来て、その人が感染者であるなどと言って脅したりする事例があるという。
 
モリソン首相は29日に明らかにした保健関連分野への追加支出11億豪ドル(約730億円)の一部として、1億5000万豪ドルをDV被害者・加害者向けの電話支援サービスに充てる方針を発表。

首都キャンベラで報道陣に対し、「被害を受けやすい人やその可能性のある人への支援に、より多くの資金を投じる必要がある」と述べた。 【3月30日 AFP】
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家の中にとどまる時間が増えること、および外出できないストレス、ウイルスへの不安などがDV増加に影響しているのでしょう。

【ロックダウンされた都市での生活は?】
日本で緊急事態宣言が出された場合、具体的にどのような制限が課されるのかはよく知りませんが、あまり厳しいレベルではなく、一定に通常の市民生活が許されるほどほどのものがいいようにも思えます。

****日本の緊急事態宣言、欧米のロックダウンと異なる=西村再生相****
西村康稔経済再生相は31日の経済財政諮問会議後の記者会見で、新型コロナウイルス特措法で想定されている緊急事態宣言は、欧米のロックダウンと異なり、強制力を持たず罰則があるわけではないと説明した。

西村再生相は、諮問会議で民間議員から、緊急事態宣言を想定すべき時期が来るのではないかとの質問があったが、「今はそのような状況でない」と説明したと述べた。

その上で、再生相は「特措法による緊急事態宣言は欧米都市でみられるロックダウンとは異なり、都道府県知事がイベントや施設の利用制限を指示するもの。強制力を持たず罰則もなく、緩やかな手法で感染症を閉じ込めるもの」と説明した。【3月31日 ロイター】
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“強制力を持たず罰則があるわけではない”とは言うものの、日本社会の特異性から、法律によらない“自粛”が蔓延するような懸念も感じます。

下記は、ロックダウン、つまり、外出禁止令が出されているアメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスのビーチタウン、サンタモニカの様子。

****公園は閉鎖、スーパーは入場制限? ロックダウンで何が起こるか****
(中略)
ロックダウンでもできること・できないこと
もっとも、外出禁止令とは言っても、まだできることは様々ある。
 
食料品や薬など生活必需品の買い出しや、病院やクリニックでの受診や治療など生活に不可欠な行動を取ることはできる。

ケアをするためなら友人や親族を訪問することも可能だ。銀行などの金融機関にも行ける。乗客の減少から間引き運転されてはいるがバスや電車など公共交通機関の利用もできるし、車での移動も可能だ。
 
レストラン内での飲食は禁止になったが、レストランのフードのテイクアウトはできるし、デリバリーを注文することもできる。

他の人と6フィート(1.8メートル)の社会的距離をあけている限りは、屋外での散歩、ジョギング、サイクリング、ワークアウトなどの活動もできる。
 
反対にできないのは、市民生活を支えるのに不可欠な仕事(インフラ整備や医療関係など)以外の仕事に行くこと、緊急性のない友人や親族宅への訪問、病院や介護施設などへの訪問、他都市への必要のない訪問、ビーチで群れること、グループで行うスポーツをすること、グループで行う野外活動に参加することなどだ。(後略)【3月31日 文春オンライン】
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スポーツ・野外活動はともかく、仕事に行けないとなると、廃業・失業などの深刻な問題を伴いますので、その面のフォローが不可欠となります。

 

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新型コロナ 行動制限を課すことなく感染拡大を抑制した韓国 各国が実施するスマホ位置情報追跡

2020-03-30 22:48:49 | 疾病・保健衛生

(韓国で、感染が確認された患者の位置情報などを確認できるアプリのダウンロード数が急増している。
2月27日のアプリストア「グーグルプレイ」のランキングでダウンロード数上位15位のうち6つが感染の追跡などを支援するアプリだった。

一部のアプリは政府機関の公的な情報を利用しているが、開発業者によれば、2月の公開以降ダウンロード数が急増しているという。

「コロナ100m」の開発業者によれば、(中略)このアプリは新型コロナウイルスの患者の感染が確認された日付や国籍、性別、年齢、訪問先などを確認できる。新型コロナウイルスに感染した患者がどのくらい近くにいるかもわかるという。2月11日の公開以降、100万回以上ダウンロードされた。(後略)【3月3日 CNN】)

【行動制限を課すことなく増加曲線を抑制 各国が韓国の対応に注目】
欧米各国が新型コロナとの戦いに疲弊するなか、大規模なアウトブレイクが発生しながらも、中国のように都市封鎖・行動制限といった強硬な手段を使うことなく感染拡大を封じ込めているとして韓国が注目されています。

****韓国の新型コロナ感染者 1日70人台に低下=新規完治者195人****
肺炎を引き起こす新型コロナウイルスを巡り、韓国の中央防疫対策本部は30日、この日午前0時現在の韓国での感染者数は前日午前0時の時点から78人増え、計9661人になったと発表した。

前日の増加数(105人)から大きく低下。新規感染者が2桁になったのは3日ぶり。死者は前日から6人増え計158人になった。(後略)【3月30日 聯合ニュース】
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韓国の対応の特徴としてThe New York Times は、「素早い行動、広範な検査体制と接触者追跡、そして国民の重大な支援」という点を指摘しています。

****世界で賞賛される「韓国」コロナ対策の凄み****
行動制限を課すことなく増加曲線を抑制
数字をどう見ても、1つの国が際立っている――韓国だ。 2月下旬と3月上旬、同国における新型コロナウイルスの感染者数は数十から数百人、数千人へと爆発的に増加した。

ピーク時には、医療従事者は2月29日の1日で909人の症例を特定し、人口5000万人の同国は打ちのめされる寸前のように見えた。しかし1週間弱経つと、新たな症例数は半減した。4日以内で、再び半減した――そしてその次の日も再び半減した。

封鎖政策も行われていない
韓国は22日、ほぼ1カ月の間で最少となる、わずか64人の新規感染者を発表した。他国では感染者数が1日ごとに数千人単位で増加し、医療システムや経済が壊滅的状況に追い込まれている中で、である。イタリアでは毎日数百人の死亡者を記録している。韓国は1日当たり8人を超えたことはない。

韓国は大規模なアウトブレイクが発生しながら、新規感染者数の増加曲線を抑えることができたわずか2国のうち、中国ではないほうの国である。そして韓国は中国のように言論や行動に厳しい制限を課すことなく、またヨーロッパやアメリカのように経済に打撃を与える封鎖政策を行わずに、それを成し遂げている。

ウイルスによる世界の死亡者数が1万5000人以上に膨らみ、世界中の役人や専門家は教訓を求めて韓国を徹底的に研究している。

そしてそれらの教訓は、簡単にはほど遠いものの、比較的ストレートで経済的にも負担が少ないように見える――素早い行動、広範な検査体制と接触者追跡、そして国民の重大な支援である。

しかし強く打撃を受けたほかの国は韓国のような対策は打てなかった。その手法を見習おうと関心を示し始めた国もあるが、もはや早々に制御できない時点までエピデミックが加速してしまった後のことであった。

韓国の文在寅大統領の周辺によると、フランスのエマニュエル・マクロン大統領とスウェーデンのステファン・ロベーン首相は、韓国の対策の詳細を聞くために文大統領に電話をしてきたという。

世界保健機関の事務局長テドロス・アダノム・ゲブレイェソスは、ウイルスの封じ込めは難しいものの「可能である」ことを示したとして、韓国を称賛した。テドロス氏は各国に「韓国その他で得られた教訓を応用する」よう促した。

韓国の当局は、同国の成功は一時的なものであると警告する。再発のリスクは残されている。国境の外ではエピデミックが猛威を振るい続けているため、なおさらだ。

今では1日に10万の検査キットを生産
それでも、アメリカ食品医薬品局(FDA)元長官のスコット・ゴットリーブはツイッターで「韓国は賢く精力的な公衆衛生によってCOVID-19が克服できることを示している」と書き、何度も韓国をモデルに掲げてきた。

教訓1:介入は早く、危機的状況になる前に
1月下旬に同国初の感染症例の診断が下ってからわずか1週間後、当局は製薬会社数社の代表者たちと面会した。当局は緊急承認を約束したうえで、大量生産のためのコロナウイルス用検査キットの開発に直ちに着手するよう促した。

韓国で確認された症例数は2桁にとどまっていたが、2週間以内に何千もの検査キットが発送された。同国は今では1日に10万キットを生産しており、当局によるとキットの輸出について17カ国の政府と協議中だという。 

当局はまた、地元の教会から感染が素早く拡大した人口250万人の都市テグで迅速に緊急措置を施行した。

「主な感染源が教会の礼拝だったことが割と早い段階でわかっていたため、韓国は人の動きを制限することなく対処できた」と政府にコロナウイルス対応を助言する疫学者であるキ・モランは話す。「判明するのがもっと遅かったら、ずっとひどい状況になったかもしれない」。

韓国はまた、ヨーロッパやアメリカと異なり、2015年の中東呼吸器症候群(MERS)のアウトブレイクにより国内で38人の死亡者を出した経験を持つため、コロナウイルスを国家非常事態として扱う準備ができていた。

コロナウイルスは5日間の潜伏期間があると考えられており、多くの場合その後風邪と間違われるような軽度の症状が出現するが、その際にウイルスが非常に伝染しやすくなる。

このパターンにより、アウトブレイクが明白になるまで1、2週間のタイムラグが生じる。一握り程度に見えた患者数が実は数百人、数百人に見えたものが実は数千人ということもありうる。

「このウイルスのこのような性質により、閉鎖と隔離に重点を置く従来型の対応は非効果的となる」と韓国保健福祉部次官キム・ガンリプは語る。「(感染者数が)いったんある程度に達してしまうと、古いやり方では感染拡大の防止に効果はない」。

1日当たりの検査率はアメリカの40倍
教訓2:検査は早く、頻繁に、安全に
韓国はほかのどの国よりもはるかに多くの人を検査してきた。そのため、多くの人を感染後すぐに隔離・治療することが可能となった。 同国では30万回以上の検査を実施し、1人当たりの検査率はアメリカの40倍となっている。(中略)

病院やクリニックがキャパオーバーにならないよう、当局は可能な限り多くの人を、可能な限り早く検査できるよう設計された検査センターを600カ所開設した。医療従事者の安全を確保するために接触を最小限に抑える狙いもあった。

50カ所のドライブスルー検査施設では、患者は車に乗ったままで検査が受けられる。患者は質問票を渡され、遠隔体温スキャンと喉の検体採取を行う。このプロセスは10分程度かかる。検査結果は通常数時間で上がってくる。 (中略)

