ここ数日の新聞記事/信濃毎日新聞
■ 今この国の国境について全く無関心、というわけにはいかない。新聞は連日この問題について報じている。
「ニッポンの国境」 西牟田靖/光文社新書
先日この本を買い求めた。内容については帯に簡潔、的確に記されている。そう、北方領土と竹島、それから尖閣諸島に関して**現地ルポと歴史で辿る、問題の原因と真相**が本書の内容だ。
著者は北方領土の国後島や色丹島に渡り、また竹島にも上陸している。尖閣諸島にも上陸を試みるも困難と知るや、飛行機で接近している。本書の強みは現地の「今」をレポートしているところだ。
以下、各島のレポートからの引用。
国後島 **ラリサさんがテレビの電源を入れ、室内アンテナの向きを調整すると、砂嵐の向こうにタモリが現れた。室内アンテナが北海道側の電波を拾い「笑っていいとも!」を映し出しているということらしい。日本語をほとんど理解しない彼らは、天気予報や料理番組を目当てに日本のテレビを見ている。**(102頁)
竹島 **「独島」という民族的なアイデンティティを強く感じさせる場所に向かう船は、あろうことか日本では使われなくなった中古船を買い取って塗り直した、かつての日本船だった。(中略)午後5時、三峯号はいよいよ竹島に到着する。着岸したのは東島の一部を埋め立てて新設されたコンクリートの埠頭である。埠頭には山頂から降りてきた慶尚北道地方警察庁所属の独島警備隊の隊員たちが出迎えた。**(162、165頁)
魚釣島(尖閣諸島) **飛行機は高度を最低で約150メートルまで落とし、魚釣島に肉薄した。島の南部にはちょっとした高台のような岩があり、島を周回している途中、パイロットは「中国人が上陸した岩」と教えてくれた。(中略)田舎にある携帯電話のアンテナ塔のような小さな灯台や岩肌に描かれた日の丸が見える。**(217頁)
現地レポートにかなり紙幅を割き、それに続けて問題の歴史的背景やその真相に関する著者の見解を述べている。
例えば尖閣諸島は現在個人の所有で、東京都も国も買い取る方針だと伝えられているが、本書には島を誰がどのような経緯で所有するに至ったのかも紹介されていて興味深い。
この国の国境の今と過去を知るのに有用な一冊だ。