備忘録として

タイトルのまま

2012-05-04 23:36:44 | 東南アジア

ハスの花は朝日が昇るとともに、”パチン!”と音をたてて開くという話をどこかで聞いたか何かで読んだことをずっと覚えている。学生時代、徳島から電車で高松に向かう高徳本線の車窓から、朝日に照らされた早朝の蓮根畑の中に白や淡いピンクの大きなハスの花を見るたびにそのことを思った。当時耽読していた井上靖、三島由紀夫、司馬遼太郎、新田次郎の小説の一節だったかもしれないし、そうでないかもしれない。黒沢明の「姿三四郎」がハスの池で開眼する場面の記憶だったかもしれない。それが仏教的な悟りを象徴しているのか、植物学的な現象なのかも定かではない。

ミンダナオのブトゥワン市のホテルで夕方見たつぼみが、翌日朝日の中で大きく花開いた(下の写真)ので、学生時代の記憶は正しかったということが確認できた。ただこの時期ブトゥワン市では5時半ころ空が白んでくるため、まだ夢の中のこと、残念ながら”パチン!”という音は聞き逃した。

ブトゥアン(Butuan)へは、マニラから空路1時間半である。 1521年マゼランがブトゥアンを流れるアグサン川河口で、フィリピンで最初のミサを行ったのは確からしい。ブトゥアンには立派な教会が建っていた。土地の人の話では、マルコス夫人のイメルダが、フィリピン最初のミサの地を自分の出身地であるセブ島としたため、ブトゥアンは名誉ある最初のミサ地から除外されたということだった。マゼランはセブ島で原住民に殺されている。また、ブトゥワン付近で発掘された遺物は、マジャパヒト王国やシュリービジャヤ王国の影響を受けていると言われる。

ベトナムの国花はハスの花で、みやげものに、炒ったハスの種やハス茶がある。ハス茶はハスの花そのものを乾燥させたもの(下の写真)とお茶の中にハスの花をまぶしたものがある。

シンガポールのHotel Sands前に咲く大きなハスの花(下の写真)。このハスの意味はよくわからないし、セントーサの巨大マーライオンと同じで大きければいいという発想が逆に貧相である。

ハスを蓮と書くと仏教用語のようになる。ハスの花は蓮華という。蓮華は根を泥の中に下しながら清浄な花を咲かせるので、「煩悩即菩提」という大乗仏教の思想を象徴する花として尊重される(「梅原猛、日本仏教をゆく」より)。そして法華経は蓮華を題名にした経典であり、法華経の信仰を説いたのが日蓮である。一蓮托生は悪友が死後、極楽浄土で同じ蓮華の上に生まれ変わろうという意味である。「ナムアミダブツ」と唱えれば極楽浄土に行けるのは浄土真宗で、その中興の祖は蓮如である。仏像は蓮台、別名、蓮華座の上にのっている。寺の瓦の模様に蓮華文というのがある(上原和「聖徳太子」)。


最新の画像もっと見る