公共メッセージが容赦なく発せられ、韓国人は自分や知人が症状を発症したら検査を受けるよう促される。海外からの訪問者は症状のセルフチェックを行わせるためのスマートフォンアプリのダウンロードが義務づけられている。

オフィスやホテル、その他の大きなビルではしばしば発熱している人を特定するためにサーモグラフィーカメラを使用している。多くのレストランでは来店客を受け入れる前に体温チェックを行っている。

社会からウイルスを「ほり出す」
教訓3:接触者追跡、隔離および監視

陽性反応を示す患者が出ると、医療従事者は患者の直近の動きを追跡して接触した可能性のある人を特定し、検査し、必要があれば隔離する。このプロセスは接触者追跡として知られている。 

これにより医療従事者は伝染の可能性のあるネットワークを早期に特定することができる。まるで外科医がガンを取り除くように、社会からウイルスをほり出すのだ。

韓国はMERSのアウトブレイク中に精力的な接触者追跡のためのツールとプラクティス(実践法)を開発した。保健関係の係員はセキュリティーカメラの映像やクレジットカードの記録、車や携帯電話のナビのデータまでも使用して患者の動きをたどるのである。

「私たちはまるで刑事のように疫学上の捜査を行った」とキは言う。「その後、伝染病危機の際には個人のプライバシーよりも社会の安全を優先するよう法律が改正された」。

コロナウイルスのアウトブレイクが大きくなりすぎて患者を集中的に追跡するのが困難になると、当局はよりマスメッセージングに頼るようになった。

韓国人の携帯電話は居住地区で新規感染者が発見されるたびに緊急警報のバイブレーションが鳴る。ウェブサイトやアプリでは感染患者の1時間ごと、時には1分ごとの移動経路を表示する――どのバスに乗ったか、いつどこで乗り降りしたか、はたまたマスクを着用していたかどうかまで。

感染患者と経路が交わったと思う人は検査センターに届け出るよう促される。 韓国人はプライバシーの損失を、必要なトレードオフとして広く受け入れるようになった。

自主隔離命令を受けた人はもう1つアプリをダウンロードしなければならない。患者が隔離から抜け出した場合、当局に連絡が行くというアプリだ。違反した場合の罰金は最大2500ドルにもなる。

感染を早期に特定し治療すること、また軽度の症例は特別センターに分離することで、韓国は病院が最重症患者を受け入れられる状態を確保してきた。同国の症例死亡率は1%をわずかに超える程度で、世界でも最も低い国の1つである。

アウトブレイク抑圧には国民の協力が必要
教訓4:公衆の助けを募る

医療従事者の数も足りず、全員を追跡できるだけの体温スキャナーもないため、市井の人々が協力しなくてはならない。

首脳陣の結論は、アウトブレイクの制圧には国民に対し完全な情報共有を続けること、そして国民の協力をお願いすることが必要ということだった、と保健福祉部次官のキム氏は話す。

テレビ放送、地下鉄の駅の告知、スマートフォンのアラートが、マスク着用の促進や社会的距離戦略、その日の感染データについて無限に注意喚起をしてくる。こうしたメッセージはまるで戦時中のような共通目的の感覚を植え付ける。

世論調査では大多数が政府の取り組みに賛同を示しており、人々は自信があり、パニックは少なく、買いだめもほとんど起こっていない。(中略)

中国は、ほとんどのヨーロッパの国よりも大きい湖北省における初の破壊的なアウトブレイクを駆逐した。ただし、その経済を閉鎖するというコストが伴った。

ゴットリーブ元FDA長官はツイッターで「われわれは韓国のような結果が得られるチャンスはおそらく逃してしまっている」と書いたが、韓国の手法はアメリカでも役立つかもしれない。「イタリアで生じているような悲劇的な苦しみを回避するためのことはすべてやらなければならない」。【3月27日 東洋経済ONLINE】
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【新型コロナで威力を発揮するスマホ位置情報追跡 監視社会への扉を開く可能性も】
韓国が実践した「接触者追跡、隔離および監視」については、他の国々でも携帯電話等を用いたシステムが実施・検討されていますが、感染対策として有効な反面、「監視社会」への入口となる可能性もあり、運用には十分な配慮が必要とされます。

****コロナ対策でスマホ位置情報追跡、欧州で広がる**** 
新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため多くの国で封鎖措置が敷かれている欧州で、市民の順守状況を監視するため、通信会社が携帯電話の位置情報を政府と共有する動きが広がっている。プライバシー規定に抵触しないよう、データを匿名化することに注力しているようだ。 
 
これまでのところ、ドイツ、オーストリア、スペイン、ベルギー、英国などで実施されている。 
 
欧州以外では、韓国の保健当局が新型コロナ感染者や感染リスクがあるとみられる特定の人物について、携帯の位置情報を追跡し、匿名で居場所をネット公開している。

イスラエル当局も、感染リスクのある人物の居場所を特定するために、携帯データを活用している。(中略)

通信データに関する欧州連合(EU)のプライバシー法「一般データ保護規則」(GDPR)では、企業に対し、個人情報を収集するには各ユーザーからの許可が必要だと定めている。

コロナ対策としてデータを分析する政府当局者や通信会社は、匿名化されたデータしか使用していいないため、GDPRには違反していないと説明する。 
 
だが調査会社ガートナーのバイスプレジデントアナリスト、バート・ウィルムセン氏は、匿名化の手法がぜい弱な場合、個人情報が特定される恐れがあると指摘する。例えば、暗号化による匿名化を行っても、暗号がのちに解読されるなどのリスクが考えられるという。(後略)【3月28日 WSJ】 
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****携帯電話傍受し感染者を監視…イスラエル、30日間限定****
イスラエル政府は16日、閣議を開き、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための緊急措置として、自宅隔離を義務付けた感染者らの携帯電話のデータを傍受して位置情報を把握し、自宅にとどまっているかどうかを監視することを決めた。
 
30日間限定で実施する。こうした監視は通常、テロリスト対策など犯罪捜査の目的で使う手法だという。治安当局が感染者の行動を把握し、過去14日間に接触した可能性のある市民を特定して自宅隔離を求める。(後略)【3月18日 読売】
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****ロシアでのテクノロジーを用いたコロナウイルスの潜在的な患者の追跡****
ロシアでコロナウイルス患者の移動の監視が始まった。それにより感染した人と接触した全ての人々が自己隔離すべきだということが警告される。この監視システムがどのように実行され、それが市民の権利を侵害しているかどうかをこの記事で伝える。
 
何が起こったのか
ロシアの首相ミハイル・ミシュスチンは、ロシア情報技術・通信省にコロナウイルス患者と接触している市民を追跡するシステムを作成するよう指示した 。

そのシステムではSMSメッセージを利用して自己隔離の必要性が警告される。このシステムは、2020年3月末までの、できるだけ早い時期に作成する必要がある。

このシステムはどのように機能するか?
次のように収集された情報で市民の追跡を行う。

携帯電話事業者が、コロナウイルスに感染した人の携帯電話の地理位置情報を提供する。 
これのデータに基づいて、病気に感染した人が隔離されるまでの経路を決定する。 

このシステムが、コロナウイルスCOVID-19に感染した人にすぐ近くにいた全ての通信契約者を識別し、彼らに対して14日間の隔離の必要と伝える自動メッセージを送信する。 

また、感染の可能性に関する全ての情報が、地域のコロナウイルス対策本部に送られる。

これは可能か?
技術的にはこのようなシステムを作成することは可能であると、ロシアの携帯電話会社メガフォンが雑誌『コメルサント』の記事で伝えた。例えば、ロシア非常事態省でも同様の方法を用いて、緊急事態について市民に警告を発している。
 
「しかし、情報技術通信省によって提案されたこのプロジェクトを実施するために必要なメカニズムはまだ完全には理解されていません。これを実施するには規制分野の変更が必要とするかもしれません」と、メガフォンは伝えた。

密集した建物のある場所でも加入者の位置を追跡することは可能だが、誤差は約50メートルになると、匿名希望のとあるロシアのモバイルオペレーターは述べた。村や田舎では誤差がさらに大きくなると、このオペレーターは確信をもって話した。 (後略)【3月27日  RUSSIA BEYOND】
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新型コロナによって、テレワークの一般化などポスト・コロナの社会生活が大きく変化することが予想されます。
上記のような接触者追跡が「監視」に対する抵抗感を和らげ、本格的な「監視社会」への扉を開くことに・・・ということも十分に想像されます。

感染拡大抑止について言えば、日本は現在、非常事態宣言が云々される「ぎりぎりの状況」とも。
強硬手段の中国、迅速対応かつ徹底検査の韓国とも異なる(他国からはわかりづらい、何もしていないようにも見える)緩やかな第三の方法を示すことになるのか・・・そうあって欲しいものです。

“日本の新型コロナの封じ込め「成功」が世界を困惑させている=中国報道”【3月30日 Searchina】

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新型コロナ禍もあって霧散したかの欧州・トルコの難民問題 火種はそのまま残る

2020-03-29 23:27:07 | 難民・移民

(ギリシャ国境近くのトルコ北西部ドイランでは、欧州を目指す難民らが立ち往生し、シートや毛布で簡易テントをつくっていた。【3月28日 GLOBE+】)

【難民ら欧州流入を容認したトルコ・エルドアン大統領 流入阻止のギリシャと難民が国境で衝突】
世の中、特に現在感染拡大の中心地となっている欧州では新型コロナ対策一色となり、その他の問題が吹き飛んでしまいましたが、新型コロナ禍が欧州で本格化する直前、欧州にとって重要な問題となっていたのがトルコが難民の欧州移動を容認した問題。

2015〜16年の移民・難民危機に成立した欧州とトルコの間の合意が守られていないこと、トルコ軍のシリア侵攻に批判的な欧州の対応などに業を煮やしたエルドアン大統領の欧州への「脅迫」「圧力」とも見られています。

ギリシャ国境では数万人規模の難民流入を阻止しようとするギリシャ側と難民の間で衝突が生じていました。

****トルコ、EUにシリア軍事作戦への支援要請 国境で移民らギリシャ警察と衝突****
トルコは4日、欧州連合に対し、ギリシャとの間で発生した新たな移民問題を解決する条件として、シリアで実施している軍事作戦への支援を要請した。欧州各国からEUを「脅迫」していると批判を受けたが、トルコはこれをはねつけた。
 
