東京・台東借地借家人組合1

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【Q&A】 契約期間満了後に定期借家契約の終了通知が届いた場合はどうなるのか

2008年07月30日 | 定期借家・定期借地契約

(問) 平成16年8月1日から契約期間2年の定期借家契約を締結し、マンションに入居した。2年後、貸主は再契約に関しては何も言わず、その後も毎月家賃を受領し続けたので、そのまま居住していた。
 期間満了後約1年5か月経過した平成19年12月になって定期建物賃貸借終了通知が送られて来た。内容は「平成20年6月30日で契約は終了しますので、期日までに建物の明渡しを完了して下さい」というものだ。貸主の要求に従わなければならないのか。


(答) 借地借家法38条4項は、1年以上の期間を定めた定期借家契約を期間満了により終了させるためには「建物の賃貸人は、期間の満了の1年前から6月前までの間(通知期間)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から6月を経過した後は、この限りでない」と規定している。

 尚、契約期間が1年未満の場合、終了通知は免除されている。

 法文上は「通知期間の経過後」とだけ定められ、通知期間の制限を定めていない。貸主は、通知期間を経過した場合の終了通知は期間満了後であっても、6か月の猶予期間を経過すれば、何年後であろうと貸主の好き勝手な日に契約を終了出来ると理解しているようである。

 しかし、終了通知は期間満了前にしなければならない。何故ならば、38条4項本文には終了通知は「期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知」となっており、「但書」の「その旨の通知」が「期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知」を指すのは明らかである。従って、期間満了前までに終了通知をすることは、法の趣旨からも当然である。

 定期借家契約は「更新」が無く、期間が満了すると確定的に契約が終了するものであり、従前の賃貸借が継続することは有り得ない。従前の賃貸借が更新(継続)するというのであれば、「期間の定めのない」定期借家契約ということになり、自己矛盾であり、更新が無いという定期借家契約の趣旨に反するものである。

 定期借家契約が成立するためには、借地借家法38条1~3項の法律要件を満たさなければならない。
 ①定期借家の再契約は「確定期間の定めのある契約」で、且つ、「更新しない契約」であることを貸主は、あらかじめ契約書とは別の書面を交付して説明しなければならない)(借地借家法38条2項)。 

 ②貸主がこれらの規定による上記①の説明をしなかった場合は、定期借家契約は無効になり、普通借家契約という扱いになる(同38条3項)。

 ③定期借家契約は、必ず公正証書等の書面による契約が必要である(借地借家法38条1項)。

 以上①~③の手続が踏まれていない場合は定期借家契約は成立しない。

 期間満了時に借地借家法38条1~3項の規定による再契約の手続きをしないで、貸主が契約期間満了後も借家人から家賃を受領し続けている場合は、定期借家契約自体は終了し、期間満了後の賃貸借契約は新たに民法619条1項の規定により期間の定めのない「普通借家契約」が成立する。

 そもそも、定期借家契約の成立要件は、①書面による契約で、②特約で契約の更新がなく、③契約期間が確定しており、期間満了により確定的に契約が終了することである。契約満了後も定期借家契約が継続し、家主がいつでも好き勝手な日に終了通知をすれば、6か月後に確定的に契約が終了すると考えることに無理がある。

 尚、契約期間満了後になされた「終了通知」は、解約申入れとみなされる。しかし、期間の定めのない賃貸借契約の場合は解約の申入れに際しては正当事由が必要とされている(借地借家法28条)。貸主が借家契約を解除するには正当事由を立証する必要であり、最終的には裁判所の判断に委ねられる。


) 平成12年2月1日 建設省建設経済局長・建設省住宅局長名で都道府県知事宛てに「定期賃貸住宅標準契約書に関する通達」が出されている。以下が借地借家法第38条2~3項関係の事項。

 「定期賃貸住宅契約を締結しようとするときは、あらかじめ賃貸人は賃借人に対し、契約の更新がなく、期間満了により終了することについて、その旨を記載した書面を契約書とは別に交付して説明しなければならないこととされており、それを怠った場合は、定期賃貸住宅契約とはならず、従来型の正当事由がない限り賃貸人からの更新拒絶ができない賃貸住宅契約となること。このため、書面の雛形である「定期賃貸住宅についての説明」の周知を図ること。」(「定期賃貸住宅標準契約書に関する通達」建設省経動発第10号、建設省住民発第1号)

 <追加>
 定期建物賃貸借(定期借家契約)が成立するには、「借地借家法38条2項において賃貸借契約の締結に先立ち契約書とは別に説明書面が交付」されていなければならないとしている(最高裁平成22年7月16日判決)。

「法38条2項所定の書面は、賃借人が、当該契約に係る賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず、契約書とは別個独立の書面であることを要するというべきである。」(最高裁平成24年9月13日判決

 参考法令
 「借地借家法」第38条
 (定期建物賃貸借)

第38条  期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第30条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第29条第1項の規定を適用しない。

2  前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。

3  建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。

4  第1項の規定による建物の賃貸借において、期間が1年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の1年前から6月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から6月を経過した後は、この限りでない。


民法
(賃貸借の更新の推定等)
第619条  賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第617条の規定により解約の申入れをすることができる。

(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第617条  当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
一  土地の賃貸借 1年
二  建物の賃貸借 3箇月
三  動産及び貸席の賃貸借 1日
2  収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。 


参考 「Q&A 定期借家契約」」(東京借地借家人組合連合会編)より

Q1 定期借家契約とは
Q2 定期借家契約を結ぶ手続き
Q3 既存の居住用借家契約から定期借家契約への切り替え
Q4 既存の店舗借家契約から定期借家契約への切り替え
Q6 定期借家契約の相続・譲渡・転貸借
Q7 定期借家契約期間途中の解約
Q8 借家人は定期借家契約の途中で家賃の減額を請求できるか
Q9 定期借家契約の期間が満了で必ず建物を明渡さなければならないのか
Q10 同じ建物で定期借家契約が繰り返された場合は
Q11 新しく借家契約をするときの注意点

 

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