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【問13】 Aが所有している甲土地を平置きの駐車場用地として利用しようとするBに貸す場合と、一時使用目的ではなく建物所有目的を有するCに貸す場合とに関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。
1 AB間の土地賃貸借契約の期間は、AB間で60年と合意すればそのとおり有効であるのに対して、AC間の土地賃貸借契約の期間は、50年が上限である。
2 土地賃貸借契約の期間満了後に、Bが甲土地の使用を継続していてもAB間の賃貸借契約が更新したものと推定されることはないのに対し、期間満了後にCが甲土地の使用を継続した場合には、AC間の賃貸借契約が更新されたものとみなされることがある。
3 土地賃貸借契約の期間を定めなかった場合、Aは、Bに対しては、賃貸借契約開始から1年が経過すればいつでも解約の申入れをすることができるのに対し、Cに対しては、賃貸借契約開始から30年が経過しなければ解約の申入れをすることができない。
4 AB間の土地賃貸借契約を書面で行っても、Bが賃借権の登記をしないままAが甲土地をDに売却してしまえばBはDに対して賃借権を対抗できないのに対し、AC間の土地賃貸借契約を口頭で行っても、Cが甲土地上にC所有の登記を行った建物を有していれば、Aが甲土地をDに売却してもCはDに対して賃借権を対抗できる。
1 【正解:×】
◆存続期間の比較
●建物所有を目的としない土地の賃貸借
建物所有を目的としない土地の賃貸借は,借地借家法が適用されないため、民法の規定により、20年を超えることができず、20年を超えて存続期間を定めても20年に短縮される(民法603条1項)。
●建物所有目的の土地の賃貸借
建物所有目的の土地の賃借権は、借地借家法が適用され、一時使用目的の土地の賃貸借や事業用借地権を除いて、当事者間の合意により存続期間を100年以上にすることもでき、50年が上限ではない。土地の賃貸借は最低存続期間は法定されているが、それよりも長い期間を当事者が定める場合は、その存続期間による。したがって、借地の存続期間の上限に関しては制限が無い。
建物所有目的の 土地の賃借権 |
普通借地権 | 原則として30年。当事者間でこれより 長い期間を定めれば、その期間になる(3条) |
定期借地権 (事業用借 地権以外) |
定期借地権、建物譲渡特約付借地権 (22条)、(24条)とも50年を超えて設定できる。 |
|
事業用 |
50年未満のみ(23条) | |
建物所有を目的としない 土地の賃借権 |
民法の存続期間である20年を超えて 設定できない(民法604条1項)。 |
2 【正解:×】
◆更新の比較
●建物所有を目的としない土地の賃貸借
賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用または収益を継続する場合に、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借契約と同一の条件で更に賃貸借契約をしたものと推定する。
この場合、各当事者は、第617条の規定により解約の申入れをすることができる(民法619条1項)。⇒ 期間満了後にBが甲土地の使用を継続した場合には、AB間の賃貸借契約を従前のものと同一の条件で契約したものと推定されることがある。
●建物所有目的の土地の賃貸借(普通借地権の場合)
借地上に建物が残っており、期間満了後も借地権者が引き続き土地の使用を継続し、土地の所有者〔貸主。借地権設定者〕が、遅滞なく、正当事由をもって異議を述べない場合は、期間を除いて(※)、従前の賃貸借契約と同一の条件で更新したものとみなされる(借地借家法5条2項、6条)。⇒ 期間満了後にBが甲土地の使用を継続した場合に,存続期間を除いて,AC間の賃貸借契約が更新されたものとみなされることがある。
(※)借地借家法の規定により、この場合、更新後の存続期間は更新の日から10年(借地権の設定後の最初の更新では、20年)とされる(借地借家法4条)。
みなす | 法律関係が確定する。当事者がみなされたものと異なる事実を 主張することはできない。 |
推定される | 反証を立証すれば、推定された法律関係を覆すことができる。 |
3 【正解:×】
◆存続期間を定めなかった場合の比較
●建物所有を目的としない土地の賃貸借
