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透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

蔵いろいろ

2009-07-05 | g 蔵観察・蔵考〇




路上観察 南木曽町田立の蔵 090704

 茅葺の民家ほどには蔵のデザインに地域性は無いだろう・・・。これが、さにあらず。地域によって蔵のデザインもいろいろだ。今回は岐阜県中津川市と境を接する南木曽町田立で路上観察した蔵。

蔵には主として防火上の理由からそれ程大きな開口部は無い。特に妻壁にはあまり設けない。ところが路上観察したふたつの蔵は妻壁の上部に大きな開口部があった。庇は銅板葺きの薄いものをよく見かけるが、このような瓦葺のどっしりとした庇は私の記憶にない、記録にはあるかもしれないが。それと両開きの扉にも注目。妻壁の開口部には扉がないか、あっても普通片開きではないか。

蔵の壁の仕上げに用いられる漆喰は風雨で傷みやすいので、腰壁はなまこ壁や板壁にすることが多い。腰壁と上部の壁の見切りは普通下の蔵のように水平だが、上の蔵は屋根の勾配に合わせてへの字型になっている。鉢巻きも白と黒。このようなデザインから上の蔵は少しにぎやかな、というか派手な印象を受ける。

比して下の蔵は落ち着いた印象。どちらが好みかは人それぞれだろうが、私は下の蔵のデザインの方が好きだ。


 

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民家は面白い!

2009-05-23 | g 蔵観察・蔵考〇

■ 白馬岳は春になると代掻き馬の雪形が現れることに由来する名前。この代馬に白馬と漢字をあてた。白馬岳を「はくばだけ」と読む人がいるのは残念。地元の白馬村は「はくばむら」だが、白馬岳は「しろうまだけ」だ。

さて、今回はその白馬村で先日路上観察した蔵。



積雪荷重に耐えられるように柱で補強している。雪除けのために板をあてがうこともある(下は以前載せた写真)。貫(横材)を「はぜ」としても使い、藁束をかけている蔵も見かける。雪除けとしても有効だろう、あるいは実際そのためかもしれない。

今回は妻垂れに注目した。しばらく前、塩尻市内で見かけた蔵と同様、この蔵にも妻垂れが付いている。



雨や雪から蔵の外壁を保護するためにいろいろな対策を講じている。下の写真は高知県は安芸市内の蔵(民家 昔の記録)。多雨地域のため壁に水切庇をつけている。地方によってこれだけデザインが違う。だから民家は面白い!

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平出遺跡の倉

2009-05-14 | g 蔵観察・蔵考〇





■ 塩尻の平出遺跡は日本三大遺跡のひとつに数えられる。この遺跡に倉が復元された(元の形が正確には分かっていないから復元ということなのかどうか)。栗やくるみなど木の実を保存したのか、穀類を保存したのかは知らない。

掘建て柱の途中につけられた刀の「つば」のようなものは何?

これはねずみ返し。ねずみは柱を伝って登ろうにもこのつばを越えて上に行くことはできない・・・。なかなか賢い工夫だ。

屋根棟の納め方は今の茅葺の民家と変わらない。建築の基本的な形って縄文の昔からあまり変わらないのか・・・。

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妻垂れ

2009-05-12 | g 蔵観察・蔵考〇



■ 先日塩尻市内を車で走行中、この蔵を見かけた。引き返して路上観察。

この頃は金属サイディングなどに改修されてしまった「妻垂れ」もよく見かける。しかしこれは木製、従来の姿を留めている。

先日塀の腰壁を雨から保護するために木製パネルを架ける例を取り上げたが、妻垂れも同様、壁面保護のために設置されている。漆喰は雨に弱いから。

妻垂れは長野県内では諏訪地方でよく見かけるが、以前、三重県や高知県、さらに韓国はソウル市外でも見かけた(写真)。



蔵のデザインにも地域性があって面白い。

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路上観察 開田の板倉

2009-04-23 | g 蔵観察・蔵考〇




 御嶽山の麓に広がる木曽町の開田(旧開田村)には今でも板倉が点在している。棟木に注目。羽子板のような形をした板、懸魚(げぎょ)が付けられている。水という文字が見える。懸魚は水を吸って腐りやすい小口を保護する役目を果たすものだが、次第に飾りの意味合いが強くなったものと思われる。



こちらも開田の板倉。棟木を重ねている。上の棟木は破風板によって小口が塞がれているが、下の木がらの大きい棟木は小口がトタン(亜鉛めっき鋼板)によって包まれている。ここにもやはり水という文字が書かれている。

