(前回からの続き)
本稿前段でもご紹介した上記、日米中独のドル建てGDPと同成長率の推移(出典:IMF)をあらためて眺めて気づかされるのは、GDPトップ2の中国およびアメリカの順調な経済成長ぶりです。というよりは、個人的にはこの両者はあまりに順調過ぎる、という感覚を持っています。
よく言われるように、中国のGDPは信用できたものではないでしょう。たしかに近年、同国が急激な経済成長を成し遂げたのは事実ですが、年7%前後の成長率達成がノルマみたいになっているせいか、GDPを実態よりも高く見せるためのつじつま合わせが地方等で横行しているもようです。これでは正確なGDP計算なんてできるわけがありません。実際、中国共産党のトップ層ですら自国のGDP値を信頼しておらず、代わりに電力消費量や鉄道輸送量の増減等で自国の経済力を推し量っているそうな・・・
そして、ある意味で中国以上にスゴイのがアメリカのGDP。ご覧のように同国のGDPは1990年以降、2009年(リーマン・ショックの翌年)を除き、一貫してプラス成長を続け、2014年のGDPは1990年の2.9倍以上にまで拡大しました。これに対して日本は1.5倍弱(2012年は1.9倍だった・・・)、ドイツは約2.4倍です。日米GDPの比較ですが、1990年はアメリカは日本の1.9倍だったものが2014年には3.8倍にも拡がってしまいました・・・。
そんな、一見すると順調なアメリカの経済成長ぶりですが、同時期に日本がたどった経緯―――バブル膨張と崩壊&デフレと金融危機―――に照らすと、何とも不気味なものを感じさせられます。つまり、この米GDPの異様なほどの拡大は、バブルによるものなのではないか、ということです。
このあたりは本ブログのあちこちで綴っているので詳細は省きますが、わが国が・・・1990年前後にピークを打った不動産バブルとその崩壊、激しい資産デフレがもたらす不良債権処理のもたつきと金融危機の発生、最終的には金融システムへの巨額公的資金投入、そしてようやく同資金の回収を終えてバブルの清算を終了・・・といった「失われた20年(lost 2 decades)」を過ごしてきたいっぽうで、アメリカはこの間、日本と同じくバブルを作ってきたのに、その抜本的な処理を先送りしてきた、ということ。その代わりにやったのは「資産バブルよ、もう一度」つまり具体的には、ITバブル→サブプライムローン・バブル→QEバブル(株、債券、不動産、商品、and more! ありとあらゆる米国内外の資産バブル)というバブルの繰り返しで、資産デフレ発生を絶対に阻止するという策です。
米GDPの一本調子な右肩上がりは、このバブルの支えがあったからこそ描かれたものといえそうです。つまり同GDP・・・の7割を占める米個人消費は資産効果すなわちバブルで不自然に押し上げられた株価や不動産価格の値上がりや含み益を当てにした消費であり、その元手は多くの場合(とくにQE開始以降は)借金だということです・・・