レジェプ・タイップ・エルドアン大統領は先週、移民・難民がトルコから欧州に向かうことを容認する発言を行い、トルコとギリシャの国境付近には1万人を超える規模の移民が集結。警察との衝突も発生する事態となっている。
 
エルドアン大統領は、ロシアの支援を受けたシリア政府軍がシリア北部を攻撃し、トルコ軍兵士34人が死亡したことを受けてこの発言を行った。同大統領はこれを契機に、国際社会からのさらなる支援を要請している。
 
一方EUの指導者らからは、欧州に100万人を超える難民が流入した2015〜16年の移民・難民危機の再来を懸念する声が出ている。
 
トルコ当局は、パザルクレの国境検問所付近で緊張が高まる中、ギリシャ側から実弾が発射され、移民1人が死亡、5人が負傷したと主張した。ギリシャ側はこれを強く否定した。
 
だが現場のAFPカメラマンは、移民の一団がフェンスを越えて前進しようとした際、そのうちの1人が足を撃たれたのを目撃した。この銃撃が実弾あるいはゴム弾のいずれであったかは確認できていない。
 
その一団がギリシャ警察に向かって投石すると警察は催涙ガスで応戦。複数回にわたって発射音と叫び声が聞こえた。 【3月5日 AFP】
*******************

****ギリシャ、難民3.5万人の入国阻止 トルコは人権侵害と批判****
トルコ政府が国境を開放して以来、ギリシャが3万5000人近い難民の不法入国を阻止したことが、ギリシャ政府関係者らの話で分かった。(中略)

一方、トルコ側は、ギリシャの難民の扱いについて人権侵害だと批判、欧州人権裁判所に提訴する準備を進めているとしている。トルコのソイル内相は5日、ギリシャとの国境に近いエディルネを訪問し、難民がトルコ領内に逆流するのを阻止するため、1000人の特別警察部隊を配備することを明らかにした。【3月6日 ロイター】
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“難民がトルコ領内に逆流するのを阻止するため、1000人の特別警察部隊を配備”・・・・コンスタンチノープル攻防戦を題材にした塩野七生氏の小説の中に書かれている、トルコ軍の後ろに抜刀した親衛隊イエニチェリが控えて、自軍の退却・逃亡を許さなかった、そのため兵士たちは前に進むしかなかった・・・という話を思い出しもしました。

****トルコから流入の難民、ギリシャ軍が「身ぐるみはがし追放」か****
トルコ北西部パザルクレ国境検問所(CNN) トルコ北西部エディルネ県から国境を越えてギリシャ側へ入ろうとした難民らが、ギリシャ側の治安部隊に持ち物を奪われ、裸同然で追い返されているとの情報が8日までにわかった。

CNNは複数の男性が国境の川越しに、下着姿でトルコ側へ戻る場面の映像を入手した。トルコ国営放送が撮影したとされるが、CNNは状況の真偽などを確認していない。国際人権団体には近年、同様の証言が数十件寄せられているが、ギリシャ当局は一貫してその内容を否定してきた。

CNNにはこの数日間でシリア、アフガニスタン、モロッコ、パキスタンからの難民男性数人が、ギリシャ治安部隊から受けた扱いについて語っている。

シリア出身の男性(20)は「武装した軍か警察」の集団に殴られ、下着姿で追い返されたと話す。歩けないほどのけがを負った仲間もいるという。身分証明書と衣服は焼かれ、携帯電話と現金も奪われた。

幼い息子を抱いたアフガン人の男性(23)は家族で国境を越え、5時間ほど歩いたところで治安部隊につかまった。持ち物を取られ、棒のような物で殴られて追放されたという。

ギリシャのミツォタキス首相は6日、CNNとのインタビューで、同国には国境を守る権利があると強調。過剰な武力は行使していないと改めて主張した。(後略)【3月8日 CNN】
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こうした事態に、トルコ・エルドアン大統領は「ナチス」という言葉を使用してギリシャ側を批判していました。

****「ナチスと変わらない」 トルコ大統領、ギリシャの難民対応を非難****
トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領は11日、対ギリシャ国境におけるギリシャ側の難民対応を、ナチス・ドイツになぞらえて非難した。
 
現地テレビ局は、移民が欧州へ向けてギリシャ国境を突破しようとして催涙ガスを浴びる様子を捉えた映像を放映。同じ放送の中でエルドアン大統領は、「ギリシャ国境からのこれらの映像を見ると、ナチスがしたことと変わらない」と指摘した。
 
大統領は同時に、「自由な移動をはじめ...関税同盟や金融支援の更新など、トルコが期待するすべてが具体的に実現されるまで、われわれは国境での慣行を継続する」として、欧州連合が自身の要求を満たさない限り、欧州を目指す難民に国境を開放し続ける姿勢を改めて示した。(中略)

ギリシャ側は武力行使を否定するとともに、必死になった人々をけしかけて欧州を目指す危険を冒させているのは、トルコの方だと非難している。
 
エルドアン大統領は国境の開放について、シリア内戦をめぐり欧州諸国が支援を強化するよう圧力をかけるためだと主張。トルコは反体制派の最後の拠点となっているシリア北西部イドリブ県で、政権軍の攻撃に対抗している。 【3月11日 AFP】
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【「難民カード」で欧州に圧力をかけるトルコ】
上記記事にもあるように、欧州側は難民のギリシャ国境への移動はトルコによって仕組まれたものだと批判しています。

****トルコが切った「難民カード」、憤る欧州との摩擦激化*****
(中略)
<難民たちが駆け引きの材料に> 
トルコとEUとの外交摩擦について、アムネスティ・インターナショナルのマッシモ・モラッティ氏は「難民たちが再び政治的な駆け引きの材料にされている」と批判する。

また、トルコが同盟国や潜在的な支援国に圧力をかける強硬策は裏目に出る恐れがあり、トルコ自体が「根本的に孤立してしまうという問題がある」とアナリストは指摘する。 

特に緊張が高まっているのは、ギリシャとの国境地帯だ。トルコ側からギリシャの国境に押し寄せた難民は治安当局の催涙ガスによって追い返され、その多くが食料も身を寄せる場所もないままトルコ側にとどまっている。 

トルコのチャブシオール外相は3日、ギリシャ軍の兵士が入国しようとした難民3人を殺害したと述べた。証拠は示しておらずギリシャ側は否定している。 

一方、ギリシャは難民が国境を超えるのをトルコが組織的に支援していると批判。トルコの移民当局は難民をバスで国境まで送り届けているとの報道を否定した。

だがエルドアン氏が難民の流出を容認すると発表した数時間後、イスタンブールではすでに難民を移送するバスが複数台用意されていた。 

トルコの旅行業界関係者は移民に協力する財団から連絡を受けてバスの手配を依頼されたと明らかにした。「以前難民をあちこちに運んで大金を得た。今回は無料だ」と語った。 

トルコの政府系メディアなどは難民がイスタンブールからバスに乗り込み西部のエディルネ州の国境に向かって歩き、足止めされる様子を逐一報じている。(中略) 

欧州の外交筋はトルコがEUから追加の経済的支援を引き出すことが目的だと主張。「(難民は)移動することを許されているだけでなく、むしろ退去することを促され、すべてが計画されたものだと信じる強力な根拠がある」と述べた。 

エルドアン氏は2日、EUとの協議で10億ユーロの支援を打診されたことを明らかにした上で、トルコはもはや資金を求めないとし「誰もトルコの尊厳をもてあそぶことはできない」と述べた。【3月6日 ロイター】
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その後、世の中は新型コロナ一色になりましたが、コロナの話もあって(と言うより、コロナを表の理由にして)トルコ側は再び国境を閉鎖して難民流入は止まったようです。

****トルコ、対ギリシャ国境を閉鎖=新型コロナ対策、難民越境停止****
トルコは19日、欧州各国への渡航を目指して数万人規模のシリア難民らが殺到していたトルコ西部の対ギリシャ国境を閉鎖した。現地メディアが伝えた。

地元当局は「世界的に拡大する新型コロナウイルスから国民を保護する取り組みの一環」と説明している。これにより、トルコ国内の難民らは越境できなくなった。(後略)【3月19日 時事】
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【エルドアン大統領の決定の背景に、トルコ国内において強まる難民への批判も】
エルドアン大統領が国境開放という強硬手段をとった背景には、400万人を超す難民を受け入れてきたトルコ国内における難民らへの反発があると指摘されています。

****「難民を使った脅し」と批判するEU トルコから見える現実は****
(中略)
そもそもトルコはなぜこのタイミングで国境を開放したのか。10年目に入ったシリア難民問題を、トルコとEUとの関係から考えてみたい。

■トルコはなぜ国境を開放したのか
トルコに国境開放を決断させたのは、今年2月末、シリア北西部のイドリブ県で、ロシア軍とアサド政権軍による攻撃を受けトルコ兵士30人以上が死亡したのがきっかけだった。

かねてからトルコ国民の間で「なぜシリア人のためにトルコ兵士が死ななければならないのか」という不満が出ており、国民のシリア難民に対する不満が一気に爆発しかねない状況を察知しての政府の判断だったとみられる。

また、トルコの「これ以上の受け入れは無理」という度重なる訴えを前に、「深刻な人道危機」と言いながらも積極的に関与しようとしないEUに対する「ショック療法」の意味合いもあった。

紛争が続くシリア隣国の中でも、トルコは910㎞という最も長い国境線を接する。2011年のシリア内戦ぼっ発以降、戦火を逃れてきたシリア人を、国境開放政策のもと受け入れ続けてきた。

トルコに身を寄せるシリア難民は、いまや360万人。シリア以外の難民を入れると410万人に上り、2014年以降、トルコは世界最大の難民受け入れ国だ。

イドリブ県が陥落すればさらに100万人以上が流入すると見積られている。たとえ流入なくしても、難民の出生率は高く、人口はどんどん増えていく。トルコ国内で生まれたシリア人の子供は過去9年間で52万人に上る。

■試行錯誤のシリア難民支援
トルコは東西の十字路に位置するがゆえに、歴史的に多くの難民や移民を受け入れてきた。古くはコーカサスやバルカンから、80年代以降はイランやイラク、アフガニスタンのほか、最近ではアフリカからも受け入れている。

そんなトルコでも、年に100万人単位での難民の流入はかつてない経験であり、試行錯誤しながらの支援を続けてきた。

「シリア難民」と呼ばれるが、トルコではヨーロッパから難を逃れてきた人のみを「難民」という定義にしているため、シリア人は難民条約に基づく正式な「難民」ではない。だが、シリア人に対しては「一時的保護」という特別の身分を与えることで、教育や医療などのサービスを無料で受けることができる制度を整えた。

