なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

化膿性脊椎炎

2019年10月21日 | Weblog

 学会で不在だった先週の木曜日に71歳男性が発熱・腰痛で内科に入院していた。発症は前日かららしい。午前7時ごろ救急外来を受診したので、前日からの当直医(耳鼻咽喉科)が診察した。

 最初腰痛がひどいので整形外科にコンサルトしたが、発熱があるので整形外科で診る疾患ではないと判断したようだ(診察はなし)。尿混濁はないが、急性腎盂腎炎として内科当番の先生に申し送って、内科入院となった。

 セフトリアキソンで開始して、38℃台だった発熱は解熱していた(平熱~微熱というところ)。入院してからも腰痛は続いている。入院時に尿培養(陰性)と血液培養2セットが提出されていて、2セットからブドウ球菌(MSSA)が検出された。

 病棟に主治医の先生がいたので、腰椎MRI検査を入れてもらうことにした。心エコー検査も追加した。

 腰椎MRIでは腰椎にT2脂肪抑制で高信号を認めて、化膿性脊椎炎の一致する所見とされた。心エコー(経胸壁)では明らかな疣贅は認めなかった。心機能には問題がない。

 ブドウ球菌がどこから血流に入ったかはわからない。整形外科に転科となって、抗菌薬が変更された。カルバペネムでいくようだ。

 通常はセファゾリン2g1日3回で、それにリファンピシンを追加するかどうかでいいと思っていた(プラチナマニュアルにもそうあるし)。学会で骨髄炎の講演を聴いてきたところでは、そうでもないようだ。

 黄色ブドウ球菌は細胞内寄生(骨芽細胞内)するという。抗菌薬の骨芽細胞内移行性は、RFP・ST・OFLX・CLDMでは良好だが、βラクタムやVCM・TEICなどは移行性が悪い。RFPの併用が有効でMRSAに100%感受性があるが、耐性化しやすい(単独では使用しない)。

 MSSAにはCLDM+RFPといきたいが、これだとCLDMの濃度が低下するそうだ。MSSAにはDAP/LZD+RFPになる。

 講演は整形外科の松下和彦先生で、主には関節置換術後の感染の治療の話だったが、化膿性脊髄炎も同様なのだろうか。

 

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ポータブル胸部X線

2019年10月20日 | Weblog

 「本当は教わりたかった ポータブル胸部X線写真の読み方」(MEDSI)を購入して、とりあえず1回読んだ。ポータブルX線の本は初めて出たと思う。ポータブルで撮影する患者さんの方が重症度が高いので、むしろ通常の放射線室で撮影するX線より重要ということになる。

 ポータブル胸部X線は原則として臥位で撮影されるので、空気の溜まり方・水(胸水・出血)の溜まり方が立位・座位とは異なる。これは目からうろこだった。これは必読の良書です。

本当は教わりたかった ポータブル胸部X線写真の読み方  サクッと読めて、ガツンとわかる7日間特別講義

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IGRA

2019年10月19日 | Weblog

  18日学会でインターフェロン-γ遊離試験(IGRA:Interferon-Gamma Release Assay)の講演を聴いた。

 結核に感染すると、90%は発症せずに生涯を終えるが、10%は体力・免疫力低下から発症する。これは10%しか発症しないのではなく、10%も発症するということ。

 結核は無治療だと、50%が死亡、20%が慢性排菌、30%が治癒する(抗結核薬がない昔も後遺症を残して治癒する人はいた)。

 ツベルクリン反応検査は、BCGや非結核性抗酸菌症(NTM)との交差反応を引き起こすため、結核の感染診断としては特異性が低い。BCG接種者がほとんどを占め、NTMの有病率が増加している日本では、IGRAが結核感染診断の基本になる。

 IGRAは結核菌特異抗原が発見されたことでできた結核の感染診断法で、2種類ある。クォンティフェロンTBゴールドプラスは、結核菌特異抗原でTリンパ球を刺激して、放出されたインターフェロン-γ(IFN-γ)を測定する。T-SPOTは、結核菌特異抗原で刺激を受けてインターフェロン-γ(IFN-γ)を放出されたT細胞数を測定する。

