やっと気が付かれましたか。でもちょっと・・・いや、遅きに過ぎましたね・・・
アメリカには「株と債券の2つのバブルがある」(There are two bubbles: We have a stock market bubble, and we have a bond market bubble)―――先月、アラン・グリーンスパン前FRB議長がブルームバーグTVのインタビューでこのように答えました。ようやくアメリカ・・・のなかでもマーケットに一定の影響力を持つ人物がこのことを口にしたか、という思いがします。ただし「根拠なき熱狂(irrational exuberance)」「謎(conundrum)」「あぶく(froth)」といった数々の有名なワードを発してきた方にしては「2つのバブル」ではインパクトが弱い印象です(?)。ここはズバリ「双子のバブル」と言ってほしかった・・・って余計なお世話ですが・・・
そう、株と債券のバブルとは、本ブログでシツコク指摘している「双子のバブル」(twin bubbles:私的造語)のことになります。ただしこちらで言及したのはもう3年4か月も前(2014年10月)のこと。つまり当時・・・ってちょうどFRBがQE(量的緩和策)を停止する直前(これを引き継ぐように日銀が追加緩和を発動する直前)からすでに同バブルが誕生していたわけで、それから現在までにどれだけすくすくと(ぶくぶくと?)「成長」したかを想像するとオソロシ~限りです・・・
さてこの米「双子のバブル」、あらためてその異様さを端的に表現すると「本来なら並存はありえないはずの株バブルと債券バブルの双方が現出している(しかもともにとてつもないスケールで)」といった感じになります。このあたりを以下、イメージで示してみましょう。
経済・金融情勢が平常モードのとき、株と債券の価格はこのようになると考えられます。すなわち両者ともに「適正価格帯」に収まる範囲内で上下する、といった感じです。実際のところ、それぞれの適正価格がいくらなのかを正確に測るのは困難ですが、当該市場(株式市場・債券市場)が当局の過度な介入等なく自律的に機能していれば、そのときの価格はおおむね妥当な水準にあるとみるべきなのでしょう。これが本当の意味で「適温相場」(ゴルディロックス:Goldilocks)だと思います。
次は、景気が熱を帯びたときの様子です。この際は企業利益の上振れ期待が高まって高PER(株価収益率)株が続出するなど、株価のほうはしばしば適正価格帯の上限前後にまで上がったりします。いっぽうで経済がインフレ気味になって金利は上がり、逆に債券価格のほうは下がる傾向になります。
そしてこちらは景気が悪くなったときのイメージです。この場合はPBR(株価純資産倍率)が「1」を下回る銘柄が増えるなど、株価は適正価格帯の下層付近を推移します。これに対して債券市場には株式市場からの逃避マネーが流入し、債券価格は押し上げられて金利は低くなっていきます。
このように一般的な景気循環のもとでは株価と債券価格はおおむね逆相関(株↑債券↓、株↓債券↑)になると思われます。上記枠内であれば、多少の好不況の波はあっても、マネーが両市場間を行き来するなかで市場の自動調整機能が働くし、中央銀行の「伝統的金融政策」つまり公定歩合の上げ下げとか公開市場オペ(短期債売買等)などのコントロールが及ぶため、大きな経済・金融危機は起こらないことになります。