柿板(こけら板)葺きの石置き屋根が、現在はほとんどがトタン(亜鉛めっき鋼板)葺きに替わってしまっているのは残念。


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路上観察 高山の蔵

2009-04-16 | g 蔵観察・蔵考〇



 白川郷からの帰途、高山市郊外で見かけた蔵。

開口部の絶妙の配置。

腰壁を板張りにするのは別に珍しくはないが、縦張りというのはどうだろう。下見板張りの方がよく見かけるような気がする。

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路上観察 安曇野の繭蔵ふたたび

2009-03-08 | g 蔵観察・蔵考〇


              撮影2008年7月

              ▲▼撮影2009年3月


■ あの繰り返しの美学な繭蔵、解体が進んでいて既に棟木が取り外されていると聞いて、今日また路上観察してきました。

小屋組みはすっかり解体されていました。棟木を直接支えていた2本の通し柱はまだそのままでした。床組みを解体しながら、取り外すことになるのでしょう。

この蔵の持ち主のMさんにお願いして、近くから観察させていただきました(工事現場ですから、作業着を着てヘルメットをかぶって)。

蔵の4隅は3階までの通し柱、およそ20cm角。それ以外の3尺ピッチの柱は2階までの通し柱でおよそ17cm角(きちんと角材になっているわけではなく尺間法のモジュールには乗らない寸法でした)。柱間の落し板は厚さが2寸くらい。

隣りの畑には取り外された棟木や登り梁が並べられています。7間、約13mの棟木は松材、ほぼ中央の寸法は、幅と成ともおよそ1尺2寸。

棟木には大工棟梁の他、力士の名前も墨書きされていましたが、クレーンなどなかった建設当時(明治27年)、どのように建て方をしたんでしょうね。

この蔵は県外に運ばれて再生されるそうです。

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小谷の蔵

2008-12-26 | g 蔵観察・蔵考〇



■「蔵」が続きます。今回は小谷村の蔵。

雪対策として、荷重に耐えられるように補強柱をたてる方法と屋根を急勾配にして落雪させる方法があることを書きました。当然、両者併用もあり得るわけです。

その実例がないかな、と思っていましたが、意外に早く見つかりました。それがこの蔵です。補強柱と急勾配屋根の蔵。

下の大町市美麻(旧美麻村)の蔵と比べると屋根の勾配が急なことが分かります。

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松本の蔵

2008-12-23 | g 蔵観察・蔵考〇

 

■ 路上観察 今回は松本の蔵(081223撮影)。

この蔵、軒樋を受ける金物のデザインが秀逸。職人の美に対するこだわりが伝わってくる。銅板で加工した樋も凝ったつくりだ。





妻側の窓上部の庇のたる木と破風板には直線材ではなく、湾曲加工材を使っている。これらの部材の小口を銅板で包むという丁寧な仕事。

腕木を支える金物の力板は初めから設置されていたのだろうか。

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蔵の意匠 

2008-12-21 | g 蔵観察・蔵考〇







■ 前稿に続き「蔵」を取り上げます。

は長野県小谷村の蔵です。しばらく前に取り上げましたが、再掲します。美麻の蔵と同様、補強柱をたてています。

は昔の写真。「たてぐるみ」と呼ばれる形式で蔵を取り込んでいます。岡谷、諏訪、茅野地方に分布しています。撮影地、撮影年月は不明。

も昔の写真。分かりにくいですが、2と同様、蔵をくるんでいます(左側)。なかなか面白い意匠です。現代の住宅設計にも使えそうです。をミックスしたような意匠ですね。

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戸狩の蔵  

2008-12-21 | g 蔵観察・蔵考〇



■ 民家 昔の記録。今回は戸狩の蔵(19800815)。

積雪荷重に耐えるように補強するか、屋根から雪を落下させるか、雪に対処する方法は2通りあります。

前稿で取り上げた大町市美麻の蔵は前者、積雪荷重に耐えるように屋根の先に柱をたてて補強していました。

この蔵の場合は後者、落雪させるために屋根の勾配をかなり急にしています。立ち上がりの大きな棟木は「雪割」の役目を果たしているでしょう。

独特のプロポーション、この地方に特有の形です。このような建築が次第に姿を消し、地方色が薄れていくのは残念です。

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路上観察 美麻の蔵 

2008-12-19 | g 蔵観察・蔵考〇


大町市美麻(旧美麻村)の蔵(081219

■ 所用で大町市美麻へ。目に付いた蔵を路上観察。路上からではよく分からないので近づいて観察(下)。



妻側の様子。母屋の先に柱を建てて、貫を通している。美麻は多雪地域だから、積雪荷重に耐えるように補強したものだと分かる。

平側の様子。妻側同様、梁の先に柱を建てている。白馬村や小谷村でも見られる雪対策。この柱を下地に雪囲いを設けることも出来る。貫に藁たばをかけてある。ほのぼのとした田舎の暮らしが窺える。好きな光景。

