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透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

一度嵌まると、逃げられない作家です。

2009-09-05 | g 読書日記



 『心と響き合う読書案内』小川洋子/PHP新書。

先日この本を紹介していただきました。で、早速購入。まえがきによると現在も放送中のラジオ番組で紹介した本をほぼ一年分をまとめたものだそうです。

目次を見ると、川上弘美の芥川賞受賞作『蛇を踏む』が取り上げられています。あの独特の世界を小川さんはどのように紹介しているのだろう・・・。

**普通は、「私」と「あなた」、「私」と「蛇」は、それぞれの輪郭によって隔てられています。おのおのが自分の輪郭の内側にとどまることで、自分なりの秩序に守られています。ところが川上さんの小説では、輪郭も細胞膜も全部が溶け出し、みんなが一つの沼の中で絡み合っているような世界があらわれてきます。川上さんは、言葉でこういう世界がつくれるということを示してくれたのです。** 

「あわあわ」「ふわふわ」「ゆるゆる」などという曖昧な表現でしか説明できない私などとは違って、小川さんはこのように明快に川上さんの小説世界の魅力を紹介しています。小川さんの代表作で映画化もされた『博士の愛した数式』新潮文庫の解説で数学者の藤原正彦さんは小川さんの印象を清楚な大学院生のような人だったと書いていますが、まさに真面目で優秀な大学院生が書くような紹介文です。小川さんは川上さんを**一度嵌まると、逃げられない作家です。**と評しています。そうです、もう私は逃げ出すことが出来ません。

これから、カフェ・シュトラッセにこの本持参で出かけます。

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