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なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

膵性糖尿病

2020年01月11日 | Weblog

 1月1日に強直性けいれんが発症して救急搬入された42歳男性。入院後はイーケプラ1000mg分2内服で、けいれんはなかった。

 問題は糖尿病で、15歳ごろから膵炎で消化器科クリニックに通院していたという既往がある。入院した覚えはないそうで、ひどい膵炎ではなかったのだろうか。

 腹部CTで膵臓の主膵管に沿って石灰化(膵石)を認めて、膵臓自体は著明に萎縮していた。糖尿病の家族歴はない。何らか特殊な慢性膵炎で、それによる膵性糖尿病だった。

 通院している内科医院の処方は、ライゾデク20単位を朝夕に2回皮下注で、それにメトホルミン1500mg/日分2、カナグル1錠分1だった。診ているのは糖尿病専門医で、地域の糖尿病治療の中心になっている先生だ。

 HbA1c13%だが、とりあえず同じ治療で経過をみて調整することにした。しかし病院の食事だと空腹時血糖が58~71mg/dlと低血糖になってしまう。朝のライゾデクを1回パスする日が続き、ライゾデクを夕のみという変な打ち方になってしまう(夕食後の血糖が一番高い時はありうるやり方だが)。それにしても、患者さんはふだん相当食べていたのだろう。

 夕のライゾデク(トレシーバ14単位分)だけでも空腹時血糖が低く、トレシーバに変更して10単位にしたが、まだ空腹時血糖が低く、8単位で90mg/dl台になった。

 持効型だけでは食後血糖の上昇を抑えられないので、超速効型を併用して強化インスリン療法にする予定だったが、昼食前・夕食前に血糖が120~140mg/dl程度なのでそのまま持効型だけになった。

 処方されていなかったDPP4阻害薬(トラゼンタ)を追加してみた。ただ患者さんから、通院しているクリニックであまり効果がないといわれた薬があるという話があった。DPP4阻害薬のこと?。

 患者さんは日曜日に退院したいと希望して、提出していた外注検査の結果が金曜日に返ってきた。Cペプチド0.14ng/mlと自己インスリンはほとんど枯渇している。抗GAD抗体は陰性だった。

 この自己インスリン量では1型糖尿病と同様のインスリン強化療法が必要なはずだが、今回は持効型だけで退院にした。1週間以内にかかりつかけの医院を受診するので、経緯を記載した診療情報提供書を出して、修正してもらうことにした。

 さらにこの自己インスリン量ではDPP4阻害薬はインスリン分泌の効果が期待できないかもしれない。また膵性糖尿病はグルカゴン分泌も低下して低血糖(特に夜間)に弱い病態なので、グルカゴンを抑制するDPP4阻害薬はまずいのかも。

 てんかんに関して専門医と相談したいと患者さんの妻が強く希望していたので、退院後は地域の基幹病院脳神経内科の外来を予約した。(膵性糖尿病に詳しい先生も同院の糖尿病外来に週1回きている。) 

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いわゆる肺胞出血ではない

2020年01月10日 | Weblog

 水曜日の夕方に内科クリニックから91歳女性と紹介したいという依頼が入った。時間外になる時だったので、地域医療連携室ではFAXされてきた診療情報提供書をもって、その日当直だった内科の若い先生に相談した。徐脈性心房細動で心臓ペースメーカー植え込み術後だった。以前の当院循環器科に心不全の増悪で入院したことがある。

 FAXされてきた診療情報提供書をみると、心不全の増悪と思われた。クリニックの先生は心不全の泡沫状の血痰ではなく、血液そのものの喀痰なので、心不全の悪化ではないのではと記載していた。両側肺にびまん性陰影とあったが、画像を見ないとわからない。

 内科の若い先生が循環器科医にも連絡したが、検査して一晩治療しておいてということだった(患者さんはまだ来ていない)。

 搬入後の胸部X線・CTを見ると、両側胸水と肺水腫のようだが、水腫の広がりがまだらになっているところが気になった。

 症状からは肺胞出血も考えたが、血液検査の結果、ワーファリン1mg/日内服でPT4%・PT-INR13.82と出た。以前から血清クレアチニンが3~4mg/dl台でその日は5.33mg/dlになっていた。ワーファリンの効き過ぎによる出血傾向というより、出血そのものだった。

