透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「小布施 まちづくりの奇跡」

2010-06-11 | A 読書日記



 小布施は長野市の北に位置する小さな町だ。町のHPによると人口はおよそ1万2千人、役場を中心とする半径2kmの円内にほとんどの集落が収まるという。

修景によって景観を整え、魅力的な町をつくりだした結果、毎年120万人もの観光客が訪れている。

『小布施 まちづくりの奇跡』新潮新書は小布施のまちづくりの経緯と現状のレポート。著者の川向正人氏は東京理科大学・小布施まちづくり研究所所長。

街並み保存は建築の「外」の保存に過ぎず、「内」との関係が断たれているから映画のセットのようでそこに生活感が無い。

東京の表参道には個性的な建築が並ぶが、どれも自己完結的なデザインで隣の建築との関係が考慮されていない(デザインされていない)。ケヤキ並木がかろうじて街並みを秩序立てている。ケヤキ並木が無かったら魅力の乏しい街並みになっているだろう・・・(この具体例は本書には出てこない)。

川向氏は小布施のまちづくりのポイントを建築の「内」と「外」をつなぐ「中間領域のデザイン」と「建築と建築の間のデザイン」がきちんとなされていることだと明快に指摘している。

高井鴻山、宮本忠長、市村郁夫、そして環境意識の高い一般住民。小布施町は人に恵まれた。

昨日購入、本日読了。