この先、わが国は天然ガスで何とかしのぎ、その間に蓄電池や再生可能エネルギーの開発普及を図って・・・といったビジョンを実現させたいものですね・・・
先月中旬の日本経済新聞やトムソンロイターの記事によると、火力発電の燃料として使う液化天然ガス(LNG)のスポット(随時契約)価格が現在、100万BTU(英国熱量単位)当たり5ドル台前半と2016年夏季以来の安値圏にあるとのこと。例年、LNGは冬に需要が増えるところ、今年は日本を含む北東アジアの気温が高めだったため、暖房需要が伸び悩んで同価格は軟調に推移し、需要が落ちる春を迎えたところで一段安になったもようです。
こうした季節的要因に加え、LNGスポット価格の下落には、世界各地の天然ガス新規プロジェクトが次々に稼働したことにともなう供給の増加が寄与しているとのことです。英調査会社ウッドマッケンジーは2018年のLNG供給量が全世界で3億2620万トンと前年比で9%増え、同7%増の3億1310万トンとなった需要の伸びを上回ったとみています。そしてこの傾向、この先もけっこう続くようです。石油天然ガス・金属鉱物資源機構等のデータ等によれば、アメリカでシェールガス開発が引き続いているほか、今後も同国のキャメロン(2019年稼働予定、1350万トン)をはじめオーストラリアやインドネシアなどの各国においてさらにあらたなプロジェクトが生産を始める予定です。その液化能力は同開始2019年以降分の主なものだけでも4760万トン/年に達するとのこと。そんなこんなでLNGの供給は2030年ころまでは需要増に対応が可能と見積もられています。
他方、LNGの需要のほうですが、まあたしかにアジア、とくに中国では環境にやさしい天然ガスへの石炭からのシフトが続くために同国のLNGニーズが高まることも予想されます・・・が、いっぽうで同国では老朽火力発電所のLNG転換がある程度進んだとの見方もあり、その需要が同国においてさらに速いペースで増える感じではないようです。それに中国は、天然ガスを陸続きの隣国からパイプラインで直接持ってくることもできるから、LNGにこだわり過ぎることはないでしょう。そしてわが国ですが、2011年の東日本大震災にともなう原発の停止等によってその代替火力発電燃料としてのLNGの輸入量は増えたものの、2014年の過去最大値(約8900万トン)を境に微減の傾向にあり、2017年は約8400万トンとなっています。今後は再生可能エネルギーの普及や省エネのさらなる進展等により、その需要は2030年に約6200万トンにまで減少するとのこと。
以上を総合すると、LNGは世界的に見て、今後10年以上にわたって供給が増えそうな見通しが立つなか、需要のほうは供給ほどには盛り上がらず、したがってこの先、よほど大きな戦争等でもない限り、安定的に供給され、価格の方も落ち着いた動きを見せる、というより今後は少しずつ下がっていく(保守的に見ても大きく上昇する事態は想定しにくい)とも考えられます。
このようなLNGを巡る環境は、「エネルギー」がアキレス腱の日本にとって、非常にありがたいことといえるでしょう。この国家的弱点を相当程度、克服するまでの準備期間となるであろう今後10年あまりの間を、わが国は比較的安価で調達が難しくはないLNGでしのぐことができそうだからです。