 BNPはふだん100~200くらいだが、671に上昇していた。診断は心不全の増悪+ワーファリンの効き過ぎによる肺胞出血だった。

 ラシックス注・ハンプ点滴静注で利尿がついて、搬入時に酸素5L/分でも酸素飽和度が90%なかったのが改善した。ケイツー使用で翌木曜日はPT14・PT-INR4.50まで軽快はしていた。翌日からは循環器科の扱いとなった。

 木曜日に呼吸器外来に来ている先生(大学病院からバイト)に画像を見てもらったが、「画像だけで判断するのは難しいですが、これは心不全ですね。collagen-vascularの肺胞出血ではありません。」だった。

 当直で入院になったのはこの患者さんだけで、準夜帯で4名が受診して、幸い深夜帯での受診はなかった。若い先生は「この患者さんだけでいっぱいいっぱいでした」、と言っていた。お疲れ様でした。

 

 

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椎間関節炎

2020年01月09日 | Weblog

 昨日隣町の病院から86歳男性が41℃の高熱と腰痛で紹介された。内科新患担当の若い先生(内科専攻医)が診察した。

 前日には腰痛で整形外科医院を受診していた。その日は高熱で、ふだん通院(高血圧症・高脂血症・発作性心房細動)している町立病院を受診したという経緯だった。急性の経過になる。

 胸部X線・CTで肺炎像はなく、尿路感染症も否定的だった。白血球13500・CRP13.5mg/dlと炎症反応上昇がある。不明熱として尿培養・血液培養2セットは提出していた。どうしましょうか、と相談された。

 発熱・腰痛とくれば、化膿性脊椎炎だが、痛いのは背部正中ではなく右側だという。外来に行って診察することにした。診察室に入ってきた患者さんは86歳とは思えないくらい動きが素早かった。完全にADL自立で農作業をしているそうだ。

 右骨盤の直上に圧痛・叩打痛があった。脊椎炎(椎体炎・椎間板炎)ではないようだ。この前にもあった、あれのようだ。

 椎間関節炎疑いとして腰椎MRIを行うことにした。午後になって、画像を見ると、確かに椎間関節に炎症像があり、周囲軟部組織に広がっている。

 患者さんは元気なので、NSAID(セレコックス)で経過をみることにした。1週間後に予約を入れて、2~3日内服して軽快しない時は週末に受診してもらう。

 

 放射線科の読影レポートにも椎間関節炎とあった。以前同様の患者さんの時は軟部組織の炎症のみ指摘された。直接読影室に行って、「椎間関節の偽痛風を疑っていますがどうでしょうか」、といっしょに画像をみたので、椎間関節炎として診てくれるようになったようだ。

 

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肝膿瘍?

2020年01月08日 | Weblog

 1月4日に90歳男性が2~3日前からの悪寒で救急外来を受診した。循環器科の若い先生が日直だった。

 受診時の体温は37.2℃だった(入院後に39℃)。インフルエンザ迅速試験は陰性で、胸部X線・CTで明らかな肺炎像はなかった。白血球8400(ふだんは5000~6000)・CRP18.4と炎症反応の上昇がある。

 血清クレアチニンがもともと2mg/dl前後と上昇していて、その日は腎前性の要素が加わったか、2.69になっていた。

 尿検査で尿路感染らしさはなかったが、CTで腎臓の辺縁の毛羽立ちが若干あるのではということで、尿路感染症でよいかと記載していた。その日内科当番だった内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医)が担当になった。

 入院後は抗菌薬投与で解熱して経過は順調だった。外来で血液培養2セットと尿培養を提出していて、尿培養は陰性で、血液培養2セットからKlebsiella pneumoniaeが検出された。

 昨日のAST会議で血液培養陽性者として報告された。尿路感染症ではないようで、他の感染巣が疑われる。単純CTだが、肝右葉にエアがあり、その近傍に低程度域があるようだ。放射線科医にも診てもらったが、ありそうだという。担当医に腹部エコー検査を勧めた。