存続期間を定めなかったときは、貸主・借主のどちらも、いつでも解約の申入れをすることができ、申入れから1年が経過すると賃貸借契約は終了する(民法617条1項)。
(※)「賃貸借契約開始から1年が経過すれば」という部分は余計です。1年が経過していなくても、また1年が経過していても、解約の申し入れができるからです。
●建物所有目的の土地の賃貸借 (普通借地権の場合)
普通借地権では、存続期間を定めなかったときは、存続期間は30年とされる(借地借家法3条)。
普通借地権では、期間が満了し、賃貸人の正当事由が認められ、借地の更新されなかった場合にのみ、賃貸借契約は終了する。したがって、正当事由があると認められる場合でなければ、解約の申入れはできない(借地借家法6条)。
4 【正解:○】
◆賃借権の対抗要件の比較
●建物所有を目的としない土地の賃貸借
賃借権の登記をしていなかったときは、新所有者に賃借権を主張できない〔対抗できない〕。
●建物所有目的の土地の賃貸借
賃借権の登記をしていなくても、借地上の建物に登記があれば〔表題登記、所有権保存登記、所有権移転登記のどれでもよい〕、新所有者に賃借権を主張できる〔対抗できる〕。(※)
建物所有を目的としない 土地の賃貸借 |
賃借権の登記をしていなかったときは、 新所有者に賃借権を主張できない〔対抗できない〕。 |
建物所有目的の 土地の賃貸借 |
賃借権の登記をしていなくても、 借地上の建物に登記があれば、 新所有者に賃借権を主張できる〔対抗できる〕。 |
(※) 一時使用目的の場合も適用されることに注意。
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【問8】 弁済に関する次の1から4までの記述のうち、判決文及び民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
(判決文)
借地上の建物の賃借人はその敷地の地代の弁済について法律上の利害関係を有すると解するのが相当である。思うに、建物賃借人と土地賃貸人との間には直接の契約関係はないが、土地賃借権が消滅するときは、建物賃借人は土地賃貸人に対して、賃借建物から退去して土地を明け渡すべき義務を負う法律関係にあり、建物賃借人は、敷地の地代を弁済し、敷地の賃借権が消滅することを防止することに法律上の利益を有するものと解されるからである。
1 借地人が地代の支払を怠っている場合、借地上の建物の賃借人は、借地人の意思に反しても、地代を弁済することができる。
2 借地人が地代の支払を怠っている場合、借地上の建物の賃借人が土地賃貸人に対して地代を支払おうとしても、土地賃貸人がこれを受け取らないときは、当該賃借人は地代を供託することができる。
3 借地人が地代の支払を怠っている場合、借地上の建物の賃借人は、土地賃貸人の意思に反しても、地代について金銭以外のもので代物弁済することができる。
4 借地人が地代の支払を怠っている場合、借地上の建物の賃借人が土地賃貸人に対して地代を弁済すれば、土地賃貸人は借地人の地代の不払を理由として借地契約を解除することはできない。
1 【正解:○】
◆法律上の利害関係がある第三者の弁済
法律上の利害関係がある第三者は、債権者と債務者の間で,第三者の弁済を許さないとする意思表示及び特約がない場合には、債務者の意思に反しても弁済することができる(民法474条)。
判例により、借地上の建物の賃借人は法律上の利害関係がある第三者として認められているので、借地上の建物の賃借人は、借地人の意思に反しても、地代を弁済することがでる。
2 【正解:○】
◆第三者の弁済供託
法律上の利害関係がある第三者も、
① 債権者が弁済の受領を拒むとき〔受領を拒絶〕、
②債権者が(何らかの理由により)弁済を受領できないとき〔受領不能〕、
③ 過失なく債権者を確知できないとき〔債権者不確知〕、
は,供託により債務を免れることができる(民法494条)。
⇒ 第三者の弁済を債権者が受領しなければ、債権者の受領遅滞となる(民法413条)。
したがって、借地上の建物の賃借人が土地賃貸人に対して地代を支払おうとした場合に(弁済の提供をした場合に)、土地賃貸人が受け取ろうとしないときは、地代を供託することができる。
3 【正解:×】
◆代物弁済は、債権者の承諾がなければ,することはできない。
債務者だけでなく、法律上の利害関係がある第三者も、代物弁済をすることができますが、代物弁済をするには債権者の承諾が必要(民法482条)。
