「ふしだらな女」に続くヒッチコック作品、これも1927年制作だというから、この年ヒッチコックは「下り坂」「ふしだらな女」、そしてこれと計3本の作品を演出したことになる。新進気鋭、斬新で器用ということで、映画会社から重宝がられていたことがよくわかる。この作品はもちろんスリラーではなく、ひとことでいえば「ボクシングの興行の世界を舞台にした恋愛の三角関係のあつかったドラマ」ということになるのと思う。結婚間近だったボクサー(ジャック・ブリッソン)ともぎり嬢(リリアン・ホール・デイビス)のカップルに、チャンピオン(イアン・ハンター)であるボクサーが絡み、彼女は一端はチャンピオンの方に靡いてしまうが、最後にこのチャンピオンと試合で勝利し、よりがもどるというストーリーだが、これはヒッチコック自身の原案で、脚本にはアルマ・レヴィルが初参加ということで、より「ヒッチコックらしいヒッチコック作品」に近づいてきたような印象だ。
そんな訳で、ヒッチコックらしいところは随所にある。試合に勝って、祝杯をあげようと泡立つシャンバンをついだはいいが、リリアン・ホール・デイビスが帰ってこなくて、がっくりとしてしまうシーンを、グラスの泡がすっかりなくなってしまうカットで象徴的に表現してみるところとか、ひとりホテルの残されたジャック・ブリッソンのカットなど、「裏窓」を思い出させたりもするし、冒頭の遊園地の賑わいはもちろん「見知らぬ乗客」を思わせずにはおこない。出演者はリリアン・ホール・デイビスはなかなかチャーミングな女優さんで、前半はすっぱな下町の女から後半リッチな服装をした女へと変身するあたりがみどころか。ジャック・ブリッソンはなんだか歌舞伎俳優みたな白面であんまりボクサーらしく見えないし、ちょっとオカマっぽい雰囲気あって奇妙な印象がつきまとった。
それにしても、この作品での恋愛のドラマ模様っていうか、気持ちの推移というか、早い話、どうしてこんなに簡単な展開で女は他の男に靡いてしまうのか(これは「下宿人」でもそう感じた)、けっこう違和感あったなぁ。昔はそういう感情も素朴だったのかもしれないが、今の感覚で観ると、この女主人公、あまりに尻軽女っぽく映ってしょうがなかったなぁ。
そんな訳で、ヒッチコックらしいところは随所にある。試合に勝って、祝杯をあげようと泡立つシャンバンをついだはいいが、リリアン・ホール・デイビスが帰ってこなくて、がっくりとしてしまうシーンを、グラスの泡がすっかりなくなってしまうカットで象徴的に表現してみるところとか、ひとりホテルの残されたジャック・ブリッソンのカットなど、「裏窓」を思い出させたりもするし、冒頭の遊園地の賑わいはもちろん「見知らぬ乗客」を思わせずにはおこない。出演者はリリアン・ホール・デイビスはなかなかチャーミングな女優さんで、前半はすっぱな下町の女から後半リッチな服装をした女へと変身するあたりがみどころか。ジャック・ブリッソンはなんだか歌舞伎俳優みたな白面であんまりボクサーらしく見えないし、ちょっとオカマっぽい雰囲気あって奇妙な印象がつきまとった。
それにしても、この作品での恋愛のドラマ模様っていうか、気持ちの推移というか、早い話、どうしてこんなに簡単な展開で女は他の男に靡いてしまうのか(これは「下宿人」でもそう感じた)、けっこう違和感あったなぁ。昔はそういう感情も素朴だったのかもしれないが、今の感覚で観ると、この女主人公、あまりに尻軽女っぽく映ってしょうがなかったなぁ。