タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

PCOSの治療

2017-07-19 21:47:25 | 不妊症
篠山市池上の充輝(みつき)くん、6月14日生まれ。
「優しい子になってください。
無事に生まれてくれて、本当によかったです。
入院中はゆっくりとした時間が過ごせてよかったです。」

この、産後のゆっくりとした時間は、とても必要なことだと思うのですよ。
病室にテレビが無いことを驚かれるお母さんも居られますが、
産後のテレビは、おすすめできませんからね。
それでもスマホで好きな動画は見放題ですから、そんなことはどうでも良いのでしょう。
ですが、産後の、赤ちゃんと2人だけの時間を、できれば大切にしてくださいね。

それでは今日は、久しぶりに不妊症の基本的なお話を致しましょう。

自覚の有る不妊症の症状と言えば、月経が不順であるということですね。
女性なら誰でもわかることでしょう。
10代の頃から不規則で、という女性は多いものです。
そして月経不順の原因として一番多いものは、PCOSですね。

初耳ということは有りませんよね?
多嚢胞性卵巣症候群の略ですよ。
生殖可能年齢の5〜10%に、関連すると言われます。
とても多い病気ですね。

日本産婦人科学会の定義では、
(1)排卵障害、(2)ホルモンの異常、(3)超音波での特徴的な所見、の3つとも認められればPCOSと定義します。

(1)の排卵障害とは、簡単に言うと、月経不順のことです。

(2)のホルモンの異常とは、男性ホルモンが高く、下垂体から分泌される黄体化ホルモンも高くなるのが特徴です。
ただしこれは、きちんと検査している施設は少ないのではないでしょうか。
タマル産では、下垂体ホルモンの負荷試験というものをしていて、
1時間かけて時間ごとに採血して確定診断をしていますよ。負荷試験と呼びます。
ワンポイントだけの採血では、とても不正確だからです。
とくにこの検査だけは、タマル産で受けていただきたいのですよ。
大学病院でするような検査ですが、保険診療の範囲でできますからね。

(3)の超音波所見とは、卵巣にたくさんの卵胞という袋が見えるものです。
それで卵巣が腫れたように見えます。
逆に子宮は縮んでしまうので、両側の卵巣と子宮、合わせて3つが同じような大きさに並ぶのが特徴なのです。

3つ揃えば、PCOSなのですね。
ですが世界的な定義で言えば、このうちの2つだけでも良いのですよ。

それでもPCOSの場合は、保存的な排卵誘発剤が有効とされます。
だからまずは内服や注射の排卵誘発剤を使うのが良いのですよ。
施設によっては、腹腔鏡というカメラ下に、卵巣に排卵しやすいように、
わざと傷を付けるという手術をするところも有りますが、
卵巣機能が廃絶してしまう可能性が有るので、あまりおすすめできる手術ではありませんからね。

保存的な治療で妊娠できない場合は、体外受精に進むことになります。
ただしPCOSの女性の場合は、採卵した卵をすべて凍らせることが多いのです。
ただし精子と合わせて受精させて、さらに分割させてから凍結するのです。
その方が、その月にすぐに子宮に戻すよりも良い結果になるからです。
いったん人間の受精卵が凍るなんて、不思議な感じがしますよね。
今のところは凍結しても問題無いとはされています。
遠い将来のことまでは、誰も断言できませんけれどね。

1つ付け加えるなら、保存的な治療でも少しだけ問題点は有ります。
双胎や品胎などの多胎妊娠になることが有るからです。
もう1つは、さらにたくさんの卵胞が大きくなると、
卵巣が腫れたり、お腹や胸に水が溜まる、OHSSという副作用が出ることが有ります。
以前の排卵誘発剤は、とてもよく有った副作用なのですが、
最近の排卵誘発剤では、重い副作用が出ることは殆どなくなりましたけれどね。

長くなりましたが、要点を整理致しましょう。
PCOSは月経不順を主訴としますが、
治療は保存的なものでも、案外簡単に妊娠されることが有ります。
それでも副作用として、多胎妊娠やOHSSには注意を要します。
保存的に妊娠しなければ、体外受精に進みますが、受精卵をいったん凍結する必要が有るということです。
そこにまだ少し不安要素は有るかもしれませんね、というお話でした。

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