みちしるべの伝説

音楽と希望は刑務所でも奪えない。

朱川湊人「あした咲く蕾」

2010年02月06日 | 
どうやって、この本の良さを伝えたらいいんだろう?
人間に備わっている自然な美しい心が、爽やかに、穏やかに描かれていたなあ。
ささやかにファンタジーが織り交ぜられた7つの話に、
心の芯から、じ~んと揺さぶられ、涙し、温かい気持ちが広がる。

帯にある
「赦されること」と「受け入れられること」それがこの世の中で、一番うつくしいことだと思いませんか。世界一、うつくしい物語。
は、ほんとうにそのとおりで、「赦されること」と「受け入れられること」の美しさは、どの話にも共通するテーマだったなあ。

一番泣けたのは「虹とのら犬」でした。

「虹とのら犬」より
彼女は誰からも疎まれていた私に、はじめて無償の愛情を分けてくれた女性だ。あの頃、彼女とめぐり合わなければ、私はたぶん道を踏み外していただろう。
(中略)
きっと世の中には、自ら進んでのら犬になった犬はいない。ほんのわずかでも、愛されていること-自分が誰かに必要とされていることが実感できれば、踏み外しかけた道を戻ることもできるのではないかと思う。

雨に濡れた心には、温かな虹が沁みるのです。

恐らく、今年読む本の中の三指に入るだろう、とてもお勧めできる一冊です。

あした咲く蕾
朱川 湊人
文藝春秋

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2 コメント

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Wonderful stories! (Yukarin)
2010-02-25 12:12:00
そらみみさんのアドバイス通り、
一話ずつ、味わって読みました。
本当にしみじみと良い本ですね。
私も「あした咲く蕾」と「虹とのら犬」で泣いてしまいました。

認めてもらいたい、
役に立ちたい、
ありのままの自分を受け止めてほしい、
というのは、人間の根源的な願望なのでしょうね。
自分の存在する理由というか…。

ところでこの本はファンタジーが入っているのでしょうか。
私の周りには、不思議体験をしている人が
結構いるので、
ああ、こういうことはあるだろうな、と思いながら読んだんですが。
ちょうど飯田史彦さんの本を読んだ後でもあったし。
「生きがいの創造Ⅱ 永遠の愛・めぐり逢う生命」とっても良かったですよ。

そらみみさんは童心に帰る必要があるんですね。
私には純真な心を持った少年に思えるんですが。

私も新田次郎、好きでした~!
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I love these stories. (そらみみ)
2010-02-26 21:25:36
明日咲くつぼみ、Yukarinさんの心に響いたようで、よかったです!
ほんと、泣けますね。

自己犠牲、無償の愛、健常ではない人に担わされた役割・・・。
そういうものに弱くて・・・。
人間の中に宿る善性というのかな?信じられるように思いますね。

ファンタジーは、ん~、僕の周りでは、不思議なことは、ほとんど起きないので、
入っていると思いますが・・・。
飯田史彦さんの本も良さげですね。

自分、ちっとも純真ではないですが、こういう本に描かれた人たちのように
美しく生きたいものですね。

この本がお気に召したのなら、絲山秋子「海の仙人」も、お勧めでしょうか。

>新田次郎
Yukarinさんとは、趣味が合いすぎて、怖いです。
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