 結核患者接触して(接触者健診)IGRA陽性だと、6か月から2年で5%が結核を発症する。明らかな臨床症状は認めず、細菌学的所見(喀痰塗抹検査)・結核を疑う画像検査を認めないが、結核に感染していること自体が潜在的な疾患(潜在性結核感染症latent tuberculosis :LTBI)であると考えて、治療を行う。

 潜在性結核感染症を治療すると、50~70%の発症予防効果がある。しかし、治療をすると4人に1人は肝機能障害で治療が中止になる(まれだが死亡例もあるそうだ)。

 IGRAは感度90%、特異度99%。結核患者の10%は偽陰性になる。感染していない100人に1人は偽陽性になる。IGRAを繰り返すと、陽転も陰転もあり、変動する。IGRAの結果のみを潜在性結核感染症の根拠にしてはならない。

 接触者健診でIGRA陽性となった時は潜在性結核感染症として治療する意義があるが、病院職員の入職者健診でIGRA陽性になった時(取り入れている病院が増えている)、あまり意義がないそうだ(フォローにはなるだろう)。ただし、接触者健診をすることになる可能性もあるので、入職時にIGRAのベースの値を検査しておくことは意義があるかもしれない。

 

 ランチョンセミナーは、岡秀昭先生の「プラチナ流感染症コンサルテーション」を聴いた。9つの症例を提示して、他科からのコンサルテーションに見事に答えていて感動的だった。感染症以外の疾患の可能性もあるため総合内科の力が必要なこと、他科と意見が違った時は強制するのではなく、相手の方から信頼・同意を得られるように対応すること、など。会場はたぶん満員御礼状態。

 

 

  

 

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インフルエンザの提言

2019年10月18日 | Weblog

 仙台開催の感染症学会・化学療法学会合同学会(東日本)に出ている。台風による水害で機能停止した病院から、一部の患者さんが当院にも搬送されてきているが(10名の予定)、当方は不在で、他の先生方にお願いすることになった。

 木曜日は三鴨廣繁先生の「インフルエンザ診療の現状と問題点」の講演があって、興味深く、というよりは面白く聴いていた。

 インフルエンザ2018-2019シーズンは、流行状況が例年とは違っていた。例年はA型インフルエンザのどれか(H1N1かH3N2)が流行して、その後にB型インフルエンザが流行する。2018-2019シーズンは、A/H1N1型pdm09とH3N2の両方が同時に流行して、B型の流行はほとんどなかった。

 今年2019-2010は9月からインフルエンザが流行し始めて、流行時期が異様に早い。ただしインフルエンザウイルスの変異はないそうだ。

 2009年の新型インフルエンザA/H1N1型pmd09の時、感染症学会のインフルエンザ対策委員会は、すべてのインフルエンザ患者に抗インフルエンザ薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)を投与することが提言された。渡辺彰先生がエキスパートオピニオンとして出したそうだ。その結果日本では外国に比べて重症例・死亡例が圧倒的に少なかった。(なるべく薬を使用しないことを良しとする感染症医からは、投与の必要がない通常のインフルエンザ患者にも投与することになった、という批判もあった。でも効果があったことは間違いない。)

 2009年からオセルタミビル耐性が問題となった。新型インフルエンザA/H1N1型pmd09のオセルタミビル耐性は2%程度で落ち着いている。リレンザ、イナビルの吸入薬は何故か耐性にならない。

 2011年の改定された提言では、重症度の観点からみたインフルエンザ患者の分類と、それに基づいた抗インフルエンザ薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)の使用指針が提言された(下記)。これは三鴨先生が作成したそうだ。

 2019年の提言が近日中に出されるが、三鴨先生の話では、2009年とは違ってエビデンス重視の提言になっているそうだ。抗インフルエンザ薬を投与すべき患者(高齢者・年少者、基礎疾患あり、免疫抑制者、妊婦など)を既定して、それ以外の患者への抗インフルエンザ薬の投与については医師の裁量で決定することにしている。(委員である三鴨先生は中途半端な提言になったことに不満があるらしい)

 エビデンス重視なので、治療薬では論文の多いオセルタミビル(タミフル)を推奨するようになっている。オセルタミビルは発症48時間以内で(だけ)使用することになっているが、実際は48時を過ぎても有効という結果が出ている。

