花の4月から緑の5月へ
4月の読了本 4冊。
『今ひとたびの』 高見順/角川文庫
昭和21年の作品。高見順の作品を読むのは初めて。**私の慕情もついに酬いられる日が来た。ああ、この日を私は、何年待ったことだったか。この喜びに恵まれるためには私はどんなに苦しい年月を忍ばねばならなかったか。**(121頁) だが、意外な結末・・・、この恋愛小説のラストは悲しすぎる。
『螢草』 葉室麟/双葉社
この作家の小説は心にジーンとくる。読了後は生き方について考えさせられる。とても印象的な女性が出てくるのも共通しているようだ。これからも読み続けたい作家。主人公菜々はやはり石川佳純ちゃん。
『東海・東南海・南海 巨大連動地震』 高嶋哲夫/集英社新書
南海トラフ巨大地震の想定被害が内閣府から明らかにされた。この地震による経済損失は100兆円を超えるといわれる。200~300兆円という試算もある。
福島第一原発の事故では「想定外」という言葉が頻出した。リアルなイメージの欠如が招いた事故。
作家のイマジネーションが描く各県の「その時」。でも新書ではページ数が足りない。やはり長編小説にしたてて欲しかった。その時のリアルなイメージを共有することが減災、防災の出発点だと私は思う。
『くさる家に住む。』つなが~るズ/六耀社
10の家と暮らし。友人の家がそのうちのひとつ。その友人からメールでこの本のことを知らせてもらったので読んでみた。書名の「くさる」には熟成、朽ちる、鏈る(くさる)という3つの意味があるとのことだが、やはり腐るということばがまず浮かぶ。この書名が内容に相応しいかどうか疑問。
「緩やかに町とつながる大森ロッヂ」 5棟の長屋と1棟の戸建貸家からなる木造住宅のリノベーションと昭和な暮らしに惹かれた。
巻末に載っている著者のプロフィールをみると、つなが~るズは4人の女性でそのうちの3人は一級建築士、1人は建築関係の記事を書いているライター。文章中の建築技術に関することばも正確に使われている。プロの写真家の撮ったカラー写真には生活感があふれている。
GWの後半で村上春樹の最新作『色彩を持たない多崎つくると、 彼の巡礼の年』を読みたいと思っているが、時間がとれるかどうか・・・。