6月30日のブログでも紹介しましたが、埼玉県の上田清司県知事が6月27日に県議会で自民党の小島信昭議員の質問に、「古今東西、『慰安婦』はいても『従軍慰安婦』はいない。兵のいるところ(『慰安婦』が)集まって来たり、兵を追いかけて民間業者が連れていったりするのであって、軍そのものが連れて行くなんてことは絶対にない」と答弁したことに対し、上田知事は7月3日、「従軍慰安婦」についての考えを説明した「見解」を文書で発表しました。これは上田知事の答弁以来、反響が広がり釈明を迫られたからです。
しかし、上田知事は、「見解」の中で、「『慰安婦』と『従軍慰安婦』には違いがあり、従軍慰安婦がいたという証拠はない」と述べています。
県議会で「従軍慰安婦はいない」と答弁したことを「(いたという)証拠はない」と表現こそ変えていますが、日本軍の関与をあらためて否定しました。
「従軍慰安婦」問題については、これまでも「強制連行はなかった」(マンガ家・小林よしのり氏)とか「軍の関与はなかった」(ジャーナリスト・桜井よし子氏)と主張する人はいました。1990年代にこの問題が明らかとなったころは、日本政府も「軍の関与はなかった」という態度を取りました。しかし、歴史学者の吉見義明氏が防衛庁関係の資料室から資料を見つけ出し、軍は関与していたではないかと追及されて、ようやく河野洋平官房長官(1993年・当時)は「軍の関与がありました」と政府見解を発表したのです。
先のブログでも元日本兵の松原勝さんが、海軍の発行を証明する赤い二重の波線が入った「慰安所への出入証」を手に証言したことを紹介したように、「軍の関与」は明らかです。
上田知事の「見解」では、この河野洋平官房長官の談話についても「事実関係の解明よりも、まずは女性たちの名誉回復を図ることで、(日韓)両国間の関係を改善したいという思惑」が日本政府の側にあったと主張するしまつです。
なんという発言でしょうか。「従軍慰安婦」問題については1991年に韓国人の金学順(キムハクスン)さんがはじめて被害者として名乗りをあげ、三人の韓国人女性が日本に対し謝罪と損害賠償を求めて東京地裁に提訴して以来、多くの被害女性の証言が事実認定の証拠として採用されたり、国連人権委員会でも問題とされました。1995年「北京世界女性会議」では性的奴隷に対する政府の補償責任を盛り込んだ行動綱領が採択され、1996年にはILO(国際労働機関)条約適用専門委員会が、「(慰安婦問題で)強制労働条約違反として日本は国家補償をおこなうべき」と勧告しているのです。さらに2003年には国連人権委員会が「慰安所の設置が国際法上の義務に違反することを認め、被害者に個人補償を給付すべきである」という勧告を出しています。
これらからも明らかなように、上田知事の「証拠がない」などという断定こそ根拠がなく、県民を代表する県知事たる者が、日本政府や裁判所、国連や世界の女性会議などの公式見解を否定するかのような発言を繰り返すことは、許されません。ましてや先の政府見解を「まずは女性たちの名誉回復を図ること」を優先したかのような発言をすることや、「女性の尊厳を二度と踏みにじるようなことはあってはならないと強く思う」などと、さも女性を尊重しているかのような発言をしていますが、こうした上田知事の歴史認識を無視した発言こそ、被害女性の叫びを踏みにじるものでしかないことを認識すべきです。
「従軍慰安婦」問題の解決は、女性の人権を守るという点でも大切ですが、日本の民主主義にとっても重要な問題です。
私たちは、上田知事が政治家として、日本が太平洋戦争で侵した過ちには真摯に向き合い、こうした発言を撤回することを求めるものです。
■「とだ九条の会」公式ホームページもご覧ください。
http://www15.ocn.ne.jp/~toda9jo/
しかし、上田知事は、「見解」の中で、「『慰安婦』と『従軍慰安婦』には違いがあり、従軍慰安婦がいたという証拠はない」と述べています。
県議会で「従軍慰安婦はいない」と答弁したことを「(いたという)証拠はない」と表現こそ変えていますが、日本軍の関与をあらためて否定しました。
「従軍慰安婦」問題については、これまでも「強制連行はなかった」(マンガ家・小林よしのり氏)とか「軍の関与はなかった」(ジャーナリスト・桜井よし子氏)と主張する人はいました。1990年代にこの問題が明らかとなったころは、日本政府も「軍の関与はなかった」という態度を取りました。しかし、歴史学者の吉見義明氏が防衛庁関係の資料室から資料を見つけ出し、軍は関与していたではないかと追及されて、ようやく河野洋平官房長官(1993年・当時)は「軍の関与がありました」と政府見解を発表したのです。
先のブログでも元日本兵の松原勝さんが、海軍の発行を証明する赤い二重の波線が入った「慰安所への出入証」を手に証言したことを紹介したように、「軍の関与」は明らかです。
上田知事の「見解」では、この河野洋平官房長官の談話についても「事実関係の解明よりも、まずは女性たちの名誉回復を図ることで、(日韓)両国間の関係を改善したいという思惑」が日本政府の側にあったと主張するしまつです。
なんという発言でしょうか。「従軍慰安婦」問題については1991年に韓国人の金学順(キムハクスン)さんがはじめて被害者として名乗りをあげ、三人の韓国人女性が日本に対し謝罪と損害賠償を求めて東京地裁に提訴して以来、多くの被害女性の証言が事実認定の証拠として採用されたり、国連人権委員会でも問題とされました。1995年「北京世界女性会議」では性的奴隷に対する政府の補償責任を盛り込んだ行動綱領が採択され、1996年にはILO(国際労働機関)条約適用専門委員会が、「(慰安婦問題で)強制労働条約違反として日本は国家補償をおこなうべき」と勧告しているのです。さらに2003年には国連人権委員会が「慰安所の設置が国際法上の義務に違反することを認め、被害者に個人補償を給付すべきである」という勧告を出しています。
これらからも明らかなように、上田知事の「証拠がない」などという断定こそ根拠がなく、県民を代表する県知事たる者が、日本政府や裁判所、国連や世界の女性会議などの公式見解を否定するかのような発言を繰り返すことは、許されません。ましてや先の政府見解を「まずは女性たちの名誉回復を図ること」を優先したかのような発言をすることや、「女性の尊厳を二度と踏みにじるようなことはあってはならないと強く思う」などと、さも女性を尊重しているかのような発言をしていますが、こうした上田知事の歴史認識を無視した発言こそ、被害女性の叫びを踏みにじるものでしかないことを認識すべきです。
「従軍慰安婦」問題の解決は、女性の人権を守るという点でも大切ですが、日本の民主主義にとっても重要な問題です。
私たちは、上田知事が政治家として、日本が太平洋戦争で侵した過ちには真摯に向き合い、こうした発言を撤回することを求めるものです。
■「とだ九条の会」公式ホームページもご覧ください。
http://www15.ocn.ne.jp/~toda9jo/