当初は国内20か所以上に難民キャンプを作り収容してきたが、難民数の増大から、今や難民の98%がキャンプ外で、トルコ全土の様々な地域に居住している。シリアに近い南東部地域では13年以降、シリア人の急激な流入で、アパートの家賃は3倍に跳ね上がった。病院には無料で診察を受けられるシリア人の長い列ができた。

こうした中でも、トルコの人々は、隣人の苦境を不憫に思いつつトルコ社会に受け入れてきた。

シリアでイスラム国(IS)が台頭した14年以降は、難民に交じりテロリストもトルコ国内に流入、15年、16年には、国内でテロが相次ぎ400人以上が命を落とした。テロリストは一般人にまぎれており、どこに潜んでいるかわからない。シリア難民支援は、トルコの人々にとって、いわば命がけの人道支援でもあった。

■EUトルコ協定とその後の不和
国境を開放したトルコに、EUは「協定を遵守すべきだ」と声を荒げた。これは2016年3月に締結された協定を指す。きっかけは、ISが勢力を拡大した15年、トルコに逃れたシリア人らが、さらに陸路・海路で国境を超え、百万単位でEUに流入する「難民危機」が起きたことだ。(中略) 

EUとして有効な対策を講じられない中、2016年3月、トルコとの間でこれに対処する協定が結ばれた。ヨーロッパ側に渡った難民をトルコに送り返すと同時に、トルコが引き受けた数と同数のシリア難民を、EUがトルコから受け入れる、というものだ。

トルコは見返りに、①計60億ユーロの支援金、②EUへのビザなし渡航の実現、③関税同盟の更新、④EU加盟交渉の加速化を約束された。

この協定により、EUを目指す難民は激減。欧州委員会は18年、同協定発効により、ヨーロッパに渡る不法移民は97%減となったと発表した。トルコは協定を遵守したという自負がある一方で、EUがこれまでトルコから受け入れたのは2万人程度、支援金は半分程度しか支払われていない上、それ以外の約束はまるで動きがないことに不満を抱いてきた。

この協定は当初から資金の使い方などを巡り両者感で隔たりがあったほか、トルコがEUに対し大きな影響力をもつことになる、といった懸念もEU内であがっていた。しかし、EUにとっては、目の前の難民流入を食い止めることが先決だった。

■高まる反難民感情と現実
内戦から10年。帰還の目途もたたない中で、シリア難民の存在は国内政治にも大きな影響を及ぼしている。

昨年のトルコ地方選では最大都市イスタンブールと首都アンカラで25年ぶりに世俗派野党が市長の座を奪った。政権与党の牙城だっただけに、トルコでは大きな衝撃をもって受け止められた。選挙戦で「難民帰還」を訴えたことが得票率拡大の一因と考えられている。

世論調査では、8割以上がシリア難民の早期帰還を求め、経済の低迷と失業者の増大から、「なぜシリア人ばかりが優遇されているのか」、「なぜ税金を払っていないのに教育も医療もただなのか」と言った不満が募ってきており、今や政府も無視することができない。

不満の矛先は、特に雇用と治安だ。「シリア人がトルコ人の職を奪い、シリア人のせいで犯罪が増えた」というものだ。だが、実際には、トルコ人と競合しない分野で雇用されているシリア人が多く、捕まれば強制送還の可能性があるため、シリア人の多くは犯罪に手を染めぬよう用心している。内務省の発表でも、シリア人の犯罪率はトルコ人の半数以下だ。事実よりも心理的嫌悪が勢いを増している。

■新型コロナウィルスの危機、難民にも
当初、難民の入国阻止に躍起になっていたEUは、欧州各国での新型コロナウィルスの蔓延を受け、3月17日から、第三国からEUへの入国を制限することで合意。難民はトルコとギリシャ国境に置き去りにされる形となった。

報道では、難民はEUへの入国を断行したい一部を除き、徐々にトルコ側の元の居住地に戻り始めているという。

コロナウィルスの広がりにより、難民のコロナ対策が今後深刻になると予想される。難民の中には、複数の世帯が家賃を出し合いながら一つのアパートの部屋を借りているケースや、空き家となった不衛生な場所に住んでいる人も少なくない。

感染の脅威は国内に留まらない。シリア難民支援に従事するNGOによると、戦闘下のイドリブ県では、十分な食料も医療施設もないまま、2,3世帯が一つのテントで避難生活を営んでいる。トイレはさらに多くの世帯と共用している状態という。

イドリブにおける停戦合意が破られ戦闘が再開すれば、100万人のトルコへの流入が予想されている。

■今後の展望
シリア難民の今後の可能性としては、EUによる受け入れ、帰還、トルコでの滞在継続などがありうるが、EUは各国内に反移民勢力が多く、強いリーダーシップがない中で難民受入政策をまとめ上げるのは容易ではない。

帰還について、トルコ政府は内戦当初の2011年から、シリア国内に「安全地帯」を設定し、その地域に送り返す案を、国連総会など様々な機会に訴えてきた。

しかし、ISの台頭やトルコとクルド勢力の戦いなど、内戦が様々な局面を見せる中、欧米から「安全地帯」の設置はトルコの越境攻撃を正当化する口実だ、との批判が上がったほか、安全地帯が難民の出身地とは異なる地域にあること、インフラのほか教育、医療体制を整えるのに莫大なコストがかかるなどとして、国際的な支持は集まらなかった。

トルコに滞在する難民の8割以上が、当面トルコで生活したいと考えていることも考慮すれば、最も現実的なのは、EUと協力した上でのトルコでの滞在継続の選択肢だろう。(後略)【3月28日 GLOBE+】
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難民の子供のなかには、シリアを知らない、トルコ生まれの子供も増加しています。
その意味でも「トルコでの滞在継続」は現実的ではありますが、トルコ側の負担を軽減する必要もあります。

 

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中国  新型コロナ一定に終息で、武漢封鎖も一部緩和 経済再建に向けて始動

2020-03-28 22:35:47 | 中国

(中国・湖北省武漢の駅に到着し、列をつくるマスク姿の乗客たち(2020年3月28日撮影)【3月28日 AFP】)

【武漢の封鎖緩和】
世界の主要都市で移動や経済活動の制限が強まる中で、新型コロナの震源地ともなった中国・武漢では、新規感染者数がゼロになったとされ、封鎖が一部緩和されています。

****中国・武漢の封鎖緩和、駅は帰還した乗客で混雑 出境は禁止続く***
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の発火点となった中国・武漢では28日、2か月超続いたほぼ全面的な封鎖が部分的に解かれ、武漢駅は同市へ戻ってきた人々で混雑した。
 
武漢は今年1月に封鎖下に置かれ、住民の外出が禁止された他、市の郊外では往来を制限するために路上で検問が行われ、日常生活においても徹底的な規制が課された。
 
だが、長期間にわたった隔離は終了する兆しが見えており、国営メディアは28日午前0時を過ぎて間もなく、公式な許可を得た乗客らが初めて列車で市内に到着する様子を伝えた。
 
ただ、人々が市内に入境することは認められるものの出境はできず、さらに列車の多くは、数日前に予約で満席となっていた。
 
AFPの記者は28日、武漢駅に到着した人々でごった返し、多くの乗客らがキャリーケースを引く様子を目にした。
 
ただ移動禁止の強制が緩和され始めていたため、名目上は降車が禁じられていたものの、前日以前から武漢駅に停車する鉄道に乗って市内にこっそり戻る人々は一部存在していた。
 
27日に到着したある女性はAFPに対し、自身の娘、夫と10週間近く離れ離れになっていたと説明。
「列車が武漢に近づくと、子どもも私もとても興奮した」「鉄道は以前よりも速く動いているように感じた。娘は私たちが本当に早く家に帰りたいことを運転士が分かっているに違いないと話していた」と語った。
 
さらに、「娘が父親の元に走り寄るのを後ろから目にして、泣かずにはいられなかった」と話した。
 
海外で感染者数が増加する中、中国は現在、海外から感染者が入国するのを抑制しようと奮闘している。
 
武漢駅から外へ出るため、乗客らは列をつくる一方、防護服を着用した作業員は、海外から戻ってきた人々に申告を呼びかけた。
 
武漢に到着した人々は、健康状態が良好であることを示すため、携帯電話のアプリで「緑色」のコードを示す必要がある。
 
また武漢以外の中国各地でも、同市へ向かう高速列車に乗車するため、駅で長い列をつくる旅行客の姿が見られた。 【3月28日 AFP】
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「鉄道は以前よりも速く動いているように感じた・・・・」のコメントは、溢れる思いが感じられて秀逸ですね。

武漢以外の湖北省各都市では、武漢に先立って封鎖解除が進んでいます。

****湖北省の各都市、封鎖解除 武漢以外、正常化急ぐ****
中国湖北省の武漢市以外の各都市は25日、新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐために続けてきた事実上の封鎖措置を解除した。

1月下旬から航空便や鉄道を止めて外部との人の往来を制限していたが、駅などが再開した。中国政府は出稼ぎ労働者らの職場復帰を進め、経済活動の正常化を急ぐ。
 
ただ住民によると、労働者が職場復帰のために検査を受けて無症状感染が判明する事例が発生。中国政府は無症状の感染者は発表に含めておらず、市民の間では再流行が起きるのではないかとの不安も強い。
 
北京紙、新京報によると、武漢市以外の駅で切符の販売を再開した。【3月25日 共同】
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武漢では生産活動も再開されているようです。

****工場再開の武漢、賑わい戻る上海。新型コロナ「制圧後」中国は今****
(中略)
今週に入って湖北省武漢も少しずつですが街が動き出し始めたとの連絡が。まだ移動制限があるものの日常を取り戻しつつあるようです。(中略)

3月16日武漢のお客様と連絡用に作っているWeChatのグループチャットに「本日より100名体制で再稼働」と久しぶりの通知がありました。

通常は350名ほどの規模で稼働しているお客様なので1/3程度の規模でありますが、湖北省武漢市内の工場が稼働再開。

縮小している理由として2/3が外地人であるのだと思います。まだ湖北省へは外地からの移動制限がされているでしょうから、春節に田舎に戻らなかった、または武漢出身のスタッフのみで稼働再開となったようです。(後略)
【3月27日 MAG2NEWS】
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【『本当かよ?』という感じ】
もちろん、中国の公表情報に対しては懐疑的な雰囲気があります。