 バロキサビル(ゾフルーザ)は2018-2019シーズンで低感受性株(あえて耐性とはいわないらしい)が検出されており、単独では使用しがたいという。A/H1N1型よりH3N2で低感受性になり、10%に及んだ。

 イナビル吸入懸濁用160mgセットが販売されて、ネブライザーで使用できるので吸入薬が使いにくい高齢者や小児で使えるという。(この講演はイナビルを販売している第一三共製薬の提供)

 三鴨先生の岐阜大学病院では、抗インフルエンザ薬の予防投与は治療量でしている。タミフル1日1回10日間ではなく、1日2回で使用する。イナビルはもともと1回吸入なので治療量で使用することになる。岐阜大学病院の院内インフルエンザアウトブレイクでは約1億円かかった。

 診断についてはインフルエンザ迅速試験は73%程度の陽性率しかない。迅速試験陽性から陰性になってもインフルエンザウイルスが残っていて、治癒・隔離介助ときめられないこともある。PCRなどの遺伝子検査(NAAT)での診断が好ましいという。(まだ市中病院では難しい)

 予防として手指衛生は二次感染を低下させる。マスクもエビデンスとしては難しいがするべきだ。医療従事者は病院より家庭内の感染が多いので注意が必要だ。(実感できる)

 外見は反社会勢力にしか見えない素敵な三鴨先生の名調子を聴けてよかった(個人的には大好きです)。三鴨先生が何度か開業しようとしたところを(もともと産婦人科医)、講演の座長をしていた賀来満夫先生に止められてここまで来たという話が意外だった。

 

 実臨床としては、インフルエンザ迅速検査をしないわけにはいかない。また診断したら、抗インフルエンザ薬を投与しないわけにはいかない。必ずしも抗インフルエンザ薬を投与しなくてもいいとされる普通の人でも、インフルエンザに罹患することはとてもつらい。

 

重症度の観点からみたインフルエンザ患者の分類

A群.入院管理が必要とされる患者
A-I群重症で生命の危険がある患者。たとえば、昇圧薬投与や人工呼吸管理等の全身管理が必要な例、肺炎・気道感染による呼吸状態の悪化例、心不全併発例、精神神経症状や意識障害を含むその他の重大な臓器障害例、経口摂取困難や下痢などによる著しい脱水で全身管理が必要な例、などがこれに当たる。

【参考】
日本呼吸器学会では、市中肺炎の重症度および入院について以下の基準5)を示している。


※ただし意識障害があれば1項目でもICU入院とする。

A-2群生命に危険は迫っていないが入院管理が必要と判断される患者。A-1群には該当しないが医師の判断により入院が必要と考えられる患者、合併症等により重症化するおそれのある患者、などがこれに当たる。なお、この群を、肺炎を併発している群と、肺炎を併発していない群との2つに分ける。

B群.外来治療が相当と判断される患者:上記A群のいずれにも該当しないインフルエンザ患者。

抗インフルエンザ薬の使用指針

 以下は成人患者に対する使用指針であり、小児患者への投与に関しては各薬剤の使用指針に従って適宜減量する。なお、来シーズン以降に実用化される見込みのファビピラビル(T-705)については、今後然るべき時に追加記載する予定である。なお、わが国ではオセルタミビル、ザナミビル、ラニナミビル、ペラミビルと4種類のノイラミニダーゼ阻害薬が臨床現場で使用されているが、原則として、ノイラミニダーゼ阻害薬同士の併用は避けるべきである。オセルタミビルとザナミビルの併用では、オセルタミビル単独よりもウイルス学的、臨床的に、効果が低下することが報告されている48)。なお、以下には各群ごとに推奨の順に薬剤を示した。

A群.入院管理が必要とされる患者
A-I群重症で生命の危険がある患者
オセルタミビル(タミフル®
ペラミビル(ラピアクタ®
重症例での治療経験はオセルタミビルがもっとも多い。経口投与が困難な場合や確実な投与が求められる場合、また、その他の事情により静注治療が適当であると医師が判断した場合にはペラミビルの使用を考慮する。その際、1日1回600mgを投与し、重症度に応じて反復投与を考慮するが、副作用の発現等に十分留意しながら投与することが必要である[3日間以上反復投与した経験は限られている]。なお、A-1群では、吸入の困難な患者が多いと考えられるため、吸入剤の投与は避けるべきである。