 腹部エコーではそこに明らかな低エコー腫瘤様病変を認めた。胆管系の拡張はなかったが、胆嚢壁の肥厚はある(胆石はなかった)。肝膿瘍が疑われる。

 尿路感染症としてセフトリアキソンで治療していた。セフトリアキソンだと胆泥形成の副作用がある点が引っかかる。また肝胆道系感染・腹腔内感染だと、培養での証明は難しいが、嫌気性菌カバーになる。緑膿菌カバーは不要と判断すればユナシン(スルバシリン、ABPC/SBT)で、必要と判断すればゾシン(PIPC/TAZ)になるか。

 血液培養2セットを提出していたのはよかった。感染巣がはっきりしない時は、特定の病名をつけないで、不明熱扱い(現時点で感染巣不明)でいいと思う。

 

 ふだんは糖尿病外来(大学病院糖尿病代謝科からバイト)に通院している。ライゾデク10単位に内服は、トラゼンタとグルベス(グルファスト+ベイスン)だった。90歳だからインスリンをしているだけでも大したものだが、実際は家族がしているのだろう。HbA1c9.5%と年齢を考慮しても高いが、どう変えるかというと難しい。

 入院後は血糖3検でヒューマリンR皮下注の補正をしていた。血糖高値時の300mg/dl以上で6単位・350mg/dl以上で8単位は少し多いかもしれない(実際次回血糖が80mg/dlになっている)。無難なのは、200mg/dl以上で2単位、250mg/dl以上で3単位、300mg/dl以上で4単位くらいか。

 

 

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高カロリー輸液で療養型病床へ

2020年01月07日 | Weblog

 昨日は経口摂取が難しくなった80歳女性にCVカテーテルを挿入した。年末年始から末梢静脈からの点滴が難しくなっていた。

 昨年10月末に一過性意識障害で当院内科に入院した(担当は別の先生)。頭部MRIでラクナ梗塞があり、もともと心房細動があったことから脳血栓塞栓症が起きたのだろう(ほかにも細かい血栓が飛んだはず)。

 意識が回復してからは、認知症による感情失禁がひどく(大声で泣きわめく)、在宅介護や施設入所にもできず、精神科病院に転院となった。(通常、精神科は認知症でも相当に暴力・暴言がひどくないと受けてくれないから、よほどひどいと思われたのだろう。)

 転院翌日に発熱と黒色吐物があり、地域の基幹病院に救急搬送された。消化器内科で胆嚢結石・胆嚢炎と診断された。内視鏡検査をした時には出血源は不明だった(出血性びらん程度だったのだろう)。

 胆嚢炎は軽快したものの、認知症・感情失禁で経口摂取はできず、末梢静脈からの点滴をした状態で当院に転院となった。

 家族と相談して、点滴継続で嚥下訓練をして、経口摂取が難しければ、経管栄養か高カロリー輸液になると説明した。胃瘻造設は希望しないということだった。

 点滴を1本か2本しながら、少し経口摂取できていたが、感情とともに摂取量にはムラがあった。一度誤嚥性肺炎になって、その後嚥下訓練を再開したが、経口摂取は難しくなった。年末年始に入ってからは、末梢静脈からの点滴のみで経過していたが、もう点滴自体も難しくなった。

 年末病院に来た時に、ちょうど来ていた夫に話をして、高カロリー輸液の同意書をもらっていた。昨日は、2名の看護師さんが患者さんの両手と首を抑えて、右内頚静脈からCVカテーテルを挿入したが、案外大人しくしてくれた。最近は感情失禁も小声でちょっと言うだけで、不穏というほどではなくなっている。

 経口摂取ができれば、精神科病院転院の予定だったが、こうなると転院依頼は療養型病床のある一般病院になる。

 

 経口摂取できなくなった認知症の高齢者に高カロリー輸液を行うのは、どれほどの意味があるかという問題はあるが、定期的に行っている処置になる。

 病棟の看護師さんたちは現実的なので、これで転院のあてがついた、不穏の時は(経口摂取を気にしなくていいので)抗精神薬が静注で使用できる、という。まあ同じ病院内でも一般病棟から地域包括ケア病棟に転棟になると、一般病棟としてはこれで終わりという感じになってしまう。

 明日別の88歳男性が、高カロリー輸液の状態で療養型病床のある病院に転院する。転院予定だったが直前の感染症発症で2回くらい延期になっていた。担当のソーシャルワーカー(MSW)は、やっとこれで介入が終わりになるとほっとしていた。

