銀座のうぐいすから

幸せに暮らす為には、何をどうしたら良い?を追求するのがここの目的です。それも具体的な事実を通じ下世話な言葉を使って表し、

新稿としての11月歌舞伎座・・・・・元禄忠臣蔵【御浜御殿】は、私にとっては驚愕した舞台だった △

2016-11-03 01:58:46 | 政治

  今、3日の午後三時ですが、やっと、加筆推敲が完成しました。で、恒例の△印を総タイトル横に付けておきます。

 1日火曜日は、歌舞伎を見てきました。昼の部と夜の部です。最初の演目と最終演目は、体力温存のために、見なかったのですが、それでも、良いエネルギーを注入されて帰宅したので、朝の五時まで、眠たくありません。

 ところで、本日は、【元禄忠臣蔵・御浜御殿】の段が、良かったです。2014年の夏から、歌舞伎を見る事を、65年ぶりに再会して、今までで、国立劇場と明治座と、浅草公会堂で、見ていますが、

 牡丹灯籠と、この本日の、御浜御殿の段の二つが、歌舞伎座で、見たものの中では、良かったですね。

 真山青果は、一時期・弾圧を受けていたそうです。それなのに、松竹の大谷竹次郎が、才能を信じて、保護して、歌舞伎台本を書かせたそうです。それで、どこか、芯の有る戯曲になって居ます。そのせいか、硬さやまじめさがあるのですが、この段だけは、緊迫感に満ちていて演劇脚本としても、見事なものだと、思います。

 しかも、仁左衛門が特に得意としている戯曲らしいのですが、今まで観た仁左衛門の中では、やはり、一番、素晴らしかったです。毛谷村などよりもよかったです。

 また、アンサンブルも良くて、

 染五郎、梅枝、時蔵、左団次、竹三郎などが、緊迫した演技を繰り広げました。新芝翫襲名公演という形なので、いつもとアンサンブルが異なって居て、息子の孝太郎との共演ではなかったので、『これは、慣れている芝居ですよ』という甘さが、まず、主役の仁左衛門側に、少なかったと、感じます。後は全員が仁左衛門から、いい影響を受けていると、感じました。仁左衛門は、46年前の孝夫時代から始まって、この役を10回ほど、演じているみたいですが、その長い芸歴を一切感じさせないみずみずしさでした。

 また、五世時蔵が脇役に回って、息子の梅枝を主役に据えていました。これも甘くない措置で、芝居を、ハイレベルにしていたと、思います。筋(プロット)は、複雑で、ちょっとここでは説明がしきれませんが、簡単に言えば、浅野内匠頭が、刃傷沙汰を起こした時の、将軍が、綱吉公で、公に子供がいないので、時期将軍が、仁左衛門演じる、綱豊卿に、まわるだろうと目されている時期の、綱豊卿のお屋敷が舞台です。それが名称・御浜御殿です。

 そこに、夕方から、吉良上野乃介がお客としてやってくるので、頭の良い秘書(御祐筆)の江島(時蔵が演じる)が、綱豊卿の愛妾(梅枝演じる)お喜世の方に、兄・富森助右ヱ門(染五郎演じる)を招いたらどうかと、勧めます。そこで、やって来た染五郎に対して、仁左衛門が、その腹を探りながら、今日、吉良を打っても駄目だと、内々に、説得する過程が、芝居となって居ます。

 ときどき、『おや、これは、シャークスピア劇では、ないの?』と、思ったほどのセリフ劇です。二回目だという染五郎も、この二年間の、私が見た演目の中で、もっとも、勢いがあり甘さがなかったと、思いますね。ゆるみがみじんもなかったです。ともかく、短いながら、緊迫した場面の連続で、素晴らしかったです。息子を披露するつきは、菊之助が、大車輪。今月は息子の披露はないけれど、染五郎が、大車輪です。

