「どんなにちらかしても、しばらくすると…」
「反対だったらいいのにな、で思い出したんですけど」
クマたんは、クマガイ博士に発明のリクエストをします。
「ええっと、前に『エントロピーの法則』というのを聞いたことがあるんです。
ボクの理解では、自然界の物質は秩序ある状態から無秩序な状態へ移行し、その逆は起こらない。無秩序な状態の物を秩序ある状態にするためにはエネルギーがいる、ということのように思うんですが、これって、部屋の掃除にすごくよくあてはまってますよね」
たしかに、部屋はほうっておくとどんどん散らかっていって、片付けるのにはエネルギーがいりますね。
「だから、もし、エントロピーの法則が逆に働く部屋ができたら、どんなに散らかしても勝手に片づく夢の空間になるんじゃないかと…」
「ハハハ、『エントロピーの法則』は、正確に説明しようとすると、難しい数式がたくさん出てきて、わけがわかんなくなっちゃうんだよね。だから、随分誤解されているところもあるんだよ」
「ボクの理解は間違ってますか?」
「そうだなあ。一般の人の理解の仕方としてはそれでもいいかもしれないけど、ただ、エントロピーの法則が逆に働いたとしても、物が勝手に片づいたりはしないと思うよ」
「え、そうなんですか」
「たとえば、固体の分子と気体の分子では、自由に動き回れる気体の分子の方がエントロピーは大きい。
でも、本棚に整理された本と、床に散らばった本のエントロピーは同じなんだよ。
クマたんのいう、秩序、無秩序というのは、分子や原子レベルの話で、マクロな物体にも同じように適用できるわけじゃないんだ」
「そうなんですか」(ションボリ)
「でも、クマたんの考えは、発想としてはすごく面白いよ。これからも、何か思いついたらどんどん話してよ。実用化できそうなら、ぼくも頑張るから」
「ハーイ、ありがとうございまーす」
お掃除嫌いな人(私も)が泣いて喜びそうな「逆エントロピー空間」は、残念ながらちょっと違っていたようです。
まあ、考えたら、人間の考える整理整頓通りに自然が片付けてくれるとも限りませんしね。誰かが部屋を掃除してくれた後、何がどこにあるのかしばらく探し回るなんてこともありますから、多少エネルギーがいっても、自分のいいように片付けるのが一番いいのかもしれませんね。