なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

確定はできない

2019年03月23日 | Weblog

 春分の日の内科日直の後、病院でフェントステープe-learningをしていた。慢性疼痛でフェントスを使用するには受講しなければならない。案外時間がかかったが、確認問題がちょっとひっかけ的で分かりにくい。

 88歳男性が先月初めに地域の基幹病院呼吸器内科から転院してきた。胸膜石灰化と職業歴から石綿肺は明らかだった。問題は大量に貯留した胸水。呼吸器内科では診断がつかず、大学病院呼吸外科に転院となった。胸膜生検の結果は、「石綿関連慢性線維性胸膜炎」とされて、戻されていた。

 要するに、「胸膜生検したものの、繊維化した組織しか検出されなかった」、ということを病名らしく表現した?。診療情報提供書には記載されていないが、家族の話では胸膜中皮腫が疑われるという話がされたそうだ。

 酸素吸入をしているので退院するには在宅酸素療法導入になるが、問題は著しい胸膜痛でフェントステープ5mg/日(4mg+1mg、経口モルヒネ換算150mg/日)を要するということだった。また奥さんとの二人暮らしで在宅介護は困難という問題もあった。

 そこで当院に治療継続を依頼されて、転院してきた。「急変する可能性については家族に話をしています」、とあった。まず思ったのは、やはりこれは中皮腫ではないか、ということだ。大学病院や専門医に逆らう気はないが、「中皮腫が疑われるが確定できない」、と記載してほしい。

 中皮腫疑いとしてフェントステープを使用していたが、確定していなければ慢性疼痛としての使用になる。そこでe-learningとなった。それと前後して胸部X線・CTを再検すると、左胸水は増悪して、胸膜と心膜が合わさって厚くなっている。心嚢液貯留も出現していた。心膜と接して右胸水貯留もあった。発熱はなく、炎症反応はごくごく軽度だった。

 臨床的にこれは腫瘍とさせてもらっていいのではないか。違うとしても対処が困難なのは同じだった。心不全に準じた治療をして経過をみるしかない。専門医がしなかった胸腔ドレーン挿入をすると、それこそ急変する可能性がある。

 家族には正直に、確定診断はつかないこと(中皮腫とは本来そういうものか)、できる範囲で対応するが実際には効果は見込めそうもないこと、をお話した。家族は苦しまないようにお願いします、と言われた。

  

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