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路上観察 蔵の壁を保護する

2008-12-13 | g 蔵観察・蔵考〇



■ ①は茅野市内で見かけた「妻垂」の写真(0608)です。蔵などの妻壁を雨から保護するのが目的で諏訪地方の他に三重県や高知県でも見られる、と資料で読んだという(曖昧な)記憶があります。



②と③は今日(081213)伊那市内で見かけた、やはり蔵の妻壁を保護する目的の・・・、さてこの壁の名称が分かりませんが、とりあえずその機能から「保護壁」としておきます。

③の写真で分かるようにこの「保護壁」は妻壁から離して下地がつくられ仕上げ材が張られています。直接妻壁の上に張っているわけではありません(②も同様です)。

かつては②のように板でつくられていたのでしょうが、最近では③のようにトタン(亜鉛めっき鋼板)でつくられることが多いのでしょう。近くで数例見かけました(④)。



④は長屋門の両側の蔵の妻壁につけられた「保護壁」。波トタンが張ってあります。

なぜ平側にこのような「保護壁」をつけないのか・・・。平側は軒出が大きいので妻側よりも雨が掛かりにくいということもあるかもしれませんが、まあ、壁四面全てを囲ってしまったらせっかくの蔵が全く見えなくなってしまいますから、持ち主の「ドーダ心」が満足できない、という理由ではないかと私は思います。



この写真は白馬村で以前撮ったものです(0807)。雨ではなくて雪から外壁を守るための雪囲いです。雨から壁を守る「保護壁」とは当然様子が違います。この位だと四面囲っても蔵が見えますね。



伊那市内でこんな突き上げ屋根付きの民家も見かけました。これがもし茅葺だったら、興奮しただろうと思います。

なぜ? 何のため? 民家に施された様々な仕掛けの理由を考えるって面白いです。

久しぶりの民家路上観察でした。

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民家 昔の記録 蔵の町・川越

2008-11-01 | g 蔵観察・蔵考〇

● 民家 昔の記録、今回は川越、小江戸といわれた城下町の蔵です。


「亀屋」197910撮影

川越の蔵を紹介する書籍に必ず、といっていいくらい紹介されているのがこの「亀屋」です。電柱の陰になっていますが、店蔵の左に袖蔵があります。店蔵が通りに平側を向けているのに対し、袖蔵は妻側を向けているので妻蔵とも呼ばれています。手元にある資料によると、この袖蔵は火災のとき店蔵への延焼を防ぐために風上側に建てられているそうです(火災の多い冬の北西の風を避けるように)。整ったデザイン、美しい蔵だと思います。

この写真では残念ながら、きちんと写っていませんが(軒下まできちんと写すためには曇天の日が好ましいです)、太い腕木で支えた出し桁で軒まわりを構成しています。出し桁造りは別に珍しい構法ではなく、よく見かけます。

ここを訪れてから、既に30年近くの時が流れています。記憶違いでなければこの蔵は何年か前に内部がモダンなデザインの店舗に改装されていると思います。


松崎屋運道具店

棟に高く積み上げられた瓦、両端の巨大な鬼瓦に注目です。

火伏せのついた鬼瓦に注目。

昔は右の写真のように、望遠レンズを使ってディテールも撮っていたのですが、最近はポケットサイズのデジカメで安易に撮っておしまい、反省しなくては・・・。

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路上観察 安曇野市の繭蔵

2008-07-25 | g 蔵観察・蔵考〇


北側(道路側)外観

 安曇野市内にあるかつて養蚕に使われていた繭蔵。木造3階建て、明治27年建設。路上観察、敷地内観察、さらに内部観察もさせていただきました。

1階部分の外壁は下見板張り、上部の土壁には突き出し窓が市松模様に配置されています。鉄板の突き出し窓を開けたり閉めたり、さらに開放する角度を変えて風通しを調整したそうです。市松模様に窓を配置したのは風通しを自在に調整するための工夫なんですね。


南側外観

南側には下屋が付いていますが上部は北側同様に窓が市松模様に配置されています。

蔵の持ち主の方にお願いして内部を見せていただきました(内部の写真は載せないでおきます)。5間×7間の大きな蔵です。2本の通し柱が棟木を支えています。棟木は継ぎ手なしの1本もの。桁行方向7間ですからその長さは約13mです。クレーンなどの重機が無い時代のことですから建て方も大変だったでしょうね。

この蔵は県外で再生の計画があるそうです。再生されたら是非見学に行きたいと思います。

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