2017年のヨーロッパは決して楽観できない。これまでの欧州統合の流れが逆流しそうだからである。欧州統合によって、ヨーロッパ人が自由になるという理想は実現できても、ヨーロッパ人全体が豊かになるということは難しそうだ。豊かになるのはドイツ人だけだという反感が、彼らの心の底に堆積してきたように感じる。そこに持ってきて、難民問題である。ヨーロッパの統合を推進してきたのは、ヨーロッパ各国の支配層にある理想論だが、理想よりも現実という庶民層の怒りが増えつつあるのだ。だから、支配層への反発である。例えば、英国のキャメロン首相が仮に、イギリスのEU離脱を決める国民投票で、離脱派に属していたら、結果は逆になっていたのではないかと言われている。今年はヨーロッパは選挙の年である。4月から5月にかけて行われるフランスの大統領選挙ではオランド大統領が所属する社会党は早々と敗色濃厚で、右派・共和党の統一候補フィヨン元首相と反EUなどを掲げる極右政党・国民戦線のルペン党首対決の可能性が高いとみられている。この結果は9月に行われるドイツ議会選にも影響を与え、下手をすれば、メルケル首相の退陣ということさえ起こりかねない。このような政情が不安定になりつつある中で、通貨ユーロが安定的だとはいかない。ギリシャ危機は相変わらずだし、イタリアやドイツなどの大手銀行の経営不安もささやかれている。ユーロはトランプ氏のアメリカ大統領当選で、ドルに対して大幅に下げた。現在、1ユーロあたり、1.06ドルになっている。今後も、トランプ政権のドル高政策、FRBによる金利の利上げなどが続けば、さらに下がる。壁は1ドル=1ユーロ(パリティ)だ。仮に、それを突破するようなことがあれば、どこまで下がるか分からない。(2017.1.14)