****麻生財務相、中国のコロナ終息アピールに「本当かよ?」****
麻生太郎財務相は13日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染源である中国が国内感染は終息に向かっていると内外にアピールしていることについて、「本当に収まったのか。そのまま素直に受け取る人のほうが少ないと思う。『本当かよ?』という感じのほうが大きい」と述べ、懐疑的な見方を示した。
 
一方、「(中国での終息が)本当だとすれば、いろんな話が終息していくんだと思う」とも述べ、感染の押さえ込みで金融市場の動揺が沈静化することには期待感も示した。
 
中国の習近平国家主席は10日、新型コロナの発生後初めて被害が最も深刻な湖北省武漢市を視察。「(感染状況に)前向きな変化があり、重要な成果が出ている」とアピールしている。【3月13日 産経】
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また、習近平氏の武漢訪問に合わせて、感染者ゼロが演出されているとの指摘もあります。

****武漢の改善、欺瞞と医師が告発 習氏視察で隔離解除、検査停止****
新型コロナウイルス感染症の被害が最も深刻な中国湖北省武漢市で、10日に行われた習近平国家主席による視察に合わせ、症状の残る多数の患者が隔離を急きょ解除され、一部の感染検査も停止されたことが19日、分かった。
隔離施設の医師が共同通信の取材に、武漢市の状況改善は欺瞞だと告発した。
 
医師は、習氏への配慮から対策成功アピールのため治療中の患者数を意図的に減らしていると指摘した。中国で現場の医師がこうした告発を行うのは異例。

中国政府は武漢で18日に新規感染者が0人になったと発表したが、医師は政府の集計は「信頼できない」と断言した。【3月20日 共同】
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“陽性だが無症状の人は感染者とカウントせず人数も公表しない指針”も感染拡大再燃を懸念させています。
また、上記のような「状況改善の演出」が起きる背景には、中央の厳しい圧力に地方が萎縮している統治システムの問題があるとも。

****“感染者ゼロの武漢”実は今も新たな感染者がいる?その理由****
 “4日連続で新規感染ゼロ” 感染押さえ込みは予定通り?でも拭えぬ不信感
3月21日、武漢で4日連続で新規感染者がゼロになった。中国政府はすでに事実上の勝利宣言をし、今は海外からの入国者による感染拡大の食い止めに重点を置く。(中略)

中国メディアは、習主席の強いリーダーシップの元で感染に勝利した!と報じる。中国メディアでは、連日、感染との戦いを終えた医療関係者が武漢市民の感謝を受けながら地元に戻っているとのニュースを放送している。

(中略)もともと中国では地方政府による統計数字改ざんの“前科”があり、中国発表のデータに対する不信感がある。

既に感染収束までの壮大なストーリーができているのでは、と穿った見方が出てくるのもそのためだ。予定通り感染者がゼロになり、経済が元に戻り、習近平国家主席のおかげで感染に勝利――果たして、中国が描くシナリオ通りになっていくのだろうか。

“無症状の感染者は感染者とカウントしない“市民は政府に不信感
「昨夜、新たな感染者が出た。外出を控え注意を」すでに新規感染者はいないと発表されている20日、武漢のある住宅地で、こんな張り紙が出され、ネット上にも出回った。

62歳の男性が前日19日に陽性判定されたというのだ。ただ男性は咳や発熱などの症状はなかった。

地元政府は、中国政府が2月に示した“陽性だが無症状の人は感染者とカウントせず人数も公表しない指針”により感染者とされなかったが、住宅地側が間違って張り紙を出した、との調査結果を公表した。

この他、ネット上には、武漢にはまだ感染者が出ているとする文章も出回った。「ある住宅街で2例出た」「別の住宅街でも新規感染が出ている」などの内容だ。(中略)

ネットには「無症状でも周りにいたら感染するのでは?」「確かに周りに最近感染した人はいる」「無症状感染者はいるが政府の要求に合わないからカウントされない」「武漢市の発表は一言も信用出来ない」と不信感が溢れている。

統計は一定の条件のもとでやるしかないが、無症状でも他人に感染させる恐れがある中、陽性なのにカウントされていないとしたら、実際に感染拡大が抑えられているのか不安は感じる。

一方、中国ではそれに加え、統治システムが抱える問題から、「感染者ゼロ」が作り出されているのでは、、とさらに不安を感じさせる指摘が専門家から出た。

「1人の感染者も許されない」中央の厳しい圧力に地方は萎縮し・・・
3月15日、経済の専門家である北京大学国家発展研究院の姚洋院長が、論文『疫病との戦いから見る統治システムの現代化』を発表し、現体制の問題点を指摘した。この研究院は中国の社会科学や経済を研究するシンクタンクで政府に近く、このような批判は異例だ。

論文は、中国政府が、経済への深刻な影響が出る中で一刻も早い企業活動の再開を進めようとしているが進まない背景について指摘している。

姚院長は、その理由として、「地方の末端の当局者は、“1例の感染者も出してはならない”と指令を受けており、出した場合は処分される。このような状況で誰が思いきった経済対策をやろうとするだろうか」と強調する。(中略)

つまり、地元で感染者を出せば処分される、とプレッシャーを受けている地方政府は萎縮し、肝心な経済の復興に自主的に取り組めなくなっているとの批判だ。論文はその上で、「地方政府に自主権や実権を与えるべきだ」と訴えた。

この論文の指摘から感じられるのは、地方政府は誰もが、至上命題である“感染者ゼロ”、ありきで行動するようになるため、実際には感染者がいても絶対に表に出てこないのでは、という疑念だ。

処罰を恐れる地方の役人達が保身に走り、正確な情報を上に報告しない(感染者が出ても隠す)、ということが起きるのは中国では容易に想像できる。(後略)【FNN PRIME】
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コロナ禍を世界中に拡大させたのも、武漢における初期の“処罰を恐れる地方の役人達が保身に走り、正確な情報を上に報告しない”という対応であったとおもわれます。それは中国統治システムの根本的問題です。

武漢での死者数についても疑念が持たれています。

****中国武漢で死者数巡る疑念が再燃 埋葬開始、葬儀場に多数の行列****
中国湖北省武漢市で28日までに、新型コロナに感染した死者の遺骨の受け取りや埋葬が始まった。検査が追いつかず政府発表より実際の死者数が多い可能性が以前から指摘されていたが、多数の人が行列を作ったことで、市民の間で死者数を巡る疑念が再燃している。
 
住民によると、武漢の葬儀場では26日ごろから感染防止のため停止していた遺骨の受け取りが始まった。SNSでは受け取りや墓の購入のため、葬儀場や墓地に大勢の人が並ぶ写真が出回った。
 
武漢の感染による死者数はこれまでに計2538人。SNSでは行列の人数などから感染による死者は数万人に上るとの推測も広がった。【3月28日 共同】
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中国メディアによると、引き取りにきた親族らの列はおよそ200メートルに及び整理券も配られたとか。
死者数が発表より多いのか・・・実際のところはわかりませんが、“こうした映像がネットに投稿されると相次ぎ削除される事態が起きている。”【3月28日 日テレNEWS24】のような当局対応に根本的な“問題”を感じてしまいます。

【経済再建に大きく舵を切る中国政府】
問題・疑問は多々ありますが、中国の感染状況が一定に改善したのは事実で、これを受けて中国政府は経済の再建に大きく舵を切ってきます。

****中国で旅行予約再開、新型コロナ状況好転で―仏メディア****
中国紙・環球時報によると、フランスのニュースサイトLaQuotidienneは24日、「ヨーロッパで新型コロナウイルス感染症のトンネルの出口がまだ見えない中、中国人は旅行の予約を再開している」とし、次のように伝えている。 

中国の大手旅行予約サイト2社によると、人々は、2カ月間の「隔離期間」を経て、4〜5月の旅行の予約を始めている。 

Qunar(去哪儿)はすでに、新疆ウイグル自治区や四川省などを目的地とした1000以上の国内旅行商品を販売している。 

Ctrip(携程)では、国内1400カ所以上の観光名所を予約でき、5A級観光地の4割以上が営業を再開している。 

タイ政府観光庁と衛生当局は、4月の中国人観光客の再来に備え、あらゆる衛生対策を講じて信頼を得ると表明しており、中国の旅行会社は一度は失われた海外旅行を取り戻そうとしている。【3月27日 レコードチャイナ】
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個人的な関心事としては、先日タイから帰ってきましたが、感染拡大で次の旅行先が見つからないということがあります。中国の入国規制が緩和されたら、夏ごろの次の旅行先は中国ですかね・・・。それまでに入国規制がどうなっているか・・・・日本の状況次第でしょう。

****中国で「万里の長城」が入場再開 新型コロナ対策で2カ月ぶり****
新型コロナウイルス対策で閉鎖されていた北京郊外の「万里の長城」の入場が約2カ月ぶりに再開され、28日に初めての週末を迎えた。入場者数を制限し検温もするなど特別態勢は続くが、マスク姿の家族連れなどが青空の下、散策を楽しんだ。
 
中でも代表的な観光スポット「八達嶺」が24日に再開された。28日は朝からシャトルバス乗り場に数百人が行列。1メートルの間隔を空けるよう指示され、サーモグラフィーで体温も検査された。入場者は1日約2万人まででインターネット予約が必要だ。
 
中国政府は感染者の増加ペースが落ちたことを受け、全土で経済、社会活動の再開を促している。【3月28日 共同】
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飲食店の再開も始まっていますが、結構厳しい条件がつけられているようです。

****中国各地でレストランが再オープンもかなり厳しい条件付き―カタールメディア****
2020年3月25日、中国紙・環球時報はカタールの衛星テレビ局・アルジャジーラの報道を引用し、中国各地で飲食店が再オープンしているが、厳しい条件付きだと伝えた。 

記事は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための措置が徐々に緩和されるにつれ、中国では多くの飲食店が営業を再開していると紹介。しかし、危険が完全になくなったわけではないため、顧客数を以前のレベルにまで戻すのは容易なことではないと指摘している。 

S&Pグローバル中国が2月19日に発表したデータによると、中国のレストランの1、2月の売り上げは大幅に減少しており、第1四半期は前年同期比55%減になる見込みだという。

そのため、安徽省や江西省、江蘇省などでは、政府関係者が外食する際に少なくとも100元(約1500円)消費するよう促しており、「その主な目的は国民の外食に対する信頼性を回復させることにある」と伝えた。 