即ち、「債務者が、債権者の承諾を得て、その負担した給付に代えて他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。」(民法482条)
したがって,借地上の建物の賃借人は、土地賃貸人の意思に反して、地代について金銭以外のもので代物弁済することはできない。
4 【正解:○】
◆第三者の弁済により、債権者に対しては、債務者の債務は消滅する。
法律上の利害関係がある第三者が弁済したときは、債権者に対する債務者の債務は消滅する(債務不履行ではなくなる)ので、債権者は、契約を解除することはできない。
このため、借地上の建物の賃借人が土地賃貸人に対して地代を弁済すれば、土地賃貸人は借地人の地代の不払を理由として借地契約を解除することはできない。
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【問4】 Aは、Bから借り入れた2,000万円の担保として抵当権が設定されている甲建物を所有しており、抵当権設定の後である平成20年4月1日に、甲建物を賃借人Cに対して賃貸した。Cは甲建物に住んでいるが、賃借権の登記はされていない。この場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。
1 AがBに対する借入金の返済につき債務不履行となった場合、Bは抵当権の実行を申し立てて、AのCに対する賃料債権に物上代位することも、AC間の建物賃貸借契約を解除することもできる。
2 抵当権が実行されて、Dが甲建物の新たな所有者となった場合であっても、Cは民法第602条に規定されている短期賃貸借期間の限度で、Dに対して甲建物を賃借する権利があると主張することができる。
3 AがEからさらに1,000万円を借り入れる場合、甲建物の担保価値が1,500万円だとすれば、甲建物に抵当権を設定しても、EがBに優先して甲建物から債権全額の回収を図る方法はない。
4 Aが借入金の返済のために甲建物をFに任意に売却してFが新たな所有者となった場合であっても、Cは、FはAC間の賃貸借契約を承継したとして、Fに対して甲建物を賃借する権利があると主張することができる。
1 【正解:×】
◆物上代位することはできるが、賃貸借契約の解除をすることはできない。
抵当権者は、債務不履行になれば、抵当権の実行を申し立てることができ、賃料債権に物上代位することがでる。 しかし、AC間の賃貸借契約を解除することはできない。
抵当権設定者は、抵当不動産を,通常の範囲内であれば、原則として自由に使用収益することができる(※)ので、抵当権者Bは抵当権設定者であるAがCと締結した賃貸借契約を解除することはできない。
(※)判例では、「抵当権設定者が、抵当権設定登記後に、抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的で賃貸借契約等の占有権限を他の者と設定し、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となる状況のときは、抵当権者は、占有者に対して、抵当権に基づく妨害排除請求をすることができ、抵当権設定者が抵当不動産を適切に維持管理することができない場合には、抵当不動産を直接抵当権者へ明渡しをするように占有者に求めることができる。」としている(最高裁・平成17年3月10日判決)。
2 【正解:×】
◆賃借権の対抗要件の具備が抵当権設定登記より先か後かによって、抵当権者に対抗できるかどうかが決まる。
1)抵当権設定の登記の後に、「AC間の賃貸借契約が締結された、または、Cが建物の引渡しを受けた」とすると、Cは、その賃借権を、抵当権者Bや競落人Dに対抗することはでない。
抵当権設定登記 建物の引渡し
―●――――――――――●――
ただし、抵当権設定登記後に競売手続が開始される前から建物を使用収益していた者(抵当建物使用者)は、競落人がその建物を買い受けたときから6か月が経過するまでは競落人への建物の引渡しが猶予されます(民法395条1項)。
この場合、競落人の買受け後から引渡しまでに建物を使用した対価を支払わなければならない。
この場合、Cは賃借権をBに主張することさえできないのですから、「Cは,短期賃貸借期間の限度で賃借権があると主張することができる」とする2は間違い。
(2)抵当権設定後に、AC間の賃貸借契約が締結されたとしても、AC間の賃貸借契約が抵当権設定の登記の前であり、Cが抵当権設定登記より前に、建物の引渡しを受けていれば、Cは抵当権者に対抗できる(借地借家法31条1項)。
