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透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

路上観察 まだまだ蔵は続く・・・

2009-08-15 | g 蔵観察・蔵考〇




松本市今井にて路上観察

 松本市今井の蔵。このところ蔵の妻壁の開口部周りのデザインに注目している。なんの飾りもないプリミティブな開口部。

①の蔵は漆喰仕上げが施されておらず、本来は下地の土壁表し(あらわし 建築用語として普通に使うことばだが、「この使い方変ですよ」と指摘されたことがある)のままだ。素朴な味わいの蔵。

②の蔵は漆喰で仕上げてある。地棟の小口の仕上げに家紋などを入れる場合が多いがこの蔵は無地。その下に小さな窓というか、通気口が設けられている。腰壁はなまこ壁にすることが多いがこのふたつの蔵は上部の壁と同じ仕上げをしている。

下は朝日村で見かけた蔵の平側の様子。入り口の上部に床をつくって物が置けるようにしている。松本地方でよく見られる形式。③は木組み表しだが、ここを④のように漆喰仕上げにすることの方が多い、と思う。


朝日村古見にて路上観察

朝日村西洗馬にて路上観察

腰は共になまこ壁。なまこ壁の名は瓦と瓦の間の隙間にかまぼこ型に盛り上げた漆喰の断面が海鼠(なまこ)型になっていることに由来するといわれている(「民家のデザイン」川島宙次/相模書房などによる)。③の蔵は亀甲模様。

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対馬の倉

2009-08-09 | g 蔵観察・蔵考〇


民家 昔の記録 対馬の倉(8109) *蔵と倉を使い分ける。

 屋根を石で葺くことは別に珍しいことではない。諏訪地方の鉄平石一文字葺きや菱葺き、宮城県の北部、女川あたりの玄昌石うろこ葺き(現在復元工事中の東京駅の屋根にいままで使われていた玄昌石の産地もこのあたりではなかったか)、新島の抗火石葺きなどについては既に取り上げた。実は対馬の倉についても既に書いているが、再度取り上げる。

福岡で行われたある学会の大会に参加した際、「ついで」に対馬を訪ねた。もう随分昔のことだ。小型飛行機が随分揺れて怖い思いをしたことを覚えている。

屋根の平面(ひらめん)には驚くほど大きな石*を使っている。棟の部分の雨仕舞がやっかいだが、何層も細長い石を重ねることで処理している。



石葺きは耕地に恵まれない対馬で穀物をきちんと保存するための知恵だという。石の重量が半端ではないからかなり丈夫に造る必要があり、実際には倉の多くは草葺きで、完全に雨を防ぐことが出来なかったということだ。

柱が1.8mピッチに並んでいなかった。確か1.5m位の間隔だったと思う。屋根の重量を支えるためかもしれないが、場所が対馬故、あるいは朝鮮半島の影響を受けているのかもしれない。異文化を感じる。

関心は海外にまで及ぶ・・・。

貢岩質の粘板岩(『地域と民家 日本とその周辺』杉本尚次/明玄書房1977年発行 による)


 

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松本の蔵

2009-08-08 | g 蔵観察・蔵考〇

    
松本大手にて路上観察

■ 窓に付けられた突き上げ式の鉄扉。支持棒で支える。突き上げた状態で、庇にもなるから小雨程度なら支障ない。

あちこちの蔵を載せたが、今回はこのくらいでオシマイ。人生いろいろ、男もいろいろ、蔵もいろいろ。

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須崎の蔵

2009-08-08 | g 蔵観察・蔵考〇



■ 民家 昔の記録 高知県須崎の蔵(198003)

