透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ブックレビュー 2024.04

2024-05-02 | A ブックレビュー


 5月、緑豊かな季節の到来。4月の読了本は8冊。このうち、安部公房が3冊。

『13歳からの地政学 カイゾクとの地球儀航海』田中孝幸(東洋経済新聞社2022年発行)
「なぜ領土を求めつづけるのか」「中国が南シナ海を欲しがる理由」「なぜアフリカにはお金がないのか」など、問われれば答えに窮するような問題について、著者が考える答えが平易な文章で明快に書かれている。著者は難しい問いに易しく分かりやすく答えるという、難しいことを本書でやっている。小説仕立てにしたのはグッドアイデア。

『源氏愛憎 源氏物語論アンソロジー』編・解説  田村 隆(角川ソフィア文庫2023年発行)
とんでもなくインモラルな小説だという評も、小説の白眉だという評もある源氏物語。いろんな評があるということも名作であることの証左か。

『けものたちは故郷をめざす』安部公房(新潮文庫1970年発行)
前衛的な作風で知られる安部公房。「え、これ安部公房?」、こんな感想を抱く。リアルな描写でイメージが立ち上がりやすく、読みやすい小説。

『カーブの向う・ユープケッチャ』安部公房(新潮文庫1988年発行)
密度の高い作品集。『カーブの向う』は『燃えつきた地図』の、『ユープケッチャ』は『方舟さくら丸』のそれぞれ原型となった作品。絶版は残念。

『カワセミ都市トーキョー  「幻の鳥」はなぜ高級住宅街で暮らすのか』柳瀬博一(平凡社新書2024年発行)
**人間、意識していないものは、目の前にいてもまったく見えない。**(94頁)注意深く観察すれば、いろんなことが見えてくる。

『終りし道の標べに』安部公房(新潮文庫1975年発行)
難解。絶版。

『国道16号線   「日本」を創った道』柳瀬博一(新潮文庫2023年発行)
なぜ国道16号線エリアに太古からの人びとの様々な営みが積み重なっているのか・・・。この謎を解く鍵、それは「小流域地形」。おもしろくて、文庫化されたのも納得。

『生物から見た世界』ユクスキュル/クリサート(岩波文庫2005年発行)
「環世界」という言葉を知った。すべての生物はそれぞれ備わっている感覚器官によって世界を認識している。感覚器官の有無、器官の能力が違えば認識する世界も違う。人もそれぞれ違う環世界を生きている。