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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

シェーンベルク 浄夜(弦楽合奏版)/シノーポリ&フィルハーモニアO

2007年04月21日 23時34分55秒 | マーラー+新ウィーン
 シノーポリがフィルハーモニア管を振った92年の演奏。シノーポリは新ウィーン楽派の作品をかなりの吹き込んでいますが、主たるソースはこの録音と同じ年に彼の手兵となったドレスデン・シュターツカペレに集中していて(ちなみにレーベルはワーナーレーベル、CD8枚組のボックスセットになっています)、グラムフォンでの録音はこれくらいかもしれません。相方がフィルハーモニアであるところからして、おそらくマーラー全集の延長線で企画されたんでしょう。おそらく、その他の曲もフィルハーモニアで録音するつもりだったのでしょうが、彼がドレスデンの首席に就任したことで、レーベルの異動などもあり、結局フィルハーモニアとはこれだけという結果になったんではないでしょうか。

 演奏の方はやはり80年代以降の同曲に演奏に共通する、あまり深刻にならないビューティフルな演奏といえますが、さすがにシャイーやレヴィと比べると、多少表現主義的な激しさが見え隠れしてます。シノーポリのマーラーはスタンダード演奏をベースにしつつ、ホットな部分とやや突き放したような客観性のようなものが妙な具合にバランスしたところユニークでしたが、この演奏でもそういうところが随所に感じられます。
 まず、昨夜のレヴィほどではありませんが、この演奏もかなり遅目です。悠々としたテンポで実にじっくりと歌っていて、多少突き放したような印象を与えるくらいですが、これが主人公たちの情念というか心の葛藤の表現したような音響的な部分になると、ここぞとばかりにドラマチックな表現に切り替えているようであり、シノーポリらしい手練手管を感じさせます。また、色彩感という点でもシャイーのような健康的なカラフルさというよりは、前半と後半の明暗をあまりくっきりと分けず、全体に割とほの暗い色調のサウンドで統一しているように感じさせるあたりも、ひょっとするとシノーポリの個性なのかもしれません。
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The BEATLES / Unsurpassed Masters vol.1

2007年04月21日 17時07分24秒 | Beatles
 ビートルズの海賊盤(現在ではブートという方が多いか-笑)というのは歴史が古く、多分70年代初頭の頃から存在していると思う。私がその存在を知ったのは72年頃に文化放送でオンエアしていた石立鉄男がDJを担当した「ビートルズ・ストーリー」という番組で、大森庸雄をゲストにその特集したのがきっかけだったと思う。そこでオンエアされたのその後、あまりにも有名になるシェア・スタジアムや日本公演のライブやBBCライブだったりしたのだが、当時中学1年だった私はそういうレコードが存在していることに驚愕して、しばらくした夏のある日、当時上野にあった蓄光堂というレコード屋に友達と一緒に赴いたのだった。

 よく覚えていないが、その時購入したのはシェア・スタジアム(実はハリウッド・ボウル)のライブ、「As Sweet As You Are」というBBCライブ(未発表曲ばかり集めたコンピレーション)、そして「Get Back To Toronto」あたりだったと思う。今にして思えばけっこう的確な選択だったと思うけれど(笑)、その後、私はディスク・ユニオンだとか新宿レコードなどにも通うようになり、けっこうビートルズ関係の海賊盤を漁ったものだった。ところが海賊盤というメディアは、そもそもジャケも音質も少数の例外を除けば劣悪だったのが私には気にくわなかったし、ビートルズの場合、ある程度聴いていくと結局のところ、ソースとなる音源がそもそも限定されていて、驚くようなアルバムというのはほんの少しかないことに気が付き、高校の頃になると、既成のソースなのに内容を偽った代物まで出回ったりして、私は海賊盤というメディアのうさん臭さにほとんど愛想を尽かして、ほぼ完全に手を切ったのだった(ビートルズ自体と縁遠くなったという事情もあるが)。

 さて、ここから話は約15年ほど飛ぶ。1980年代の終わり頃、私はこのアルバムが近所のCDショップのワゴン・セールのところに並んでいるを見つけた。裏のクレジットを見ると、どうやらEMIのスタジオ・セッションの流出物らしい、こんなクレジットはどうせ信用ならないし、音質も劣悪なものに違いないとは思ったが、思えば70年代からはずいぶん経っているのだし、CD時代になってひっょとすると新たなソースが出回っている可能性もあるかも....などと、ちょっとした気紛れでこれを購入してきたのだった。
 ところが、大した期待もせずに購入したこのアルバムを、自宅で一聴したところ、内容の凄さに腰を抜かしそうなほど驚いた。まさしく、それは1963年のビートルズがEMIの「プリーズ・プリーズ・ミー」や「ウィズ・ザ・ビートルズ」のスタジオ・セッションを記録したものなのであった。

