なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

29歳の脳梗塞

2019年10月24日 | Weblog

 昨日、地域の基幹病院消化器内科から79歳男性が転院してきた。意識障害で入院して、炎症反応が高かったそうだ。不明熱と記載しているが、肺炎の治療として抗菌薬を投与したこと、甲状腺機能低下があって二次性らしいこと、などの内容が診療情報提供書にあった。

 消化器内科の疾患ではないが、成り行きで担当したのだろう。主治医の若い先生は、慢性腎不全は腎臓内科にコンサルト、認知症は脳神経内科にコンサルトなど、各科に相談しまくっていた。結論がついていない部分もあり、当院でもう少し検査が必要だった。

 患者さんは嚥下調整食3を摂食できる。施設入所まで廃用症候群のリハビリをしながら経過をみる予定だ。この患者さんの奥さん(78歳女性)も同院に脳出血で入院して、1週間前に当院の回復期リハビリ病棟に転院してきていた。夫婦そろって施設入所待ちになる。

 昨日帰るときに更衣室で、奥さんの主治医である神経内科医と合ったので、内科にはその夫が転院してきたという話をした。その時、やはり同院から回復期リハビリ病棟に転院してきた脳梗塞の29歳女性の話をされた。

 1か月前に後頸部痛があり、その後左半身のしびれと不全麻痺が発症した。頭部MRIで右後大脳動脈領域に梗塞巣を認めていた。少なくとも2か所にあり、塞栓症が疑われる。右椎骨動脈が全体的に細く描出されて(CT angiographyもしていた)、椎骨動脈解離に伴うA to A 梗塞(A to A embolism)と診断されていた。

 経胸壁・経食道心臓エコー、下肢静脈エコー、若年性脳梗塞のスクリーニング(抗核抗体、抗リン脂質抗体、プロテインS・C)を行っていずれも否定的だったとある。心腔内からの血栓、下肢深部静脈血栓からの(卵円孔を介した奇異性血栓でもなく、凝固異常でもないということだった。

 神経内科医は、「A to Aは本当かなあ」と言っていたが、他に考えようもないということなのだろう。患者さんは現在歩行に支障はなく、急性期の治療後にそのまま退院するのが不安ということでの転院だった。「リハビリといっても、あんまりやることないけど」、だそうだ。

 当方としては、そんなことがあるんですね、というしかない。(A to A embolismは動脈原性脳塞栓で、動脈のアテローム硬化部位にできた血栓が末梢に流れて、遠位の動脈を閉塞することで、通常は内頚動脈からの塞栓症)

 

 

  

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