(三鴨先生はA-1群の時は、ノイラミニダーゼ阻害薬(ラピアクタになる)とゾフルーザを併用するが、これはエビデンスの問題ではなく、医師として人としてなすべきだ強調されていた)

A-2-1群生命に危険は迫っていないが入院管理が必要と判断され、肺炎を合併している患者。
オセルタミビル(タミフル®
ペラミビル(ラピアクタ®
オセルタミビルの使用を考慮するが、経静脈補液を行う場合、その他の事情により静注治療が適当であると医師が判断した場合にはペラミビルの使用を考慮する。なお、肺炎を合併しているこの群の患者では吸入剤の効果は限定されると考えられるため、吸入用製剤を投与適応から除外した。また、前述したように、ペラミビルの増量例や反復投与例における安全性は慎重に観察すべきである。

A-2-2群生命に危険は迫っていないが入院管理が必要と判断され、肺炎を合併していない患者。
オセルタミビル(タミフル®
ペラミビル(ラピアクタ®
ザナミビル(リレンザ®
ラニナミビル(イナビル®
オセルタミビルの使用を考慮するが、経静脈補液を行う場合、その他の事情により静注治療が適当であると医師が判断した場合にはペラミビルの使用を考慮する。なお、吸入投与が可能な例ではザナミビル、ラニナミビルの投与も考慮する。また、前述したように、ペラミビルの増量例や反復投与例における安全性は慎重に観察すべきである。

B群.外来治療が相当と判断される患者。
オセルタミビル(タミフル®
ラニナミビル(イナビル®
ザナミビル(リレンザ®
ペラミビル(ラピアクタ®
オセルタミビルやラニナミビルあるいはザナミビルの使用を考慮する。ラニナミビルは1回で治療が完結するので、医療機関で服用することにより確実なコンプライアンスが得られるが、吸入剤であるので吸入可能な患者に使用することを考慮する。経口や吸入が困難な場合や、その他の事情により静注治療が適当であると医師が判断した場合にはペラミビルの使用も考慮できる。なお、外来での点滴静注や吸入投与に際しては患者の滞留時間を考慮し、特に診療所等で有効空間が狭い場合でも、飛沫感染予防策・空気感染予防策など他の患者等へのインフルエンザ感染拡散の防止策を考慮することが必要である。

 

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肺血栓塞栓症

2019年10月17日 | Weblog

 昨日の午前中に内科医院からの依頼で70歳女性が救急搬入された。主訴はめまい・ふらつきだった。市役所に行こうとして、途中で急にその症状が出現してしゃがみ込んだそうだ。たまたまそこに救急車が通って、かかりつけの医院に運んだという。

 搬入時は横臥しているので、症状は軽快していた。バイタルサインはやや頻脈で(正常洞調律で不整脈なし)、血圧が最初は90台と低かったので、降圧薬の効き過ぎや起立性低血圧かと思った。その後すぐに血圧は110~120と正常になった。意識消失はなく、全部覚えている。

 2年前に慢性硬膜下血腫で手術した既往がある(脳血管障害の専門病院)。その時のような半身の脱力はなく、血圧低下気味で違うとは思ったが、頭部CTを確認した。異常はない。

 診察で貧血はなく、血液検査でもなかった。腹痛やタール便もない。血液検査でDダイマーが7と軽度に上昇していた。肉眼的には下肢深部静脈血栓症らしさはないが、肺血栓塞栓症疑いで造影CTを行うことにした。

 右肺動脈に血栓があるようだ。放射線科医から右房内に血栓が疑われると指摘された。循環器科医に相談した。心エコーで右房内にCTで見たほど大きくはないが、索状物を認めた。下肢静脈には血栓を認めなかった。

 深部静脈血栓症から血栓が飛んで、右房にひっかかり、さらに肺動脈に血栓塞栓症を来したのだろうか。低酸素はなかったが、入院治療で慎重に経過をみるのが普通だろう。

 後で知ったが、患者さんは入院を拒否して帰宅したそうだ。循環器科が急変の可能性も説明したが、入院に同意しなかった。抗凝固薬を処方して外来フォローとなった。

 