 患者さんや家族にとっては転院という事実があるだけで、これからまだまだ続いていくのだが。

 

 ちなみにこの前療養型病床のある病院の看護師さんに訊いたところ、経管栄養(1日3回注入)よりも高カロリー輸液の方が助かるそうだ。確かに1日1回交換するだけだし、いつでも点滴も静注もできる(血管確保の手間がいらない)。療養型は看護体制1:20なので、ぎりぎりで大変だという。

 

 

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お出かけ中の脳梗塞

2020年01月06日 | Weblog

 72歳男性がめまい・ふらつきで内科新患を受診した。新患担当の内科の若い先生(大学病院からバイト)から、脳梗塞の患者さんがいます、と連絡が来た(内科再来を診ていたので、隣のブースにいたけど)。

 年始から患者さんは隣県の温泉に出かけていた。1月2日に温泉旅館でトイレに行こうとして、めまい・ふらつきを感じた。その後、川下りで有名な観光地に言って、ふらついて歩行しにくくなって、そちらの救急病院を受診した。

 患者さんと奥さんの話では、頭部CTでは異常を認めなかったそうだ。大腿骨頸部骨折の既往があり、足に金属が入っている。頭部MRIを撮影していいかわからないので撮影はしないとされた。地元に戻って症状が検査を受ける様に、と言われて帰宅していた。

 今日は歩行はできるが、ふらつきは若干あるそうだ。明らかな半身麻痺はないが、左半身の感覚鈍麻がある。健診で高血圧と高脂血症を指摘されていたが、受診はしていない。

 大腿骨の手術は当院で行っていて、チタンなので、頭部MRIの実施には問題なかった。拡散強調画像で、右視床から内包後脚にラクナ梗塞を認めた。心電図は洞調律で心房細動はなかった。

 神経内科医に診察と入院治療を依頼して、入院となった。右後頭葉にも小さなラクナ梗塞があり、A to A梗塞を否定するため、頸動脈の検査が予定された。

 患者さんにとってはとんだ年明けになったが、比較的症状が軽度なので、その点はまだいいか。これを機会に高血圧症・高脂血症の治療が開始されることになる。

 川下りの観光地に随分前に行ったことがあるが、この寒い時期に行くのはどうなんだろうか。

 

 

 

 

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「レジデントのための腎臓教室」

2020年01月05日 | Weblog

 年末年始にかけて、「レジデントのための腎臓教室」前嶋明人著(日本医事新報社)を読んでいた。研修医向けの本だが、知識の整理にはちょうどいい。ただし具体的な投与量などは書かれていない。2017年11月に出て2019年4刷なので、売れているようだ。

 尿中未変化体排泄率は、投与された薬が代謝などで活性を失わないまま腎臓を通って尿中から排泄される割合。尿中未変化体率が40%以下の薬物は肝代謝型薬物60%以上の薬物は腎排泄型薬物。肝代謝型薬物では腎不全でも常用量だが、腎排泄型薬物では減量を要する。(%は知らなかった)

 脂溶性薬物は肝代謝型で、水溶性薬物は腎排泄型の性質をもっているとあるが、その薬剤が脂溶性か水溶性かはわからない。

 

 一番困っているのは糖尿病・高血圧症で通院していて、血糖も血圧もまずまずにコントロールされている患者さんの腎機能障害だ。尿蛋白も(微量アルブミンも)、尿潜血も陰性で、精査としては腎生検で確認するしかない。腎臓内科外来(大学病院からバイト)に紹介しても、それぞれの治療を継続して下さいで終わってしまう。(将来的に腎機能が悪化した時は透析になるという話はしてくれた)

 尿蛋白が出にくいという点では高血圧症による腎硬化症の要素が大きいのだろうか。

 

 

レジデントのための腎臓教室〈ベストティーチャーに教わる全14章〉

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インフルエンザ+肺炎が3名入院

2020年01月04日 | Weblog

 昨日の3日の日直の時に、内科に3名が入院した。いずれもインフルエンザ(A型)+肺炎だった。

 まず朝病院に来ると、昨夜の当直だった外科医から、早朝に救急搬入された90歳男性を相談された。12月27日に発熱で住んでいる町の病院を受診した。インフルエンザ迅速試験陰性と診断されて、鎮咳剤と去痰剤を処方されていた。

