先週、病院の人間ドックで上部消化管内視鏡検査を受けた。胃粘膜はびまん性発赤と萎縮があり、ピロリ胃炎の所見だった。過形成性ポリープも散在していた。所見がある時は追加検査(ピロリ菌や胃癌疑いの時の生検)にしていたが、内視鏡医(大学病院からバイト)はしなかった。迅速ウレアーゼ試験をしてもらってよかったのだが。
金曜日に尿素呼気試験を受けて、ピロリ陽性と出た。年齢的には統計上高確率で陽性であり、予想通りになる。ボノサップセット400(タケキャブ20mg・アモキシシリン750mg・クラリスロマイシン200mgを朝夕内服)で除菌治療をすることにした。
「これでわかるピロリ除菌療法と保険適応 改訂第5版」高橋信一著(南江堂)を読み直してみた。
ピロリ菌除菌療法の適応疾患
2000年に胃潰瘍、十二指腸潰瘍、2010年に胃MALTリンパ腫、自己免疫性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡治療後胃、2013年にヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の保険適応が認められた。
ヘリコバクター・ピロリ菌の感染診断法
胃内視鏡検査による胃生検材料を用いる方法として、1)迅速ウレアーゼ試験、2)組織鏡検法、3)培養法。胃内視鏡検査によらない方法として、4)血中・尿中のヘリコバクター・ピロリ抗体測定、5)尿素呼気試験、6)便中ヘリコバクター・ピロリ抗原測定。
通常行うのは、内視鏡検査時の迅速ウレアーゼ試験、内視鏡検査をしない時の尿素呼気試験。
診断精度を上げるために、1回の検査が陰性の場合は異なる方法でさらにもう1回検査を行うことができる。2010年から2種類の検査を同時に実施可能となった。
除菌療法終了後の感染診断法(除菌判定法)
除菌薬内服終了後4週間以降に行う(ガイドライン)が、実際は8週間以降に行う(除菌終了後60日以上で偽陰性なし。できるだけ遅く行う。)。4)・5)・6)は2つを同時算定可。
除菌成功例ではさらに診断精度を上げるため、異なる方法でもう1回除菌判定を施行できる。最初の判定より6か月後くらいに行う。
生検材料を用いる方法はサンプリングエラーの可能性があり、尿素呼気試験または便中ヘリコクター・ピロリ抗原測定を用いる。
ヘリコバクター・ピロリ菌に対して静菌作用のある薬剤(PPIや抗菌薬)を内服していた場合は、判定偽陰性を避けるために、薬剤内服中止後、少なくとも2週間以上をあけて診断を行う。
除菌法
1次除菌
PPIのランソプラゾール30mg、オメプラゾール20mg、ラベプラゾール10mg、エソメプラゾール20mg、またはボノプラザン20mgに、アモキシシリン750mg、クラリスロマイシン200mgの3剤を1日2回服薬して1週間続ける。(ボノプラザンはP-CAB)
通常な一番効果的なボノプラザン(タケキャブ)を使用する。ボノサップパック400または800はボノプラザン20mg1錠、アモリンカプセル250mg3錠、クラリス錠200mg1錠(400)か2錠(800)の3剤を組み合わせ、1日1シートを朝夕と1列ずつ内服して1週間続ける。
2次除菌
1次除菌が失敗した場合は、経験的に1次除菌後3~6か月後に2次除菌を行う。1次除菌率の低下はクラリスロマイシン耐性菌の増加が原因。2次除菌はPPI+AMPC+MNZ(メトロニダゾール)で行う。メトロニダゾール(フラジール)250mg錠を朝夕で使用する。(適応は2次除菌に限られている)
ボノピオンパックは、ボノプラザン20mgに、アモキシシリン750mg、メトロニダゾール250mgの3剤を組み合わせ、1日1シートを朝夕と1列ずつ内服して1週間続ける。
3次除菌
2次除菌が失敗した場合は、再度内視鏡検を行い、胃生検材料によりヘリコバクター・ピロリ菌の培養と薬剤感受性試験を行う。薬剤感受性をみて感受性を示す適当な薬剤を組み合わせて3次除菌を行う。(保険適応外)