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対麻痺

2019年10月16日 | Weblog

 火曜日の夕方に整形外科の若い先生が、他の病院(高次病院)に電話をかけ続いていた。急な両下肢麻痺(対麻痺)だった。

 82歳女性が連休最終日の14日に腰痛で救急外来を受診して、外科系医師(大学病院外科から)が整形外科に入院にしていた。単なる腰痛で社会的入院のような入院のはずが、15日整形外科医が診察した時には両下肢の麻痺が出現していた。

 この患者さんは77歳時に大動脈解離が発症して、大学病院に入院した既往がある。手術はできず、保存的にみてそれなりに安定したが、その後もいつ破裂などで急変してもおかしくないとされていたらしい。

 相談された内科の若い先生が造影CTを行ったが、上行大動脈から下行大動脈(左は総腸骨動脈まで)の大動脈解離は以前の画像と比べて変化はないと診断された(放射線科のレポート)。

 発熱はなく、炎症反応の症状はないが、以前からの血小板減少がさらに悪化して4.5万になっていた。脊椎(脊髄)MRIでは下部胸椎から腰椎上部にかけての病変が描出された。これは何だろう。放射線科の読影によると血腫ではないかという(epidural hematoma?)。

 整形外科医は脊髄の専門病院・がんセンターに連絡していたが、最後は大学病院に相談となった。大学病院としても患者さんの病状から手術もできないので、保存的にみるしかないと言われたのだった。患者さんと家族に説明して、当院で経過をみる(しかない)方針となった。

 てっきり脊髄動脈にも解離が及んで、脊髄梗塞をきたしたかと思ったが違った。今日は特に変わりないようだが(急変してないという点で)、麻痺自体はどうしようもないか。

 

 

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頚椎偽痛風~化膿性脊椎炎?

2019年10月15日 | Weblog

 木曜日に80歳男性が後頚部痛で整形外科外来を受診した。頚部CTで第2頸椎(軸椎)歯突起周囲に淡く石灰化を認めて、頚椎偽痛風(Crowned dens syndrome)と診断された。

 外来治療となったが、処方されたのはアセトアミノフェンだった。内科医院に高血圧症・慢性腎臓病(CKD)で通院していて、血清クレアチニン1.28mg/dl(eGFR 42)と気にしたのだろう。でもアセトアミノフェンでは効かない。

 金曜日に390℃の高熱と後頚部痛で、その内科医院から当院外科に紹介された。意識は清明で、とにかく首を動かすと痛い。外科医は内科医院の院長先生の弟さんで、この兄から弟への紹介はよくあるパターンだった。

 血液培養を提出して、頚椎MRIを追加していた。脂肪抑制画像で、上下の頚椎C6/7に脂肪T2高信号を認めて、周囲の組織に高信号を認めた。診断は化膿性脊椎炎疑い(傍脊椎の炎症を伴う)だった。これは意外だった。

 NSAID(セレコックス)と抗菌薬点滴静注が開始されて、解熱軽快している。炎症反応も改善している。今のところ、血液培養では特に最近は認めない。(どっちが効いているのか)

 当方は、膝関節内にも石灰化を認めることもあり、最初電子カルテ上で見た時には、てっきりこれは頸椎偽痛風(Crowned dens syndrome)と判断していた。これは化膿性脊椎炎なのか(頸椎は部位としては少数派になるが)。

 (後日記)

 血液培養は陰性で、発熱・炎症反応上昇はすみやかに軽快していた。結論としては頸椎偽痛風でMRIで見られた炎症像も、偽痛風によるものでよかったようだ。セレコックスであっさり治ったのだった。

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イーケプラEKeppra

2019年10月14日 | Weblog

 先週の金曜日に大塚製薬の製品説明会があった。抗てんかん剤の「イーケプラ EKeppra」の宣伝だった。

 当院の神経内科医が好んで使用しているので、内科でもよく使用している。点滴静注と内服(錠剤、ドライシロップ)があるので、便利だ。高齢者てんかんは、複雑部分発作と二次性全般化発作なので、ちょうどいい。

 実際は特発性全般発作でもファーストチョイスで使用していいが、保険適応上は「他のてんかん薬で充分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法」になっている。

 最近はさらに他の新規抗てんかん薬も出ているので(エーザイのあれとか)、イーケプラを宣伝しておこうといことらしい。実際神経内科医は、新規の抗てんかん薬も入れていた。