窓と水切瓦の奇妙な位置関係。もっとも水切瓦は壁を伝わる雨水を切るためにも付けるのだから、この関係もありかな。窓の位置が高すぎて庇が付けられない。

鉄扉が無くなって丁番の痕跡が残るのみ。雨仕舞い上支障ないんだろうか。当然あるワナ。

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佐倉の蔵

2009-08-08 | g 蔵観察・蔵考〇



民家 昔の記録 中村屋乾物店

佐倉で見かけた重厚な造りの蔵。観音開きの扉の裏側が看板になっている。鰹節に勝男節とあてている。

19791010撮影 曇り時々小雨と当時の記録にある。

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近江八幡の蔵

2009-08-08 | g 蔵観察・蔵考〇



■ 腰壁は幅広の板の縦張り、高山の蔵とは違って押し縁が無く、すっきりしている。この板張りの連続が街並みに統一感を与えている(090215)。

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これじゃ年がら年中 蔵、蔵

2009-08-03 | g 蔵観察・蔵考〇



■ ♪今日も蔵、明日も蔵、これじゃ年がら年中 蔵、蔵・・・。今回は塩尻市洗馬で先日見かけた蔵の路上観察です。

屋根を受ける地棟(←過去ログの写真参照 妻壁から突出している地棟の様子が分かります)の小口の飾り。もともとは壁面より突出した円形の小口を防腐のために塞いだものです。納まり上、壁から突出させる必要がなくなっても依然として突出させて、家紋などで飾っています。家紋の他にも寿の文字なども見かけます。

窓の上のまぐさの形が面白いです。このように輪郭が曲線のものは珍しいのではないかと思います。縦枠と窓台が真っ黒というのもあまり見かけないような気がします(そうでもないかな)。

窓を中心軸を外してつくるのは何か意図があるのでしょうか・・・。よく見かけます。構造は横架材の上に左右対称に束立てするのが一般的。ですから窓は中心軸上につくる方が自然だと思います。あるいは中心軸に束立てしてあって、それを避けているためなのかも知れません。蔵の中に入って見れば分かることですが・・・。

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蔵は続くよ いつまでも 追記

2009-08-01 | g 蔵観察・蔵考〇



 松本 中町の蔵

蔵の壁面に開口部を設けて、そこに扉を付けるとなると結構費用がかかるだろう。**現在では一枚の扉に二千万円かかるという人もある。**と『民家のデザイン』川島宙次/相模書房にある。まさか、まさか。でも一体どの位かかるものか見当もつかない。百万? 二百万? 今度調べてみよう。

土蔵に限らないが壁という単一のシステムでつくるならば、施工はしやすい。が、そこに窓をつくるとなると、途端に難しくなる。更にそこに扉をつけるとなると施工の難易度は増す。

扉につけられた「ぎざぎざ」と枠につけられた「ぎざぎざ」(名称が分からない)がピッタリ合うように精度よくつくらなくてはならない。左官屋さんの腕の見せ所だ。下地を作る大工さんにも高い技術が求められる。

この蔵のまぐさには何も装飾が施されていない。裏日本の蔵はここに装飾が施されている例が多いと先の本には出ている。

開口部廻りはこの位のデザイン的な処理が好みだ。

 追記

「ぎざぎざ」と重ね合わせるシステムを「掛子」という、と教えてもらった。観音扉の召し合わせ部をぎざぎざにしっくいなどで塗ることを「掛子塗り」ということ、さらにこの写真のような扉を「掛子塗り戸」ということを事典を引いて知った。Y君に感謝。

 

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路上観察 高山の蔵

2009-07-26 | g 蔵観察・蔵考〇


高山の蔵 20090723

 高山市郊外で見かけた蔵。存在感のある立派な蔵です。山里というロケーションがいいですね。壁の白と黒のコントラストも魅力的。すっきりとした妻壁がそれを強調しています。腰壁は板(樹種は不明です。)の縦張り。このあたりでよく目にする構法です。

高山地方では梁や母屋などの小口を白く塗ることが多いですが、この蔵の登り梁の小口もやはり同様です。赤い破風の下に付けられた白の妻垂(?)は意匠的にどうなんでしょう、あるいは無い方がいいかもしれません。でも、それだと平凡かな・・・。

土蔵は普通の住宅の4倍程度の坪単価で、大工工事と左官工事がほぼ同額になったそうです(「民家をつくった大工たち」吉野正治/学芸出版社 1986)。ピッタリと閉じることができる扉は大工と左官の最高の腕の見せ所。息の合ったコラボでいい蔵をつくってきたんですね。 

飛騨の工匠は平安の昔から都の造営でも活躍したそうですが、その優れた技術を継承してきた職人たちが残した建築文化財、このまま後世に残して欲しいと願うばかり、といつもと同じことを書いておきます。