短期賃貸借の期間の限度にとどまるものではありません。⇒建物の引渡しを受けたのが抵当権設定登記の後であれば、Cは抵当権者であるBにその賃借権を主張して対抗することはできない。
建物の引渡し 抵当権設定登記
―●――――――――――●――
この場合、Cは,賃借権を主張できるのであるから、「Cは,短期賃貸借期間の限度で賃借権があると主張することができる」とする2は間違い。
<参考>
<抵当不動産の短期賃貸借制度の廃止についての経過措置>
平成16年の改正施行(平成16年3月31日)前は、抵当権設定登記後に締結された賃貸借でも、抵当不動産の短期賃貸借〔通常の土地の賃貸借では5年、建物では3年〕で対抗要件〔賃借権の登記、または,建物では引渡し、土地では借地上の建物の登記〕を備えたものについては、抵当権者に対抗することができた(抵当不動産の短期賃貸借)。
この規定は民法の改正によって廃止されたが、これには経過措置があり、平成16年4月1日の時点で対抗要件を備えている抵当不動産の短期賃貸借については、改正前の規定が適用され、原則として抵当権者にその賃借権を対抗することができる。
短期賃貸借に関する経過措置
「この法律の施行の際現に存する抵当不動産の賃貸借(この法律の施行後に更新されたものを含む。)のうち民法602条に定める期間を超えないものであって当該抵当不動産の抵当権の登記後に対抗要件を備えたものに対する抵当権の効力については、なお従前の例による」(「担保物権及び民事執行法の改善のための民法等の一部を改正する法律」附則第5条)
しかし、2では、賃貸借契約が締結されたのが平成20年4月1日なので、この経過措置は適用されない。
3 【正解:×】
◆抵当権の順位の変更、抵当権の順位の譲渡-後順位の抵当権者が、先順位の抵当権者に優先して弁済を受けられる場合がある。
担保価値が1,500万円で、第1順位の抵当権者Bの被担保債権が2,000万円、第2順位の抵当権者Eの被担保債権が1,000万円の場合、このままでは、後順位の抵当権者Eは先順位の抵当権者Bに優先して弁済を受けることはできない。
しかし、「抵当権の順位の譲渡」(民法376条1項)や「抵当権の順位の変更」(民法374条1項)をすれば、以下のように,Eは債権全額の回収をすることができる。
(1)抵当権の順位の譲渡が行われ、1,500万円で売却された場合
BがEに対して抵当権の順位を譲渡すると、Bに本来優先弁済されるはずの枠がまずEに割り当てられるため、Eが1,000万円の配当を受けて、その後にBが500万円の配当を受けることになる(Bの債権の残りの1,500万円は無担保の債権となる)。
(2)抵当権の順位の変更が行われ、1,500万円で売却された場合
BE間で抵当権の順位が変更されると、Eが第1順位,Bが第2順位となる。この結果、Eは1,000万円の配当を受け、Bは500万円の配当を受けることになる(Bの債権の残りの1,500万円は無担保の債権となる)。⇔抵当権の順位の変更では、Eは本来の先順位抵当権者Bの被担保債権額の枠に縛られない。
したがって、3は「EがBに優先して甲建物から債権全額の回収を図る方法はない。」としているため、間違い。
▼抵当権の順位の放棄では、BE間では両者は同順位となり、それぞれの債権額に応じて比例配分されるため、Bは債権2,000万円、Eは債権1,000万円であることから、Bは売却金額1,500万円の2/3の1,000万円(Bの債権の残りの1,000万円は無担保の債権となる)、Eは売却金額1,500万円の1/3の500万円(Eの債権の残りの500万円は無担保の債権となる)とそれぞれ配当を受けることになる。つまり、抵当権の順位の放棄では、Eは債権全額を回収することはできない。
4 【正解:○】
◆建物の賃借権は引渡しを受けていれば、新所有者に対抗できる。
建物を売却
A(旧所有者) ――――――――→ F (新所有者)
↑ 賃貸借
↓ ↘
B(賃借人) 引渡しを受けている →→ 新所有者に賃借権を対抗できる
建物の賃借人は、建物の引渡しを受けていれば、建物の新所有者に対して、建物の賃借権を主張することができる(借地借家法31条1項、借家権の対抗要件)。
★ 民法では、登記された賃借権に対抗力を認めている(民法605条)。だが、賃借権を登記できない場合もあるので(賃借権の登記は任意なので、賃貸人が協力しないことがある。また、アパートのように一室ごとに登記できないものもある。)、借地借家法では、賃借権が登記されていなくても、建物の賃貸借では引渡し、土地の賃貸借(借地借家法10条)では借地上の建物の登記〔建物の表示登記、建物の所有権保存登記・所有権移転登記〕があれば新所有者に対して賃借権の対抗力があるとした。
