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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

WAS(NOT WAS)/ホワット・アップ・ドッグ?

2007年04月10日 23時10分00秒 | ROCK-POP
 86年に発表されたWas(Not Was)の第3作。Was(Not Was)はデヴィッド・ウォズとドン・ウォズのコンビが核となり、ヴォーカリストとしてスウィートピー・アトキンソンとサー・ハリー・ボウエンズを加え、随時多彩なゲスト陣を向かえて作られた一種のブロジェクトだったが、ワールドワイドではこの作品あたりが出世作ということになると思う。当初はイギリスで受けていたことからも分かるとおり、このプロジェクトは基本的にソウルやファンクを白人流にモダンにリニューアルした音楽をベースにしつつも、時にアブストラクトでエキセントリックなサウンドを見せたり、ボーダレスなゲスト陣を連れてきたりと、けっこうマニアックに受けていたように思う。

 これが出された当時はバブル最盛期で、日本でも洋楽はニューロマが過去のものとなり、シャーデーなんかに代表されるイギリスのジャジーなブルーアイド・ソウルが真っ盛りの頃で、実は私のその線で購入してきたのだった。ただし、実際聴いてみると、悪くはないと思ったものの、ソウルっぽい部分はより本物志向が強い「濃い音楽」になっていて(なにしろ半分はブルー・アイド・ソウルではなく本物なのだから....)、自分の波長とは微妙に合わなかった。また、マニアックに受けていた、途中何曲か入るエキセントリックなナンバーは、私には全く不要なものに思ったものだった。これだけサウンド・プロダクションが巧妙で、一頭地を抜けた音楽センスをもっているのなら、どうしてもっと洗練されたソウルやファンクばかりで、スタイリッシュな構成しないのだろうと思った訳だ。

 さて、今久しぶりにこのアルバムを聴いているのだが、このアルバムの「濃さ」も「エキセントリックさ」も大分抵抗がなく聴けるのは、やはり20年という時代の流れなのだろう。この程度のクセではもはや驚かないどころか、もう当たり前になってしまい、その分、このアルバムの元々もっていたはずの「良質なポップ・アルバム」という地肌が私にも見えてというところなのかもしれない。バリー・ホワイト風な「愛はバッド・ラック」、AOR風な「夜の出来事」なんて、フランク・シナトラJrをフィーチャーした「愛の誓い」なんて、こんなにポップないい曲だったっけと感心した....とはいいつつ、やはりこのアルバムは、冒頭の「アメリカの何処かで」~「愛のスパイ」の2曲に尽きる。この2曲を聴くと、もう20年も前になってしまったバブル期のきらびやかな都会の風景がよみがえり、すこしばかり胸が痛くなってきたりするのである。
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ABC / Beauty Stab

2007年04月10日 01時08分22秒 | ROCK-POP
 ABCといえば80年代前半を飾るニューロマ・ブームの一翼を担ったバンドとして、「ルック・オブ・ラブ」などのきらびやかなイメージが強いが、単なるポップ・バンドではなく、けっこうな音楽主義的な面をもったバンドでもあった。実はそれが故にポシャったバンドでもあるのだが、その原因となったのがこのセカンド・アルバムだ。ABCはファースト・アルバムで、トレバー・ホーンという当時最高にヒップなプロデュースを起用して、前述の「ルック・オブ・ラブ」をはじめとして、ニューロマ系のバンドのアルバムとしては、ほとんど最高の音楽的クウォリティのアルバムを完成させたが、反面、あまりにトレバー・ホーン色が強く、ほとんどトレバー・ホーンとアン・ダッドリーで仕切ったところが歴然とした仕上がりでもあった。マーティン・フライを筆頭としたABCの面々が、それを潔しとしなったのは、想像に難くない。

 そこでこのセカンド・アルバムで彼らは何を考えたといえば、ニューロマからのイメチェンである。モデルとなったのはおそらく最初期のロキシー・ミュージックだったろう。ABCがロキシーズ・チルドレンだったことは間違いないが、最初期のロキシーをモデルとし、そこに更にエッジの切り立ったギター・サウンドを加味、よりヘビーでストロングなロック・サウンドを作り上げようとしたのだ。リズム隊は当時のロキシーのリズム・セクションであるアンディ・ニューマークとアランスペナー、ストリング・アレンジにはロックとクラシックの境界で活躍していたデビッド・ベッドフォードを起用して、まさにニュー・ウェイブの流れとは断絶した、当時でいうオールドウェイブとニュー・ウェイブが妙な具合に入り交じった古くて新しい、今にして思えばとても斬新なロック・サウンドをでっちあげることに成功した。しかし、その音楽の折衷ぶりが当時のリスナーにはハイブロウ過ぎたのか、商業的には全く惨敗に終わる。

 さて、このアルバム、旧A面の6曲は、まさに「80年代初頭ににリファインした最初期のロキシー・サウンド」であろう。猥雑で騒々しく、そのくせポップで、しかもやけパワフルというなサウンドは、最高にマニアックな音となっているし(3曲目などニューマークのドラムス共々「アヴァロン」にさえ近づいてしまう-笑)、イナタいサックスのプカプカ音はアンディ・マッケイを思いおこさずにはいられず、マーティン・フライのボーカルはまさにアラ・フェリーだ。
 一方、旧B面の「アビー・ロード」のB面でも意識したのだろうか、ほとんど全ての曲がメドレー風につながった一大組曲である。導入の「Hey Citizen!」からカッインして始まる「King Money」のめくるめく展開(中間部のギター・サウンドのカッコ良さ)、「Bite the Hand」のいかにもデビッド・フォードなモダンなストリングスと対比して爆発するギター・サウンドのなんともクレバーなサウンド、アップ・テンポでぐいぐい盛り上がるハイライトともいえる「Unzip」、トラッドな旋律がポップな「S.O.S.」、大曲のエピローグ「United Kingdom」とほとんど申し分のない構成となっている。

 という訳で、今聴いても....というか、このアルバム、むしろ今聴いた方がよほどしっくりくるサウンドではないだろうか。思うにマーティン・フライとマーク・ホワイトは頭が良すぎ、ロック評論家であり過ぎたのだ。全ては遅すぎる話だが、こういう音楽はせめてバンドのカラーを確立した後しばらくして、具体的にいえば4枚目とか5枚目で出していれば、このアルバムの評価も全く違ったものになっていたと思う、惜しいことをしたものだ。このアルバムも発表以来、やがて四半世紀を向かえる。ぜひ再評価されることを期待したい一枚である。
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