だが、店内での食事の許可を得た店でも、「複雑な健康手順を必ず遵守しなければならない」と記事は紹介。これには、「4時間ごとに店員にマスクを1枚配布すること、頻繁に体温を測定すること、テーブル間の安全な距離を保つこと、2時間ごとにすべての顧客を店外に出して消毒作業を行うこと」などが含まれると伝えた。 

(中略)広東式の茶餐廳を営む陳(チェン)さんは、「店を閉めて2カ月以上になるが、いまだにいつになったら完全に回復できるか分からない」と述べている。陳さんによると、支店の一つが開店許可を得て店内での飲食が可能になったが、1度に入店できる人数には制限があるという。 

記事は、「中国のデータによると2019年末までで、ホテルや飲食業に従事する人の数が2600万人を超えており、このうち飲食業が約60%を占める」と紹介。これに小規模な飲食店やバー、カフェなどを加えると、その人数は「2億人近くになるとみられる」という。

記事は「現在、中国の飲食業界ではオンライン、フードデリバリー、テイクアウトなどの方法での経営が、融通の利いた効果的な方法となっている」と結んだ。【3月28日 レコードチャイナ】
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政府関係者が外食する際に少なくとも100元(約1500円)消費するよう促しており・・・というのも、中国らしい面白い話です。

いずれにしても、今回のコロナ禍で、勤務形態は在宅に、飲食業はオンライン、フードデリバリー、テイクアウトなどの方法へと、生活様式が大きく変わるのでしょう。

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新型コロナのパンデミック加速 対応を欠けば膨大な犠牲者も 必要とされる国際協調体制

2020-03-27 23:38:37 | 疾病・保健衛生

(タイの規制強化で、首都バンコクから出身地・出身国に戻るため数万人が殺到した高速バスターミナル(タイ・バンコク市内【3月27日 FNN PRIME】)

【今後の適切な対応がなければ死者は何百万人とも、4000万人とも 貧困層が多く、医療体制のぜい弱な国での対応が焦点】
WHOの発表などによると、26日の時点で、感染者の数は前日に比べて4万9219人増えて46万2684人、死亡した人は2401人増えて2万834人と、2万人を超えました。【3月27日 NHK】

今後の“可能性”については、空恐ろしい数字も。あくまでも、適切な対応がとられなかったときの“可能性”の数字ですが。

****WHO事務局長「何百万人が死ぬ可能性」「パンデミックは加速度的に拡大」****
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は26日、主要20か国・地域(G20)首脳のテレビ会議に参加し、新型コロナウイルスの感染拡大を巡り、「すべての国が積極的な行動を取らなければ、何百万人もの人が死ぬ可能性がある」と述べ、強い危機感を表明した。WHOが発表した。
 
テドロス氏は会議で、世界の感染者数が10万人に達するまで67日間かかったのに対し、30万人から40万人に増えるのには2日間しか要していないと指摘した。

「このパンデミック(感染症の世界的流行)は加速度的に広がっている。これは国際的な対応を要する、地球規模の危機だ」と述べ、各国で医療体制を強化する必要性を強調した。【3月27日 読売】
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更にショッキングな数字も

****「対策なければ死者4000万人も」 英専門家チーム ****
(中略)イギリスの「インペリアル・カレッジ・ロンドン」の感染症の専門家チームは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響について、各国の最新の状況をもとに分析した結果を公表しました。

それによりますと、各国が今後有効な対策をとらなければことしだけで世界で4000万人が死亡するとしています。

一方で、外出制限や自宅での隔離などの強力な対策を感染拡大の初期段階で実行し、感染を調べる検査を数多く実施すれば、大幅に状況を変えることができ、亡くなる人は130万人に減少すると分析しました。

ただこうした対策はワクチンが開発されるまである程度の期間続ける必要があり、社会的、経済的にも痛みを伴うため、貧困層が多く、医療体制のぜい弱な国は大きな影響を受けることになると警告しています。

専門家チームは、「各国は、急速に広がる感染にまとまって迅速に行動する必要がある」などとコメントしています。【3月27日 NHK】
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今までのところ、感染は中国や欧米といった比較的国家体制がしっかりし、ある程度の医療体制を有する国で広まっていますが、おそらく検知されていない「静かな感染拡大」は全世界に及んでおり、今後はインドなどの南アジア、中東、アフリカなど、“貧困層が多く、医療体制のぜい弱な国”が感染の中心になると思われます。

そして犠牲者の数、市民生活のダメージも、現段階を超えるレベルになることも予想されます。

【タイでは非常事態宣言 出稼ぎ労働者数万人の帰国で一時的には周辺国に感染拡大も】
18日まで滞在していたタイでは、帰国日前後から日増しに規制が強化され、非常事態宣言も。

****タイ全土に非常事態宣言 県境などに検問所350カ所****
タイ政府は26日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、全土に非常事態を宣言した。外国人の入国を原則禁止し、高齢者らの自宅待機や県境を越える移動の自粛などを強く求めている。4月30日まで。
 
タイではここに来て感染者数が急増。26日時点で1045人、うち死者は4人で、非常事態宣言はこうした状況を受けた。
 
パブやマッサージ店、娯楽施設などが全土で閉鎖され、大規模な集会なども禁止される。外国人の入国は労働許可証所持者など一部の例外を除いて禁止され、例外措置の対象者も渡航にあたり健康状態の保証書が求められる。

これに先立ち、感染者が多いバンコク首都圏では22日からショッピングモールなどが閉鎖され、飲食店も持ち帰りを除き営業が禁止されている。
 
県境を越える往来の自粛を求めたことを受け、全国の約350カ所に検問所が設置された。中部サムットプラカーン県とバンコクとの境では26日、警察官らが車を止め、運転手らに質問するなどしていた。
 
公共交通機関の運行も制限され、バンコク市内のバスターミナルは26日、閑散としていた。警備員の男性(49)は「22日ごろまではターミナル内がごった返していたが、バスの行き先が減り、一気に人が来なくなった」と話した。
 
北部チェンライ行きのバスを待っていたウィーラパン・パンティさん(38)はバンコクで感染が広がったことから、チェンライ県当局から「入県許可」を得て実家に戻るという。「バンコクの服飾品の工場で仕事をしていたが、実家に戻るために辞めた。早く戻りたい」と話した。【3月26日 朝日】
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タイのこうした措置は、タイ国内にとどまらず、周辺国へ影響を及ぼします。
出稼ぎ労働者などのタイからの出国者が急増することで、少なくとも一時的には周辺国へ感染を拡散させることにもなります。

****東南アジアで感染爆発リスク…移民数万人が拡散****
3月22日、外国人の出稼ぎ労働者数万人が、タイの首都バンコクから一斉に脱出して帰国の途についた。新型コロナウイルス感染抑制策の強化で、彼らの仕事先の商業施設などが一時閉鎖となり、出稼ぎ労働者が生活の糧を失ったためだ。

しかし帰国先のカンボジア、ミャンマー、ラオスでは、彼らがウイルスを自国に持ち帰るのではないかとの警戒感が高まっている。

爆発的な感染拡大を防ぐために有効とされる都市封鎖措置(ロックダウン)だが、一時的に各地での感染拡大を誘発する可能性もある。

出稼ぎ労働者6万人が大挙出国 
タイの首都バンコクにある高速バスターミナルに22日、数万人の外国人労働者が殺到した。その多くはタイと国境を接するミャンマー、カンボジア、ラオスの三カ国から働きに来ている出稼ぎ労働者だった。仕事先の閉鎖で職を失い、バンコクから一路、帰国を急いでいた。

少子高齢化が進むタイでは、隣国ミャンマーやカンボジア、ラオス出身の多くの外国人労働者が単純労働の一部を担っている。その数はタイ全土で400万人以上にも上り、バンコクでも町を歩くとレストランや建設現場など、様々な場所で外国人労働者の姿を見かける。

しかし3月22日、バンコクで商業施設の閉鎖などが始まったことに加え、タイ政府が隣国との国境閉鎖を突然決めたため、大急ぎで母国に戻ろうとする労働者が高速バスターミナルに殺到した。

当時のバスターミナルは満員電車のように人々がひしめき合っていて、タイの内務省は数日間で、6万人の外国人労働者が帰国したと発表した。

タイの感染者はバンコクが4割
こうした出稼ぎ労働者が帰国先のミャンマーやカンボジアなどにウイルスを持ち込んでしまうのではないかとの警戒が強まっている。タイは東南アジアで2番目に感染者が多く、全感染者のうち4割がバンコクに集中しているからだ。

タイからの新型コロナウイルス流入の懸念は既に現実になりつつある。タイの保健省は3月24日、バスターミナルを利用していた33歳のタイ人男性が新型コロナウイルスに感染していたと発表した。男性はタイ北部チェンライに帰郷後に発症し、感染が判明したという。男性は、集団感染が発生したバンコク市内のバーで働いていたことも分かった。

森の中で自主隔離も…ミャンマーの危機感
最も多くの出稼ぎ労働者がタイから帰国したのはミャンマーだ。国境に到着したミャンマー人の出稼ぎ労働者は、数日間で3万人を超えた。不法労働者も多いため、実際にはこの倍以上の人数に上るとの指摘もある。

地元当局は全ての帰国者に対して、検問所での検温など健康チェックを行うことに加え、14日間の自主隔離を義務付けた。

しかし帰国者の中にも新型コロナウイルスの影は早くも忍び寄っている。

地元メディアは、帰国者の11人に発熱症状が出ていたことが分かり、病院に搬送されたと報じている。出稼ぎ労働者はミャンマーの都市部ではなく地方から来た人が多く、仮に感染していた場合は、ウイルスが地方部まで運ばれ、国全体に散らばってしまう恐れがある。

こうした感染拡大を防ぐため、帰国した村民をしばらくの間、受け入れない決断をする村落も出てきている。

また帰国者の中にも、故郷での自主隔離を諦め、森の中で隔離期間を過ごすことを決めた人たちが現れた。仮に村にウイルスが持ち込まれれば、医療体制が整っていないため、村全体が危機に陥る。このことを理解した上で、帰国した出稼ぎ労働者も自主的に行動を取り始めている。

カンボジアでも発熱者の情報
隣国カンボジアにも大量の出稼ぎ労働者が帰国している。カンボジア政府によると、これまでに4万以上がタイから帰国した。

地元政府は、行政と警察が連携して帰国者の追跡や監視体制を構築しているとしているが、これだけ多くの人を完全に追うのは困難だ。

すでにプノンペン郊外の村では、経過観察中の帰国者から38度以上の高熱を発熱した人が出たとの情報も出ている。地元当局は、これからしばらくの間は帰国者の動向に神経を尖らせることになる。

