木曜日の夜間に右半身のしびれで67歳男性が救急外来を受診した。当直の外科医はすぐに頭部MRIを行って、拡散強調画像で左視床に高信号(ADCで低信号)を認めた。すぐに地域の基幹病院へ紹介していた。(この日は2例立て続けに紹介していて、受け入れてもらえた。)
発症は午後6時半で、病院を受診したのが午後9時半なので、発症3時間後の頭部MRIになる。拡散強調画像で淡い高信号が描出されていて、十分判読できる。
脳梗塞が発症後どのくらいで画像で描出されるか。「ユキティのER画像Teaching File」によれば、頭部CTではearly CT signが、発症後3~6時間後程度にみられる。
early CT signは、レンズ核の不明瞭化(レンズ核の軽度濃度低下)・loss of insular ribbon(島皮質と弁蓋部皮質の軽度濃度低下)・皮髄境界(皮質白質境界)/cortical ribbonの消失・脳溝の狭小化不明瞭化(虚血部の浮腫性腫脹)。
実際は、ここが何となく濃度低下?というくらいなので、MRI拡散強調画像と比べて、ああここかとわかる。
頭部MRI拡散強調画像では、信号強度が発症後100分程度から上昇し始め、2~3日まで徐々に強くなってしばらく持続する。拡散強調画像といえども、発症後早期には高信号にならない。
今回は発症後3時間なので、梗塞巣が描出されている。直接病院に来てしまって、当院で撮影して診断しているが、もし電話で問い合わせがあれば、発症2~3時間ならばrt-PAの適応の問題があるので、当院ではなく基幹病院を直接受診することを勧めている(当院では治療できない)。
この患者さんは6年前まで当院の循環器科に通院していた。発作性心房細動があり、薬剤抵抗性ということでカテーテルアブレーション目的で大学病院循環器内科に紹介していた。2回アブレーションをしているらしい。現在は、当院で診ていた先生が開業したしたので、そちらのクリニックに通院している。
現在は心房細動なのか、抗凝固薬を内服しているのか、受診時に心電図で確認されていないのでわからない。rt-PAの適応はないのかもしれない。視床梗塞だと血栓塞栓ではなく、動脈硬化による穿通枝の閉塞なのだろう。