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八王子市の木造2階建てのアパートの1階に住むAさんは、平成11年5月に入居した。1DK(24・16㎡)で家賃は月額3万5000円、共益費3000円を支払っている。ここは八王子駅から少し離れているが近くに都立小宮公園もあって環境が良く、家賃も比較的安いのが魅力だった。
今年の3月初めに不動産業者から、契約更新の条件として更新料(家賃の1か月分)を請求された。また、送付された契約書も従前には書いてなかった「更新の際乙は甲に更新料として新賃料の1か月分支払う」特約や明渡しの際の原状回復特約など様々な条件がついていた。
Aさんは、入居時の条件と違うので是正を求めたところ、不動産業者は突然怒り出し「おまえなんか出て行け!」、「おまえは日本人か!」「更新したければ頭を下げてこい!」などと、激しい剣幕で食ってかかってきた。Aさんは恐怖を感じ、紹介を受け組合に相談に行った。組合から早速、不動産業者に従前と同じ条件で更新することと、更新料は支払わない旨の通知を出した。
しかし、業者が組合との話し合いも拒否したためAさんは東京都・都市整備局住宅政策推進部不動産業課(tel 03-5320-4958)に行って実情を話し「こんな悪質な業者が野放しにされることは絶対に許されない」との申請書を提出した。都市整備局不動産業課では直ちに業者を呼び出し厳重に注意した。その結果、不動産業課の担当者から「業者は深く恥じて反省している」との連絡が入った。
東京借地借家人新聞より
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八王子市に居住するAさんをはじめとする借地人8世帯は、昨年、地主代理の不動産業者から「土地賃貸借契約の期限についてのご通知」という文書を送付された。
通知は、契約期間が4月30日で満了することから「引続き契約を希望される方は、更新の契約を交わしたいと思います。更新の契約を交わすに当りまして……契約更新料がございます」として金額を提示してきた。更新料は坪数で違い、高い人で480万円、低い人で60万円。おおよそ坪5万円の計算。
借地人は、全員で借地更新料の請求を拒否したが、地主はその後代理人の不動産屋を通じ4月23日付で契約解除を通告し、5月分以降の地代の受領も拒否してきた。
借地人一同は連名で借地契約の法定更新を主張し、地代は東京法務局八王子支局に供託した。
7月に入り地主は弁護士を代理人に立て「更新料を支払うことは当事者間の合意となっている。更新料を支払わないと契約違反になる。更新料の支払いを拒絶した場合は法的手段をとる」と内容証明郵便で一斉に通告してきた。借地人一同は「次の更新時に更新料を支払う約束はしていない」と反論した。
9月に裁判所からAさんのところに更新料410万円を支払うよう請求する調停申立書がられてきた。他の借地人にも同様の申立書が一斉に来た。申立書では、前回の更新時に更新料を支払ったから今回も支払う約定になっているという無茶苦茶な理屈で更新料を請求している。
更新料を支払う意思はないので調停を不調にするよう9月下旬八王子簡易裁判所に上申書を提出した。
上申書には、更新料請求を拒否した経過と、地主の代理人から契約解除の通告を受け、地主には正当事由がないため昨年5月1日をもって法定更新していることを主張した。また、更新料については最高裁昭和51年10月1日判決、同53年1月24日判決で、借地人には更新料支払い義務のないことは確定していることを主張した。
地主の代理人から「前回更新時の契約書で次回の更新の際に更新料を支払う。金額は契約更新の時期に至った時当事者双方で協議して定める旨の約定がある」との全く嘘の主張に対しては、契約書の中にもそのような合意は一切ないことを明確に反論した。
八王子簡易裁判所からは、昨年11月19日付で地主側が8名の借地人全員の調停申立てを全て取り下げたとの事由で「調停終了通知」が各借地人に送られてきた。
その後現在まで、地主の側からは何らの動きもなく、地主の不動産業者や弁護士まで使った執拗な更新料請求はひとまず陰をひそめた。