日本でも、海外から帰国した人が国内にウイルスを持ち込むケースが相次いでいる。3月19日以降、海外で感染したと疑われる感染者は連日10人以上確認されている。

しかし、ミャンマーやカンボジアは、帰国した人の数が万単位と、桁違いに多い。

感染拡大を防ぐための「ロックダウン」だが、これが出稼ぎ労働者の大量移動を引き起こし、一時的に東南アジア各地での感染拡大を誘発するリスクが現実化してきている。帰国者による感染拡大を封じ込められるかが、これらの国では今後数週間の焦点となる。【3月27日 FNN PRIME】
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ミャンマー、カンボジア、ラオス・・・いずれも“貧困層が多く、医療体制のぜい弱な国”であり、いったん火が付けば鎮火は難しいでしょう。

【いまだ脆弱な国際協調体制】
上記事例にも見るように、適切な各国の対応に加えて、国際間の協調も不可欠です。感染拡大のほか、医療支援の面でも。

ただ、これまでのところ各国は自国のことで手いっぱいという感じで、国際的な協調体制が脆弱なままです。

****コロナ対策、先進国と途上国の格差大きく G20指導力にハードル****
20カ国・地域(G20)はテレビ会議形式の首脳会議の後で出した声明の冒頭で、新型コロナウイルス感染の世界規模の拡大に「団結の精神」で立ち向かう意思を示した。

保健や医療、財政のレベルに大きな差がある先進国と貧困国が同じ危機に直面するなか、指導力を発揮すべきG20には高いハードルが待ち受けている。
 
声明によると、関係国の財務相と保健相が数カ月のうちに合同会議を行い、世界保健機関(WHO)の報告の下で必要な医療、財政支援を協議する見通しだ。
 
声明で、G20首脳は「タイムリーで透明性ある情報の共有」の必要性を訴えた。欧州の先進各国でさえ感染者・死者数に開きが生じているなか、国境を越えて広がる「見えない敵」との戦いに情報共有が欠かせないことは間違いない。
 
しかし、感染拡大の原因をめぐって米中が批判し合う事態となっているほか、イランなど実態を隠蔽していると指摘される国もある。事実に基づく情報の共有を実現しなければ、収まった感染拡大の再発などで「いたちごっこ」が世界中で続く恐れもある。
 
また、声明はアフリカでの感染拡大を「深く懸念する」と表明した。アフリカでも貧しい国が多いサハラ砂漠以南では検査態勢が整っていない上、医療機関がごく少数しかない国もあるとされる。感染者・死者数の把握さえおぼつかないのが実情だ。
 
紛争や貧困に端を発する難民や避難民への対処も不可欠だ。シリア内戦では560万人が難民となり、ミャンマーの少数民族ロヒンギャは70万人以上がバングラデシュに避難した。リビアなどから密航船で欧州を目指す人の流れも絶えず、こうした集団では感染が一気に広がりかねない。
 
ロイター通信は当事国の政府筋の話として、通常のG20首脳会議でも意見の相違を埋めるために数カ月前から準備を行っているとし、テレビ形式の会議だけで細部を詰めた合意に達するのは難しいとの見方を伝えた。
 
差し当たり連帯を確認したが、G20が実効性ある対策を打ち出せるかは今後、どれだけ結束できるかにかかっているといえそうだ。【3月27日 産経】
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指導的な役割を果たすべきWHOにも批判が向けられる状況。

****WHO、新型ウイルスのパンデミックで再び矢面に****
国連の世界保健機関は病気が流行するたびに、過剰反応をした、あるいは逆に行動が遅過ぎたなど、批判を受けてきた。だが今回の新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)への対応ほど、強い非難にさらされことは過去にもほぼ例がない。
 
WHOは2009年のH1N1型インフルエンザ流行時、騒ぎ過ぎだと言われた。その5年後、アフリカ西部でエボラ出血熱の感染が拡大した時には、対応が遅過ぎると批判された。エボラ出血熱の流行では、1万1000人以上が亡くなった。
 
この反省から改革を行ったWHOは即時対応班を設置。コンゴ民主共和国でエボラ出血熱が2度拡大した際には、支援に当たってきた。
 
そのWHOが、昨年末中国・武漢で発生した新型コロナウイルスをめぐり、十分に迅速かつ強力な対応を怠ったとして、再び矢面に立たされている。
 
中国の怒りを買うことを恐れて警告を遅らせた、パンデミック宣言が遅過ぎた、一貫した国際対応の調整に失敗したとの非難を浴びている。
 
さらに、感染拡大を抑えるには公共の場の閉鎖の必要性が共通認識になりつつあるとみられる中、WHOはこういった措置に関しては指針を出していないに等しい。
 
専門家らは、中国の初期対応には多くの批判材料があるという点では意見が一致している一方で、中国が新型ウイルスの遺伝子情報を速やかに共有し、拡散を食い止めようと強硬な封鎖措置を講じたことなど、同国が正しく行ったことを評価したという意味では、WHOは間違っていなかったという声も多い。

「初期段階で中国の過ちを指摘して中国を孤立させていたら、失策だっただろう」と語ったのは、WHOの予防接種プログラムを統括するアン・リンドストランド氏。
 
中国政府の協力は必要不可欠だったとして、「テドロス事務局長は正しいことをした」という見方を示した。
 
テドロス事務局長も、自身とWHOとが中国の圧力に屈したとする指摘を一蹴し、WHOが加盟諸国と築いてきた協力関係を強調。
 
テドロス氏は今月の記者会見で「加盟国から何が来ようとも圧力とは受け取らない」と述べた。
 
一部からは、今回の新型ウイルス感染症のパンデミックにより、真逆の問題が浮き彫りになったのではないかという声も聞かれている。加盟国の方こそWHOからの圧力を感じる必要があるにもかかわらず、そもそもWHOにそれだけの力がない、という指摘だ。
 
スイス・ジュネーブにある国際開発高等研究所の世界保健センターのスーリー・ムーン氏は「テドロス氏とWHOはオーケストラを指揮しようと奮闘しているが、奏者らが協力していない」と話した。 【3月27日 AFP】
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イギリス元首相のブラウン氏は一時的に「世界政府」を設立するよう呼び掛けたとのことですが、もちろん各国政府は聞く耳など持たないでしょう。

****元英首相が「世界政府」を提案=新型コロナ、医療・経済危機に対応****
英国のブラウン元首相は世界の主要国の指導者に対し、一時的に「世界政府」を設立するよう呼び掛けた。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、医療・経済両面での危機に対応するためだという。英紙ガーディアンが26日に報じた。
 
報道によると、ブラウン氏は「これは一つの国で対応できる問題ではない。協調した世界的な対応が必要だ」と指摘。まずは医療で緊急対応が必要だとしながらも「医療に介入すればするほど、経済を危機にさらすことになる」と述べた。
 
その上で、強い権限を持つ世界的な「タスクフォース(特別作業班)」をつくり、ワクチンの共同開発のほか、中央銀行による金融緩和や政府による財政出動での協調、新興国からの資本流出の阻止などに取り組むよう求めた。【3月27日 時事】 
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正論ではありますが、可能性はゼロ。
ただ、そうした発想を持って、国際的な協調に尽力することは必要です。

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ブラジル  州政府の外出禁止措置に反対するボルソナロ大統領 国情を考えると配慮すべき点も

2020-03-26 23:13:17 | ラテンアメリカ

(新型コロナウイルスのパンデミックをめぐる記者会見中、マスクを目に当てるジャイル・ボルソナロ大統領(2020年3月18日撮影)【3月19日 AFP】)

【南米最大の感染国ブラジル 州政府による外出禁止措置】
新型コロナウイルスの感染は南米でも拡大していますが、最も多い感染者を出しているのがブラジル。

そのブラジルでは、サンパウロ州やリオ州で検疫のための外出禁止措置(クアレンテーナ)が実施されています。
その状況について、現地日系メディアは以下のように報じています。

****新型コロナウイルス=全国の感染者2千人超える=死者は12人増え、46人に=クアレンテーナは全国的規模に*****
新型コロナウイルスの感染者は、24日午後4時現在の保健省発表で2201人、死者は46人(サンパウロ州40人、リオ州6人)となり、最初の感染者確認から28日で感染者数が2千人を超えた。 
 
また、サンパウロ州やリオ州で検疫のための外出禁止措置(クアレンテーナ)を実施しはじめるなど、全国各州の州都で同様の対策をとっている。24日付現地紙、サイトが報じている。(中略)  
 
23日のサンパウロ州での死者は8人で、33歳の男性の他に男性が5人(68、75、76、77、78歳)と、女性が2人(80、88歳)となっている。同州での死者は同日までに30人を数えている。  
 
23日の段階の感染者が745人に達しているサンパウロ州では、サンパウロ市市長による市長令で、20日から、生活に必需のサービスを提供する店や分野を除く商店の営業が禁止されたのを皮切りに、24日からは州内全市でクアレンテーナが始まった。 
 
感染者数が23日の時点で233人となり、23日現在で4人の死者が出ているリオ州でも、24日からクアレンテーナが始まっている。  
 
クアレンテーナのやり方は各自治体によって多少の差があるが、基本、食品を売る店と薬局のような、必需サービス以外の商業活動などを止めることで、不特定多数の人が同じ空間に集まり、直接接触しての感染や飛沫感染などを起こすのを防ぐことが最大の目的だ。 
 
クアレンテーナは、健常者が感染者と接触する機会を減らし、感染の拡大を防ぐために、中国や欧米をはじめ、多くの国で実施されている。 
 
サンパウロ州のクアレンテーナは4月7日までだが、延長の可能性が高く、リオ州は無期限での実施となっている。特に、サンパウロ市やリオ市のように、ファヴェーラに代表される貧困地域でのコミュニティ感染が見られる地域では、急速な拡大が恐れられている。  
 
また、それ以外の各州と連邦直轄区など、ほぼすべての州都でも、20日以降、続々と市内での商業活動の停止などの措置を導入している。

それは、ショッピング・センターの営業を閉鎖するものから、バーやレストランも閉鎖するもの、実施期間も5日間から2週間まで、市の判断によって異なるが、日常の商業活動の機能は全国的にほぼ止まったものとなっている。  【3月25日 ニッケイ新聞】
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【外出禁止措置を「ヒステリー」「焦土作戦」と非難するボルソナロ大統領】
こうした自治体主体の外出禁止措置(クアレンテーナ)などの厳しい対応に反対しているのが、その極右的言動から「ブラジルのトランプ」とも称されるボルソナロ大統領です。

