透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

244枚目 写真家 荻野良樹さん

2024-05-26 | C 名刺 今日の1枚
 長野県朝日村針尾にあるBLUE HOUSE STUDIOで開催されている荻野良樹写真展「山神3」は今日26日が最終日。荻野さんが在廊されているとの情報を得て、出かけてきた。

荻野さんは三重県鈴鹿市在住の写真家で、私が会場のスタジオに出かけた時、荻野さんの知り合いという方が居られた。訊けば荻野さんと同郷、三重県から日帰りの予定で出かけて来られたとのこと。

写真展のタイトルは「山神3」。山神が祀られている祠なり、石碑なりと人々との繋がる様を撮影した作品が展示されていると思いきや、農家の裏側のような、どちらかというと美しくなくて何気ない風景が写された作品が展示されていた。これは一体、・・・・・。どうしても作品を理解しようとしてしまう。

萩野さんから作品について説明を受けて、納得。展示作品には山神に繋がる対象が写されていることが理解できた。展示作品は美的感性によって切り取られた美しい風景ではなく、理性によって捉えられた、荻野さんだけの風景なんだ、と私は解した。既視感を感じてしまうような写真は見ていてつまらないが、それを全く感じない荻野さんの写真が魅力的に見えてきた・・・。


会場で名刺交換。荻野さんにお渡ししたのは244枚目の名刺だった。
 

火の見櫓のある新緑の風景を描く

2024-05-26 | A 火の見櫓のある風景を描く

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上伊那郡辰野町小野にて 描画日2024.05.24

 道路山水的な風景の遠近感を線描で表現するのは、遠近法の基本を押さえていればそれ程難しくはない。着色、即ち色の濃淡と彩度の高低によって遠近感を表現する方法(空気遠近法に近いと思う)は、私には難しい。着色のテクニックを身に付けないとなかなか思うような表現ができない。絵筆の使い分け、筆に含ませる水の加減、混色の可否の見極め・・・。

線描と着色の相乗効果を意識してもよいのではないか。そう思って、影の部分をハッチングしてみた(表示部分他)。学生の頃描いたスケッチを見ると、岩の影などをハッチングしている。

描いたスケッチを冷静な第三者的な眼で評することも必要だろう。ということで以下はその試み。

山の稜線を一本の線で表現することもないだろうと、一番奥の山は縦の破線で表現した。決定的な一本の線で表現すると(今まではこのことにこだわって描いていた)、遠くに霞む山の雰囲気が出せない。左側手前の立ち木の表現はあまり好くない。もっとはっきり線描しなくてはならないし、色もあまり美しくない。近景だからきちんと線描することも必要だろう

このスケッチで好いところを敢えて挙げるなら手前に向かって流れてくる小川の表現。ただし色に変化がなくてフラットな印象だ。川に覆いかぶさるように伸びている雑草の影が川面に写るだろうが、それが表現されていない。

秋までにはもう少し、好いスケッチ(上手いスケッチではない)を描けるようになりたい。



スケッチしたポイントと一致していないので道路の見え方、カーブがスケッチと違う。

過去ログ


 


「都会の鳥の生態学」を読む

2024-05-26 | A 読書日記

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『都会の鳥の生態学』唐沢孝一(中公新書2023年)

 4月に『カワセミ都市トーキョー』柳瀬博一(平凡社新書2024年)を読んだ。生息環境の変化により、青梅や奥多摩湖まで生息域を後退させていたカワセミが1980年代に徐々に都心に戻ってくる。この本は都心の環境に適応したカワセミたちの生態観察記、と括ることができるだろう。

環世界ということばをこの本で知った。柳瀬博一さんは『生物から見た世界』を参考文献として取り上げ、次のように書いている。**さらに人間の場合、生き物としての「環世界」だけじゃなく、自身の経験に基づく、ごく個人的な「環世界」の中でも暮らしている。この環世界はユクスキュルが定義した「感覚器で知覚できる世界」とは、ちょっと違う。個々人が後天的に獲得した言語と知識と経験と好みがつくり出す大脳皮質がつくった「文化的な環世界」である。**(265頁 赤字表記は私がした)

自分の環世界に存在しないものは認識できないということは、経験的に知っている。先日、上高地を散策した。ウグイスが盛んに鳴いていた。他の野鳥も鳴いていたが、名前は分からなかった。私の環世界には野鳥は存在していない。

上掲書の関連本である『都会の鳥の生態学 カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽の栄枯盛衰』で唐沢孝一さんは観察対象を広げ、都会で生息するスズメやツバメ、カラスなどの身近な鳥の生態を明らかにしている。サギなどの水鳥やハヤブサなどの猛禽類も取り上げられている。鳥たち相互の関係についても述べられていて興味深い。

**ツバメは、雌も雄も、若鳥も、別々に渡りをする。日本に戻ってきてから婚活を始める。雄ツバメには、早く日本に戻って営巣場所を確保し、婚活を有利に進めたい思惑がありそうだ。**(27頁)

ツバメは幼鳥だけで渡りをするとのことだが、**親鳥に教えてもらうことなく渡りのコースをどのように知ることができるのだろうか。**(51頁) 知らなかったなぁ・・・。知らないことは当然のことながら疑問にも思わない。

電柱の腕金(角型鋼管の水平部材)を単独ねぐらにしているスズメがいる、ということが紹介されている。つがいと思われる2羽のスズメが隣り合う電柱の腕金をねぐらにしていることも観察できたとのこと。既に書いたように、鳥の生態については何も知らないので、読み進めていて、鳥たちの興味深い生態に驚くことばかりだった。

新宿副都心の超高層ビル群を生息地にしているハヤブサのことも紹介されている。ハヤブサにとって、超高層ビルの壁面はそそり立つ岩場そのものだろう。六本木ヒルズの窓枠の外に止まっているハヤブサの写真が掲載されているが、他にも鳥たちの生態を捉えた何枚もの写真が掲載されている。


漫然と鳥を見ていても分からない生態が、観察を続けていると、徐々に分かってくるだろう。そうすれば私の環世界に野鳥が入り込んでくるかもしれない・・・。

知らない世界を覗いてみるのは楽しい。新書はそのガイドブック。



撮影日2023.01.16 みぞれが降る中、柿を啄ばむヒヨドリ