竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
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万葉集 集歌1887から集歌1891まで

2021年06月07日 | 新訓 万葉集
旋頭謌
標訓 旋頭歌
集歌一八八七 
原文 春日在 三笠乃山尓 月母出奴可母 佐紀山尓 開有櫻之 花乃可見
訓読 春日なる三笠の山に月も出(い)でぬかも佐紀山(さきやま)に咲ける桜し花の見ゆべく
私訳 春日にある三笠の山に月も出て来ないかなあ、佐紀山に咲いている桜の花を眺めることが出来ます。

集歌一八八八 
原文 白雪之 常敷冬者 過去家良霜 春霞 田菜引野邊之 鴬鳴焉
訓読 白雪し常(つね)敷く冬は過ぎにけらしも春霞たなびく野辺(のへ)し鴬鳴くも
私訳 白雪がいつも降り積もる冬はきっとその季節を過ぎたようです、春霞の棚引く野辺に鶯が鳴いています。

譬喩歌
標訓 譬喩歌(ひゆか)
集歌一八八九 
原文 吾屋前之 毛桃之下尓 月夜指 下心吉 菟楯項者
訓読 吾(あ)が屋前(やと)し毛桃(けもも)し下に月夜(つくよ)さし下心(したこころ)良(よ)しうたてし今日(けふ)は
私訳 私の家の前庭にある毛桃の木の下に月明りが射し、気分は良い。日頃と違い今日は。
注意 原文の「菟楯項者」の「項」は標準解釈では「頃」と校訂して「うたてこのころ」と訓じますが、ここでは「項」の漢字が持つ音の「キョウ」と意味の「うなじ、くび」から、そのままに訓じました。

春相聞
標訓 春の相聞
集歌一八九〇 
原文 春日野 犬鶯 鳴別 春眷益間 思御吾
試訓 春日(はるひ)野し犬鶯(おほよしきり)し鳴き別れ春眷(み)ます間(ま)も思ほせわれを
試訳 春の日の輝く野で犬鶯が鳴いて飛び去るように、過ぎゆく春をしみじみ懐かしく思う、その折々にも思いだして下さい、私を。
注意 標準解釈では原文からは読解出来ないとして「犬鶯」を「友鶯」へ校訂します。この校訂により新たに歌意を調えるために原文の「春眷益間」から「春」の字を削ります。その校訂の結果が次です。
改訂 春日野 友鶯 鳴別 眷益間 思御吾
訓読 春日野の友鶯の鳴き別れ帰ります間も思ほせわれを
意訳 春日野の妻を求めて鳴く鶯のように啼き別れて、お帰りになる間でも、お思いください。私のことを。

集歌一八九一 
原文 冬隠 春開花 手折以 千遍限 戀渡鴨
訓読 冬ごもり春咲く花を手折り持ち千遍し限り恋ひ渡るかも
私訳 冬が春の日に隠れ、その春の咲く花を手で折って持って無限の思いで貴女に恋い焦がれるでしょう。
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