 特にネタバレに近いハイライトは、仁左衛門の、度重なる挑発に、とうとう、本心を爆発させて、接待の場であるお座敷で、ひとりで、吉良を討とうとはやる染五郎を、妹の梅枝が、必死で、止めるところでした。二人が、養子縁組の兄弟であり、血がつながっていないというセリフが、その前にあるので、ぞっとするほどの、何か・す・ご・い・も・のを、感じさせました。民芸や文学座、そして、最近ベニサンピットなどで、公演を行っている類の演劇は見ていますが、今まで、これほど、ぞっとしたことはなかったです。梅枝は、今、一番脂の乗ってい女形ではないかな? 美形という意味では、玉三郎にも、菊之助にも、やや劣るけれど、感情がこもっているという意味と、役になり切っていて、俳優の個性を表面には出さないという意味では、すごいです。エピソードが少ないので、七之助などにも、劣る知名度ですが、内容はすごいです。

 何か調べたら、巡業中に、ネットで、地方の悪口(ここには何にもないよ。つまらない)を言っちゃったらしいのです。それで、若者たちに不人気だそうです。が、まあ、ご愛嬌と言った類でしょう。しかし、今思い出しましたが、いとこにあたる、中村隼人のブログは、ものすごくきれいな内容です。しかも、本人には、それが、思いがけない事でしょうが、頻繁に更新があって、歌舞伎界の、良い意味での、情報流しになって居るので、時々開きますが、面白いです。姿勢の上で、何が、違うのだろう。親世代からのものだと、思うし、慶応ボーイであることの傲慢さと、堀越学園高校へ行き、芸能界優先をしたことの謙虚さに違いがあるのかな?

 あ、それから、4世時蔵の孫3人のうち、あと一人残った萬太郎のブログって、きわめて、学術的です。自分の公演について、どういう風に演じているかを記録してあります。資料としては、グッドですが、読み手側からすると、面白くないのです。ここらあたりが微妙なところですね。、ただ性格は、よくて、そして、まじめだと、思いますよ。

 ここに3日の加筆をします。萬太郎について、父親の五世時蔵が、「兄に比べて、把握が遅いので」と、書いて居ました。ところが、別のところで、萬太郎は、落語を研究していると書いてあるのも見ました。ともかく、国立劇場の、歌舞伎を紹介する説明の日の彼の解説(2016年6月分)が、素晴らしかったです。余裕と工夫があって。だから、彼のブログが一種の学術的記録になって居るのは、よくわかります。ただし、ブログとしての、人気は出ないでしょうね。

 一方、兄の梅枝ですが、ある処の批評に「天才だ・・・・・その理由は云々、かんぬん」と、書いてありました。そして、私もそう思います。何において天才かと言うと、役柄が表現している人物の、感情や、裏側を把握して、それを表現するのに、まことに、賢明で、で過ぎず、引っ込み過ぎずで、適切なのです。ばかげブログを過去に書いてしまったのも、映画アマデウスに登場するモーツァルトを理解するとよくわかります。

 先月の公演の【妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきんと読む)】の【吉野川=通称山の段】で、菊之助が、主役の姫君・雛鳥をやりました。腰元が、この兄弟でした。菊之助が、現在の若手女形の中では、主役です。その上に、人気順に言えば、玉三郎、雀右衛門、魁春がいます。その4人に、比べて、本人の、リアルな存在としての特徴が、ほとんど出て来ないというところが、梅枝の、特徴です。

 別にブログによって、どっちが、俳優とし て、優れているのだと判断をすることはできないのですが・・・・・二人ともに、きわめてすぐれた才能があると、思いますよ。

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 花道の左側に、内部の人が芝居を見る席があるそうです。黒い紗がかかっている席なのですが、それを見る余裕は、今回の私には無かったけれど、後で思えば、そこを、見て見たかったところですね。この、演目、【御浜御殿の段】には、直後に出番が控えていない役者が、きっと、見に来ていたと、思います。大変な勉強になるから。

 一方で、新芝翫、一家ですがご子息たちのセリフ術が、まだ、まだ、非常に甘くて、学芸会レベルです。声の質も、悪いし、(=透明度が足りない。従って、遠くまでは通らない)セリフも現代劇風に、聞こえる場合があります。超・恵まれた環境に居るので、自分がまだまだであることに、目覚めるチャンスがあるかどうか?

 踊り、特に付け板(音が響く、10cm厚さのブタン全面に広がる大きな箱)の鳴らし方は、ご立派でしたが。特に【祝勢揃壽連獅子】(せいぞろいことぶきれんじしと読む)での、三人のそろい踏みは、そろっていましたね。

 2016年11月2日、これを書く、雨宮舜(本名川崎 千恵子)

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