 こんなリハーサルまがいのテイクまで残っていたこと自体驚きだったが、なにより驚いたのはその音質。マスターから直に落としたとしか思えないエッジの切り立った鮮明な音質は、当時出たばかりの正規盤CDを上回る生々しさがあり、よくいわれることだが、まるで自分がアビイ・ロード・スタジオをいるような錯覚を覚えるほどだった。当時の私はもう30歳近くになっていたけれど、興奮すると同時に、まるで大昔の亡霊が甦ったような気持ちに襲われたものであった。当然のことながら、その後の私はこのシリーズの続きはもちろんのこと、この種のブートのもう一方の雄である「ウルトラ・レア・トラックス」なども発見して、しばしビートルズの海賊盤に夢中になる時期を過ごしたのであった。
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John McLaughlin / Belo Horizonte

2007年04月21日 14時28分05秒 | JAZZ-Fusion
 前回レビュウした「Mahavishnu」と同年の作品ですが、こちらは主としてアコスティック・ギターをフィーチャーしたけっこう軽快でポップなタッチ、録音はフランスはパリ、バックを固めるミュージシャン達もフランス人というのも異色なら、青空をバックににこやかに笑うなんだか幸せ一杯で、しかもロングヘアーなマクラフリン(笑)が写ったジャケというのもかなり異色で、これまでのシリアスで求道的な作品ばかりつくってきた系譜からすると多少外れた異色作という感じがします。このあたりは当時のマクラフリンがカティア・ラベック(クラシックで一時アイドル的に人気のあったラベック姉妹の姉の方ね)と結婚したことが、色濃く影響しているんでしょうね。確かに恋は人を変える(笑)。

 アルバム1曲目タイトル・トラックは、このアルバムを象徴するような曲で、入り組んだテーマはアコギとラベックのシンセのユニゾン、途中かなりスピーディーなソロが展開されたりするところは、いかにもマクラフリンらしいのですが、あまりギクシャクしたところを全面に出さず、全体に流れるように演奏しているため、親しみやすい雰囲気がある仕上がりになっています。2曲目の「La Baleine」はボサノバ風なリズムにシャクティ的なエキゾチックな趣を合わせ持った作品で、一歩間違えばBGMフュージョンになってしまいそうな軽さが異色。3曲目の「Very Early」はもちろんビル・エヴァンスの作品で、マクラフリンが「ひとりスーパー・ギター・トリオ」したマルチ録音によるギター・ソロ。4曲目の「One Melody」はちょっとフリー・ジャム風な趣もある作品で、低回気味なムードが徐々にテンションを上げていく構成がマハビシュヌ風です。

 5曲目の「Stardust on Your Sleeve」もリゾート風な雰囲気のあるトロピカル・フュージョン風な作品でアコギとソプラノ・サックスの絡みで進行。6曲目の「Waltz for Katia」はスピーディーなジャズ・ワルツのリズムにのって、ヴァイオリン、ピアノ。そしてアコギが入り乱れるけっこうテクニカルな作品ですが、やはりあまりゴリゴリしたところはなく、全体はとてもスムースに流れていきます。後半でリズム・チェンジするあたりはなかなかカッコ良いですね。7曲目の「Zamfir」はベースをフィーチャーしたスペイシーな雰囲気のある作品。ラストの「Manitas d'Oro」はパリ録音という地の利を生かしたのか、パコ・デ・ルシアをゲストに呼んだギター・デュエットで、これはもろにスーパー・ギター・トリオ的な仕上がりになっています。もっともライブのような壮絶なインタープレイの再現ではなくて、スタジオ盤で聴けたようなエキゾチックな香りがちらほらするリラックスした音楽の再現なのですが....。

 という訳で、このアルバム、無理にこじつければマクラフリンマハビシュヌ路線とスーパー・ギター・トリオやシャクティなどのアコスティックな路線を統合した音楽といえないこともないかもしれません。非常に聴きやすく、しかもテンションも高い演奏になっているのはさすがマクラフリンというところでしょうが、ちと気になるのは、ここでバックを固めるフランス人ミュージシャンたちで、かなりうまい人達には違いないとは思うのですが、フランス風といっては身も蓋もないものの、どうも地に足がついていないというか、ベースにしろ、ドラムにしろなんだか手数だけで走り回っているみたいなところがあって、多少違和感を覚えます。もっとも、こういう人達がバックを陣取ったから、このアルバムの流麗さが出たともいえますけどね。

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