最初は地主の代理人から、契約解除の内容証明郵便を送りつけられたり、「更新料を支払わないと孫子の代で借地権はなくなる」と脅かされたり、裁判所に調停を申し立てられたりと、この1年、借地人一同「ハラハラドキドキ」だったが、組合の指示に従ってしっかりと結束したことが、今回の結果に結びついた。
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(問) 毎月8万円の家賃を支払って社宅に住んでいたが、人員整理を理由に会社を解雇された。会社は即刻社宅から退去せよというが、直ぐ立退かなければならないのか。
(答) 社宅とは、会社が社員に貸す住宅ですが、その使用関係は様々で、その法的な取扱いは、貸す目的の違いや使用料の有無・金額によって違ってくる。
1 会社の業務運営のための社宅で、会社組織の必要な構成部分になっているもの
例えば、①住み込みの管理人や警備員用の部屋のように会社施設に付随している社宅(業務社宅)や②支店長・工場長・部長などの地位に相応して与えられる専用の社宅(いわゆる役付社宅)などの場合がこれに当たる。
このような社宅の使用は、使用料の有無・額に関係なく、会社での職種や地位など労働関係と密接に結びついているため、借地借家法の適用を受ける賃貸借ではないと言われている。従って、社員が解雇・退職・転勤などによってその会社や職場の労働関係から離れる場合には、社宅を使用する権利も同時に無くなることになる。
しかし、その場合、解雇・退職と同時に明渡すのではなく、下記の2・(1)で述べる最高裁判決に準ずる明渡し猶予期間が与えられるべきである。
2 会社が社員(従業員)の福利厚生のために設けた社宅
このような社宅が一般的な社宅であり、借地借家法との関係が問題になるのは福利厚生施設としての社宅である。
学説は無料の社宅は勿論、市場家賃の数分の一程度の低い名目的な使用料で提供されている住宅にも、「有償性」を認め、社宅の使用を社員の労働力に対する労働対価(一種の現物給与)と理解し、社宅の使用関係を賃貸借関係として、借地借家法の適用を肯定している。
しかし、判例は社宅の使用料が賃料として社会的に認められるかどうかを判断基準(使用料の高低)として、借地借家法の適用の有無を判断している。
(1)使用料が無料か、有料であったとしても低額で名目的な場合
例えば、使用料を毎月2万円出しているが、その社宅と同程度の利用価値のある普通の借家の家賃水準が月10万円以上もするような場合は、その使用料は借家を使う対価として支払われる家賃とは考えられず、その使用関係は、社員である期間に限って社宅の使用を認められる特殊な契約関係で賃貸借関係ではないというのが判例( 最高裁判所 昭和29年11月16日判決(民集8巻11号2047頁)、同旨最高裁判所 昭和39年3月10日判決(判例時報369号21頁)、同旨最高裁判所 昭和44年4月15日判決(判例時報558号55頁))である。
従って、借地借家法の適用はなく、会社に社宅使用規則があれば、それが著しく居住者に不利でない限り使用規則は有効ということになる。
しかし、最高裁の判例では、明渡期間しについて、国家公務員宿舎法と同様に無料の場合は60日、有料の場合は6か月の明渡しの猶予期間を基準とすべきであるとしている。明渡期間については、この猶予期間が基準になる。
(2)使用料が普通の借家の家賃水準と同等かそれに近い場合
この場合の使用料は借家を使う対価として支払われる家賃であり、その使用関係は賃貸借関係で借地借家法の適用があるというのが判例(最高裁判所 昭和31年11月16日判決、民集10巻11号1453頁)である。
このような場合に「退職と同時に明渡す」というような社宅使用規則があっても、借地借家法の規定に違反して無効である。即ち、 会社は借地借家法に従って、6か月以上前に明渡を申し入れなければならず(同法27条)、また、会社に明渡を求める正当な理由がなければ明渡しは認められない(同法28条)。
居住者が社宅からの退去を拒否した場合は、その判断を裁判所に委ねることになり、明渡しという裁判の結論が出るまでは退去を強制できない。
ただ、社員の福利厚生のため社宅という性格上、解雇・退職の場合、会社に明渡を求める正当な理由が認められ易いことは否定できない。
なお、これまで述べてきたのは、解雇が有効である場合の話しである。解雇が様々な理由から無効である場合は明渡す理由はなく、解雇の無効を争っている間は、社宅を明渡す必要はない。
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