(前回からの続き)
本稿冒頭で、日銀の金融政策「異次元緩和」の本当の目的は「アメリカ支援」―――それによって超低金利環境を演出してリスク資産の価格上昇をサポートするとともにジャパンマネーにドル・米国債買いを促そうというもの―――だと書きました。しかし・・・前者こそその目論見のとおり(?)となりましたが、後者についてはけっしてそうはなっていません。そのあたりの様子は前述の「キャッシュリッチ」ぶりなどで確認ができるところです。それどころか、日本人投資家の多くは本来なら(≒異次元緩和がなかったら)ドル資産に振り向けていたマネーすらも円のキャッシュに換えて、ひたすらじっとしているようだ・・・
・・・このへん、日銀の誤算という捉え方があるかもしれません・・・が個人的には、これこそ日銀が予想したとおりの展開なのではないか、と推察しています。つまり・・・「異次元緩和」には本当に本当の目的があった、それは「アメリカ支援」?―――同国の資産バブルを行き着くところまで膨張させる、というものではなかったか・・・
こう解釈すると、本稿第一回目で書いた2014年10月末の米QE3終了と同時期に発動された「追加緩和」の真の意図が分かってきます(?)。すなわち・・・われわれ日銀がFRBに代わってマネーを出し続ける!ここで米バブルを打ち止めにさせてなるものか!というものだったということになります。
では、どうして日銀はこれをそこまでデカくしたかったのか? アメリカにはそれしか―――バブルに依存するしかなかったから異次元緩和でサポートしようとした・・・とつい想像しがち(?)ですが、じつはそうではなく、アメリカのバブルを目一杯膨らませることでそのバーストのスケールのほうを死ぬほど巨大化させたい―――このあたりが、金融引き締めに向かう米FRBに逆行する形で超低金利マネーを吐き出し続ける日銀の真意なのではないか・・・???
わたしたち日本人は資産バブルの恐ろしさと後に続く資産デフレ、その解消のプロセスがたいへん長く険しいことを身をもって知っています。だから2007年のサブプライムローン・バブル崩壊、2008年のリーマン・ショックに立て続けに見舞われたアメリカには、自らの苦い経験に基づき、当時の局面でバブルの抜本的な清算に速やかに着手するよう、強く勧めるべきでした。厳しい道だけれど、ここで腹をくくって不良債権の処理や公的資金注入による銀行救済等を不退転の決意でスタートさせなければ、さらにバブルが拡大して手の施しようがなくなるぞ!と忠告するべきでした。それが同盟国の友邦を思いやる誠実な対応であったはず・・・
でも・・・上記のように日銀がやったのはこれとは真逆です。これ、「麻薬」(≒QE:量的緩和策)をやめようとしている友人(アメリカ)に「うっしっし~、これで楽になっちゃえば~」と悪魔の?ささやきで、さらに麻薬(≒緩和マネー)を差し出すに等しい行為です。その友人が再びヤク中に陥って、最後は・・・となることを知っていながら・・・