 数日食事摂取できなくなっていて、呼吸困難で救急要請していた。その日息子さんに「インフルエンザで肺炎を併発している」という話をすると、「もっと早く再受診させていれば」と言っていた。

 

 2人目は63歳男性で、当院の事務職を定年退職した方だった。奥さんはまだ当院の病棟看護師をしている。12月31日に高熱が出たが、翌日には解熱傾向となり様子をみていた。ところが昨日の3日目からまた高熱になって、咳・痰(黄色)が出始めた。歩くとふらふらするという。

 インフルエンザ迅速試験をすると、A型陽性と出た。抗インフルエンザ薬を出して終わりかとも思ったが、短期間ながらちょっと軽快して悪化した経過が気になったのと、黄色痰が気になった。

 胸部X線で右中葉に浸潤影が疑われた。点滴と血液検査をすると、白血球増加・CRPがあり、細菌感染を示唆している。胸部CTで確認すると、右中葉には確かに浸潤影があるが、その他にも右下葉と左下葉に淡い陰影が散在していた。

 入院治療として、奥さんの勤務する婦人科・外科系・内科なども混合病棟に入院とした。どうも奥さんも感冒症状が出始めているらしい。

 

 夕方になって、当番医だったクリニック(市医師会長)から3人目の88歳男性が紹介されてきた。自宅んの車で行かせる、という電話での話だったが、持ってきた診療情報提供書には酸素飽和度60%台とあった。

 他のクリニックだと、低酸素の時など病状が悪いと、救急搬送してくる。こちらの先生は以前から自宅の車で直接向かわせていた気がする。救急外来の看護師長が「よく自宅に車で」と驚いていた。(豪快な素敵な先生です)

 酸素5L/分を開始したが、酸素飽和度は88%~90%にしかならない。血液ガスではPaO2 52・PaCO2 29・pH 7.420だった。それでも楽になりましたと言っていたので、ふだんも低酸素状態なのだろう。これまでも動くと息切れはしていた。リザーバー付きにマスクにして酸素飽和度が94~96%になった。難聴はあるが、会話はしっかりしている。

 20年前に喫煙をやめた(それにしても68歳)そうだが、胸部X線・CTでは明らかな肺気腫像を認めた。

 12月30日から体調不良となって(高熱はない)、呼吸困難で今日受診していた(ふだんもそこがかかりつけ医)。インフルエンザ迅速試験A型陽性で、右下肺野に浸潤影を認めた。

 呼吸器内科のある病院への搬送も考えたが、インフルエンザだと個室管理になるので、ベット確保が大変そうだ。高炭酸ガス血症がなく、酸素飽和度が確保できているので、当院で治療することにした。家族(長女)には、厳しいかもしれないと伝えたが、高齢なのでできる範囲で治療してもらえばいいということだった。

 

 治療は3例ともラピアクタ注とセフトリアキソンでまったく同じ。

 

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インフルエンザA型流行ってます

2020年01月03日 | Weblog

 今日は日直で病院に出ている。31日~1日に新規入院した6名はまあまあ落ちついている。病棟で若い先生(地域医療研修の内科専攻医)が診ている患者さんのことで病棟看護師さんから相談されたりしている。

 爆発的ではないが、インフルエンザ(A型)が流行している。昨年末は、医局でゾフルーザを使ってみたいという声が多かったので、臨時購入扱で使用した。よく効いたのかどうかはわからないが、自分が罹患したら内服してみる予定だった(罹患せず)。

 小児科学会では昨年度ゾフルーザの使用は見合わることにしたので、小児では使用されなかった。今年度(2019-2020)は(成人のインフルエンザに)ぜひゾフルーザを使いたいという声もないので、当院では購入していない。

 当院の小児科医(ベテランというよりはおじいちゃん)は今年出たイナビル懸濁液を早速採用して、専用のネブラーザーも2台購入していた(小児科外来と救急外来用)。

 

