(前回からの続き)
英国のボリス・ジョンソン新首相、そしてこれを支える政権与党の保守党は、個人的には、自国の通貨ポンドの実力を(超?)過大評価していると感じています。この、勘違いに等しいほどのポンドへの過信こそ、各位をEU(欧州連合)との合意無き「Brexit」(英国のEU離脱)に向かわせている原動力なのでしょう、きっと。たとえ協定がなくてもEUを含む世界各国はポンドを受け取ってくれるから大丈夫、なんて楽観しているのではないでしょうか・・・
・・・って、甘い甘い!先述したことからBrexitでポンドの暴落は不可避です。であれば、「何もない」国・英国は今後、自動車やら野菜やらの海外からの調達に難渋する、ようするに英国民はポンド安インフレに苦しめられるのは目に見えています。ポンドはドルと違って「基軸通貨」でもないし、先述のとおり「英国製品交換券」としてみても、肝心の英国のモノに魅力が乏しいため、他国にとっての準備通貨にはなり得ません(?)。そのうえBrexitで目の前のEU諸国との交易にさまざまな制約が生じるのだから、ポンドの価値は、ひいき目に見ても、いまよりもさらに低下するしかないと考えるのが合理的でしょう(?)。
もうひとつ、ジョンソン首相&保守党は過信しているよな~と個人的に感じさせられる点は、「連合王国」の一体感です。つまり、Brexitしても英国を構成する4か国(イングランド、スコットランド、北アイルランド、ウェールズ)の統一は維持される、という楽観的な(?)見通しのことです。
・・・って、甘い甘い!これ、Brexitで4か国間のまとまりは弱まる(最悪、分裂---このうちどこかが独立する?)ことはあっても強まることはまずないと予想するべきでしょう。まずはBrexit最大の問題である北アイルランド(英国)とアイルランド(EU)との通関手続き等をどうするか?ですが、ジョンソン政権はメイ前政権がEUと合意した「バックストップ」を容認しない方向です。まあこれですとアイリッシュ海(北アイルランドとグレートブリテン島とのあいだ)に貿易上の線は引かれないので、その点は英国の一体感が保たれるから保守党的には好ましいのでしょうが、いっぽうで互いに陸続きの北アイルランドとアイルランドとの間に物理的な通関ポイント等が設置され、これが両者間の国境を強く意識させることになり、かつてのプロテスタント系とカトリック系の対立を再燃させるリスクが顕在化しそうです(?)。
このあたりスコットランドの動きも要注目です。こちらの記事等に書いたように、以前からスコットランドは英国(より正確にはイングランド)からの分離独立志向が強いわけです。当時の住民投票では、結果としてスコットランド住民は英国残留を選びましたが、その最大の理由はポンドにあったと考えています。ですが、上述のように、その頼みのポンドがハード・ブレグジットで将来の弱体化は必至。となればスコットランドは、Brexit後も英国つまり「ポンド」とともにあるべきか、違った選択すなわちイングランド(?)を見限ってEUに合流して「ユーロ」圏に加わる道を模索するか、あらためて考えたくなるでしょう。そして・・・英国がEUを離脱すれば、スコットランドのEU加入のハードルは微妙に変化するはずです(?)。そのへんもスコットランド住民を突き動かす要因になるような気がします。