ボルソナロ大統領はかねてより、新型コロナをめぐる国内外の強硬な対応を「ヒステリー」と呼んでおり、会見時にマスクをもてあそぶ姿が話題になったりもしています。

****ブラジル政府にコロナ禍直撃、大統領は平然とマスクもてあそぶ****
ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領は18日、閣僚2人と上院議長が新型コロナウイルス検査で陽性だったと発表する中、記者会見でマスクをもてあそび、新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)をめぐる対応をまたもや「ヒステリー」と呼んだ。
 
極右のボルソナロ氏は、これまでも新型ウイルス危機に対するおざなりな対応を批判されてきたが、記者会見中にとんでもないやり方でマスクを使用し、ネット上で嘲笑の的になった。
 
ボルソナロ氏は会見中、マスクを何度も外したり、耳から垂らしたり、目に当てたりした。これはウイルスに感染してしまう間違った使い方だ。
 
あるツイッターユーザーは、この場面を収めた動画に「フェースマスクを使わない方法」と名付けた。
 
ボルソナロ氏は、世界で8700人超が死亡したパンデミックの「重大さ」を認める一方、「ブラジル国民には落ち着いてもらいたい。ヒステリーを起こさせるわけにはいかない」と述べた。【3月19日 AFP】
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そのボルソナロ大統領、今度は対新型コロナ隔離措置を「焦土作戦」とも形容して反対しています。

****対コロナ隔離措置は「焦土作戦」、ブラジル大統領が非難*****
ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領は24日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を封じ込めるための各地の隔離措置を「焦土作戦」と呼び、経済を破綻させるリスクがあると非難した。
 
歯に衣着せぬ物言いで知られる右派政治家のボルソナロ氏は、サンパウロ州やリオデジャネイロ州が取った非常事態宣言のような措置に対し、人々の雇用を奪う誤った救命措置だと批判した。
 
ボルソナロ氏は国民に向けた演説で「一部の州や自治体は、交通機関の停止や店舗の閉鎖、一斉の外出禁止といった焦土作戦的な考え方を捨てる必要がある」「われわれは雇用や家計を守らなければならない」と語った。
 
さらに「もうすぐ事態は収束する。われわれは生きていかねばならないし、普段どおりに戻らねばならない」とも述べた。
 
この発言の直後、検疫・隔離の実施を求めて抗議するデモが発生。外出禁止令が出ている各地の都市ではボルソナロ氏の演説の放映中から、人々が窓辺で鍋やフライパンを打ち鳴らして抗議した。
 
ブラジルにおける新型ウイルス流行の中心地となっているサンパウロ州は同日、感染拡大を遅らせるため、部分封鎖を開始した。サンパウロ州の人口は、スペインとほぼ同じ約4600万人。
 
しかし、「熱帯のトランプ」の異名を取る大胆不敵なボルソナロ氏は、こうした極端な措置は不要だと主張している。

ボルソナロ氏はこれまでも新型ウイルス対策をめぐり、「ちょっとしたインフルエンザ」に「度を越した」反応をしていると述べたり、「ハイリスク群は高齢者なのになぜ休校にするんだ?」などと発言し、たびたび物議を醸してきた。
 
中南米最大の経済大国であるブラジルでは、新型コロナウイルスによるこれまでの死者は46人、感染が確認されたのは2201人と、同地域最大の被害が出ている。 【3月25日 AFP】
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本家トランプ大統領も当初、ボルソナロ大統領と同じような主張をしていましたが、一転して「戦時大統領」として矢継ぎ早の対策を実施、しかし経済優先の立場化から規制緩和を検討するなど、その対応は揺れていますが、「ブラジルのトランプ」の方は首尾一貫しています。

 

【大統領:経済破綻すれば「無秩序」に、略奪なども】
現在の世界の常識からすれば、ボルソナロ大統領の言動は「何言ってんだか・・・」ということになりますが、下記のように言われると「なるほどね・・・」と思うところもあります。

****コロナ対策で経済破綻すれば「無秩序」に、ブラジル大統領が警鐘****
ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領は25日、新型コロナウイルスの感染拡大を遅らせるために実施されている封じ込め措置について、無秩序と略奪につながる恐れがあると述べ、民主主義が危険にさらされていると警鐘を鳴らした。
 
極右のボルソナロ氏は、サンパウロ州やリオデジャネイロ州が取った企業やや学校の閉鎖といった新型コロナ対策について、中南米最大の経済大国であるブラジルの経済を破綻の危険にさらすものだと繰り返し非難してきた。
 
ボルソナロ氏は、首都ブラジリアにある大統領府の前で報道陣に対し、「企業は何も生産していない。従業員に賃金を支払うこともできない。そして経済が破綻すれば、公務員に給与を支払うこともできなくなる。われわれは無秩序に直面する」と語った。
 
さらに、「スーパーマーケットの略奪といった事態に陥る恐れがある。そこにはウイルスも残っているだろう。ウイルスに加えて無秩序にも直面することになる」「われわれは何をすべきか? 人々を職場に戻し、高齢者や健康上の問題がある人々を守る。それだけだ」と述べた。
 
ボルソナロ氏は、「これによってみなさんが堅く守っている『民主主義の規範』が揺らげばどうなるか?」「私がそうはさせない。心配無用だ」とも述べた。
 
ボルソナロ氏は、新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)に対する自身の取り組み方を、称賛するドナルド・トランプ米大統領のものになぞらえ、「われわれは同様の方針に従っている」と述べた。 【3月26日 AFP】

********************

 

無秩序状態、スーパーマーケットの略奪・・・・日本ではありそうもない状況ですが、世界有数の犯罪大国ブラジルとなると話は別です。

ただでさえ治安維持がままならないブラジルで、経済活動が停止して、その日暮らしの人々が生活の糧を失った場合、暴動・略奪の可能性も現実の問題となります。

****世界で最も危険な50都市ランキング****
2017年、ラテンアメリカはメキシコのCitizens' Council for Public Securityが毎年発表する世界で最も危険な都市ランキングに、依然として多くの都市がランクインするという不名誉な結果となった。

ランキングに掲載された50都市のうち、42がラテンアメリカの都市。ブラジルは17、メキシコは12、ベネズエラは5、コロンビアは3、ホンジュラスは2、エルサルバドル、グアテマラ、ジャマイカはそれぞれ1つがランクインした。

ラテンアメリカでの暴力は、大部分が麻薬密売と組織犯罪にかかわるもの。メキシコではここ数カ月、犯罪組織が分裂し、多くの血が流れている。状況は、政情不安、貧困、景気低迷からさらに悪化。汚職、警察による不正なども犯罪を助長している。

ランキングは人口30万人以上の都市が対象。紛争地域や調査不可能な都市の殺人件数は含まれていない。そのため、いくつかの都市はランキングに現れていない。また、一部、不完全なデータに基づいて殺人発生率を推定した都市もある。(後略)【2018年3月13日 BUSINESS INSIDER】
*****************

****ブラジル、治安やや改善=昨年の殺人、11%減-NGO****
ブラジルのNGO「ブラジル治安フォーラム」は10日、2018年に同国で殺害された人の数が前年に比べ10.8%減少し、5万7341人となったと発表した。強盗件数も14.1%減の147万5978件。景気回復に伴い、治安が多少改善したことが浮かび上がった。
 
フォーラムのデリマ代表は治安悪化傾向に歯止めがかかったことを歓迎しながらも、「殺人は14年レベルまで減ったにすぎない。継続的に(件数を)減らす努力を怠ってはならない」と強調。政府に一層の治安対策強化を促した。
 
フォーラムによると、殺人発生率は人口10万人当たり27.5人。最悪レベルだった前年の30.8人は下回ったが、治安悪化が深刻なメキシコの23.1人と比べても依然として高水準で推移している。16年の日本の発生率は0.28人(世界銀行)だった。【2019年9月11日 時事】
*******************

殺人発生率でみると、日本の約100倍、強盗などでは更に大きな開きがあります。
経済・市民生活の強制的停止の痛みは、真っ先にその日暮らしの貧困層を直撃します。失業者も急増します。
ブラジルのような犯罪が常態化した国で経済活動が止まると何がおきても不思議ではありません。

アメリカでも、治安悪化を懸念する人々が銃購入に殺到しています。

****米、新型コロナで銃の購入者急増 治安悪化を懸念****
新型コロナウイルスの流行が拡大する米国で、治安悪化を心配した人々が銃と弾薬を買いだめし、銃の売り上げが過去2週間にわたり急増している。
 
オクラホマ州タルサの銃販売店を経営する男性はAFPの取材に対し、「売り上げが約800%増えた」と説明。購入者の大半は初めて銃を所持する人々で、あるものは何でも買っていったと語った。
 
多数の感染者が出ているワシントン州で銃販売店では、開店の1時間前から並ぶ客もいるという。経営者の女性は、いつもなら客入りの良い日で20〜25丁が売れるが、「きょうは150丁ぐらい売れそうだ」と話した。
 
女性によると、ショットガンとその弾薬、さらに拳銃用の弾薬が全国的に品薄になっている。女性の店でも客の大半が初購入者で、性別や年齢、さらには黒人やアジア人、インド人、ヒスパニックといった人種にかかわらず、「誰もが銃を買い求めている」という。
 
ユタ州に本社を置く銃メーカーで、主に半自動小銃AR15を製造しているデルタ・チーム・タクティカルのマーケティングディレクター、ジョーダン・マコーミック氏によれば、同社は需要に応えるために休みなしに製造を続けている。
 
同氏は、封鎖措置を導入する州が増える中、銃販売店の休業が相次ぐのではないかという懸念が販売を後押ししていると説明。「多くの人は自衛したいと考えている」と語った。

「失業状態が続けば、略奪が起こるかもしれない。人々は、自分や財産、家族を守る力を持ちたいと思っている」(マコーミック氏) 【3月26日 AFP】
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もっとも、戒厳令下のように軍・警察が街中に展開するような状況になれば、犯罪も普段より少なくなるのかも。

よくわからないところが多々ありますが、ブラジルのような国にあっては、日本とは異なる配慮も必要になるのかも。

非常事態宣言のもとでの外出禁止や経済活動停止の影響を受ける貧困層や失業者に、生きていけるような対策がとれれば問題も大きくならないのでしょうが、ブラジルでそれができるかどうか?

 

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