 その先生のインフルエンザ治療私案は次の通り。

1)生後2か月~乳児: タミフル6mg/kg/日を分2で5日間、またはイナビル懸濁液吸入

2)1~6歳 タミフル: タミフル4mg/kg/日を分2で5日間、またはイナビル懸濁液吸入

3)7~9歳: イナビル1容器(20mg)吸入、またはタミフル4mg/kg/日(最大量150mg/日)を分2で5日間

4)10~19歳: イナビル2容器(40mg)吸入、またはタミフル4mg/kg/日(最大量150mg/日)を分2で5日間

 タミフルの10歳代への投与は2018年夏に「推奨せず」から「推奨」に変更された(しかし、なんとなく使用しないつもりと)。

 小学生~未成年者では、薬剤の種類を問わず(無投薬でも)、少なくとも発熱2日までは異常行動による転落などを防ぐ対策をとるよう保護者に伝えることとある。

 

 内科だと、タミフル内服ですか、イナビル吸入ですかと訊いて、どちらかを出している。食欲がなくて外来で点滴をする患者さんと、インフルエンザそのものあるいは肺炎併発で入院になる患者さんでは、ラピアクタ点滴静注を使用している。

 インフルエンザ肺炎あるいはインフルエンザ+細菌性肺炎で重症の時は、ラピアクタ注(数日繰り返して投与)とゾフルーザ内服(内服できない時は経鼻胃管で注入)となるようだが、そういう患者さんは当院では診れないので救急搬送になる。

 

 

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乳酸高値

2020年01月02日 | Weblog

 12月31日の日直の後、病院に泊まっていたが、夜間に連絡はなかった。1月1日午前7時半に当直医(バイトで来ている大学病院外科の若い先生)から連絡が来た。

 42歳男性が短時間(1分)のけいれんで救急搬入されていた。午前3時ごろに倒れる音がして、妻が発見していた。小児期からいつまでか覚えていないというが、てんかんで治療していたそうだ。

 糖尿病で、地域の基幹病院近くに開業している糖尿病専門医の医院に通院していた。当直医が血液検査をして、血糖236mg/dl・HbA1c13.3%と血糖コントロール不良を呈していた。ふだんもHbA1c12%くらいで、悪化したので処方が追加されたという。

 ライゾデク20単位皮下注を朝夕にして、SGLT2阻害薬とメトホルミン内服が処方されていた。追加(増量)したのはメトホルミンで、1000mg/日から1500mg/日に増量されていた。

 血液ガスは、搬入時はpH7.239・乳酸115だったが、その後に再検してpH7.385・乳酸14.0に改善していた。点滴はちょっとしか入っていないので、それが効いたわけではない。

 当直医から、糖尿病によるアシドーシスかどうかと言われたが、けいれん自体による一過性の変化だろう。けいれんの直後とその後の血液ガスの変化を証明したことになる。最初に連絡が来た時は、アシドーシスと乳酸高値といわれたので、メトホルミンによる乳酸アシドーシスも一瞬浮かんだが、そうではない。

 これまで、けいれん発作で血液ガスを検査したことはあまりないが、けいれんの証明にもなるので、とるべきなのだった。

 さらに15歳から20歳代始めにかけて、膵炎でクリニックに通院していたという既往がある。クリニック通院だけで入院はしていないので、程度はひどくないのだろう。腹部CTで確認すると、膵管に沿って石灰化(膵石)を認め、膵臓自体は著明に萎縮していた。家族歴はないが、特殊な慢性膵炎とそれによる膵性糖尿病ということになるのか。

 心配なので入院させてほしいというので、年明けまで入院とした。使いやすいイーケプラ内服を開始して、糖尿病の治療はかかりつけ医と同じとした。

 ライゾデクは持効果型(トレシーバ)+超速効型(ノボラピッド)で、一番血糖が上がる時間に合わせて打つことになっている。シックデイでは使いにくいので、個人的には嫌いなインスリンで全く使用していない。実際食べたくないので朝のインスリンは1回パスになってしまった。

 朝夕2回打ちになると、ライゾデクの1回で済むという利点もなくなってしまう。昼食後は超速効型がまったくないので血糖高値になるはずだ。当方の慣れた治療にすると、インスリン強化療法に切り替えになるので、短期間の入院だし、そこはいじらないことにした。

 地域の基幹病院には糖尿病・てんかん・さらに膵臓の専門医がいるので、精査を要する時はかかりつけ医からそちらに紹介してもらおう。

 

 

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