先月22日の日経新聞によれば、日本政府は今年3月末までに90年代以降に銀行に投入した公的資金を回収したとのことです。
この記事によると、バブル期の過剰な不動産融資で膨大な不良債権を抱えて経営危機に陥っていた銀行を救済するため、98年から2003年にかけて政府は公的資金による銀行への資本注入を行いました。その額は約12.4兆円にも及びます。
これに対し、これまでに政府が回収した資金は、注入時の元本のほか、その際に引き受けた銀行株式をその後に売却して得た売却益約1.5兆円を合わせておよそ12.5兆円と、すでに注入額を1千億円ほど上回ったとのこと(このあたり、「アベノミクス」の株価押し上げ効果もプラスに作用したのだろうと推測しています)。まだ回収されていない投入資金が約1.4兆円ありますが、それが返済されればすべて国の利益になることになります。
同記事が述べているように、これをもって不動産バブル崩壊に始まって90年代後半に世界を揺るがせたわが国の金融危機はひとまず収束を迎えたといえるでしょう(多少おおげな表現ですが・・・)。
たしかに元本回収だけで15年もの長い歳月を要してしまいました・・・。そして金融システム全体への公的資金投入を最終的に政治決断するまでの紆余曲折のなか、いわば時間切れで山一證券や日本長期信用銀行、日本債券信用銀行などの大手金融機関が次々に破綻してしまうなど、かなりの混乱はありました(このあたりの日本の対応の遅さを指摘する声もありますが、金融システムに巣食う巨額の不良債権処理の前例が世界になかったことから、当時のわが国の金融当局や国会等の対応がもたついたのはやむを得ない面があったと考えています)。
それでも、上記の投入公的資金をすべて回収できたこと、追加の国民負担を回避できたこと、そして何といっても不動産バブルの後始末(=不良債権処理)を完了させて銀行の財務と日本の金融システムの健全化を図ることができたことは高く評価できると思っています。
そして足元の内外の経済情勢を見渡したとき、わが国が金融危機の終結を「いま」迎えたことは、日本の金融界にとって意義深いことだとあらためて感じます。というのは、「身ぎれい」になったわが国の金融機関とは対照的に、諸外国では金融機関の多くが「いま」から本当の経営危機、つまり保有資産の価値低下にともなう過小資本や債務超過状態に陥るだろうと予想しているからです。
(続く)
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