1976年発行(左) 2007年発行(右)
● ブルーバックスを読んだのは20年ぶり、いやもしかしたらそれ以上になるかもしれない。
左がブルーバックスの一般的なカバーデザインだが、実はこのデザインがあまり好きではない。ブルーバックスでは直感的に認識しにくいことをイラストで説明しているのだが、なんだか厳密さに欠けているようで好きになれないのだ(厳密さを犠牲にして分かりやすいイラストを描いていることは分かるのだが)。それにこの青が好きでない。
ずっと遠ざかっていたのは内容そのものではなくて、このデザインが理由だった。同じ理由で中公文庫の吉村昭の作品をほとんど読んだことがない、新潮文庫の作品はほとんど読んだというのに。
先月、東京丸の内の丸善で『進化しすぎた脳 中高生と語る[大脳生理学]の最前線』が平積みされているのを目にした。デザインが違う!赤い表紙のブルーバックス、そしてテーマは脳。迷うことなく購入した。しばらく積読状態だったが先日一気に読了した。例のデザインでなくて良かった。面白い本を読み逃すところだった。
タイトルにもあるが、これは脳科学の最新の知見、そう専門雑誌に掲載されたばかりの情報などを基に高校生に講義をするという試みを収録した本。朝日出版社より刊行されたものをブルーバックス版として刊行するに際し、大学院の学生を対象に行なった講義を追加収録したという。この部分が実に興味深い内容となっていて、客観性や再現性という科学に不可欠な条件を満たさない「意識」や「心」といった哲学的、宗教的なテーマについても扱っている。
難しいことを難しく語るのは難しいことではないと思う。易しいことを難しく語ることも難しいことではない。この本は難しいことを易しく語るという難しいことをしている。
帯の**しびれるくらいに面白い**は、この本に限っては決して大げさな表現ではない、と思う。
● 日常生活は美に溢れている。
フォトグラフを直訳すると「光画」になるだろうか。写真と訳したところに日本人の西洋の技術に対する驚きと冷静さを失っていた姿を見る思いがする。
真実を写す、写真。でもそれは幻想、写真には真実は写らない。というか真実ってなんだろう、そもそも真実ってあるんだろうか・・・。
居間の障子(スクリーン)に映った光の造形。自宅の東側に増築した平屋部分の屋根の瓦と居間上部の庇の直線の投影。