 ところで、イーケプラってどういう意味なのと、疾患や薬剤と直接関係ないことを訊いてみた(細かいことが気になるたちなので)。

 欧米では「ケプラKeppra」の商品名で販売しているそうだ。ケプラKeppraとはエジプトの神さまの名前で、日本ではそれにてんかんEpilepsyのEをつけて販売しています、ということだった。

 Wikipediaによると、「ケプリKhepri、またはケペラKheperaは、エジプト神話の太陽神ラーの形態のひとつで、日の出を表している」、とある。Keppraはそこからとって、少し調整してつくったらしい。へえ~、というだけのどうでもいい話。

 

 

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退院日の脳梗塞

2019年10月13日 | Weblog

 95歳女性が9月中旬から頻脈性心房細動・心不全で循環器科に入院していた。入院後は治療により心不全は改善した、金曜日に退院予定だった。ADL低下(全介助)・認知症と超高齢ということで、抗凝固薬は投与しないことになっていた。

 その退院予定日の午前11時半ごろ(昼食時)に右半身麻痺と失語に気づかれた。緊急に検査が行われた。頭部CTで脳出血はなかった。頭部MRIで、左中大脳動脈領域の広範な脳梗塞と、右中大脳動脈領域の一部の脳梗塞を認めた。心源性脳塞栓と判断される。

 経胸壁だが、心エコーでは心腔内に血栓は指摘されていなかったが、実際には有ったか、できたのだろう。循環器科病棟から地域包括ケア病棟に移っていたが、さらに内科病棟へ転棟となった。

 内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医、神経内科志望)に直接依頼があり、主治医になっていた。点滴で経過をみるようだが、嚥下障害で食事摂取ができない時はどう対応するか。

 超高齢者の心房細動に対する抗凝固薬の適応は、どうすべきなのだろう。

 

 

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脳梗塞(視床)梗塞

2019年10月12日 | Weblog

 木曜日の夜間に右半身のしびれで67歳男性が救急外来を受診した。当直の外科医はすぐに頭部MRIを行って、拡散強調画像で左視床に高信号(ADCで低信号)を認めた。すぐに地域の基幹病院へ紹介していた。(この日は2例立て続けに紹介していて、受け入れてもらえた。)

 

 発症は午後6時半で、病院を受診したのが午後9時半なので、発症3時間後の頭部MRIになる。拡散強調画像で淡い高信号が描出されていて、十分判読できる。

 脳梗塞が発症後どのくらいで画像で描出されるか。「ユキティのER画像Teaching File」によれば、頭部CTではearly CT signが、発症後3~6時間後程度にみられる。

 early CT signは、レンズ核の不明瞭化(レンズ核の軽度濃度低下)・loss of insular ribbon(島皮質と弁蓋部皮質の軽度濃度低下)・皮髄境界(皮質白質境界)/cortical ribbonの消失・脳溝の狭小化不明瞭化(虚血部の浮腫性腫脹)。

 実際は、ここが何となく濃度低下?というくらいなので、MRI拡散強調画像と比べて、ああここかとわかる。

 頭部MRI拡散強調画像では、信号強度が発症後100分程度から上昇し始め、2~3日まで徐々に強くなってしばらく持続する。拡散強調画像といえども、発症後早期には高信号にならない。

 今回は発症後3時間なので、梗塞巣が描出されている。直接病院に来てしまって、当院で撮影して診断しているが、もし電話で問い合わせがあれば、発症2~3時間ならばrt-PAの適応の問題があるので、当院ではなく基幹病院を直接受診することを勧めている(当院では治療できない)。

 

 この患者さんは6年前まで当院の循環器科に通院していた。発作性心房細動があり、薬剤抵抗性ということでカテーテルアブレーション目的で大学病院循環器内科に紹介していた。2回アブレーションをしているらしい。現在は、当院で診ていた先生が開業したしたので、そちらのクリニックに通院している。

 現在は心房細動なのか、抗凝固薬を内服しているのか、受診時に心電図で確認されていないのでわからない。rt-PAの適応はないのかもしれない。視床梗塞だと血栓塞栓ではなく、動脈硬化による穿通枝の閉塞なのだろう。

 

 

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