AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

ポリリズム

2019年03月10日 | まったり邦楽
ついに入手した!(去年やけど)

『ポリリズム』初回目ぇつむってしもたヴァージョン。

Perfumeの他の初回限定シングルはけっこう出回っているのに、このPerfumeの代表曲ともいえる『ポリリズム』の初回限定盤は、以前より入手困難でいまだなかなかのプレミア価格で取引されている。
リリース当時、東京ではアッという言う間に売り切れて、Perfume本人たちですら買うことができなかったとか。
地元広島とか地方にはけっこう余ってたらしいけど。

基本シングルは買わない主義なので、当時この曲にひっかかったのにも関わらず購入しようなどとは露程にも思わなかったんだが、でもこのジャケット、実にスタイリッシュでこのリサイクル識別表示マークをイメージした三位一体のポーズといい、ほんとよくできていてコレクターの性から徐々に手に入れたい願望が強くなったのは必然であったかと。


まぁPerfumeにそれほど関心のない方でも「チョコレイト・ディスコ」と、この「ポリリズム」くらいはご存知の方も多いだろう。
「ポリリズム」は、まだアイドルという存在が低迷していた2007年に満を持してリリースされ、その楽曲の持つクオリティとキャッチーさだけで多くの人間を一瞬で振り向かせた神曲と言って差し支えないPerfume躍進劇の転機ともなった重要ナンバー。
「チョコレイト・ディスコ」は実はそのちょっと前に発表された曲で、リリース当時はそれほど売れてなくて(木村カエラなどの一部の人間には認知されていた)「ポリリズム」の大ヒットにより再認識された曲だ。


私自身、12年前この「ポリリズム」の曲が起用されたNHK公共広告機構ACリサイクルキャンペーンのCMを見て、「なにこの曲?!」とビビっときてPerfumeにハマった口である。
その時はこれを歌ってるのがアイドルなのか何なのかもわからないことだらけだった。

当時からダフト・パンクとの類似性が指摘されていたが、確かにこのPVは「Around The World」っぽいな。



「ポリリズム」は、リサイクルキャンペーンソングであることにもちなんでポリエチレンテレフタラートの「ポリ」(重合体)からヒントを得た楽曲であるということもあるが、間奏部に複数のリズムを同時進行させるという音楽の技法である“ポリリズム”を導入するという、中田ヤスタカ氏の天才的で常識ハズレなアイデアが見事に功を奏した革新的J-POPナンバーであるといって言いだろう。

ただ、この中田氏の奇抜な楽曲のアイデアに対して、発表前事務所サイドからはかなりの抵抗があったらしい。
一介のアイドルユニットの曲に、そんなワケのわからない難解な音楽技法を盛り込んでリスナーがついていけるのかと。

この時の、異端児中田氏の武勇伝がカッコよすぎる。
まぁ最近でいういと、ロングヒット映画『ボヘミアン・ラプソディ』で印象深かった、クイーンのメンバーとレコード会社の社長が、今までにない奇抜な発想の名曲「Bohemian Rapsody」をシングルとして出すか出さないかと真っ向から対立する、あのシーンを彷彿とさせるエピソードだ。

当時のPerfumeのマネージャーもっさんの証言。


そして、シングル『ポリリズム』はオリコンチャート7位にランクインするという、結成7年目にしてこれまでにない大快挙を成し遂げる。


この「ポリリズム」の突飛な音楽技法の妙に関しては、かつてインテレクチュアル・スラッシュメタル・バンドの始祖MEGADETHのメンバーで黄金時代を築き、今ではすっかりお馴染みの日本在住外人タレントになってしまったJ-POP好きで有名なマーティー・フリードマンが、昨年アーバンギャルドの松永天馬氏とのラジオ対談で熱く語っている音源があるので、ここに紹介しておく。

181013-20【Perfume考察 2週まとめ】


最初にPerfumeのサウンドを聴いて「小室哲哉?」と思ってしまうその感性が理解に苦しむし、「Perfumeを今頃知るなんて遅いんだよ」って、オマエも常に邦楽チェックしてた割に「Baby cruising Love」が初めてって気づくの遅いやろ!ってつっこみたくなったが、マーティーがここまでPerfume好きとは知らなかった。
やはり彼もJ-POPの曲にこんな変拍子を駆使した複雑でプログレッシヴな音楽技法を取り入れるなんてヘンタイだ!みたいな、ミュージシャンならではの視点でこの楽曲を評価している。

私自身、まぁキング・クリムゾン好きってのもあって“ポリリズム”という技法はアルバム『Discipline』などで学生の頃から馴染みはあった。
だからそういうプログレッシヴな観点でPerfumeのことを好きなんだと思われがちかもしれない(自意識過剰?)。
ただ、私が最初Perfumeの「ポリリズム」にビビっときたのはACのCMでだったというのはさっきも言った通りで、CMではあのポリってる部分はハショられている。
つまり「ポリリズム」は、サビメロの部分だけでもリスナーを一瞬で振り向かせられる十分な魅力を持った、二重にも三重にも優れた名ポップナンバーなんだということ。

“ポリリズム”を導入し、「肉体的な鍛錬をした者しか演奏できないような高度な音楽でありながら踊れる音楽にもなる」というコンセプトの元に、80年に再びメンバーを招集して制作されたフリップの勤勉で変態的な人間性が爆発した異色作『Discipline』。


ちなみに私の周りにもプログレ好きは何人かいるが、歌い上げない軽めな歌唱の女の子3人によるダンスユニットという形態、生楽器で演奏しない打ち込みで作られた電子サウンドに対して寛容でない彼らがPerfumeの楽曲を受けいれることは、まずない。


Perfumeの楽曲の魅力はいろいろあるけど、やはり中田氏の紡ぎ出す軽やかで良質なポップサウンドに、彼女たちの決して前に出すぎない声音が乗っかるという絶妙なバランスの耳心地の良さにあるかと。
マーティーは自身のギターアルバムで「ポリリズム」をカヴァーしていて、この複雑構成な楽曲を己のギターテクで弾きこなすという挑戦の意味でもあったらしいけど、ハッキリいってこの曲をギンギンにメタリックに表現しようなんてのはナンセンスにもほどがあるし聴く耳が持てない。
Perfumeの大ブレイクをキッカケに、メタルとかハードコアとかをアイドルにやらせるという「型破りでしょ!」っていう鼻息の荒いユニットが、それこそゴミみたいに世の中に溢れだしたし、今じゃアイドルがプログレッシヴな楽曲をやることなんて珍しくもクソもなくなった。


Perfumeの、現在の他とは次元の違う確固たる地位があるのは、その他大勢みたいに時代に寄せるのではなく、中田ヤスタカ氏の「自分がカッコいいと思えるもの」「単純にいい曲を作りたい!」という、天然ともいえる音楽に対しての実直さと熱意、そして、アイドルとかテクノポップとかの前に、事務所の仕掛けとか選抜ではなく、自らが結成し小学生の頃から築き上げてきた(これはかなり稀なケースであるが)この3人でPerfumeをやり続けるという彼女たちの固い絆と強い意志とが、見事に合わさったからではないかと。
(だから他のユニットみたいに誰かが抜けるなんてことがない)

それをあたかもこの『ポリリズム』のジャケットが示しているようではないか。





今日の1曲:『ポリリズム』/ Perfume

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 蠅兒と幻想 | トップ | 停電 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

まったり邦楽」カテゴリの最新記事