なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

IGRA

2019年10月19日 | Weblog

  18日学会でインターフェロン-γ遊離試験(IGRA:Interferon-Gamma Release Assay)の講演を聴いた。

 結核に感染すると、90%は発症せずに生涯を終えるが、10%は体力・免疫力低下から発症する。これは10%しか発症しないのではなく、10%も発症するということ。

 結核は無治療だと、50%が死亡、20%が慢性排菌、30%が治癒する(抗結核薬がない昔も後遺症を残して治癒する人はいた)。

 ツベルクリン反応検査は、BCGや非結核性抗酸菌症(NTM)との交差反応を引き起こすため、結核の感染診断としては特異性が低い。BCG接種者がほとんどを占め、NTMの有病率が増加している日本では、IGRAが結核感染診断の基本になる。

 IGRAは結核菌特異抗原が発見されたことでできた結核の感染診断法で、2種類ある。クォンティフェロンTBゴールドプラスは、結核菌特異抗原でTリンパ球を刺激して、放出されたインターフェロン-γ(IFN-γ)を測定する。T-SPOTは、結核菌特異抗原で刺激を受けてインターフェロン-γ(IFN-γ)を放出されたT細胞数を測定する。

 結核患者接触して(接触者健診)IGRA陽性だと、6か月から2年で5%が結核を発症する。明らかな臨床症状は認めず、細菌学的所見(喀痰塗抹検査)・結核を疑う画像検査を認めないが、結核に感染していること自体が潜在的な疾患(潜在性結核感染症latent tuberculosis :LTBI)であると考えて、治療を行う。

 潜在性結核感染症を治療すると、50~70%の発症予防効果がある。しかし、治療をすると4人に1人は肝機能障害で治療が中止になる(まれだが死亡例もあるそうだ)。

 IGRAは感度90%、特異度99%。結核患者の10%は偽陰性になる。感染していない100人に1人は偽陽性になる。IGRAを繰り返すと、陽転も陰転もあり、変動する。IGRAの結果のみを潜在性結核感染症の根拠にしてはならない。

 接触者健診でIGRA陽性となった時は潜在性結核感染症として治療する意義があるが、病院職員の入職者健診でIGRA陽性になった時(取り入れている病院が増えている)、あまり意義がないそうだ(フォローにはなるだろう)。ただし、接触者健診をすることになる可能性もあるので、入職時にIGRAのベースの値を検査しておくことは意義があるかもしれない。

 

 ランチョンセミナーは、岡秀昭先生の「プラチナ流感染症コンサルテーション」を聴いた。9つの症例を提示して、他科からのコンサルテーションに見事に答えていて感動的だった。感染症以外の疾患の可能性もあるため総合内科の力が必要なこと、他科と意見が違った時は強制するのではなく、相手の方から信頼・同意を得られるように対応すること、など。会場はたぶん満員御礼状態。

 

 

  

 

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