 

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蔵の妻壁の保護

2009-07-24 | g 蔵観察・蔵考〇

 

 土蔵の壁を雨から守るために板で覆ったものを見かけることはよくある(左の写真 長野県池田町にて 撮影2009年7月)。が、右の写真のように樹皮で覆ったものはあまり見かけない。これは伊予大洲、愛媛県の大洲市で見かけた土蔵(撮影1980年3月)。妻壁を杉皮で覆って竹で留めている。

板で覆うとなるとちょっと大変、大工さんに頼まないとなかなかできないが、樹皮を留めるような施工なら、やろうと思えば素人でも出来る。古い民家ほど特別な技術を要せず、素人でも施工できるようになっている。隣近所で協力して造ってきた民家、その素朴さが魅力だ


 

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板倉@白川郷

2009-07-17 | g 蔵観察・蔵考〇



 今年の4月、北陸旅行をした際に立ち寄った白川郷で見かけた板倉。柱と梁と貫、構造表しのプリミティブな美。

ふたつの窓。持送りに施された波型の意匠。

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蔵の庇 

2009-07-16 | g 蔵観察・蔵考〇


松本市梓川 撮影日090711 


松本市内 撮影日090712  
 
■ どーも蔵モードから抜け出せない。

今月11日の朝、松本市梓川で蔵の瓦葺きの庇を路上観察した。私のそれほど多くない蔵観察の印象から瓦葺の庇は珍しいのではないか、と書いた。が、この見解が妥当かどうかは分からない。あるいは別に珍しくないのかもしれない。下の蔵の湾曲している庇は銅板葺き。この庇ならよく見かけるような気がする。

瓦葺きの庇と銅板などの金属葺きの庇、全国的な分布にはどのような傾向があるだろう・・・。気になる。


 

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蔵いろいろ 松本市梓川

2009-07-11 | g 蔵観察・蔵考〇


路上観察 梓川の蔵 090711

 数日前、たまたま車で通りかかった松本市梓川(旧梓川村)で見かけた蔵。「あ、瓦葺の庇だ!」先日南木曽町で見かけた蔵と同様に瓦葺の庇があった。



今朝、改めて路上観察してきた。窓周りの漆喰細工。そのデザインは装飾過多でもなく簡素でもなく、程よい。丁寧につくられている。このままの状態でずっと保存して欲しい。今このような細工ができるのかどうか。仮にできるとしても相当費用がかかるだろう。

下の蔵も梓川で見かけた。下屋付きの蔵の場合、妻側のデザインをまとめるのが難しい。

妻壁の中心線を少し左に外した窓。太い窓上のまぐさと窓下の台座(窓台)。シンプルな鉢巻き。下屋はなまこ壁の見切りを一段下げている。そこに付けられた横長の小窓、その四隅にも細工が施されている。壁の白さが清々しい。存在感のある蔵だ。



蔵はいろいろ。面白い。


 

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蔵いろいろ 会津若松

2009-07-09 | g 蔵観察・蔵考〇





民家 昔の記録 会津若松の蔵 198210

■ 先日妻壁に大きな開口部を設けた蔵は記憶に無いと書きましたが、記録にはありました。上下2段の開口部、ともに両開きの扉付き。このような上下2段の開口部を妻壁に設けた例というのはあまり見かけないような気がします。

下の写真の蔵の目板葺きの庇、これは後から付けたのではないかと思います。庇以外のデザインはよく似ています。共に堂々とした、存在感のある蔵です。

♪人生いろいろ、男もいろいろ、蔵だっていろいろ・・・、ですね。


 

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蔵いろいろ 高知県後免

2009-07-06 | g 蔵観察・蔵考〇

 

 民家 昔の記録 高知県後免の蔵 198003

蔵もいろいろです。今回は今から30年近く前に訪ねた高知県後免で見かけた蔵。多雨地域のため、壁に水切瓦が付いています。

この地方独特のデザインです。妻壁の開口部の上部に付けられた水切瓦。前々稿で取り上げた南木曽町の蔵とはやはりデザインが全く違いますね。

そう、蔵もいろいろです。

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